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2012年7月27日 (金)

第13回神戸グラム染色カンファレンス終わり

神戸グラム染色カンファレンスが終わりました。

本日は平日にも関わらず84名も参加して頂いたようで盛況でした。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/13-08e0.html

ケース1:『65歳、女性。ATL患者の慢性下痢症』

イソスポーラ症でした。ATL治療中のケモラジを繰り返しており、PPIも服用しているとのことでした。また、肺炎で1か月前には入院歴もある患者背景です。

この場合は、感染症以外でも炎症性腸炎、薬剤性や放射線性の腸炎、腹腔内膿瘍の刺激によるものも鑑別疾患として考えていかなければなりません。感染症の場合では蠕虫症と原虫症、偽膜性腸炎が考えられます。

原虫症の場合は、ジアルジア症、イソスポーラ症、サイクロスポーラ症がありますが、サイクロスポーラ症の場合はヒト-ヒト感染は無く、海外渡航歴のある患者が多いのでジアルジア症やイソスポーラ症、クリプトスポリジウム症を考えていくことになるでしょう。

イソスポーラ症はIsospora belliによる感染症で海外渡航歴が無くても発症する原虫症です。免疫不全者の慢性下痢症では鑑別診断として挙がってくる疾患で、感染症法の届出疾患には該当しませんが、AIDS指標疾患には入っています。生標本で確認ができて、抗酸性を持っているのでキニオン染色で赤くなります。白血球よりやや大きいのでクリプトスポリジウム症との鑑別がしやすいと思います。自家発光をしUV照射すると青白くなるのも一つの鑑別点です。STの内服により軽快するが再燃例もあり少し注意が必要なようです。

ケース2:『キャッスルマン病患者に発生した蜂窩織炎の1例』

クリプトコッカスによる蜂窩織炎でした。前医からの紹介で来院されていましたが、CTRXやVCMにも反応が悪く、さらに血液培養から酵母様真菌が出たという前医からの連絡を受けて、自院培養分でグラム染色を見て、墨汁染色で推定。培養とPCRで血清型で確定をしています。

キャッスルマン病のため免疫抑制剤を長期投与されているため、蜂窩織炎を考えた場合、良くある黄色ぶどう球菌や溶蓮菌以外にも、緑膿菌や真菌、

墨汁染色はグラム染色で酵母様真菌が確認され、菌体周囲に紅く莢膜を疑う所見が確認された場合に墨汁染色で確認した方が良いでしょうということが言われていました。また、血清型の確認はCryptococcus neoformans var. neformansがvar. gatiiかの鑑別に重要で、特にgatiiは輸入真菌症として知られているため、海外渡航歴を聞いたり、渡航歴が無い場合は渡航歴のある健常者とのコンタクトを聞き出すために有用な情報となるようです。

また、β-Dグルカンやクリプトコッカス抗原の結果を使い、トリコスポロン症との鑑別も可能な場合があるということでした。

2例とも面白い症例で、皆さん勉強になったと思います。

最後にO路先生より、『鑑別疾患に感染症を列挙する場合は、分類をしっかりして、検査方法について絞らないと上手く診断が出来ない』というコメントも頂きました。まさにその通りだと思います。

次回は11/15(木)です。また近くなればご紹介します。

写真は熱弁をするH先生です。

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2012年7月24日 (火)

第13回 神戸グラム染色カンファレンス

7/26は神戸グラム染色カンファレンスです。

早いものでもう13回目になりました。益々盛況になるこの会ですが出来れば近畿全域を対象に行いたいものです。予定はしていますが未だ検討段階です。

当日の内容です。

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日時;平成24年7月26日(木) 19:00~

場所;ANAクラウンプラザホテル神戸 9F ローズマリー

http://www.anacrowneplaza-kobe.jp/

参加費:500円

情報提供:18:50-19:00 感染症治療に関する最近の話題 大日本住友製薬

症例検討会:19:00-21:00

その1)『65歳、女性。ATL患者の慢性下痢症』 

 

 住友病院 林 三千雄、中井 依砂子

 

その2)『キャッスルマン病患者に発症した蜂窩織炎の1例』 

 

 神戸市立中央市民病院 亀井 博紀、竹川 啓史

前回と同様、テーブルディスカッションの後、総合討論にさせて頂きます。

お時間のある方はご参加ください。

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私は当日司会をしますので宜しくお願いします。

なお、次回は11/15を予定しています。

また、別件ですが7/29(日)は臨床微生物学会の感染症学セミナーです。

参加される方宜しくお願いします。

http://www.jscm.org/m-info/87.html

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2012年7月13日 (金)

今年もやります グラム染色から学ぶ感染症診断・治療研究会(GSSG)

グラム染色から学ぶ感染症診断・治療研究会(GSSG)の第6回例会のご案内

グラム染色から学ぶ感染症診断・治療研究会(GSSG)の第6回例会を下記日程で開催いたします。今回のテーマは「日常よく遭遇する感染症Part5」です。これまでの例会と同様にグラム染色の基礎知識の確認、顕微鏡を使っての実習、症例検討をグループワーク(即席ICT)でおこないます。今回も前回と同様、午前のみの参加、午後のみの参加、午前午後通しての参加いずれかを選べるようにいたしました。初心者でも理解しやすいように基礎的な内容を数多く盛り込んでいますのでグラム染色に興味のある方であれば職種・経験年数を問いませんが、看護師の方は、ICN、ICTメンバー、リンクナースの方が望ましいと思われます。是非ご参加ください。これまでに参加された方も大歓迎です。

日時:平成24年8月19日(日) 9:00-16:30(受付開始は8:30...


