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2011年12月16日 (金)

第11回神戸グラム染色カンファレンスが終わりました

昨日は第11回神戸グラム染色カンファレンスでした。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/11-33b5.html

だいたい90名近くの参加者に来て頂けまして大変盛況で終了しました。ありがとうございます。

提示した症例3つはこのようなものでした(自分のメモ書きから転載)。

その1)82歳男性高齢者肺炎の1例

高齢者の誤嚥性肺炎症例で、結局培養でStreptococcus agalactiae(GBS)が出て原因菌と思われた事例でした。

ポイントは下記の通りでした

①グラム染色で連鎖球菌が多く見え、しかも二双性にも見える。診察に当たった研修医は肺炎球菌と思い込み、そのままABPC/SBTを選択。しかし、培養では肺炎球菌では無くGBSが生えてきた。類似している菌の鑑別はどうしようか

⇒染色所見の解説要点(師範手前自らさせて貰いました。)

やっぱり、肺炎球菌は市中肺炎時には外すことの出来ない原因菌で、知りたいのは誰しもあると思います。

A)肺炎球菌は二双性球菌+莢膜でそう思う習慣があるため、この形をしている菌を探す習慣が抜けない。なので、口腔内常在菌の中でも肺炎球菌に類似した菌を見つけると肺炎球菌と思い込んでしまう。

B)肺炎時に出てくる連鎖球菌として、GBS、ミレリ菌、嫌気性グラム陽性球菌を見せてどう鑑別するか解説した。

GBSはやや丸みがあり、連鎖が4-8連鎖のものが多い

嫌気性グラム陽性球菌(肺化膿症やVAPなどの時)は染まりが悪い、形が歪になり見える。

C)莢膜を探すなら、ここを見ろ!!的なことをコメント

通常、背景が白い場所では見えない事が多く、フィブリンが多く析出している場所で莢膜を探すのがコツ。貪食は認めない(莢膜は貪食回避するので)事がある。

D)教科書では見れない変わった肺炎球菌の一覧

莢膜が紅い、連鎖が長い、自己融解や貪食で菌の染まりが悪いなど

E)誤嚥像と思うPolymicrobial patternでもよく見りゃ肺炎球菌が判るスライド解

判らない場合は判らないで仕方ない。無理に肺炎球菌と決めつけない

F)悪い材料しか採取出来ないとか、誤嚥が酷くて、ハッキリとグラム染色像で肺炎球菌性肺炎の診断は尿中抗原の力を借りるしか無い。

集塊を作っている、扁平上皮に付着している菌は上気道に存在する菌がコンタミした可能性があるので参考にしない方がベター。

G)尿中抗原はperfectでは無い。感度はグラム染色の方が良い。偽陽性の問題もあり、患者情報を良く聞く。

偽陽性:ワクチン接種後5日間、小児で鼻咽頭大量保菌の場合、最近感染していた場合(抗原消失は数週間続くことがある)。

偽陰性:喀痰培養陽性でも尿中抗原は陰性、血液培養陽性でも尿中抗原陰性は存在する。発症後2日以内だと陰性化する場合がある。

莢膜の種類での陽性率は変わらない。

②初期抗菌薬の選択は妥当なのか?

A医療センターのO先生よりコメント

肺炎球菌にしても、GBSにしてもペニシリナーゼは出さないので、スルバクタム(SBT)は不要であろう。ペニシリン単剤で良いと考える。

K病院のO先生よりコメント

どうしても嫌気性菌を狙うのであればバクテロイデスのようなβ-ラクタマーゼを多量に出す菌が出ると意識する症例にはSBTを考える。

名言ですね。

その2)88歳高齢者肺炎の1例

粟粒結核でした。HRCT上で類似の画像所見が得られる疾患との鑑別と粟粒結核の診断について解説がありました。

その3)37歳MCTD患者の左下肢蜂窩織炎の1例

皮膚ノカルジア症でした。ノカルジアをグラム染色で見た時のポイント、皮膚ノカルジア症の治療と診断のポイントと疫学について解説がありました。

次回は2012年3月8日を予定しております。また近くに案内をさせて貰います。お時間のある方のご参加宜しくお願いします。また症例は公募形式を取ることにしましたので我こそはという方は発表宜しくお願いします。

