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2011年5月17日 (火)

検査していますか? HLAR(アミノグリコシド高度耐性)の感受性

HLAR(アミノグリコシド高度耐性)腸球菌の検査

サンフォードガイドを眺めていると色々な感染症に対する治療指針が書かれています。詳細を見ていて個人的に気に入っているのは感染性心内膜炎と咬傷の項です。咬傷は咬んだ動物の種類により分かれているので面白いと感じるだけです。感染性心内膜炎は簡易的なガイドラインにしては結構細部に至るまでコメントが記載されている点が気に入っています。

感染性心内膜炎の項はα連鎖球菌、次いで腸球菌の順で記載があります。双方について見ていると記載内容に共通しているのがアミノグリコシドの併用である。CLSIの判定基準では、元々連鎖球菌と腸球菌にはアミノグリコシドの判定基準はありません。では、何故ガイドライン上にアミノグリコシドを併用しろと記載されているかです。一般的な考えはシナジー効果を期待する目的で使用した方が効果的だということになります。α連鎖球菌の場合はPCGMIC0.12μg/ml以下であるか、0.5μg/ml以上であるかで治療方針が変わってきます。

腸球菌に関してはどうか?

腸球菌で焦点になるのはα連鎖球菌と同じくペニシリンが軸になるのかならないのかでしょう。ご存知の通り、E. faecalisの場合はペニシリンの親和性が良く第一選択薬として使用される機会が多いのですが、E. faeciumの場合はペニシリンの親和性が悪くVCMが第一選択として用いられることが多い傾向にあります。また、セフェムの場合はPBPの親和性が悪く治療に的確に作用するものかどうかは疑問視されているため使用機会は非常に少ない(ほぼ使わない)のが現状です。腸球菌の項に記載があるのがアミノグリコシド高度耐性という文字。高度耐性って何だろうという人も居ると思います。

CLSIの判定基準を参照するとGeneral Commentsの2に『腸球菌はセファロスポリン、アミノグリコシド(高度耐性株かどうかは除く)、CLDMST合剤は体外試験で効果が期待出来るような結果が出ても、実際投与すると効果が無いので感受性として返さないように』と記載されています。続けて3には、『ABPCPCGVCMとの併用効果判定をするためにGMSMの高度耐性試験を行いなさい。』と記載があります。

高度耐性試験はどのようにして行うのか?普通のGMSMの感受性試験で判定してはダメなのか?という疑問が出てきます。前述したように腸球菌に対するアミノグリコシドの感受性試験判定基準は無いので判定自体出来ませんのでこの試験自体は無効だと考えることが出来ます。高度耐性試験ですが、ディスク拡散法を例に取ります。

GMSMは通常のディスクでは無く、高度耐性用のディスクを用意します。BDのディスクであると通常はGM10という10μg/ml含有のディスクですが、高度耐性用はGM120という120μg/ml含有のディスクになります。GM120のディスクはミューラーヒントン培地(MHA)を使用して、通常の感受性の方法を使い、好気条件の35±2℃で16-18時間培養しディスクの径が6mm以下であれば耐性と判断します。この場合、GM120とはGMMIC120μg/mlと言っているのでは無いので注意して解釈して下さい。GM120のディスクはGMMIC512μg/mlBPを指し、GM120のディスクで耐性であった場合GM512μg/mlが耐性と判定されGMの併用効果は低いと判断されます。この場合はSMの使用を考慮し、高度耐性を検査する必要性が出てきますが、多くがE. faeciumで観察されるということです。SMの高度耐性はSMMIC1024μg/mlとなりGM高度耐性とは少し異なります。通常、分離される腸球菌のうち2-4割ほどの分離率である高度耐性株ですが、感染性心内膜炎を考慮するような病態での時は実施した方が臨床に即した形での報告となります。また、一部ではβ-ラクタマーゼ産生菌の報告もあり、ペニシリンを使用する場合はβ-ラクタマーゼの有無を検討を考慮すべきでしょう。

