« 横筋に逸れますが・・春は出会いと別れの繰り返し | トップページ | 抗酸菌を見つけたら感受性まで必要か? 結核菌編 »

2012年4月11日 (水)

血液培養陽性の報告はどうするのが良いか? 後編 医師に伝えたいこと

先日の続きです。

『血液培養陽性の報告はどうするのが良いか? 前編 医師に聞きたいこと』を考えてみましたが、では、医師に血液培養の結果を伝える時、何を気にすれば良いのでしょうか?

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-ad50.html

これもまた、統一化されていないので施設ごと対応していると思います。

報告時に聞くのであれば情報は頂けるので、菌種の同定が未だであってもある程度、医師に情報はあげるのがgive and takeでしょう。

最終的に欲しいと思われるのは、菌名と感受性結果でしょう。

感受性結果に関しては、既に抗菌薬が数日投与されている条件下であれば、その抗菌薬に対して耐性菌の可能性が否定出来ないので、その情報を伝えると良いでしょう。また、感受性菌が出てくる場合でも。、感染巣の根本的な治療が実施出来ていないので、感染巣で工場のように菌が産生されるのを止めれない状態なのかも知れません。

グラム染色では耐性菌かどうかコメントするのはこの2点程度が限界かも知れません。

あとは、検出菌の情報をどう伝えるのかです。

既に、微生物検査室では、今、検出された菌がそういったものが推定されて、今後どういう工程を経て同を行っていくという筋道が立っていることが多いと思います。その情報を整理して、医師に伝えることで推定菌報告の質を高めていくことが可能だと思います。

下記のことについて伝えると良いかもしれません。

1)陽性となったボトルの本数

2セット採取による、検出感度を高めるための血液量の確保が出来ているのか。採血量は30-40mlが良いだろうという研究論文はあります。

皮膚常在菌混入かどうかの可能性は示唆出来るデータなのか。2セット採取したけど、1本しか陽性じゃ無いよ、しかもブドウ球菌という場合は皮膚消毒が適切に出来たものかどうかの疑義を行う価値がある。

2)陽性となったボトルの種類

・通性嫌気性菌(殆どの細菌はこれ、S. aureusや腸内細菌群):好気用・嫌気用の両方が陽性になりやすい。

・偏性嫌気性菌(Clostridium,Fusobacterium,Bacteroidesなど):嫌気用だけ陽性になりやすい。

・偏性好気性菌(緑膿菌をはじめ、ブドウ糖非発酵菌群の多く):好気用だけが陽性になりやすい。

・酵母様真菌(主にカンジダ):好気用だけが陽性になりやすい。

3)陽性ボトルの陽性時間

多くは、通性嫌気性菌感染で、培養開始後12-24時間で陽性になる。48時間以降陽性になるのは嫌気性菌やカンジダが多い。6時間以内で陽性になる場合もあるが、既に敗血症性ショックなど起こしている場合があり、末梢血のダイレクトスメアでも確認出来ることがある。

また、カテーテル関連血流感染を疑う場合は、末梢とカテーテル採血とで陽性時間の差を見ることも診断の一助になっています。(まあ、カテ感染なので抜けよという野暮な疑問は抜きにして。)

4)ボトルの外観

・ガス産生:腸内細菌群、嫌気性菌についてはガスが産生していることがあり、培養液採取する時に気泡の確認がキーポイント。

・溶血:ボトル内の血液が溶血しており、やや透明がかって見える。溶連菌、肺炎球菌、Clostridium,Bacillusで多くみかける。

・濁り:ボトル内の血液が濁っている。ブドウ球菌で見えることが多い。

5)グラム染色の結果は後述します。

6)検出された菌が単一なのか複数なのか

当然、単一菌かどうかはポイントとなる。例えば、複数菌による臓器感染症でも血液培養では単一菌のことがある。菌のビルレンスに左右されるものかもしれない、既に検出された菌が血液内に優勢な発育をしているかもしれない。当然、複数菌見つかることで、抗菌薬の選択も変わることがある。グラム陰性桿菌でも2菌種見つかることもあります。

7)陽性ボトル採取時と同時期に採取された培養結果、またはグラム染色結果

当然、血液培養陽性となる患者さんなので、どこかにフォーカスがあることが大半です。既に、症状も出ていることが多く、同時に提出された検査材料を調べて、同時に報告してあげることが早く対処出来ることが多いです。例えば尿路感染症は代表的な疾患です。

8)陽性となった患者さんと同じ属性(診療科、病棟、提出医)などの情報

これは、特に今回の事例とは関係なさそうで、あるのですが、アウトブレイクを示唆する情報管理が必要になる場合もあります。例えば、同じ病棟で、同時期に血液培養からグラム陽性桿菌が・・・という事象は少し辺な訳で。微生物検査室は院内感染事例を含めて各科、各医師を横断的に把握出来るので、こういった情報は非常に役に立ちます。

