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2011年4月29日 (金)

話題?の溶連菌

一部、ブログやSNSで話題となっている溶連菌の話題です。

http://idconference.cocolog-nifty.com/idconference/2011/04/post-2fb1.html

http://idconference.cocolog-nifty.com/idconference/2011/04/post-c95a.html

溶連菌と言ってもストレプトリジンを出すような、Streptococcus pyogenesとStreptococcus dysgalactiaeの2つに限定されると言ってもおかしくありません。

皮膚軟部組織疾患で入院される事例で、皮膚の擦過や膿瘍が検査室に出てくることがあります。グラム陽性球菌感染症の場合、通常多いのがブドウ球菌で、一部重症化するのが溶連菌です。

この2つを鑑別可能か?という命題に対して、皆さんはどう考えていますでしょうか?

ちなみに私は何となく分かりますので、そのままグラム染色と一緒に推定菌として報告させて貰っています。たまに「電話頂戴!」という事例もあります。重宝されていますね。

溶連菌は全て連鎖したりする訳ではありません。状況により異なりますが非常に小さくて黄色ブドウ球菌よりは染色性が劣るのが特徴です。毒素の関与と考えています。

Gas 膿からの溶連菌(S. pyogense)

Mrsa60032 膿からの黄色ブドウ球菌(MRSA)

1_2 膿からの溶連菌と黄色ブドウ球菌の混合感染(これは上級です:赤色が溶連菌)

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2011年4月27日 (水)

グラム染色に用いる標本の厚さ

皆様の施設では、新人が続々とやってきているのでは無いか?と察しております。

研修医であっても、微生物検査に配属になった新人、異動により配属になった方々など様々です。

何事も初級者への指導は難しいものです。中々阿吽の呼吸では行かなくてもどかしい毎日を過ごしては居ませんか?

さて、染色の命は何と言っても脱色操作。ここをミスるともう陰性か陽性か迷うことになります。次に大事なのは標本の厚さ。ここは染色性と大きく関係してきます。

厚い標本であれば①脱色不良になる②染色不良になる③剥がれ易くなる などのヒューマンエラーも置きます。染色液の結晶や粉が通常操作で落ちなくてグラム陽性球菌だとか、陽性桿菌だとか討論していませんでしょうか?

それでは、標本の厚さをどう表現するのか?どの程度が妥当なのかなと言葉で言い表せないことは無いでしょうか?一つ一つスライドを横から見て、厚いだの何なのと言ってるのでしょうか?中々、的確にあーだこーだと説明出来ませんよね。

うちはどうしているのか?

指導をする時の標本の厚さは、10-12ptの字が透けてキレイに見える程度が良いとしています。それは要らなくなった紙や新聞紙を利用すると良いでしょう。字を背景に、染色をした標本を置き、字がしっかり見えればOKです。検体を採り過ぎたなあと言う時は、染色する前に、厚い箇所と薄い箇所を作り余分な検体は隅に寄せてやると、新たに作る手間が掛からなくて良いでしょう。請負ですが・・・。

下記は先日、当院に来た新人に教えた時に作ったものです。厚い標本であれば菌が白血球や蛋白質の後ろに行き隠れてしまうことも予想されます。患者さんから頂いた貴重な試料は大切に扱いましょうね。

余談ですが、過去に教えていた中のエピソードです。

グラム染色を供覧していた時です。「○○菌はどの辺か分かる?」と聞いたら、「あ、そこ。後1cmほど上の・・・」と、新人さんは答えてくれました。思わず、「1cm上だと標本を食み出しするで・・・」と突っ込みを入れてしまいました。関西文化は直ぐに突っ込みを入れなければバッシングに合いますのでご注意下さい。

Photo_2 厚い標本(ダメダメ例) Photo_3 師範手前の標本(まあOK)

1 厚さ評価(下段が厚い標本の方。字がハッキリ見えないところがありダメ)

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2011年4月18日 (月)