米国の感染性心内膜炎のガイドラインを見て見ると、シナジー効果でPBPへの親和性が上がることが記載されています。どうやら、使用中にペニシリンやVCM耐性化が進み、生体弁の場合は弁膜内への移行も考慮し、PBPへの親和性を上げるためにアミノグリコシドの併用は必須だとか。なので、アミノグリコシド高度耐性が無ければアミノグリコ併用が標準になるようです。治療期間は生体弁で標準4週間、人工弁では標準6週間になります。アミノグリコシドなので副作用のこともあり、TDMを実施して治療に役立てるようにとも記載があります。薬効のこと、検査のこと、治療期間のこと、経過のことを含めて考察することは、ICTの活躍の場面では無いかと思います。また、アミノグリコシド高度耐性株でもペニシリンのMIC0.1-1μg/ml下がることが分かっています。体外試験の結果であり実際には使用されないケースも多いと思います。

当院では血液培養から腸球菌が出た場合、β-ラクタマーゼの有無、GM高度耐性は全てチェックすることを数年前より行っています。万が一後で感染性心内膜炎が見つかった場合にも備え万全の体制で診療支援を行っています。やはり、重症化が予測される疾患の場合は、ある程度先読みして検査を実施することも必要になるのでしょう。

写真は血液培養からの腸球菌(E. faecalis)とGM高度耐性試験を実施した画です。GM高度耐性は感受性と耐性を並べてました。腸球菌は連鎖が短く、E. faecalisはやや楕円になり肺炎球菌に類似するのが特徴です。E. faeciumは少し違います。

参考文献)

CID 2003,36,615-621.

Circulation 2005,111,e394-e434

JAC 2004,54, 971–981.

6002 ×1000

Hlar

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2011年5月 9日 (月)

O157じゃ無くて 検査出来るの?

単なるコラムというか同定道場です。

最近話題となっているのが牛肉の生食をきっかけに起こった腸管出血性大腸菌(EHEC)の集団食中毒。とは言っても毎年3000-4000人の大きな単位で報告例が出ています。とは言っても、この報告例には無症候性保菌者も入っている訳ですが、感染して発症した患者数はもう少し少ない数になっているのでしょう。また死亡事例が出たということでマスコミは大きく取り上げています。EHECで記憶に残る大きなアウトブレイクは1996年に堺市が中心に起こったO157の集団食中毒です。でも、そのO157に関して知っている微生物検査室の方々も減ってきて改めてEHECの検査について考えないといけませんね。

IASR,Vol31,No.6の報告書には2009年のEHECの状況が出ています。

総数2,168件の報告がありO1571,396件(64%)と意外に低値。次いで多いのがO26504件(23%)。続いてO12169件(5.4%)。今回話題のO111TVでトリプルワンって言っていましたがそう呼ぶの?)が56件(2.5%)。ここまでの合計が95%と未だ5%も色々あります。中にはO抗原が特定出来ないものまである状況で何が何やら判らない状態です。

O157に関しては1996年の事例以来、一般の微生物検査室でも簡単に検査出来るようになってきました。それはO157がソルビトールという糖を遅分解もしくは非分解であるという特性を持っているのを利用したソルビトールマッコンキー培地(SMAC)というものが汎用されるようになってきたからです。通常、微生物検査室で使用しているマッコンキー培地はラクトースがベースになるので、その変法というものです。培地上で糖を効率的に利用出来ないものはコロニー(集落)に色素が出ない仕組みになっていて、ソルビトールを効率良く分解出来ないO157は透明、O157以外の大腸菌は赤いコロニーを形成するように作られています。しかし、選択性は弱いため大腸菌以外の菌も発育(プロテウス菌やアエロモナス菌)があるため、紛らわしいものが多いのが悩みの種です。選択性を強くしたものにCT加ソルビトールマッコンキー培地(CT-SMAC)というものがあります。CTCはセフィキシム(cefixime)、Tは亜テルル酸(tellurite)のことで、セフィキシムはプロテウス菌の抑制、亜テルル酸は元々ジフテリア菌や赤痢菌の選択剤でしたがO157も効率良く選択出来るものとして活用されています。2剤は程よいMICになるように配合されている訳ですが、赤痢菌は発育しますし、2剤に耐性のプロテウス菌も発育します。結局、発育したものは大腸菌がどうかの同定が必要ですし、O抗原の同定も必要になります。なので、CT-SMACに発育するが結果違ったなんてことは日常良く遭遇することです。また、少し高価ですがO26O111もスクリーニング出来るマッコンキー培地も販売されていますし、クロモジェニックな方法で検出可能な培地もあります。外部委託をする場合はO157と指定するとO157しか検査しない契約になっている場合もありますので契約条件を確認する良い機会なのかも知れません。

