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2011年3月22日 (火)

血液培養検査に思うこと

今回の震災で、血液培養について話題に上がることが多いです。それは、血液培養ボトルが不足しているからである。巷でも食料品や乾電池、懐中電灯など買占めで枯渇している中、医療業界でも、医薬品の不足から、医療器具、消毒薬の不足、検査試薬の不足など各方面で皆さん苦労されているようです。

血液培養ボトルについての品不足も深刻な問題です。

今回問題になっているのはBACTECの血液培養ボトルですが、販売しているのは日本BDですが、出荷が配送センター(福島県)が震災の影響で停止しているとのこと。ボトル自体は輸入品であり、東京湾に入港後、福島へ輸送され全国に出荷される仕組みになっているようです。情報の出所はあえて伏せますが、3月18日現在の情報で、被災を免れた+新たに輸入された血液培養ボトルは約2-3週間分あるようです。現在は、この出荷作業が少し停止しているため、全国的に品薄状態が続いているようです。福島の配送センターは諸事情があり、正常に機能するまでは時間がかかるため、臨時配送センターの立ち上げを急いでいるところのようです。この配送が開始されれば解消の方向に向かうとのことですが、もう1週間程度は出荷が滞る可能性があるようです。(復活の見込みがあるのですが、あくまで見込みであり、通常の発注は出来ないと思われるため、正常化には更に暫くかかると思われますので、勘違いの無いように)

ついでにですが、血液培養の自動機器はBACTECとは2分する形でBacTARERTがあります。このBacTARERTは、シスメックス社が販売しているものでせが、そちらは、今回は影響が殆ど無いようです。現状では、BACTECユーザーで血液培養ボトルの供給不足が起こっていることが問題になっています。

血液培養について考えてみましょう。血液培養は敗血症の診断、感染症の合併症予測、疾患の重症度、感染病巣の特定など色々な理由で採取されます。当然、提供している医療の内容で起炎菌や陽性率も変ってくることがあるので、日常から自施設の傾向については週報、月報を通じて臨床側に情報提供をしなければなりません。

当院の状況を少し紹介しますが、

・1000ベッド当たりの採取率は25人/日で、陽性率が平均10%(コンタミ率は全体の1-2%)。

・尿路感染症、急性胆のう炎(胆管炎)が原因となる菌血症が多く、採血の約60%が外来。

・基礎疾患として悪性腫瘍が約30%、消化器疾患とprimary infectionがそれぞれ10%づつ。

・菌検出状況は、腸内細菌が主体で約30%、次いで黄色ブドウ球菌が約15%。CNSは約10%。緑膿菌やカンジダは全体の5%以下。

・全体の約60%が1日以内に陽性となり、好気ボトルが先に陽性になったものは約50%、嫌気ボトルが先に陽性となったものは約40%、同時陽性が約5%。残り5%がどちらかのみ陽性。

・どちらか陽性の場合、好気の陽性は緑膿菌やカンジダはそれぞれ約10%、嫌気性菌は嫌気のみ陽性の20%。

こういう背景であり、発熱すると必ず採取がされ、採取は抗菌薬が投与されていない条件で殆どが採取されている状況です。看護師さんが、『抗生剤の前に血液培養を採取しないと』とか、『早く抗生剤を入れたいので血液培養採取ましょう』とか医師に相談している姿を良く見ます。臨床にかなり馴染んでいます。

こういうベースを踏まえ、今回の血液培養ボトル不足に備えて、下記のような対応を考えています。

【2セット採取が原則】

・敗血症が疑われる場合(血圧低下、発熱または低体温、急激な白血球数の増加や減少など)

・血液培養でしか診断が出来ない疾患(例:、骨髄炎、感染性心内膜炎、髄膜炎、腹部感染症)

【1セット採取で対応出来そうな疾患】

・カテーテル関連菌血症(カテーテル抜去と培養を提出させるのが原則)

・急性腎盂腎炎、化膿性胆管(胆嚢)炎(血圧の低下を伴わず、合併症を予測し採取するものと、急性期で疾患であること)⇒この場合は尿採取や胆汁採取などで代替出来る場合は採取は血液培養の代用が出来るため、血液培養の採取は省略出来る)

【採取を控えるか、要検討が必要な疾患】

・陽性率が低い疾患(単純性膀胱炎、リンパ浮腫を伴わない蜂窩織炎など皮膚疾患、上気道炎)