わずか40分で

今日は結核菌のお話です。 

 結核は歴史が長く、また人類で最も患者が多い感染症です。日本のみならず世界中でその感染拡大阻止が取られていますが、残念ながら撲滅することは出来ずにいます。

結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)により引き起こされますが発育速度は黄色ブドウ球菌や大腸菌と違い、その何十倍も遅く検出には長い時間がかかります。早い人でも液体培地を使い7日程度もかかります。ただし、7日で検出される例の多くは既に抗酸菌塗抹陽性であることが多くPCR検査で結核菌か否か分かっていると思います。ここで、小ネタですが、結核菌PCR検査と言っても純粋にM. tuberculosisのみでは無く、BCGやM. africanumのような結核菌と遺伝学的に類似している菌種も陽性になることは以外に知られていません。
 ところで、PCR検査は短時間で結核菌の検出が可能ですが、コストや設備など初期投資も嵩むため外部委託を余儀なくされている施設も多いと思います。当院は結核病床も有する救急病院であるため結核菌PCR検査は院内実施です。保険点数は400点で儲かりそうですが試薬が高く人件費を考えた場合pay出来ているかどうかは微妙です。

結核を疑う場合など一時的に個室収容したり、医療従事者に空気感染対策をさせたり、面会者を限定したりとかなり大きな制限を行い、各方面に多大なる協力依頼をすることになります。でも、既に分かっている状況であるとそうなのですが、後で『結核菌ですよ』と報告すると、その短い言葉では言い表せないほどのインパクトを与えることになります。例えば抗酸菌塗抹陽性であればPCR検査を用いた結核菌の証明は納得させる要素の一つです。

 しかし、PCR検査を実施されている施設では分かるでしょうが、PCR検査の前処理は非常に複雑で時間のかかる作業になります。また、核酸増幅から検出にも時間がかかり、昔の寒天ゲルに流していた時代から考えるとEIA法やFITC標識により簡単に感度良くなったとは言え、ルチンを抱えながら1日に数回も測定可能では無いでしょう。せっかく急いで行ったPCR検査の結果がうまく出なかったために夜まで残ったり、夕方の終わる頃に『ガフキー出た!』なんてことになれば、残業は必至です。塗抹は見なかったことにして、知らないって思いたいところですが、微生物検査に愛情を注いでいる志の高い方であれば結果を早く出そうと夜遅くまでかけて結果報告していると思います。微生物検査は思いのほか苦労が多い職場です。

 当院も同じ境遇です。最近、PCR検査の機器更新がありそういった事情を払拭させようという目的、患者サービス向上も目的としてキャピラリー法を用いたPCRを導入しました。キャピラリー法の良さは速さです。1回2.5分掛かっていた1サイクルが僅か数秒で終了してしまう訳で。結核菌かどうか僅か40分で結果が出るようになりました。また少し手間だった前処理も自動で行ってくれますので楽になりました。朝に急ぎのPCR検査があっても、夕方15時に塗抹が陽性になっても気にしなくなり、心理的な負担が少なくなりました。大至急の場合は塗抹結果と同時位になるため臨床のアウトカムが良い報告になればと思っています。まだまだ核酸同定精密検査のテクノロジーは向上すると思いますので色々とチャレンジして行きたいと思います。下記は機器と蛍光染色で染まったM. tuberculosisとM. kansasiiの混合感染事例(珍しいでしょ)です。大きい方がM. kansasiiで特徴的ですので掲載します。今度の機械はこのM. kansasiiも検出可能です。当院では年間5人くらい見るあまり珍しくない菌なのでPCRは有難いです。

1 機械の姿 2 検出(融解曲線:今回はTBとMAC同時)

3 結核菌とカンサシー菌の混合感染例の塗抹所見(大きいのがカンサシー菌)

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2011年4月11日 (月)

今後の(ちょっとした)予定です

今後の講演もしくは研修会に出向く予定です。楽しい意見交換出来ることを楽しみにしております。

4/16(土) SCANIC』学術研究会 梅田スカイビルウエスト36階(事前申し込み 詳しくはシーメンスに聞いてください)

14:00~ 空気感染とN95マスクの適正使用

15:00~ 薬剤感受性ワンポイントレクチャー(ブドウ球菌、腸内細菌、緑膿菌)、滅菌保証の最新情報、踊る微生物御殿(by山中先生)