場所:大阪市立大学医学部 午前:5F微生物実習室 午後:6F中講義室
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/

対象:医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師

  募集要項:申し込み先 西神戸医療センター 山本剛(gssgidあっとyahoo.co.jp)までメール申し込み。あっとを@に変更下さい。

・先着順で申し込み受け付けします。定員は午前の部60名、午後の部120名としますが、午後の部は午前・午後の通しの方も含まれた人数になります。
・申し込み時に①氏名②職種③施設名④所属名⑤メールアドレス⑥電話番号を記入の上、上記のアドレスへ送信下さい。集団で申し込みされる場合は⑤および⑥は1人分で結構です。
・申し込みを確認したら一度返信いたします。確認メールが届かない場合は再度ご連絡下さい。

参加費:午前のみ、または午後のみは2000円、午前・午後の通しは3000円。

― プログラム ―                                                         

8:30-             

午前の部 受付開始(5Fエレベータホール)

午前のみの参加者と午前と午後通し参加者の受付をします

9:00-12:00

午前の部 グラム染色の基礎知識(適切な検体採取法と保存、実習「基本的な染色手順とその確認」、顕微鏡使用による、実際の標本の判定、Q&A)

12:00-13:10 

お昼休み

12:00-      

午後の部 受付開始(6F 中講義室前)、午後のみの参加者の受付をします

13:20-16:30(終了予定) 

ケーススタディ グラム染色から考える症例検討を予定しています

主催 グラム染色から学ぶ感染症診断・治療研究会

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2012年7月11日 (水)

グラム染色の感度 (久々更新です)

グラム染色は万能かどうかという問いを考えてみる。皆さんはどう思いますか?

感度の問題が良く出てきますが、検査の感度には疾患別検出感度と最小検出感度の2つがあります。

疾患別検出感度について、例えば小児の急性肺炎球菌性中耳炎でグラム染色の感度は86.2%という報告(J Microbiol Immunol Infect. 2000 Sep;33(3):169-75.)があります。これは、中耳炎と診断された患者でどのくらい肺炎球菌が確認されたのか?という報告です。小児であることや耳漏であることいから既に豊富な菌量が確保される材料であるのでこの感度になります。しかし、同じ肺炎球菌でも髄膜炎であれば92%(CID2004; 39:1267–84)、喀痰であれば62%(JAMA,1978,239,2671-2673)と疾患により感度に違いが出てきます。

もう一つ、グラム染色には最小検出感度というものがありますが皆さんはご存知でしょうか。だいたい10の4乗から5乗/mlの間と言われていますが、私自身は実験的に確認したことはありません。習慣的に培養の集落数と比較した場合はおおよそ間違いは無いと思いますが、この菌数以下であればグラム染色で確認されにくくなります。

つまり、小児の肺炎球菌性急性中耳炎時の耳漏中に出てくる肺炎球菌を確認するために行うグラム染色は既に検査前確率が高く非常に有用性の高い検査であることが分かります。これがグラム染色の醍醐味として皆さんは洗脳されることになります。

同じ中耳炎でも慢性中耳炎の場合は疾患別感度が下がることが報告されています。17%・・・。先ほどの86.2%に比べると非常に低くなります。理由は色々とあるでしょうが、主なものは抗菌薬の治療が開始されているため菌がいない、菌はいるが菌量は少ない状態で感染が持続しているなどがあります。そういう場合は肺炎球菌のように多くの菌量が確保できない他の原因菌を考えたり、培養検査をしたり、余裕があれば遺伝子検査をしてみたりして原因菌を検索しなければなりません。

抗菌薬の影響はグラム染色に大きな影響を及ぼし、肺炎球菌性肺炎の場合は抗菌薬が24時間以上投与された場合では66%も下がったと報告(CID2004; 39:165–9)があります。

また、材料の採取条件も感度に大きく影響します。耳漏の場合はpureな浸出液が採取できるため肺炎球菌の確認もしやすくなりますが、喀痰の場合は上気道に常在している連鎖球菌との鑑別も必要ですし、そもそも原因病巣から的確に検体採取が望めない状況が出てきます。

最終的に、グラム染色の有用価値を高めるためには、検査材料は良質なものを採取し、可能な限り抗菌薬投与前に行い、正確な染色技術を持ち、しっかり鏡検する。抗菌薬入れたいなという不安感もありますが、グラム染色の結果は迅速に出ることが臨床的有用性は高くなります。

今までの学校教育や卒後教育ではグラム染色の見方は習っても、感度については学ぶ機会がありませんでした。グラム染色を見る時は、感度のことを念頭に置いて観察することも大事だと感じています。

グラム染色では何が分かるんですか?ということを問いもあるでしょうが、疑問の前に染色して確認することは感染症の診断治療において礎となる行動だといつも感じています。

とりあえず染めてみる(見る、診る、観る)。そんな医療は日本に根付かせないといけないですね。

週末は第10回感染症の診断と治療セミナーでその辺の話をする機会を頂きました。参加者の皆様宜しくお願いします。http://kansenshokoen.blogspot.jp/2012/05/2012715-1610.html

写真は耳漏からの肺炎球菌です。

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