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2012年11月27日 (火)

なんとなく分かったような気がします レジオネラ肺炎の喀痰塗抹の見方

喀痰グラム染色を見る時には皆さん何を考えて見ていますか?

患者さんの情報は当たり前のように大事ですが、何も情報を得ずグラム染色を見た場合は何を頼りにしているのでしょうか。

スメアの中で数的優位な細菌の染色像、形態的特徴など観察していると思いますがそれは見えた菌が何なのか推定するために必須条件です。

私は加えて背景画像に注目しています。

・肺炎球菌であればフィブリン塊の大きさと好中球。

・インフルエンザ菌であれば気管支分泌物と好中球。

・結核菌であれば分厚い壊死組織と好中球がある割に菌が居ない

・アスペルギルス(主にアスペルギローマ)であればフィブリン塊と好中球がある割に菌が居ない

などなど。分類すれば分かりやすいです。

レジオネラ肺炎ではどうでしょうか?

レジオネラ肺炎が起こればマクロファージの活性化が強くなり、マクロファージが増えます。末梢血中でもマクロファージが増加し食細胞として組織で働くので、末梢の白血球数はそれほど上がらないのが特徴だそうです。

そのために、肺胞内部にもフィブリンとマクロファージ主体の病変をきたし、喀痰グラム染色では好中球よりマクロファージが良く見られる結果になります。画像上では大葉性肺炎像となり、好中球かどうかの区別は着きにくいそうです。なので診断には喀痰スメアや培養が大事になります。

マクロファージは下の写真のように好中球より大きな多核または単核細胞として見つけることができます。経験では好中球はあまり観察されずマクロファージが本当に多く見えます。リンパ球侵潤は認めないのでリンパ球は見られることが少ない。

こういった場合はレジオネラ菌を想定してヒメネス染色、B-CYEα培地の追加、尿中抗原の実施など試みてはどうでしょうか。グラム染色では細いグラム陰性桿菌で確認され、嫌気性菌との区別が付きにくく中々判読することは難しいと思います。

同じ非定形肺炎のマイコプラズマ肺炎では少し違い、マクロファージはそれほど増えず、リンパ球侵潤が著名となるようです。上皮の剥離が非常に強いので好中球に良く似た上皮細胞が集塊状となって確認されることも見かけます。

菌を探す前に一度どういった菌が見えるだろうか予測して見るのも良いかもしれないと思っています。

良ければご意見お聞かせ下さい。

参考)

CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Jan. 1988, p. 60-81

最新医学「新しい診断と治療のABC.17:肺炎、改訂第2版」

4 マクロファージ

1 ヒメネス染色

1_2 グラム染色



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2012年11月19日 (月)

感染制御専門薬剤師と認定臨床微生物検査技師のコラボ

先日、感染制御認定薬剤師のセミナーで講演機会を頂きました。

当日は寒いのにも関わらず100名以上を超える熱い薬剤師さんが来られたようです。

当日は下記の内容をギュウギュウ詰めで行いましたので少し消化不良の方もいらっしゃったかもしれません。どうもすいません。

・微生物検査から得られる統計の使い方

・グラム染色は初期治療薬の選択に大事

・ケーススタディ:妊婦のESBL産生大腸菌の腎盂腎炎、ペニシリンとクリンダマイシンアレルギー患者に発生した溶連菌感染など教科書の応用問題

私が思うところは下記にあります。

米国では『Antimicrobial Stewardship』というものがあり、原因微生物の結果から抗菌薬の選択、投与経路、投与量、投与期間など最適化したものを感染症医と感染症薬剤師と一緒に考えていくというものがあります。

http://cid.oxfordjournals.org/content/44/2/159.extract

これをすることで薬剤耐性菌の発生を抑制したり、薬剤費を削減したり、入院期間を短縮させたりしているようです。そもそも日本とは医療制度も医療従事者の数が大きく異なる国で行われているものですのでそのまま導入という訳でも無いのですが、ある程度は導入できるものはあると思っています。

色々な場所で薬剤師さんと話す機会がありますが、対象疾患(患者)と抗菌薬の結びつきが強いように感じます。微生物と抗菌薬を結びつける場合もありますが、微生物に苦手意識を持つ方が多いのでしょうか?微生物の種類が変わると難しいと言われる方も出てきます。ある抗菌薬が適応菌種から外れている場合には、それが効果が有るのか無いのか分からなくなる人も居るようです。

一方、微生物検査技師はどうでしょう?