5/20(金)-22(日)兵庫県臨床検査技師会 微生物初級者研修会(詳しくは兵庫県臨床検査技師会HPなどで)

毎年している実習付きの講習会です。異動で微生物を始める人、新人で微生物に赴任してきた方を対象。~12年の経験者など

5/28(土)3回 検査技師と研修医のあめの感染症フォーラム(詳しくは塩野義製薬のMRさんから聞いてください)

15:00~ 菌同定、アシネトバクター関連の話、顕微鏡から何が見えるか?耐性菌の最近の話題

6/17(金)高知県臨床検査技師会 微生物研修会(予定)(詳しくは高知県臨床検査技師会のHP参照下さい)

グラム染色について(仮題)

夕方から 高知市内で (技師会員以外の解放もあり?) 高知に行くぜよ

9/17(土)広島県臨床検査技師会(予定)(詳しくは広島県臨床検査技師会のHPで)

グラム染色について(仮題)

10/29(土) 奈良県感染症サーベイラインス研究会(奈良市内のどこかで)

各種微生物のサーベイランス(たぶん腸内細菌とS. agalactiae

11/5-6(土) 中四国医学検査学会 微生物シンポジウム(予定)

徳島県主催(詳しくは学会HPで)

11/19(土)-20(日) 日本環境感染学会 医療疫学トレーニングコース

たぶん、東京医科歯科大学 

医療疫学の達人への第一歩。エビデンスを有効に読みましょう。

11/24(木)-26(土)54回日本感染症学会中日本地方会学術集会、第59回日本化学療法学会西日本支部総会

奈良県新公会堂

ワークショップ 臨床微生物学から見た感染制御のポイント

間で各種学会のセミナーなど入る予定になっています。どうぞ、宜しくお願いします。

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尿のグラム染色

4月に入り、初期の研修医1年目が新たに入社してきました。皆さんの施設もそうと思います。

当院の検査部では、初期研修医1年目のオリエンテーションとして血液型とグラム染色の講習をしています。

グラム染色は毎年、自分の口腔粘膜を綿棒で採取して染めてもらっています。理由はグラム陽性球菌から陰性桿菌、嫌気性菌まで見られるため染色作業が適切に行われているかどうか確認しやすいからです。それからルチンでやってきた検体を実際に染めてもらっています。

いつもは喀痰ですが、今回は尿を染めてもらいました。尿は一般定性と沈渣に加えて、グラム染色を実施することは重要な検査の一つです。

尿路感染を疑う場合、頻尿や背部痛などの症状に加えて、混濁しているかどうかの肉眼的所見を確認し、尿一般定性と培養検査を出すと思います。どれも尿路感染症の診断には重要な項目です。ちなみに、濁り具合で尿路感染の診断をした場合、約6割くらいの感度しかありません。当然、特異度も下がります。

一般定性で尿路感染を診断する際、注目する項目は亜硝酸塩還元試験や尿中白血球反応でしょう。亜硝酸塩還元試験は主に亜硝酸を還元できる大腸菌を初めとする腸内細菌群の存在を示唆します。しかし、腸球菌や緑膿菌は亜硝酸を還元出来ないため陰性となります。一方、白血球も尿路感染で多く出てきますが、人工物が留置されている場合も出てくるので尿路感染診断のための特異度が下がる原因になります。一般定性は過信出来ませんが尿路感染の診断には必要な検査です。

培養検査は尿路感染の菌種同定に加えて、薬剤感受性の把握に必要です。最近はキノロン耐性菌やESBL(3世代セフェムも耐性となる)産生菌の検出も市中では普通にあるので治療経過を追うこと、適切な抗菌薬への変更を検討する場合に非常に参考になります。

培養の結果が後回しになっても、救急の現場では尿のグラム染色は実施して欲しいという事は伝えましたが、受け取り側がどれだけ興味を持ち、かつ重要視しているかは継続して教育が必要です。

600 ×1000(大腸菌)

Photo ×1000(腸球菌)

Photo_2 ×1000(緑膿菌)

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