で、グラム染色道場だけにグラム染色ですが

・グラム陽性か陰性か、桿菌か球菌かの分類をする

・連鎖状なのか、ブドウ状なのか、集塊があるのか、芽胞のような特徴があるのか など

ブドウ球菌の場合、集塊状とブドウ状という表現は、受け取り手にとって大きく変わります。普段、グラム染色を見ない医師は、集塊状のグラム陽性球菌=ブドウ球菌という展開が出来ないことも想定されるため、ブドウ状のグラム陽性球菌と報告することで、『あ、ブドウ球菌の感染がある』という連想が可能でしょう。

グラム陽性桿菌などは血液培養から出てくる機会が少ない菌種なので、『グラム陽性桿菌が出ました』といっても、どういった菌があるのか、思考力低下を起こすことも想定されます。芽胞があるという報告を加えるだけでClostridiumやBacillusも想定出来、分岐があるという報告を加えるだけでPropionibacteriumやActinomyces、短い桿菌と加えるだけでListeriaが連想出来るようになるでしょう。

上記の1)から4)の情報と併せてグラム染色を見ていくと菌が推定しやすいことが多いです。なので、どうしてこの菌を推定したのか、簡単にコメントしてあげると良いかもしれません。また、○○っぽいっている言葉を発することがありますが、っぽいでは無く、○○も可能性として否定出来ませんという少しアカデミックな言い方に変えるだけで、報告の質と受け取り側の考えも変わりますので、事前に報告する際の決めごとは作っておくのが良いかもしれません。

ちょっとした工夫で、医師に伝えておきた情報は上手に伝わることがあります。

写真はブドウ球菌と連鎖球菌です。グラム陽性球菌とだけ報告すると、感染臓器や使用抗菌薬の絞り込みが遅くなります。

Gas6001 連鎖球菌(S. pyogenes)

Photo ブドウ球菌(S.epidermidis)

|

« 横筋に逸れますが・・春は出会いと別れの繰り返し | トップページ | 抗酸菌を見つけたら感受性まで必要か? 結核菌編 »

その他」カテゴリの記事

コメント

いつもブログを拝見し、勉強させていただいている者です。
今回のブログ内容とはあまり関係のないことなのですが、日常で疑問に思っていることがあるので、質問させていただきたくコメントさせていただきました。

2セット分の血培ボトルを機械にセットし、翌日4本とも陽性となることはよくあると思います。4本のボトルからスライドを作成し、グラム染色してみると、4枚のスライドで腸内細菌と思われるグラム陰性の桿菌を確認、それぞれのボトルから培養すると、4本のボトルから同じようなコロニーが生えてきます。
その後、同定・感受性の検査は4本のボトルから培養されたコロニーをそれぞれ検査(×4)するべきなのでしょうか?それとも、同一菌種であると確信がある場合は、1つのボトルから生えてきたコロニーのみを同定・感受性検査をすれば良いのか、師範手前様のご施設ではどのような運用をされているのでしょうか?

投稿: 素人検査技師 | 2012年4月17日 (火) 23時44分

素人検査技師さま

コメントありがとうございます。
これは日常的に悩むだろう事例ですね。
2セット採取すると、ブドウ球菌や腸内細菌のような発育性の良い菌が原因による感染症の多くが、2セット全て陽性になりますよね。通性嫌気性菌なので好気、嫌気ともに発育旺盛で分離菌が一つですが全て一緒ということでチャンチャンというものです。
単一菌と判断される場合は1本のみで良いと思いますが、その前提には単純性尿路感染症のような単一菌による感染症である場合には可能だと思います。つまり複数菌の関与が症状から否定される場合は使えるかもしれません。
一般的にボトルの種類で発育性の違いが出る事があります。上記に記載していますが、菌量が既に多い場合は嫌気ボトルでも緑膿菌が陽性になったりしますし、好気ボトルに嫌気性菌が発育したりします。発育し難いというだけで、発育しない訳ではありません。
なので4本陽性になった場合はすべてが単一菌であるかどうが集落レベルでも良いのでサブカルチャーした培地で観察したものを検討する必要があります。おおよそ2本とも同時に陽性になることが多いので同時時間に陽性シグナルが鳴った場合は同一菌の可能性があると考えてサブカルチャーし、その場合は好気ボトルで好気培養、嫌気ボトルで嫌気培養と合理化して培養継続すれば良いと思います。同じく、さらに1セット分は同一菌の可能性が高いのなら、菌名報告のみとして、感受性は未実施で報告するのも一つの案です。うちは結局同定感受性を同時にするので悩む事が少ないですが、従来法でするような菌は主治医に連絡して省略する場合もあります。全ての決定権は主治医なので省略する場合は了解を取られるのがあとあとのトラブルも少なく良いとおもいます。

投稿: 師範手前 | 2012年4月23日 (月) 18時23分

師範手前様

貴重なご意見ありがとうございました。
明日からの業務にいかしていきたいと思います。

投稿: 素人検査技師 | 2012年4月23日 (月) 23時28分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 横筋に逸れますが・・春は出会いと別れの繰り返し | トップページ | 抗酸菌を見つけたら感受性まで必要か? 結核菌編 »