微生物と抗菌薬を結びつけるのは非常に得意です。というのは薬剤感受性試験を日常的に行っているため、対象菌種に効果がある抗菌薬は把握できているからです。しかし、適切な投与量や投与経路については知らない人が多く、相互作用については元々教育として無いので知る機会がありません。

例えば『大腸菌にVCMは効くでしょうか?』と聞くとどういう答えが返ってくるでしょうか。

 ・薬剤師の場合は適応菌種に入っていないので考える機会が無いため答えられない。

 ・微生物検査技師の場合は感受性測定する機会が無いので答えられない。

そもそも作用機序を考えると理解できることですが、大腸菌は細胞壁を持つためVCMの作用があるように見えますが、構造上外膜を有し分子量大きなVCMは外膜を通過することができずVCMは自然耐性となります。私たちは日常的にこの現象をグラム染色を通じて確認することができています(外膜が紅色に染まりグラム陰性菌となる)。

なので、未だ微生物に触れ合う機会の多い微生物検査技師の方が知っている人は多いかも知れません。

餅は餅屋...ということわざがあるように、それぞれ得意分野はあるのでそこを相互的に使うことは必要ではないかと思います。

やはり、感染症に対しては患者と抗菌薬と微生物の3つを総合的に判断することは適切な抗菌薬を選択するためにどれも欠けてはならないものです。感染症の多くは1つの原因菌で発症することが多いですが、その原因菌を絞らずに抗菌薬を選択するとどうしても広域抗菌薬が使われがちになり、それに伴って耐性菌が増えてしまします。原因菌を絞るためには培養検査は必須でありますが、培養検査は時間がかかります。今そこで抗菌薬を選択したい場合はどうするのが良いでしょうか?

やっぱりグラム染色が大事ということになるのではないでしょうか?

伺った場所では微生物検査の外注化が進んでいるので中々グラム染色はハードルが高いものとお聞きしましたが、世話人の中には自前でグラム染色をしている方も居られました。

日本では薬剤師と臨床検査技師がお互いに力を合わせて感染症診療に貢献することは本当に大切だと思います。

下記は当日のスライドの一部です。

Mrsa

抗菌薬の届出制許可制が加算の要件に入りましたが、当院ではその前後でカルバペネムと抗MRSA薬の投与量は変化がありません。また非常に低い量で動いているために耐性菌の発生もCDADの発生も非常に少ないため非常に感染症診療がしやすいという結果になっています。みなさんの施設はどうですか?

 

 

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2012年11月14日 (水)

中部圏微生物研修会に参加して 大盤振る舞いじゃ

グラム染色のことを題材にして話する機会を多く頂いています。

中部圏は特に好意にして頂いている地域で毎回ネタ探しが大変です。

私は講演の内容は同じでも同じスライドを使って同じストーリーを話することはありませんので、毎回別の内容になります。要点は同じなんですがね。

さて、グラム染色はどうしてしているのでしょうか?

グラム染色は誰でもすぐにできること、原因菌の推定が可能なことが多いことなど多くのメリットがあると思います。そして試薬が安いし、設備投資がそれほど必要がありません。そういう背景もあり普及はしてきたのかもしれません。

PCRや質量分析装置も出てきていますが、まだまだ市中病院のような十分な予算が確保出来ない病院にとっては夢の話です。ますます正確な迅速同定ができるようになってきましたが、複数菌への対応は未だ未だ課題は多いと思います。グラム染色は複数菌いるかも分かりますのでその辺は少しはアドバンスがあるのかと思います。

また、菌以外の要素、抗菌薬の感受性予測なども可能な場合があり、読めば読むほど味が出る検査だと思います。

今回は現場へどう伝えると上手くいくのか?この像を見た時にどう感じてどう報告するのが大事なのか?ということを話しました。当然、グラム染色をこう見るとこんなことが分かるなども含めてです。

話せないことが多くありしたのでダイジェスト版ではありますがスライド添付します。

http://firestorage.jp/download/b23189260db6dc28eb674e68d21142987240772b

小さな勉強会などを含めて有益な情報交換用に活用下さい。

なお、なお内容に関しては個人の責任の範囲で活用し、転載などはご遠慮ください。

次は臨床検査医学会でここまで分かるグラム染色の話をします。ここまで分かるの?とはてなマークを沢山出したいと思います。

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2012年11月 7日 (水)

報告どうしていますか

グラム染色結果の報告って皆さんどうしていますか?

