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2011年11月11日 (金)

11月6日は第44回中四国医学検査学会でグラム染色の話をしました

先週は徳島にお伺いして、呼吸器感染症のグラム染色像について話させて頂く機会がありました。

呼吸器感染症時のグラム染色ほど評価が難しいものは無いと個人的に感じています。

理由その1)血液培養などはそのままで、皮膚常在菌のコンタミネーションが無いと過程した場合には、そのまま原因菌となる。元々菌量を増えているという理由もありますが。

理由その2)膿なんかは見えた菌が原因菌になる。

理由その3)尿は見える菌=原因菌の可能性大となるため考えやすい。

色々あります。

要は、喀痰は口腔内常在菌の汚染が必ず存在するため、グラム染色所見で常在菌なのか、原因菌なのか判断することが必要になるからです。

果たして見えた菌が常在菌なのかどうか判断出来るものでしょうか?菌の色が変わり『あ、これ常在菌なんですよ!』って向こうから言ってくれると良いのでしょうが、青と紅の2色刷りなのでそういうことは通常難しいと考えることが出来ます。

一つ、貪職像=原因菌という解釈もあるかも知れませんが、血管外に遊走してきた好中球は非自己のものは全て食べてしまう習性がありますので、貪食像=原因菌という構図は成り立たないという考えもあります。しかし、好中球が多数見えている状況は血管外から遊走してきた好中球が多くなっている⇒炎症像として確認されることであり、全てが否定されるもので無く、原因菌の可能性が貪食像が無いより高まる訳である。パチンコをする人には分かると思いますが、恐らく赤色キャラによる予告程度(信頼度アップ)であり、ゼブラ柄もしくはヒョウ柄予告(激アツ)まで熱く無いと個人的に考えています。

具体的には、MRSAのキャリアの方が喀痰の増量を認め下記の染色像を認めた場合に即座に抗MRSA薬を投与するでしょうか?MRSA肺炎の発生は経験的に少ないと認識されている方々が殆どだと思います。JANISの値は30%超えという驚異的な数値になっておりますが、これは定義付けの違いによるものだと思います。定義の中には貪職像が入っています。

当院でもMRSA肺炎では無いか(他に理由が無い)考える症例に出くわしますが5%も満たない数値であります。うちがキレイなのか?という事では無く、肺炎の定義がJANISとは全く違うために発生数が異なる結果になっています。殆どが持ち込みによるものですが、MRSA貪食像があっても自然軽快する人もチラホラ見かけますので、なので当院ではMRSA肺炎の診断に関しては喀痰グラム染色で貪食があるかどうかは問わないようにしています。下記のグラム染色は結局抗MRSA薬の投与無く、貪食像はありますがキャリアと判断される症例でした。

しかし、うかうかしているとNecrotizing pneumoniaの症例にも出くわすことがあり、抗MRSA薬を投与に加えて、最終的にCA-MRSAなのか、HA-MRSAなのか、PVLはあるのか、TSST-1やETは産生しているのかという病原性の強弱について考察し以後の診療に役立てています。

大事な事ですが、喀痰グラム染色像は貪食像を見ることより、その喀痰がしっかりと採取され下気道感染を反映しているものかどうか確認する事が第一に必要と考えることは当たり前では無いでしょうか?

Mrsanecrotizingpneumonia×1000

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2011年11月 1日 (火)

週末は学会と研究会のハシゴでした

土日は近畿医学検査学会でした。土曜日は丁度奈良県感染症サーベイランス研究会で講演依頼があり、ハシゴしてしまいました。電車に一杯乗れて、新快速225系にも乗れて楽しい日々でした。

奈良県感染症サーベイランスでは当院で検出されたE. coliのESBL、S. agalactiaeの重症感染症、肺炎球菌の髄膜炎と菌血症についてMLST解析結果から展望出来る病原菌の拡がりと市中病院検査室の関わりについて話した。少し難しいかも知れないと思ったが後の特別講演であった京都薬科大学の510先生においても緑膿菌、セラチアについて同様の話が聞けて、自分のサーベイランスは妥当性があるものが理解出来た。病原性の高いクローンの制御が今後注目されることは見えてきています。

