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2011年4月18日 (月)

わずか40分で

今日は結核菌のお話です。 

 結核は歴史が長く、また人類で最も患者が多い感染症です。日本のみならず世界中でその感染拡大阻止が取られていますが、残念ながら撲滅することは出来ずにいます。

結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)により引き起こされますが発育速度は黄色ブドウ球菌や大腸菌と違い、その何十倍も遅く検出には長い時間がかかります。早い人でも液体培地を使い7日程度もかかります。ただし、7日で検出される例の多くは既に抗酸菌塗抹陽性であることが多くPCR検査で結核菌か否か分かっていると思います。ここで、小ネタですが、結核菌PCR検査と言っても純粋にM. tuberculosisのみでは無く、BCGやM. africanumのような結核菌と遺伝学的に類似している菌種も陽性になることは以外に知られていません。
 ところで、PCR検査は短時間で結核菌の検出が可能ですが、コストや設備など初期投資も嵩むため外部委託を余儀なくされている施設も多いと思います。当院は結核病床も有する救急病院であるため結核菌PCR検査は院内実施です。保険点数は400点で儲かりそうですが試薬が高く人件費を考えた場合pay出来ているかどうかは微妙です。

結核を疑う場合など一時的に個室収容したり、医療従事者に空気感染対策をさせたり、面会者を限定したりとかなり大きな制限を行い、各方面に多大なる協力依頼をすることになります。でも、既に分かっている状況であるとそうなのですが、後で『結核菌ですよ』と報告すると、その短い言葉では言い表せないほどのインパクトを与えることになります。例えば抗酸菌塗抹陽性であればPCR検査を用いた結核菌の証明は納得させる要素の一つです。

 しかし、PCR検査を実施されている施設では分かるでしょうが、PCR検査の前処理は非常に複雑で時間のかかる作業になります。また、核酸増幅から検出にも時間がかかり、昔の寒天ゲルに流していた時代から考えるとEIA法やFITC標識により簡単に感度良くなったとは言え、ルチンを抱えながら1日に数回も測定可能では無いでしょう。せっかく急いで行ったPCR検査の結果がうまく出なかったために夜まで残ったり、夕方の終わる頃に『ガフキー出た!』なんてことになれば、残業は必至です。塗抹は見なかったことにして、知らないって思いたいところですが、微生物検査に愛情を注いでいる志の高い方であれば結果を早く出そうと夜遅くまでかけて結果報告していると思います。微生物検査は思いのほか苦労が多い職場です。

 当院も同じ境遇です。最近、PCR検査の機器更新がありそういった事情を払拭させようという目的、患者サービス向上も目的としてキャピラリー法を用いたPCRを導入しました。キャピラリー法の良さは速さです。1回2.5分掛かっていた1サイクルが僅か数秒で終了してしまう訳で。結核菌かどうか僅か40分で結果が出るようになりました。また少し手間だった前処理も自動で行ってくれますので楽になりました。朝に急ぎのPCR検査があっても、夕方15時に塗抹が陽性になっても気にしなくなり、心理的な負担が少なくなりました。大至急の場合は塗抹結果と同時位になるため臨床のアウトカムが良い報告になればと思っています。まだまだ核酸同定精密検査のテクノロジーは向上すると思いますので色々とチャレンジして行きたいと思います。下記は機器と蛍光染色で染まったM. tuberculosisとM. kansasiiの混合感染事例(珍しいでしょ)です。大きい方がM. kansasiiで特徴的ですので掲載します。今度の機械はこのM. kansasiiも検出可能です。当院では年間5人くらい見るあまり珍しくない菌なのでPCRは有難いです。

1 機械の姿 2 検出(融解曲線:今回はTBとMAC同時)

3 結核菌とカンサシー菌の混合感染例の塗抹所見(大きいのがカンサシー菌)

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