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2011年6月23日 (木)

目的を持ってグラム染色は観ろ!

先週は高知に行きグラム染色の話をしました。

行きしな備品を忘れ取りに帰るハプニングが発生し若干遅れて高知入りしてしまい世話人の方々、参加者の方々には大変失礼なことをしてしまいました。通常は30人程度の講習会なのに、この日は80名を超えたそうです。ありがとうございます。

高知の皆さんには、未だ話していないことばかりで次の機会があれば続きをしたいと思いますのでご了承下さい。

さて、講演会の中で少し触れましたがグラム染色を観る時、ちゃんと目的を持って染色像を眺めていますか?

感染症は臓器別に起炎菌の種類が違うことは知られた事実であります。例えば、肺炎であれば肺炎球菌が多く、尿路感染症であれば大腸菌が多くなります。医師はこういう当たり前の事項を教わる機会が多いのですが、臨床検査技師はあまりありません。学生時分にそのような講義はまず無いわけで、菌を同定するにはどうするのか?など基礎検査医学をガッツリ教えて貰うことが多いため授業は面白く無いと感じます。

では、こういう事例はどうでしょうか?

整形外科の外来より、「膝関節の周囲が赤く腫れて、関節液も溜まっている。グラム染色で何か教えて欲しい。」と言われると皆さんはどう考えて答えましょうか?

私ならグラム陽性のぶどう状球菌をまず探しに行きます。それは、Staphylococcus aureusが関節炎で多く検出されるからです。殆どがこの菌で、他には溶連菌やらコアグラーゼ陰性ブドウ球菌やらで陽性球菌が多く検出されることが、日常業務の中で経験していることと科学的に分かっているからです。

また、通常検出されるだろうと思う陽性球菌で無い場合(例えばグラム陰性桿菌が出たなど)は、全くのイレギュラー症例になりますので、これもまた臨床へアピールしやすい内容です。(下記はセラチアの関節炎)

Photo_3 ×1000(増菌しています)

サンフォードガイドを見てみると、日本語版2011年のp54(2010年度版の場合はp52)に化膿性関節炎の項があります。しっかりとグラム染色をしましょうと記載があるくらい。

年齢により起炎菌の種類が異なります(髄膜炎の時と類似していますね)。成人の項で多いのはS. aureusであり、淋菌もあります。淋菌性関節炎は日本では症例として少ないので、多くの検査室ではS. aureusがターゲットとなってきます。要するにグラム陽性球菌でブドウ状のものを探せという事に繋がります。

この事はBSACのガイドライン(Rheumatology 2006;45:1039–1041)を見ても、CIDのジャーナルを見ても(Clinical Infectious Diseases 2008; 46:453–7)しっかりと記載されています。もう当たり前の事になるので、そういう眼でグラム染色は見ていかないといけません。同じくグラム染色は治療に欠かせないものであると記載があります。

グラム陽性球菌は陰性菌より目立つので(だからグラム陽性なんです)、しっかりと抑えておきたいポイントでは無いでしょうか?

また同時平行に結晶成分が無いか観ることも必要です。通風なら針状のもの、偽通風なら角状のものを調べるようにしましょう。菌が見えなくても結晶が見えるとそれで診断が可能なことも多いので、当院ではコメント欄に「結晶あり」とか、「結晶成分の貪食認めます」とか書くようにしています。結構、臨床で好評なので外来から良く電話がかかってきます。

写真は偽通風の患者に発生した黄色ブドウ球菌の関節炎です。同時に見えるので珍しいため掲載します。

Mrsa10002 ×1000

化膿性関節炎の場合は、抗菌薬投与前に必ず採取することがポイントです。また同時に血液培養を採取するのがポイントです。カルチャーボトルで関節液を採取することは望ましく無い(グラム染色が出来ない、結晶成分の確認が出来ない、そもそも関節液のデータが無いなど)ので注意です。