・他の材料で代用出来るような疾患(痰培養、尿培養など)⇒この場合は採取がしっかり出来る場合。グラム染色が多いに役立つので積極的に活用する。

【判断の難しい疾患】

低栄養、免疫抑制剤投与中、化学療法中で白血球が1000以下(好中球の分画を見ること)など

のように考えております。未だ、混乱はありませんが臨床との調整中で、今後、各診療科で説明をしていきたいと思いっています。

1セットから2セット採取した場合の陽性率向上より、1セットも採取出来ずに敗血症を見逃すことや、起炎菌同定が出来ずに治療が奏功しないことを考えた場合は、少なくなってきた培養ボトルを有効活用する方が非常に有用だと考えています。全国的に品薄状態ですので、営業マンや問屋頼みにしても、無いものは無い。スーパーに行って商品が無いからと言って店員に噛み付かないのと同じにして貰いたいです。こういった状況こそ、皆さんで柔軟に対応する『ウエシマ作戦』が必要なのでは無いのでしょうかと思います。誰が悪い訳でも無いことを考えて臨床へ協力要請をし、しっかりと検討をすることが必要です。また、各関連学会より何らかコメントが出れば嬉しいでしょうが出るんでしょうか。

ウエシマ作戦:

http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2011/03/18/kiji/K20110318000450280.html

ただし、制限解除をする時期をしっかりと検討することも制限時に必要です。大体、この期間、ここまでなど在庫状況を照らし合わせてになります。

皆さん、今しばらく苦労すると思いますが頑張りましょう。

1 喀痰のグラム染色をもう一度整理しましょう。

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コメント

師範手前さま

血培ボトルきびしくなりそうです・・・
当院でも過去の分離状況などから、どう対応するべきかいろいろと考えています。現在は師範手前さまがお示しになった2セット採取が原則のもの以外は1セット採取として運用していますが、それでもボトルに限界があります。
今後、ボトル入荷がむずかしいのであれば、状況に応じて1本(好気or嫌気)にした方がなくなるよりはいいのではとも考えていますが、やはりこれには無理があるでしょうか?
どちらかが陽性になる場合は、当院のデータでは5~10%程度、統計データ、患者背景等から推測できれば、他の方法よりは1本採取も検討する余地はあるのではと思うのですが、いかがでしょうか。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご教授お願い致します。

投稿: 指導員手前 | 2011年3月22日 (火) 19時11分

指導員手前さま

そうですね。先日も言いましたように、市中病院で検出される菌の殆どがブドウ球菌、連鎖球菌、腸内細菌のどれかに分類されると思います。ドクターに説明しても分からない細菌専門語句の一つ”通性嫌気性菌”の分類に入るので、好気のボトル、嫌気のボトル両方でも発育出来ることを考えて1本採血で構わないと思います。ただし、1本採血の場合は2セット採血の総採血量として1/4しか無いので、その分は感度が下がることも臨床へ申し送りする必要があります。
採取する量が増えれば増えるほど陽性率が上がりますが1セットと2セット量の間の開きが大きいので2セット採取が良いと色々な文献に記載があります。しかし、それがどれほど臨床効果に影響を及ぼしているのかは不明であり、研究されているのは血液培養ボトルの培地と血液の量であり10-20%の濃度で血液を採取する必要があるということです。腸内細菌はぶどう球菌は10%でも発育支持がありますが、連鎖球菌は10%より20%の方が発育支持が良いようです。
つまり、それは患者の重症度に応じた対応になり、上記のような採取条件を設定して採血すると良いことになるのでは無いでしょうか?採取出来ない人が減らすことが必要なのでは無いでしょうか?そのためにも最悪のケースを想定した場合、緑膿菌やカンジダを想定した患者(入院期間が長いだとか、緑膿菌の既往が長いだとか、免疫不全だとか、WBCが少ないだとか)は好気の方のみ、腹膜炎(だいたい二次性、原発性の場合の血液培養の意義は低いので)の場合は嫌気のみ採取するなどの工夫をして良いのではと思います。幸い、診療科別に特徴もあるので内科、外科に分けて考えるのもひとつでは無いでしょうか。BDも全力で頑張っているはずです。もう少しもう少し、こちらも頑張りましょう。

投稿: 師範手前 | 2011年3月22日 (火) 20時48分

師範手前さま

早々のご回答ありがとうございます。
師範手前さまにそう言って頂きちょっと安心しました。
最悪のケースを考えるとやはり1本採取も考えなくてはならない状況ですので、さらに実施時期、実施方法等を考慮して行きたいと思います。
当院では、血培の採取は看護師が行っており、どのボトルに採取するかの判断、決定、実施の伝達が難しいところかと思いますが、頑張りたいと思います。
あとは供給の回復を祈るばかりです。
ありがとうございました。

投稿: 指導員手前 | 2011年3月23日 (水) 08時07分

BACTECボトルは徐々に出荷が再開され来週以降正常化する見込みです。もう少しお待ちを。生培地とMGITは当面無理っぽいです。

投稿: 師範手前 | 2011年3月26日 (土) 08時24分

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