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2012年12月 5日 (水)

IGRAs(T-SPOT)に悩む日々

11月からT-SPOTの検査が日本も解禁になりました。ボジョレー・ヌーボのようですね。

http://www.tspot-tb.jp/trustee/

T-SPOTとは結核感染により産生されるインターフェロンγをELISPOTで検出する検査のようです。書物によってはELISPOTとか、T-SPOTとかIGRAsとか書かれていて少し分かり難いとは思いますが要するに結核感染患者のリンパ球に抗原感作させインターフェロンγが産生されるので、それを測定することで感染の有無を判定しようとするものです。

簡単に説明すると、抗原を感作させインターフェロンγを産生する血球(リンパ球)を目視判定できるようにELISAで発色させ、そのSPOTをカウントする方法です。

結核、抗原刺激、インターフェロンγ・・・なんだか聞いたことのあるフレーズが多いと思いませんか?

そうです、今まではQFTでその検査をしてきましたが、今後はQFTとT-SPOTの2つ選択肢が出来ることになります。検査の選択幅が増えることは私たちにとっても良い事だと思います。

じゃ、QFTのままで良いのじゃないかということも思うでしょう。

大きな違いはいくつかあります。

【採血管の違い】

QFTは専用の試験管3本に採血し規定量を守らないといけないが規制がありましたが、T-SPOTはヘパリン採血1本で良くなりました。添付文書を見て行くとヘパリン採血の場合は年齢により採血量が異なりますが、外部委託業者からは6mlと統一されています。乳幼児の場合は採血管の種類が代えれないか相談するのも一つです。一部日本語訳が変なところもあるので気を付けてみないといけないかも。

採血後はXtend試薬を使う事で採血後から検査開始まで32時間大丈夫のようです(試薬を使わないと8時間)。生体外へ細胞が出て行く場合は出来るだけ早い方が良いとは思いますが、その辺は全く触れられていません。

http://www.tspot-tb.jp/product/download/pdf/PI-TB8-JP-V1_121025.pdf

【インターフェロンγの定量性】

QFTは全血を対象にして抗原を感作させインターフェロンγ量を測定するのに対して、T-SPOTは全血中のリンパ球を取り出し、数をカウントし一定量のリンパ球に抗原感作させてインターフェロンγ量を測定するようです。つまり、T-SPOTはインターフェロンγの量をリンパ球を定量することで比較しやすくしていると考えることができます。

リンパ球のカウントは血球計算盤で目視カウントするか、自動機器でカウントするかを選ぶ形になります。このカウント作業は大量検体を裁く場合は目視では大変だと思います。

【感作する抗原とその種類】

QFTはESAT-6、CFP-10、tb7.7の3種類ですが、T-SPOTはESAT-6、CFP-10の2種類。

T-SPOTはtb7.7が入っていませんが、感度は97.5%と非常に良く問題にならないかもしれませんが、QFTの説明を見る上で、2GからGへ変更になった際に感度が81.4%から92.6%へ上がっていますので理由の一つにこのtb7.7が含まれるかも知れません。詳しく書かれているものは見つけられませんでした。

【判定方法】

QFTはインターフェロンγの量を比色して定量するものですが、T-SPOTはインターフェロンγを産生する血球数をカウントする方法なので測定している対象が少し異なります。

T-SPOTはESAT-6またはCFP-10の発色数と陰性コントロールの発色数との差を求めて両方、或いは片方のSPOT数が6個以上だと陽性と判定します。両方5個以下であれば陰性判定となりますが、両方とも5-7SPOTである場合は判定保留となります。

・ESAT-6 20 SPOT、CFP-10 10 SPOT ⇒陽性

・ESAT-6 0 SPOT、CFP-10 2 SPOT  ⇒陰性

・ESAT-6 5 SPOT、CFP-10 6 SPOT  ⇒判定保留

http://www.tspot-tb.jp/product/measurement/

潜在性結核症の判断基準に使えると思いますが判断材料が不足しており、さらに今まで測定してきたQFTのデータはベースラインとしては使い物にならないので切り替える場合は再度ベースラインを引き直しする必要性が出てきそうです。

ただし、HIV患者や臓器移植患者、悪性血液疾患患者、小児のような今までQFTでは測定しても判断が難しかった患者には良いよという報告は多いようです。

日本の場合は特異度がQFTの方が良かったという報告もあります。

Ann Intern Med. 2008 August 5; 149(3): 177–184.

Tuberc Respir Dis 2012;73:143-150

PLOS ONE October 2012,Vol.7,10,e47340

Int J Tuberc Lung Dis. 2012  Sep;16(9):1190-2. Epub  2012 Jun 28.

色々と読んでいますが、読めば読むほど難しくなりました。

個人的には今後の展開を待とうと思います。

誰か詳しい人いたら教えて下さい。

Tspottstqft


Ann Intern Med. 2008 August 5; 149(3): 177–184.より

 

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