電子カルテやオーダー上のコメント欄に凝縮してコメントするのも大変です。

下記の内容はいくつか講演に伺った時に聞くものです。

簡単には下記のようなスメアが見えた場合には何てコメントするのでしょう。材料は関節液です。

Mssa600×1000

考えられるコメントとして

・推定菌種はブドウ球菌(またはStaphylococcus)です。

・グラム陽性球菌で集塊(または菌塊)状の菌です。

最低でもグラム陽性球菌に加えてブドウ球菌を臭わすような内容でコメントしたいものです。ブドウ球菌と考えることで診察内容も変わることが期待されるからです。

関節液でレンサ状球菌で見えた場合は多くがStreptococcusで腸球菌を除きペニシリンが感受性のものが多く、耐性菌という考えが殆ど無くなるためかと思います。

ではこのスメアはどうでしょうか。血液培養陽性の培養液です。

Mssa×1000

ここまで塊が多いとブドウ球菌と言っても良いかと思います。

そうすると質問されるのが

『黄色ブドウ球菌ですか』とか、『MRSAですか』です。

J Clin Pathol 2004;57:199–201.を参考にすると、当院はバクテアラートですので、血液培養液のグラム染色で比較的小さめの球菌が集塊状に確認され、その集塊が巨大しであれば黄色ブドウ球菌の可能性が高くなります。

つまりこの染色像を見ると”ブドウ球菌で黄色ブドウ球菌を疑う所見です”ということを報告できるまで進みます。ただしMRSAかどうかは使用している抗菌薬の種類や期間、効果、既往など総合的に考える必要がありますが最近は市中感染型MRSA(CA-MRSA)などもありますのでローカルデータを上手く用いるのも難しい菌種です。

外れたらどうしましょう?という内容もありますが、自信の無い方は言いきってしまわずに

・巨大集塊状のグラム陽性球菌ですが、現時点では黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌かの区別は困難です。

・黄色ブドウ球菌を疑いますが、稀に同様の形態を示すCNSも検出されますので培養結果を参照下さい。

など、病原性の高い黄色ブドウ球菌を臭わせながら迅速に報告すると良いと思います。

同様にグラム陰性桿菌ではどうでしょうか。

尿で大型の桿菌が見えた場合は腸内細菌を疑う所見というのもあります。概ね尿路感染の原因菌は大腸菌を中心とした腸内細菌が多く検出されます。しかし、報告者もそうですが、報告対象となる医師がどのくらい理解出来ているか?その尺度が施設の規模や教育の内容、医師の経験年数などによりバラツキもあります。そのため、大腸菌を含めた腸内細菌群を疑う所見など少し工夫も必要です。

ブドウ糖非発酵菌なんかは細菌の分類学上の専門用語ですので、緑膿菌またはその類縁菌の可能性がありますと少し幅を持たせることも必要なスキルかもしれません。

少し独りよがりかもしれませんが、検査室では今何を疑って同定を進めているのかなど透明感のある検査結果を心がけることが良いんじゃないかと思っています。

普段よりコミュニケーションを図るのは本当に重要なんだと改めて感じます。


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2012年11月 2日 (金)

下敷き第二弾 キター(^o^)/(^o^)/

下敷き第二弾が完成いたしました。詳しくはシスメックスさんにお問い合わせ下さい。

https://sysmex-success.com/cs/

今回は3枚ものですが、うち1枚目の完成です。

 

前回のが非常に好評だったために作成しました。前回のはもう無いとか・・と噂されています。

前回の http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/2223-25d5.html

グラム染色をき基盤にした感染症診療支援をすすめていければと思います。

 

皆さんで染めて染めて染めまくりましょう。

2表;染色の手順(バーミー法)

1_3裏;各種検査材料の典型的な菌とその染色像

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