また、下記の写真は播種性淋菌感染症の関節炎です。珍しいと思うので掲載しておきます。特徴的な赤色丘疹があります。淋菌の場合は、髄膜炎菌性とは違い偏側性ということも記載がありました。勉強になります。

Photo

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コメント

いつもお世話になっております。

この記事を読んで(主旨とはズレてしまいますが)感染性関節炎て難しいよな~と一人考えてしまいました。
実際に感染性関節炎を疑った時に関節を刺せる非整形外科医がどのくらいいるのでしょう?
もちろん整形外科医が常時いるような大学病院ではいいんですが、外勤先とかで見つけた時困っちゃいますよね。

(もちろん刺せるようになるのがベストですが)いつもグラム染色を目的を持って見ていれば、こういった物理的に培養を取れない時に役に立ってくるのでしょうね!

投稿: コソ染め太郎 | 2011年6月25日 (土) 15時15分

コソ染め太郎さま
初エントリーありがとうございます。
そうでしょうね、刺せる外科医の居ない病院は困ると思いますが、そもそもそう言う病院でこのような主訴ある患者が来たときどうするのか?というアセスメントをしっかり出来てるのか?と言うのが大事なのかもと思ってます。直ぐに紹介する好意のある病院があるとか、うちでは最低血培採って紹介状書こうとか。関節炎だと思うからキノロン飲んで様子見ましょう、治らないなら紹介状書くねという紹介される側は困ってしまう例も多く見かけます。整形の開業医でも抜いたが培養していませんというのもありますし。少しその辺のしっかりとしたストラテジーが細菌検査室から提案出来るのでは無いかと思い協力しております。うちでは必ず菌の報告時に抗菌薬の種類、投与経路、量、回数、期間について聞かれるので副作用と耐性菌の話を追加してお話しています。ちなみに黄色ぶどう球菌にキノロンは耐性化を助長するのであまり推奨されないよというう文献も見かけます。こう言ったちょっとした情報って本当に必要何かな?って思うこともありますが、やっています

投稿: 師範手前 | 2011年6月26日 (日) 03時26分

師範手前さま
ひさしぶりコメントします。

>写真は偽通風の患者に発生した黄色ブドウ球菌の関節炎です。同時に見えるので珍しいため掲載します
化膿性関節炎で両方見られることは、めずらしいですね。

>カルチャーボトルで関節液を採取することは望ましく無い(グラム染色が出来ない、結晶成分の確認が出来ない、そもそも関節液のデータが無いなど)ので注意です
当院では、普通採取量が十分であれば、抗凝固剤入りスピッツで遠心沈渣でグラム染色を見ています。細菌性関節炎であっても菌認められないことの方が多いです。
やはり、結晶の有無はオーダーがなくても行って至急報告を行っています、当院では整形とリウマチ科もあり、結構鑑別診断には重宝されています。
菌が認められないとき、担当の先生には、カルチャーボトルでの培養まちですね、と一言伝えています。

投稿: 倉敷太郎 | 2011年6月26日 (日) 12時04分

疾患とは直接関係しませんが、黄色ブドウ球菌に関して、本日ぞくっとすることがあり、お話のなかに入らせていたさきます。
MRSA の感受性をしていたところ、選択培地からそれぞれ純培養していた菌株の感受性タイプが異なっていました。キノロン(CPFX)が感受性と耐性、CLDMが感受性と耐性、同じキノロンでもLVFXは両株とも感受性、・・・・・純培養した菌株で感受性が違った・・・。怖いことです。  

投稿: 七転八起 | 2011年6月27日 (月) 23時13分

七転八起さま
それは怖い。選択培地とはMRSA用のスクリーニング培地でしょうか?遺伝子欠落したのでしょうか?微妙ですよね。培養すると良くMSSAとMRSAが混在している例を見かけますよね。こういう結果判定を招かないように感受性する場合は数コロニー釣菌しないとこのような判定になってしまいますよね。臨床医は知らない怖い話です。

投稿: 師範手前 | 2011年6月28日 (火) 13時16分

いつも勉強させて頂いてます。1つのコロニーをサブカルチャしたものからRとSのものがでるのはヘテロ耐性というのでしょうか?

