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2012年7月11日 (水)

グラム染色の感度 (久々更新です)

グラム染色は万能かどうかという問いを考えてみる。皆さんはどう思いますか?

感度の問題が良く出てきますが、検査の感度には疾患別検出感度と最小検出感度の2つがあります。

疾患別検出感度について、例えば小児の急性肺炎球菌性中耳炎でグラム染色の感度は86.2%という報告(J Microbiol Immunol Infect. 2000 Sep;33(3):169-75.)があります。これは、中耳炎と診断された患者でどのくらい肺炎球菌が確認されたのか?という報告です。小児であることや耳漏であることいから既に豊富な菌量が確保される材料であるのでこの感度になります。しかし、同じ肺炎球菌でも髄膜炎であれば92%(CID2004; 39:1267–84)、喀痰であれば62%(JAMA,1978,239,2671-2673)と疾患により感度に違いが出てきます。

もう一つ、グラム染色には最小検出感度というものがありますが皆さんはご存知でしょうか。だいたい10の4乗から5乗/mlの間と言われていますが、私自身は実験的に確認したことはありません。習慣的に培養の集落数と比較した場合はおおよそ間違いは無いと思いますが、この菌数以下であればグラム染色で確認されにくくなります。

つまり、小児の肺炎球菌性急性中耳炎時の耳漏中に出てくる肺炎球菌を確認するために行うグラム染色は既に検査前確率が高く非常に有用性の高い検査であることが分かります。これがグラム染色の醍醐味として皆さんは洗脳されることになります。

同じ中耳炎でも慢性中耳炎の場合は疾患別感度が下がることが報告されています。17%・・・。先ほどの86.2%に比べると非常に低くなります。理由は色々とあるでしょうが、主なものは抗菌薬の治療が開始されているため菌がいない、菌はいるが菌量は少ない状態で感染が持続しているなどがあります。そういう場合は肺炎球菌のように多くの菌量が確保できない他の原因菌を考えたり、培養検査をしたり、余裕があれば遺伝子検査をしてみたりして原因菌を検索しなければなりません。

抗菌薬の影響はグラム染色に大きな影響を及ぼし、肺炎球菌性肺炎の場合は抗菌薬が24時間以上投与された場合では66%も下がったと報告(CID2004; 39:165–9)があります。

また、材料の採取条件も感度に大きく影響します。耳漏の場合はpureな浸出液が採取できるため肺炎球菌の確認もしやすくなりますが、喀痰の場合は上気道に常在している連鎖球菌との鑑別も必要ですし、そもそも原因病巣から的確に検体採取が望めない状況が出てきます。

最終的に、グラム染色の有用価値を高めるためには、検査材料は良質なものを採取し、可能な限り抗菌薬投与前に行い、正確な染色技術を持ち、しっかり鏡検する。抗菌薬入れたいなという不安感もありますが、グラム染色の結果は迅速に出ることが臨床的有用性は高くなります。

今までの学校教育や卒後教育ではグラム染色の見方は習っても、感度については学ぶ機会がありませんでした。グラム染色を見る時は、感度のことを念頭に置いて観察することも大事だと感じています。

グラム染色では何が分かるんですか?ということを問いもあるでしょうが、疑問の前に染色して確認することは感染症の診断治療において礎となる行動だといつも感じています。

とりあえず染めてみる(見る、診る、観る)。そんな医療は日本に根付かせないといけないですね。

週末は第10回感染症の診断と治療セミナーでその辺の話をする機会を頂きました。参加者の皆様宜しくお願いします。http://kansenshokoen.blogspot.jp/2012/05/2012715-1610.html

写真は耳漏からの肺炎球菌です。

Photo×1000

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コメント

いつも拝見しております。
抗菌薬投与前に検体を採取していただくというのはよく耳にします。その“抗菌薬投与”というのは経口の抗菌薬に関しても同じく大きな影響を受けるものなのでしょうか?
小児の患者で発熱などの症状があり、近くの診療所を受診し、フロモックスなどの経口の抗菌薬を処方されるも症状が改善しないため当院を再受診し、ドクターが髄膜炎を疑いリコールが採取される、といった症例に時折遭遇します。この場合、少なからず塗抹検査、培養検査に影響があると考えて検査をしていくべきなのでしょうか?

投稿: 素人検査技師 | 2012年7月17日 (火) 00時08分

素人検査技師さま

経口せあろうと注射であろうと影響はあります。
経口ならセフェムで1日300mgが最大投与量ですが、注射なら3-6gになります。ー3gでも投与量は10倍もありますのでその方が効果は大きいです。300mgは少ないですが菌には影響がありますし、重症の場合は治癒さえ出来ない状況も出てきます。
どちらにしても投与前に検体の採取をして原因菌を掴むことは最低限行うことになります

投稿: 師範手前 | 2012年7月19日 (木) 00時05分

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