結核とアデノシンデアミナーゼ(ADA)測定
結核の診断検査にADAが使われることがあります。当院は結核病院ですので汎用機に乗せて院内で測定をしています。
結核感染の時にADAはどうして上昇するのでしょうか?
ADAは生体内でアデノシンを分解してイノシンとアンモニアを生成し、体内の代謝のために重要な役割をもっています。2つのアイソザイムを持ち、結核に関連しているのはT細胞由来のADA2になります。
どういう時に使うのかですが、結核の感染が疑われる場合または除外したい場合に血清または体腔液のADAを測定して結核を発症しているかどうかの補助診断を行います。結核を疑う場合に抗原(結核菌)が検出されれば良いのでしょうが、必ずしもそうではありません。
例えば
【結核性胸膜炎】
胸水中のADAを検討した場合
・ADA>50 U/Lとした場合、感度91%、特異度89%、PPV82%、診断精度89%。更にADA2を測定した場合はそれぞれ93%、92%、86%、92%という結果になっています(Respirology Volume 5, Issue 4, pages 321–324, December 2000)。
・ADA>47U/Lとした場合、感度100%、特異度87.5%という驚異的な数字もあります(Thorax 1995;50:600-603)。
塗抹培養の結果は6.7%と非常に低値という報告(Thorax 1995;50:600-603)があり、塗抹で確認ができたのは60例中1例だけであった(培養は17例)(結核、第3版,205-221)。インドのHIV患者の事例ではと塗抹陽性が13.3%とこれまた低値であるという報告があります。この報告ではPCRも同時に実施していますが陽性率は32%であったようです(Tuberculosis Research and Treatment Volume 2012, Article ID 932862, 4 pages)
しかし、悪性リンパ腫、中皮腫、膿胸でもADAは上がるために必ずしも特異的なマーカーではないようです。
胸膜炎の場合は胸膜の生検が感度が上がるので可能であれば生検をするのが良いようです。
【結核性髄膜炎】
髄液中のADAを検討した場合
・ADA>20 U/Lとした場合、感度100%、特異度99%(Scand J Infect Dis 1991, 23:97-100.)
・ADA>10 U/Lとした場合、感度50%、特異度98.4%(Clinical Infectious Diseases 1995;20:525-30)
・ADA>6.5 U/Lとした場合、感度83.3%、特異度85.3%(Rev Med Chill 1996, 124:319-326.)
・ADA>11.49 U/Lとした場合は感度90.9%、特異度88.9%(Cerebrospinal Fluid Research 2007, 4:10)
塗抹培養の結果は、47例中5例(10.6%)で陽性(うち塗抹陽性は2例)、117例中27例(23%)で陽性だったので胸膜炎時の胸水の結果と対して変わりませんね。PCRの結果(臨床診断込)もありますが、感度82.4%、特異度75.9%、PPV85.7%、NPV71%という結果になっていました。この報告の場合は培養結果もあり感度68.6%、特異度79.3%、PPV85.3%、NPV79.3%とPCRの感度が上回っている結果になっています。正直、今まで塗抹陽性でもPCR陰性のことが多くびっくりです。これは通常のキット化したPCRをしていないために感度が高くなった(抽出が巧くいった)可能性もあり参考程度が良いかと思います。
また、クリプトコッカス性髄膜炎の時にも上昇を認めることがあるようです。無菌性髄膜炎時には結核菌のみならず墨汁染色はセット化するのが良いかも知れません。
結核性腹膜炎の腹水や結核性心膜炎の心嚢水でもADA測定は有用なようです。ADAは以外に使えそうな検査診断ですが、材料中の血球成分にも反応しますので溶血が酷い場合とか、患者の状態や材料の採取条件にも左右されるので注意が必要です。
下記は結核性髄膜炎で見つけた結核菌です。結核性髄膜炎は良く見かけるのですが、塗抹陽性となったのはまだ1例しか見ていない貴重な症例です。
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