投稿: ムヒョッホ | 2011年6月28日 (火) 22時11分

ムヒョッホさま

七転八起様のコメントですがMICのような詳細がありませんので何とも言えませんよね。CLDM耐性か感受性かを議論する前にEMの感受性も見る必要もありますし、CPFXなどはMICが低い場合にはぶれる可能性もあると思います。うーん難しいですがβラクタムと違いこの薬は耐性か感受性がどちらかになるのでヘテロという表記は当てはまらないように思います。

投稿: 師範手前 | 2011年6月28日 (火) 22時25分

コメントありがとうございました。喀痰培養において、クロモアガ-MRSA培地とCFXからの分離培地からそれぞれ感受性にいれました。CFXでの菌の生え方がMRSAのように見えずに、念の為、検査をした結果です。内容を関節液のほうにもどさせていただきますが、
結晶成分の確認は常にしております。CPPD結晶と形から推定し、偏光顕微鏡で確認すると、尿酸結晶も認められるというケ-スがあり、患者様は痛風ではないそうで、判断に困ります。
たぶん、菌がいるかいないか、結晶があるかないかで臨床医への報告は良いのかと思いますが、いかがでしょうか?

投稿: 七転八起 | 2011年6月30日 (木) 14時04分

七転八起 様
CFXも100%で無いので難しいですよね。実はOXだけ耐性というものが転がっていると思いますが。

さて結晶ですが色々と話していますが、見えているのに見てない方も多いので掲載にしました。各種ガイドラインにもしっかり記載されていて臨床のパフォーマンスも高いと思うので。
結晶の形も微妙ですがが尿酸結晶かどうかは臨床判断でカバー出来るのでそう大して影響が無いようにも思います。
おっしゃる通り、大事なのは菌が居るか?結晶があるかということになります。

投稿: 師範手前 | 2011年6月30日 (木) 23時00分

 診療所の医師です。関節穿刺については、膝は出来るようになっていると臨床の幅が広がります。明らかにブヨブヨと貯まっていたら、それに目掛けて穿刺をすれば、たいていはあたります。整形外科医のいない、地方の高齢化の進んだ地域で診療する場合は特に、お役に立てる場面が増えそうです。肘や足趾拇指は隙間が狭くて膝のようには行きませんが、肘は貯まれば表在エコーで見ると刺せそうな部分がおよそわかるので、そこに目掛けて刺せば何とかなります。
 以前、こんなことがありました。咽喉の奥の痛みで飲み込むときに痛い、3日前に歯科治療をしたという高齢女性。微熱もあり、歯周炎からの感染を疑って、CVA-AMPC投与開始して2日後に来院。左肘が痛くて動かせない、と。見ると明らかに炎症を起していて、穿刺すると混濁した黄色の関節液。グラム染色を行って培養にも提出するも、すでに先行投与をしているので何も生えないし見えない。結晶を探すと方形状の結晶が白血球に貪食されている。結局、最終判断は偽痛風で、はじめの咽喉の奥の痛みも、どうもCrown-Dens syndromeだったのだろう、と。でも、先に抗菌薬を投与してしまった為に、細菌による化膿性関節炎かどうかは完全否定できずに悩んだ、といったことでした。
 本当に先行投与と言うのはよほど気をつけて診療しないと、ついつい○○を疑って、とか○○が考えられるから、と臨床では陥りがちで、気をつけなければならないなあ、と反省したことでした。
 関節液は、血液培養のボトルに入れて提出すればいい、と以前こちらに書かれていて、なるほど!と思ったのですが、グラム染色を自分で検体を取っていれば、血液培養ボトルがベストと思っていいですか?

 師範手前様、また高知での講演を心待ちにしております。是非とも第2弾、第3弾と、よろしくお願い申し上げます。

投稿: 三省 | 2011年7月 1日 (金) 18時12分

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