写真は昨日のスライドです。

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コメント

毎度ブログで勉強させて頂いています。ありがとうございます!・・・・・いきなりの質問で申し訳ありませんが・・・・
私、関西のとある病院で細菌検査室を担当している技師です。

ぜひ教えていただきたい事が数点ありまして、ご教授願えればありがたいと思います。

今回の症例のような肺炎を疑う喀痰のグラム染色と抗生剤治療について何ですが、

明らかに肺炎球菌像のGPCがグラム染色で認める場合、誤嚥の可能性が極端に低い患者の場合はABPCやPCGの高容量投与でいいのかなと思い、誤嚥を起こしやすい高齢者の場合や嫌気性菌を疑う貪食像が見えている場合はSBTやCLDMが必要だというのはわかります。
しかし高齢者の肺炎球菌性肺炎は個人的に誤嚥がかなりの確率でトリガーになっていると思うんですが、明らかに誤嚥という決めて(グラム染色や胸写など)がない場合の抗生剤治療はペニシリン系単剤なのか、それとも高齢者なので一応SBT/ABPCやCLDM併用にしたほうがいいのかどちらがベターなんでしょうか??

もう一点は、喀痰でGBSが検出された場合は、どのような背景をもった患者に対して治療が必要なんでしょうか??

この二点を教えていただければ嬉しいです。

どうかよろしくお願いします。

投稿: Ko太郎 | 2012年1月 3日 (火) 23時48分

Ko太郎様 コメントありがとうございます。
疑問に対して的を得た質問ですよね。会の中でも少し話が出ました。

若年者の一般細菌による肺炎は、特別な状況が無い限り肺炎球菌とインフルエンザ菌の肺炎が多く、ペニシリンの高用量が第一選択で大方治癒するということはご指摘の通りです。
高齢者肺炎の場合も誤嚥が関与しているのですが、肺炎球菌は多いと思います。誤嚥性肺炎であるから嫌気性菌をも考慮してCLDMを追加するのか?という事ですが、肺化膿症に対してペニシリンを使った場合とCLDMを使った場合とで差が殆ど無いと思います。なので、ペニシリンで治療すると決めた場合には、CLDMは加えなくても問題は無いかと思います。嫌気性菌が起因する肺炎はVAPでも約3割と言われています。当然、嫌気性菌については一部βラクタマーゼを産生する菌がありますが殆どが感受性菌なので初期治療には必要が無いのでは無いかと思います。少し心配であればβラクタマーゼ配合ペニシリンを選択されるでしょう。この場合もCLDMとは有意差が無いと思います。
しかし、CLDMはペニシリンが使えない場合に選択されるケースがあるので、必ず感受性には必要になります。
一方、GBSは高齢者になると抗体価が下がる事がわかっています。当院でも肺炎があります。なので65歳以上の誤嚥を含む肺炎を疑う場合は感受性を実施します。でも基本ペニシリン感受性菌になるので、肺炎球菌が混じってようと治療方針として大差はありません。
基本は患者が治るか治らないかですので、微生物検査も必要な情報を整理して報告してあげれば良いかと思います。
肺炎とは原因菌の誤嚥によるもので発生するのはご指摘の通りです。
コメントありがとうございます。

投稿: 師範手前 | 2012年1月 4日 (水) 01時35分

師範手前先生ありがとうございます!
大変勉強になります。

ということは肺炎球菌性肺炎は初期治療として明らかな誤嚥を疑わない限り、グラム染色や培養で肺炎球菌が検出された場合はABPCやPCG高容量投与で十分治療可能で、どうしてもβラクタマーゼ産生の嫌気性菌をプラスで疑う時はABPC/SBT1.5g×6h(8h)毎の投与で治療可能という風に考えてOKということですね! 
その辺りの見極め?(肺炎球菌のみの治療Or肺炎球菌+嫌気性菌)が非常に困っています・・・・・
あとCLDMを使用する場合は膿瘍への組織移行性を考えるときとペニシリンアレルギーだけなんでしょうか??

