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2012年5月21日 (月)

子宮瘤膿腫のグラム染色

婦人科の感染症で子宮瘤膿腫というものがあります。

 ちょっとしたことで、過去5年間の症例を調べました。14例あり、13例が65歳以上、入院加療は3例しか無く、殆どが経膣ドレナージ+抗菌薬により軽快しておりました。うちは発熱⇒血液培養となりますが、血液培養は5例実施されていて、陽性は1例だけありました。気付いた点は血液培養陽性率が低いということに加えて、実施率が低い疾患であるということです。

2_2×1000(血液培養:プロテウスでした)

さらに、ちょっと調べてみました。

 この疾患は、婦人科疾患で入院する患者の0.5%以下で発生する比較的珍しい疾患ではあるが、65歳以上の女性においては13.6%の発生率という、高齢者に多い疾患のようです。

 疾患の要因として、加齢による老人性子宮頸管萎縮に伴うものや、子宮頸癌や大腸癌の発生により子宮頸部が閉塞するもので、子宮内分泌物の排泄が悪くなり細菌が増殖、その結果として子宮腔に膿や壊死物質の貯留を認めるようです。上行性に細菌感染を起こす事例が多いようです。消化器に比べては稀ですが、穿孔による急性腹膜炎の報告事例は見られるようです。

 主な症状は、不正性器出血と膿性帯下の出現、下腹部痛があるようですが、無症状のまま見つかることもあるようです。子宮穿孔例でも不正性器出血は13.6%、膿性帯下は0.5%しか見つからず、発熱においては18.5%しか無い。別の報告事例でも、腹痛は80%に見られたが、発熱は45%だったとのこと。
ただ単に、子宮腔内の液貯留だけでは腹部症状はあっても特別に重症感は無く、CT所見にて腹腔内へのガス発生や膿瘍貯留が無ければ、経膣子宮洗浄やドレナージに加えて、抗菌薬投与により入院が必要で無いケースが多いようです。

 分離菌は経膣上行性感染という理由もあってか、腸内細菌や嫌気性菌が多く分離され56%の検出率があったという報告があります。嫌気性菌の中でもBacteroides fragilisの検出率が高いようです。当院の結果でも同じようになりました。

 まとめると、高齢者に多い重症例の少ない感染症で多くが膿瘍ドレナージと抗菌薬投与で治療される。発熱事例は半数以下で、そのためにw血液培養は臨床的な意義は低く実施されないケースが多い。検出菌は嫌気性菌の分離率が多いが、腸内細菌も多く分離される。

 なので、グラム染色はどう見るのか?ですが、膿瘍単一菌か複数菌か確認し報告することが大切で、分かる人は嫌気性菌が存在しているか?腸内細菌の種類、グラム陽性球菌の分類まで行う事が、初期治療の抗菌薬選択に必要です。培養で最終決定されるでしょうが、複数菌の場合は寒天培地では全て検出されない事もあり、しかも嫌気性菌の報告には時間が掛かってしまうため、グラム染色所見をしっかり読んで報告するという事は非常に有用性があることになります。ただし、結核菌や淋菌も検出される例の報告もあり、菌が見えない場合は抗酸菌染色を追加実施する事は必要な場合もあるでしょう。また、膿瘍なので膣分泌物で多核白血球が15/HPF以上見える場合は子宮内の上行感染を疑うという報告もあります。多核白血球の個数も考えるのも指標の一つになるかもしれませんね。

 下記は子宮瘤膿腫のグラム染色です。染色性が悪く大小不同なグラム陽性球菌と菌の形状が歪な長いグラム陰性桿菌は嫌気性菌の可能性が高いという報告します。

 日産婦関東連会報 42:405―408,2005
日臨外会誌 71(2),533―536,2010
感染症学雑誌.81:302~304, 2007
Can Med Assoc J. 1981.
J Obstet Gynaecol Res. 2010 Jun;36(3):661-6.

砂川先生も同じような事を書かれています。勉強になります。

http://blog.livedoor.jp/garjyusaiga/archives/52182577.html

2×1000(子宮内膿瘍)

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コメント

金曜日、三重に来てくださって、ありがとうございました。
今日は もちろん! googleからのアクセスです ( ・∀・ )ゞ

セミナー、初心者向けかな・・・と思いきや、目からウロコな内容も多数で、、、グラム染色って深いですね。たくさん学ばせていただきました。

次回も楽しみにしてます!!


投稿: シロモチくん | 2012年6月10日 (日) 18時12分

シロモチくん様
コメントありがとうございます。初心者的な内容にしたので臨床情報はあまり入れませんでした。
私たちは菌結果の迅速な報告が必要なのでそれを中心にしました。目から鱗が落ちると良く言われます。おそらく、皆さんが心に留めている内容を文字にしてしまうあたりでしょうか。心の声を文字にする、患者の声を聞き取ることが必要だといつも思っています。今後ともよろしくお願いします。

投稿: 師範手前 | 2012年6月11日 (月) 20時00分

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