日曜日の学会シンポジウムで臨床医と検査室のとネゴシエーションの話がありました。それぞれの演者からは日常行っている内容の紹介があり、非常に興味深く拝聴しておりました。主に薬剤耐性菌が出ると予測された場合にどう臨床に伝えてアセスメントしていくのか?というものでした。

薬剤耐性菌なんてと言い方悪いのですが、発生頻度を考慮する上でそこまで臨床上気にしないといけないのか?と自分の意見とは食い違いがありました。そこで少し疑問に思ったことがあり質問をしてみました。

『内容は良いが、薬剤耐性菌に的を絞りすぎて、ビルレンス(病原因子)については言及しないのは何故か?』

果たして会場の参加者はこの言葉が理解出来たのだろうか?不安が過ぎった。

司会者、演者からも明確なコメントが返ってこなかったが、病原因子の測定は今の検査室では必要が無いというコメントを頂いた。腑に落ちない。

確かに薬剤耐性は病原性を高める一つの要因にはなるが、菌の同定=病原因子の可能性を示唆する訳で、予後不良因子の一つに挙げられている研究が多い中、本当に病原因子の測定は不要なのか?未だ疑問に残る。

メジャーな病原因子として毒素があるが、CD毒素、ベロ毒素など最近は簡易的に測定出来るものも出てきた。ではこれも不要なのか?という疑問である。恐らく答えはNOである。

また属レベルは一緒でも菌種レベルでは毒性が異なるもの、例えばS. pyogenesとS. agalactiaeである。S. pyogenesはストレプトリジンを有するが、S. agalactiaeは有さない。つまりS. agalactiaeは病原性が低いという判断になる。また、外毒素を抑えるために投与する場合があるCLDMの投与もS. pyogenesに比べて言及されるものは少なくなる。(CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS,July 2000, p. 470–511)

菌種が同一でも前述のことは当てはまる。MRSAにしてみても全てが重症化する訳では無く、PVL陽性の場合には予後が悪いことがある。そのためにMRSAの検出のみならずPVL産生の有無を検索することは必要になってくるに違いない。表皮剥離毒素(ET)やTSST-1は既に測定する系があり、重症疾患では測定しておくことは吝かで無いと思っている。(ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY, Oct. 2011, p. 4581–4588)

しかし、一般ラボでは予算計上、マンパワーの観点からは難しいため少し規模の大きな病院に依頼するか、研究所レベルにお願いするか、現状は厳しいままである。一般ラボで簡易的に測定出来るようになれば、もう少し日本国内の疫学が進むはずである。だって、検査室で測定しなければ、病院のどこでこの仕事をするのだろうか?と思うからである。

また、検出菌が判ると感染病巣の特定もし易くなり、検出した検査室としても会話が一層弾む訳で、菌=病原因子⇒感染病巣⇒予後因子という構図も出来上がる訳である。厳しい事を言うようであるが、菌同定をしっかりし、感受性を報告し、菌の毒性についても説明出来なければ抗菌薬の使用に関する診療支援をするのは非常に危険である。

精査出来るような施設が周囲には無く、いつも専門家の先生に依頼して疫学解析を進めているが、少しずつ院内に取り込んで周囲の医療機関にも対応してあげたいと思うこの頃です。諸外国のジャーナルを読んでいても、病原因子の事に言及されているものは多く、自分の考えが正しいとは言えないが、これからも病原因子には着目していきたい一つのテーマである。

写真は肺炎球菌です。白く抜けて見える莢膜も当然のことながら病原因子の一つです。菌名を伝えることで莢膜産生菌であることを臨床に伝えることは最低限の事に値すると思う。

Photo ×1000

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