GBSは65歳以上で抗体価が下がるのは初めて知りました・・・・
自分では高齢で脳外科やICU等で長期入院している患者や誤嚥を起こしうる可能性のある患者、DMの患者などの場合に関しては一応検査していましたが、年齢も今後加味していきたいと思います。

当方、細菌検査を始めて1年半ほどでほとんど知識がないので、もっと勉強していきたいと思います。

投稿: Ko太郎 | 2012年1月 4日 (水) 02時02分

Ko太郎さま 再度コメントありがとうございます。少し追加コメントをさせて頂きます。

>肺炎球菌性肺炎は初期治療として明らかな誤嚥を疑わない限り、グラム染色や培養で肺炎球菌が検出された場合はABPCやPCG高容量投与で十分治療可能

についてですが、肺炎球菌であっても、誤嚥を伴う肺炎であっても、原因となる病原菌がペニシリンを無効とする要素ある場合には、ペニシリンが第一選択から外れます。例えば市中肺炎では肺炎桿菌やインフルエンザ菌のβラクタマーゼがそれに当たります。誤嚥に伴う肺炎においても嫌気性菌が若干関与している場合を想定しても、第一選択はペニシリンで大方カバー出来るのでは無いかという想定内の出来事が多いという事で、嫌気性菌だからSBTを追加しないといけないというのは、必ずしも正しい論議には至りません。嫌気性菌でもバクテロイデスを除くとほとんどがペニシリンに感受性を示すため、複数菌検出されるようなグラム染色像を見ても、ブロードにしないといけないという意味は必ずしも存在しないということに行きつきます。極論のように聞こえますが実際されている施設もあり、先日の研究会でも報告されていました。

CLDMについては確かにオクタノール係数が高いので膿瘍への移行も良いかと思いますし、イーグル効果という抗炎症作用も有しているためにペニシリンより効果があるかも知れません。ただし、肺炎球菌に関しての抗菌効果はほとんど期待出来ないため、ミレリ菌や嫌気性菌の肺化膿症などにはペニシリンに代用されて使用するケースもあります。当院でもそうです。前述してように肺化膿症を考えた場合(緑膿菌が関与しない)はペニシリンでもCLDMでも優位さが出てこない理由がここにあります。ペニシリンを使えないケースは臨床ではいくつも直面します。なので第二選択としては必要なのです。少し外れますが溶連菌感染症の場合は当たり前に必要ですし、アレルギー歴がある、相互禁忌の薬があるなどの場合もありますので、感受性をして医師が選択しやすいように準備しておく必要があります。

GBSについては当院でも成人の侵襲例について研究もしておりますが、HbA1cが8以上、65歳以上についてはリスクありと考えています。引用は下記になりますので少し紹介します。
GBSについは全て必要かどうか不明ですが、当院では高齢者の場合は釣菌するようにしております。
・International Journal of Infectious Diseases (2009) 13, 679—684
・JAMA. 2008;299(17):2056-2065
・Clinical Infectious Diseases 2005; 40:352–7

投稿: 師範手前 | 2012年1月 4日 (水) 20時10分

詳細な追加ありがとうございます!!
これからは上記を念頭にルーチン業務をしていきたいと思います。

グラム染色も時間外では自分が日当直の時は研修医の先生と行うことがあるんですが、3分ソコソコで染めて鏡顕するだけなのに(それが一番難しいです・・・)、そこから臨床の治療に広げられる事って凄い多いと思ってます。

これからも勉強させてもらいます!ありがとうございました。

投稿: Ko太郎 | 2012年1月 4日 (水) 20時36分

グラム染色の醍醐味は寸時に原因菌を想定し、原因臓器を特定する材料だという事です。頑張って下さい。

投稿: 師範手前 | 2012年1月 4日 (水) 22時58分

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