粟粒結核と結核菌検査について
年末年始の忙しい時期ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は丁度システム更新と重なりまして、立ち会いに細菌当番、当直と休みが一つも無い正月を迎えております。
さて、先日のグラム染色カンファレンスでは粟粒結核の症例もありました。時間の都合もあり検査についてはゆっくり時間が取れなかったため残念に思われてる方々も多かったと思います。ちょっと追加でコメントをさせて頂くことにします。
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1)粟粒結核についての簡単な説明
粟粒結核とは『結核菌が血行性に播種し、少なくとも2臓器以上に粟粒状の結核病巣がびまん性に散布されているもの』であり、初感染後に血行性播種による早期蔓延型と初感染後ある程度時間が経過してから再燃し血行性に播種する晩期蔓延型に区別される。現在の粟粒結核は後者の晩期蔓延型が多く発生しています。
昔から問題になっていたのは小児の初発感染後の粟粒結核でしたが、BCGを乳児期に接種することで、発症予防になっている可能性が示唆され、発生数は毎年1人程度と低い水準に推移してきました。しかし、成人例では2009年には150症例の報告があり、少し増えてきている傾向にあるようです。
発生要因は宿主の免疫低下であり、血液疾患、悪性腫瘍、免疫抑制剤の服用、ステロイドの使用、糖尿病など様々で、最近では医原性によるものが増えています。
2)粟粒結核の喀痰検査
さて、結核の診断で結核菌の分離は欠かせないものだと思います。分離する方法はいくつかあって、塗抹陽性、培養陽性やPCR陽性など一般的な検査であると思う。
一般的に肺結核が多くみられるため、喀痰検査は必須項目になると思います。
ところで、普通の肺結核では、喀痰からの塗抹陽性率は50-60%、培養陽性率は90%以上にもなります。PCRの陽性率は90%以上。ここで、考えておくことは、塗抹陽性とは結核菌かどうか確定しないこと、PCR陽性は生菌とは限らないこととPCRより培養検査の方が陽性率は高いことです。なので、喀痰塗抹が陰性でも結核、PCRが陰性でも結核ってのは普通にあることです。
粟粒結核時の喀痰塗抹陽性率は文献によって様々ですが14-36%という報告があります。一方、喀痰培養陽性率は43-76%という報告があり、通常の肺結核より塗抹培養検査で検出されないことがあることは知っておくべきことであります。当然、PCRも同様のことが言えるでしょう。
培養検査が最も検出感度が高いですが、知っての通り培養陽性になるまでの期間は数週間かかりますので早期診断には有用な検査であるとは言えません。
3)喀痰以外の検査材料
やはり、肺病変が多く見られるために喀痰で菌が証明されない場合は、気管支鏡検査は考えなければなりません。気管支洗浄液や肺生検による組織が検査材料になります。
また、胃液や便も喀痰の次に検査材料として採取してみると良い。
また、結核菌陽性率が高い生検材料は肝生検で66.7-100%という報がある。骨髄穿刺も33-86%という報告があるが、肝生検や肺生検に比べては検出率は低いようです。リンパ節生検と髄液穿刺も検査材料になります。
他には尿からの結核菌の証明が出来るため、生検する前に採取し検査することは意外に知られていないことなので、覚えておいた方が良いでしょう。
そもそも基本的な事ですが、結核の診断には1日1回で3日連続の喀痰検査は当たり前のことで、言うまでも無いと思います。
結核は本当にシリアスな場面が多くある感染症の一つですが、ほとんどの施設が外部委託に依存していると思います。外部委託されている施設は、どうしてそういう結果に導かれるのか?結核検査指針に従った検査方法なのか?培養判定はどのくらいの感覚で確認されているのか?など確認することも必要でしょうね。
下記、は漸く見えた結核菌です。元々菌量が少ないため蛍光染色は是非とも実施しておきたい検査ですよね。
参考文献)
・Tuberculosis Annual Report 2008 Series 3. Childhood TB Tuberculosis Surveillance Center, RIT, JATA
・Tuberculosis Annual Report 2009 Series 1. Summary of TB Notification Statistics in 2009 Tuberculosis Surveillance Center, RIT, JATA
・当院における粟粒結核の臨床的検討,感染症誌78:929~934,2004
・MEDICINE,Late generalized tuberculosis:A Clinical Pathology analysis and comparison of 100 cases in the preantibiotic and antibiotic eras,59,5,352-366.
・粟粒結核,結核,第4版,254-261.
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