O抗原の検査についてもO157以外のEHECに関しては、前述したようにO抗原は今バラエティに富んでいますのでO抗原が確定出来ないEHECは多くあります。市中病院ではO抗原の検査は「デンカ生研」の病原大腸菌抗原血清(ウサギ免疫血清)により行っているところが大半だと思います。O157に関しては特別ラテックス凝集法により準備しているところも多いですが、見つかったうち全体の70%以下の検出率ですから、集団食中毒を起こす可能性は高いとは思いますが、全てをこれで確定出来るものでもありません。O121については、ここ数年の傾向から新たに検出可能になった血清型です。じゃ今までどうしていたのか?ですが。判らなかったというしかありません。というか、ベロ毒素が過去に検出された血清型のうち、今もこのキットに無い血清型は100種類程度あります。パスツール研究所が販売しているものもありますが高価過ぎてpay出来ません。市中病院ではこれが限界なのかもしれませんが、O抗原に捉われずにEHECの検出を見るものがあります。PCRはその一つですが、設備投資が必要です。EIAによるベロ毒素の検出もあり以外に簡便かもしれません。うちではエンテロヘモリジンを見ています。EHECが産生する毒素の一つでベロ毒素産生性と相関するため血清型に捉われずにEHECの検出が可能です。αヘモリジンとの鑑別も必要ですが、全てを網羅しようと思うのであれば必須アイテムと思います。また、抗原が出ない場合はO157LPS抗体(これはIgM抗体をラテックスで引っ掛けるので簡単です)の検出も出来るようにしています。HUSかもしれないという病変には鑑別診断として使えます。

最後に感染菌量ですが、EHECは感染菌量が少なくても感染が成立し発症するケースも多い病原菌です。赤痢菌が似ていますが二次感染による伝播事例もあります。サルモネラはどうか?非チフス性サルモネラは105乗個の菌を摂取しないと発症しないと言われています。EHEC以外の大腸菌やキャンピロバクター菌に関してはもっと多い菌量の摂取が必要と言われています。ただし、宿主の状態、年齢によりこの菌量は左右されます。EHECは感染菌量が少ない分検出される菌量が少ないことも指摘されています。培地に発育したコロニーはいくつ検査したら良いの?という疑問も多いでしょう。文献によると1つの培地より10個程度の釣菌が必要だそうです。じゃあ、10検体くると100個なんてことになり兼ねません。なので、EHEC以外の病原性大腸菌ではそれ以下で済むかも知れませんしこの辺は施設内でのコンセンサスが必要です。

本当に検便は大変ですと思う今日この頃です。牛肉のみならず生肉の喫食は嗜好の問題もありますが、感染症のリスクを上げますのでご注意下さい。

写真はHUS患者に見られた破砕赤血球(所謂ヘルメットcell)。血液検査室との情報交換も大切です。

J.Med Microbiol,Vol.35,1991,107-110.

J.Med Microbiol,Vol.39,1993,155-158.

IASR,Vol31,No.6.<特集>腸管出血性大腸菌感染症20105月現在

Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 58 (2007) 303–308

Hus HUS患者の破砕赤血球

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難問(かもしれない?)を出しますの解説

先日出したグラム染色像の解説を書きます。コメントを頂きました方々どうもありがとうございます&お待たせしました。

私が出した答えは【誤嚥性肺炎に加えて肺炎球菌性肺炎が疑われる所見】です。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-0a42.html#comments

まずは考え方の課題から

・喀痰から得られえる所見より患者の病態は何が考えられるか?

・起炎菌が判る場合は何が想定されるのか?

・何か他の検査所見で有用なものがあれば何を参考にするのが良いのか?

