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2012年8月27日 (月)

無理して鑑別しなくても良いと思う

グラム染色は簡便に推定菌を判断する有用性の高い感染症の診断検査です。

言い過ぎかもしれませんが、グラム染色をバカにすると痛い目に合う事もあるかも知れません。

肺炎の原因菌を調べる場合は喀痰のグラム染色をすると思います。これは、胸部画像所見では肺炎を起こしている部位や範囲、原因などは判断できるのですが、流石に原因菌までは判断できないことがが多いからです。例えば大葉性肺炎の原因菌としては肺炎球菌が代表的ですが、肺炎桿菌、レジオネラ菌も起こしますので培養してみないと分かりません。緑膿菌も場合によっては大葉性肺炎を起こすという報告(http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=357721#Abstract)もあり、染色しないで肺炎球菌だろうからABPC単剤で行こうというのは明らかな過ちであり、染色をしておけばこのような間違いは発生しません。 

それにしても市中肺炎の原因菌の中でもっともマークしないといけないのは後にも先にも『肺炎球菌』でしょう。

喀痰グラム染色で下記のような像が確認されると、肺炎球菌だろうという判断は直ぐに付くのでグラム染色って有用だなと思う訳です。しかし、この染色像の背景には良質な喀痰(扁平上皮が少なく、白血球が多い)が採取されたから肺炎球菌であろうという裏付けができる訳で、良質な喀痰は下気道の病態をしっかり反映できているからです。

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肺炎を疑っても100人が100人良質な喀痰が採取できるか?という問題点があります。高齢者であったり、女性、小児など喀痰が容易に喀出できない患者は多くいます。

Gecklerの言う良質な喀痰とは若い成人市中肺炎で扁平上皮が無く、組織球が無い、多核好中球が多く見える喀痰です。高齢者の場合は誤嚥性肺炎を合併した肺炎球菌性肺炎は当たり前のようにあるので、扁平上皮が多量に混在する喀痰などに多く遭遇します。http://jcm.asm.org/content/6/4/396.abstract

扁平上皮が多い喀痰の中から肺炎球菌を見つけようと思うにも上手くいかないことが多いと思います。それは口腔レンサ球菌の存在です。口腔レンサ球菌は肺炎球菌と形状が非常に類似していて、長いレンサ状になっていない限りグラム染色像からは判断できません。また、肺炎球菌は明確に莢膜が確認されなければ確認し難いと思います。

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そういう時は無理をしないで肺炎球菌かの鑑別に時間を割かなくても良いと思います。

上記のような扁平上皮に付着しているような双球菌(またはレンサ状球菌)は、上気道に定着している口腔レンサ球菌のことが多く、これを口腔レンサ球菌か肺炎球菌かどうか鑑別が出来ませんので、別の診断検査(血液培養や尿中抗原)を参考にするのが良いでしょう。

この現象はグラム染色初級者(白帯)に多く見受けれる現象ですので、ある程度慣れた方に教えて貰うと良いと思います。こういう時は一度細菌検査室に訪れてみるのも良いかも知れません。

私はどこまで鑑別するかですが下記のようなグラム染色像も読んでしまいます。これは誤嚥性肺炎と肺炎球菌性肺炎を合併した患者の喀痰グラム染色です。そのままコメント報告しております。

来月の近畿学会ではこのような限界ギリギリの話で、ちょっとしたコツについて話をしたいと思っています。お時間のある方は聞きに来て下さい。

https://v2.apollon.nta.co.jp/52kinki/index.html

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2012年8月24日 (金)

今後の予定

たまにお知らせです。下記に言って話する機会を頂きました。

お時間のある方は聞きに来て下さい。そしてコメント下さい。

 

12回研修医のための小児救急・新生児勉強会(大阪市)

日時;平成24915日(土) 1500

会場;大阪国際交流センター会議室

「小児科医のためのグラム染色 グラム染色でどこまでわかるか!」

http://www.ih-osaka.or.jp/

 

9回感染症Case Conference(三重県津市)

日時:平成24927日(木)1900

場所:三重大学病院 12F 三医会ホール

「グラム染色を使った抗菌薬適正使用(仮題)」

http://www.hosp.mie-u.ac.jp/

 

52回日臨技関西支部 医学検査学会(和歌山県白浜町)

日時;平成2492930日(土日)

場所;ホテルコガノイ他

「グラム染色がもたらす感染症診療への貢献」 教育カンファレンスは30

https://v2.apollon.nta.co.jp/52kinki/index.html

 

松江地区感染対策研究会(島根県松江市)

日時;平成241012日(金)

場所;松江市立病院 2階講堂

「グラム染色の臨床活用法」

http://www.matsue-cityhospital.jp/

 

島根県臨床検査技師会 感染制御部門研修会(島根県松江市)

日時;平成241013日(土)13001600

場所;松江テルサ

「グラム染色の読み方、使い方」

http://shimane-amt.sakura.ne.jp/index.html

http://www.sanbg.com/terrsa/

 

静岡愛知抗菌薬療法研究会(静岡県浜松市)

