グラム染色に用いる標本の厚さ
皆様の施設では、新人が続々とやってきているのでは無いか?と察しております。
研修医であっても、微生物検査に配属になった新人、異動により配属になった方々など様々です。
何事も初級者への指導は難しいものです。中々阿吽の呼吸では行かなくてもどかしい毎日を過ごしては居ませんか?
さて、染色の命は何と言っても脱色操作。ここをミスるともう陰性か陽性か迷うことになります。次に大事なのは標本の厚さ。ここは染色性と大きく関係してきます。
厚い標本であれば①脱色不良になる②染色不良になる③剥がれ易くなる などのヒューマンエラーも置きます。染色液の結晶や粉が通常操作で落ちなくてグラム陽性球菌だとか、陽性桿菌だとか討論していませんでしょうか?
それでは、標本の厚さをどう表現するのか?どの程度が妥当なのかなと言葉で言い表せないことは無いでしょうか?一つ一つスライドを横から見て、厚いだの何なのと言ってるのでしょうか?中々、的確にあーだこーだと説明出来ませんよね。
うちはどうしているのか?
指導をする時の標本の厚さは、10-12ptの字が透けてキレイに見える程度が良いとしています。それは要らなくなった紙や新聞紙を利用すると良いでしょう。字を背景に、染色をした標本を置き、字がしっかり見えればOKです。検体を採り過ぎたなあと言う時は、染色する前に、厚い箇所と薄い箇所を作り余分な検体は隅に寄せてやると、新たに作る手間が掛からなくて良いでしょう。請負ですが・・・。
下記は先日、当院に来た新人に教えた時に作ったものです。厚い標本であれば菌が白血球や蛋白質の後ろに行き隠れてしまうことも予想されます。患者さんから頂いた貴重な試料は大切に扱いましょうね。
余談ですが、過去に教えていた中のエピソードです。
グラム染色を供覧していた時です。「○○菌はどの辺か分かる?」と聞いたら、「あ、そこ。後1cmほど上の・・・」と、新人さんは答えてくれました。思わず、「1cm上だと標本を食み出しするで・・・」と突っ込みを入れてしまいました。関西文化は直ぐに突っ込みを入れなければバッシングに合いますのでご注意下さい。
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コメント
ご無沙汰してます。
グラム染色標本の厚さですが、なるべく薄くしているつもりなんですが、まだ厚いようです。
ダメダメ例くらいならOKかなと思っていましたが、ダメなんですね・・・。
ところで喀痰の標本の作り方ですが、どのようにしているでしょうか? 白金耳で取ってそのままうすく広げる方法、スライドガラスにのせてからもう一枚使って広げる方法などありますが、どれがお勧めでしょうか。
白金耳で広げているのですが、どうも厚さのムラができてしまうので、いい場所を探して鏡検しています。
よろしくお願いします。
投稿: 指導員手前 | 2011年4月28日 (木) 14時52分
指導員手前さま
私は白金耳で採取しています。何故か?それは膿の部分がきっちり採取されているか輪の中身をどうしても確認しないとやってられないので。刷り合わせは病理の請負ですよね。細菌は細菌らしく白金耳と思っています。単なるエゴかも知れません。
塗るのは出来るだけ薄い場所が多いようにしています。見る場所ですが濃いところから薄くなる場所を中心に見ていきます。そこは炎症細胞と菌の密度が調度良いので。良い場所が無ければ薄い場所を中心に見ていきます。ただ、この技法は膿や痰のような蛋白成分が多い検体です。多く採り過ぎた場合は、厚みを持って余分に集める箇所を作製してそこは見ないようにしています。更に多すぎるとそこを白金耳で再度採取して捨てています。白金線で無い手法で色々と出来ますので気に入っています。
余談ですが。尿や体腔液は成るべく厚くなるようにします。それは菌数が少ない可能性があるからです。
投稿: 師範手前 | 2011年4月28日 (木) 23時28分