コメントも頂いていたので少し交えながら解説していきます。

コメントに多かったのが、喀痰としての品質が悪いこと誤嚥を示唆することの2つです。品質評価はGeckler分類を使うことが多いと思いますが、このGeckler分類は成人男性の市中肺炎を診断するために用いるものであるので、今回の高齢者であること、誤嚥を予想する病態にグラム染色像と加えた解釈が出来ますので、この場合のGeckler分類そのものの信頼性がどこまであるのか考える必要があります。Geckler分類は今から35年ほど前の研究論文です時代も変わっていますので必ずしもそのまま適用は出来ないと考えることが出来ます。

注目したいのが扁平上皮の多さ。これは喀痰排泄中に上気道の上皮が剥離しコンタミネーションしたものかどうか考えることが必要です。口腔内の扁平上皮が見える場合は上皮に細菌が引っ付いた像として確認されることが多いので、下気道から排泄された可能性が高いと考えます。

次いで、少ない白血球を見て貪食が無いかどうか注目することが大事です。今回はグラム陽性桿菌の貪食が少ないですが確認されています。下気道感染を起こす代表的なグラム陽性桿菌は何でしょうか?という質問に答えは無い訳で、つまり何か分からないことになります。口腔内にはコリネバクテリウムを含めて常在しているグラム陽性桿菌が多くあります。これが誤嚥により落ち込み、誤嚥性肺炎に関与している可能性が出てきますので誤嚥性肺炎かな?という推測が立ちます。勿論、逆流性誤嚥も可能性として残るので、その辺は患者の状況から判断するしかありません。ただし、細菌検査室ではそのような患者情報が無いと判断出来ない場合も多くありますので、聞きたい情報に加えて患者情報の共有は重要になります。またコメントにもありましたが菌交代の可能性もあるので抗菌薬の投与歴も聞き取る必要があります。今回は、肺炎球菌と思われる菌や連鎖球菌(β-ラクタムに感受性が高い)が多く認められているので菌交代の可能性は下がることとなります。

つまり、この喀痰検査の所見からは

喀痰がしっかりとした条件で採取されたのにも関わらずこの像が確認されていること(口腔内の通過菌の存在が低いこと)があれば見たままの所見で捉えることが出来る。

・肺炎球菌のような菌が見える。誤嚥性肺炎に混じって肺炎球菌性肺炎が混じっていないか考える。また、可能性があることを伝える。

・当然、真の起炎菌が何か知りたいが多菌種が混じり、肺炎球菌含めて分離出来ない可能性があることを伝える。

・肺炎球菌の感染症を肯定するため尿中抗原や喀痰中のcペプチド抗原を調べる。尿中抗原を調べる場合は感度と特異度を含めて、偽陽性や偽陰性となる患者背景が無いかどうかのチェックは必ず行う。

・血液検査や画像所見で患者の重症度を考慮する必要もありますし、レントゲンでは写りにくい膿瘍や胸水の存在を後々見つける必要があるでしょう。また、血液培養は欠かすことの出来ない検査ですね。

・分かりにくい場合は吸引(出来れば気管支鏡下吸引)を行い起炎菌の確定を行う。

他、気付く点があれば教えて下さい。

pureなスメアなら分かりやすいですが、このようなスメアを読むには日頃から読みをつける習慣をつける必要があります。見た像は声に出して読んでいきましょうね。

1 弱拡大

2 強拡大1

3 強拡大2

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2011年5月 1日 (日)

難問(かも知れない?)を出します

SNS上で勉強している毎日です。

GWと言うのに休日出勤、オンコールの呼び出しに加えて当直が入り普通の日が続いています。細菌検査室に従事されている方々は恐らく同じ境遇に立たされていると思います。結局同じ検査ですが内容が専門的になりますので、日当直者では対応出来ないことも多いので仕方ありません。また、この場面を放置すると重症化しますので「休み明けでも構わないや」などということも出来ませんし。臨床から愛されていることと考えて頑張ろうと思います。

さて、あんずの呼吸sara先生より、「後輩が頑張ってグラム染色を読んでいます」というお言葉を頂きましたので久々に質問を出すことにしました。これは先日来た6年生にも同じ質問をさせて頂いたものです。

患者は77歳、男性。主訴は呼吸苦。在宅で基礎疾患はDMだけです。

胸部レントゲン所見では左の気管支に沿った浸潤影にCPアングルは見えず。右は下葉にややベターとした末梢陰影が一つのみ異常。

喀痰を採取したので見て下さいという提出医のお願いを聞いての返答を想定して下さい。

あなたなら何と答えますでしょうか(だいたい下記の3つが分かれば問題無いですね)

・喀痰から得られえる所見より患者の病態は何が考えられるか?

・起炎菌が判る場合は何が想定されるのか?

・何か他の検査所見で有用なものがあれば何を参考にするのが良いのか?

100 弱拡大(100倍)

6001 強拡大(1000倍)その1 

6003 強拡大(1000倍)その2

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