日時;平成241026日(金)18:45

場所;浜松アクトタワー 

「微生物検査を使った感染症対策」

http://www.act-tower.co.jp/access/access/index.html

 

4回札幌市病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師セミナー(札幌市)

日時;平成241116日(金)1900

場所;札幌市教育文化会館

「微生物検査室からみる 菌と薬の接点」

http://www.kyobun.org/

 

19回日臨技中部圏支部微生物検査研究班宿泊研修会(石川県加賀市)

日時;平成241110-11日(土日)

場所;加賀片山津温泉 佳水郷

「タイトル未定」

http://www.ishikawa-amt.or.jp/general/k_group/microbiology/microbiology.htm

 

59回日本臨床検査医学会学術集会(京都市)

日時;平成241129日~121

場所;京都国際会館

顕微鏡検査でどこまで感染症の診断が可能か グラム染色の限界に挑む」 担当は12/1(予定)

http://www2.convention.co.jp/59jslm/info/index.html

 

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2012年8月13日 (月)

グラム染色所見を説く

グラム染色は簡単(適当)な検査と思っておられる方も多いでしょうが、読めば読むほど味が出て奥が深い検査では無いでしょうか。深みにハマって迷走してしまうこともあるくらいです。

最近ではグラム染色で確認される菌を形態的な特徴から菌種(または属)を推定して報告する機会がどの施設でも増えてきたのではと勝手に思っています。

菌種を推定することは、少し前(今でも?)までは『何て危険なことをしているの』とか言われていたこともありましたが、最近では、治療方針を決定する上で早く原因菌の情報を知りたいというさま要望が増えてきたことも確かです。

例えばこのスライドです。グラム染色の情報としては下記の通りです。

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1)材料は血液培養

2)好気と嫌気ボトルが両方陽性、ガス無し、溶血なし、陽性時間12時間

3)グラム陽性球菌。連鎖状。比較的短い連鎖。菌1つ1つはやや丸い(楕円じゃない)。 

この情報を基に推定起炎菌を考えてみますが、属レベルではEnterococcus、種レベルではE. faecium が疑わしい所見と言えます。本当は種レベルまでビシっと言いたいですが外れたどうしようと思いつつも、属レベルまで推定し報告するところが多いと思います。

属レベルまで言わなきゃだめなのか?Enterococcusと分かるだけでも色々なアクションを起こすことが出来ますし、色々な情報をお話することが可能です。最低限伝える情報としては、Enterococcusはセフェムが自然耐性(つまり使えない)だということが分かってくるわけです。

Enterococcusが菌血症を起こすような主な感染症は腹膜炎、胆管炎や尿路感染症で、多くが横隔膜下の臓器が対象になり、不明熱として考えられていた場合はフォーカス探しのきっかけになります。

Enterococcusは色々な菌種がありますが臨床的に問題となる菌種は検出率の高いE. faecalisとE. faeciumの2つ。第一選択薬はE. faecalisはペニシリン、E. faeciumはバンコマイシンがとなります。ペニシリンとバンコマイシンの感受性以外では、尿路感染症の場合はキノロンが選択される機会も多く、キノロンの感受性も知りたいことです。

グラム染色の報告時に添えてあげたい情報は菌の分離率や感受性率でしょう。時間があれば感受性結果に関してはS(感受性)という情報の中身も教える方が良いと思います。

こういう報告はその一つです。ポイントは多少絞っていますあります。

・グラム染色所見から菌種を推定する場合、グラム陽性球菌で短い連鎖を含めたレンサ状球菌で、腸球菌が最も疑わしく、私的にはE. faecium>E. faecalisである

・検出状況から、外来ではE. faecalisが66%、E. faeciumが50%となり、入院となるとE. faeciumの検出割合が増える。

・尿路感染症で使うキノロンの感受性(例;LVFX)はE. faecalisとE. faeciumの2菌種合わせて83%。菌別にはE. facalisなら95%、E. faeciumなら17%E.となり、E. faeciumはキノロンの感受性率が圧倒的に低い

・キノロンの感受性判定基準は尿からの分離菌で当てはまり、他の臓器感染症の場合はそれが当てはまるかどうかは不明。むしろ臨床効果が下がるという情報もある

・感染性心内膜炎を起こしている(疑い)の場合はアミノグリコシド高度耐性(HLAR)試験を考慮する

などなど。

もっとマニアの情報であれば、

Enterococcusと形態上の類縁菌でLeuconostocやPediococcusはバンコマイシン自然耐性菌でバンコマイシンは無効となる(ペニシリンは耐性のことが多い)。

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の分離頻度が多い病院、部署ではVREがあるかもしれない。

でも、マニアックな内容ばかり羅列して、ポイントが絞れずするのは良くないことで、むしろ混乱させないことも一つのコツです。

とりあえず、この最終結果がいつ頃結果が出るのでまた報告しますと報告までの目途を伝えるのが大事だと思います。

上記の菌は結果的にE. faeciumでした。尿路感染症以外のフォーカスがあり、初期治療でキノロンの投与は止めてバンコマイシンが選択されました。

グラム染色って本当に面白いですね。

 

 

 

 

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