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2011年2月28日 (月)

どれだけ拾えるか?

細菌検査をしていて思うことは、実際に検査している内容がどれだけ臨床診断に活用されているのか?でしょうか。

細菌検査をしていると、恐らく使われないデータは山のようにあるのでしょう。それは仮定ですが、検体を出し報告時に予想していない(発育した菌が予想と外れるなど)データー
が返ってきた時、耐性菌出てない時、出したけど出したことさえ忘れた時(これは悲しい)などでしょうか?

活用されないのは活用しにくいデーターを報告していたり、医師に思いが伝わらなかったりしていませんか?確かに受け側の問題はあるでしょうが、報告書越しに患者さんの顔が見えたり、医師の顔が見えてるでしょうか?ちょっと突っ込んで考えるのも言いかも知れません。
例えば血液培養陽性事例を考えましょう。

先日のような、突如血液から溶連菌が出た場合はどうでしょうか?診察時に尿混濁があれば尿培養、喀痰がでそうなら喀痰培養出すかもしれません。
溶連菌=気道?と習う事が多いので、喀痰からは溶連菌を探すかも知れません。尿から出ない事が多いので尿は溶連菌を探さずグラム陰性桿菌を探すでしょう。
どうでしょう?血液から溶連菌が出るような患者さんなんで、喀痰は誤讌性肺炎になっていたり、大葉性肺炎になっていたりしているかもしれません。一つ一つの検体の意味を確認しながら検査を進めているでしょうか?誤讌性肺炎ならpolymicrobial patternのみ確認出来れば良いのかも知れませんし、尿は緑膿菌を見て欲しいのかも知れません。
はたまた、『いやぁ、検体採り忘れちゃったよ』なんて事もあるかもしれません。細菌検査室では各科横断的に感染症例を見ることが出来ます。同じ材料から同じ菌が分離されているが、Aという患者さんはZとうう検体をとっているが、Bという患者さんは採ってないかも知れません。Bの患者さんの場合はAさんにはこれとってますが、とる予定無いんですか?なんて問う事も必要かも知れません。
この延長に、症例についてのディスカッションがあり、検体需要があるのでしょう。
頼られる検査室には、臨床コミュニケーションがあるに違いありません。

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2011年2月27日 (日)

希少感染症診断技術研修会

本日、国立感染症研究所で希少感染症診断技術研修会でした。私は微生物検査室と臨床、保健所、地方衛生研究所、大学病院の繋がりについて、Clinicalな話に沿って話をしてきました。希少感染症診断技術研修会は毎年、地方衛生研究所や保健所の技術者に向けて座学研修の形でしているようです(知らんかった)。今年度から院内感染対策についても講習が必要と言うことで情報センターのT屋先生より依頼を受けました。検査室と臨床医と言うことで、臨床医は市中病院で経験のあるFETPG先生。GGコンビ(勝手につけました。すいません)で参りました。

私の話は


1)収益の無い検査項目は市中病院でルチン化するのは難しいこと
2)
院内感染対策をすると余計な出費は無くなること(自院のデータで説明)
3)
抗菌薬適正使用とアンチバイオグラムの近い道
4)
感染情報レポートの意味
を下りに、自院のデータと引用文献併せ
5)
劇症型溶連菌感染症と検査室の関わり
6)
薬剤耐性大腸菌と疫学(MLSTも)
7)
肺炎球菌性髄膜炎と血清型、薬剤耐性(病因の推測と合併症から推測する重症度)

をお話ししました。地方衛生研究所や保健所の参加者は医師もいらっしゃいますが、臨床経験の無いresearcherの方も多くいらしたようです。出来るだけ臨床現場で困っていること、保健所に協力して欲しいと思ってることをコンパクトにまとめました。これぞ、The clinical microbiologyって勝手に思ってますが。
遺伝子検査については、研究所の方たちにもお手伝いして欲しい事も多くニーズはどこに?とポイント整理したつもりですが30分で3例は詰め込み過ぎたかも知れません。このブログ見ている人どうもすいません。次年度は出直しです。
今日1日この希少感染症診断技術研修会に参加しましたが、どれもこれもタイムリーな話。薬剤耐性腸内細菌、多剤耐性アシネトバクター、溶連菌に淋菌。肺炎球菌とインフルエンザ菌はワクチンの話絡めて。本当に有意義な1日でした。
少し紹介を。

・肺炎球菌はST320が問題で血清型19Aが心配だという話

・日本で検出されたNDM-1は大腸菌ではST10138

・肺炎桿菌はST14147340ST14クローンの拡がりが懸念されているクローンで注意する

・アシネトバクターはST92CC92

SalmonellaShigellaに耐性遺伝子を授受させないには?

・食品や動物のESBL分布について。

オープン参加OKにして欲しいですね。

調度、国立感染症研究所ということで今までお世話になった各方面の専門家の方、2009年の新型インフルエンザ地パンデミック時にお世話になった方、元の方、実はブログ愛読者ですという方にお会いする事が出来ました。今まで色々な人と知り合いになり大切な財産なんだなと思いました。これからも付き合いは大切にしなきゃあかんなあと感じた1日でもありました。

今後ともブログ共々宜しくお願いします。

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2011年2月22日 (火)

不明です という相談

当院で受ける感染症の相談の多くは

①原因菌が薬剤耐性菌(疑い含む)であり適切な抗菌薬の選択をしたい時

②現行の抗菌薬に不能の場合

③重症疾患の場合

④感染症と思われるがフォーカスが不明な場合

です。皆さんの施設ではどうでしょうか?

感染症医が居ない場合は細菌検査室に多く相談が持ちかけられることでしょう。

先日③+④の症例がありました。

60歳代の女性です。主訴は発熱と背部痛。プレショック状態で救急搬送されてきました。

背部痛を訴える発熱性疾患としてよく遭遇するものでは尿路感染症、肺炎、胆管炎、脊椎炎。感染性心内膜炎などでしょう。凡そ、各疾患に対する最初のアプローチとして、尿路感染症の場合は尿一般定性検査、肺炎の場合は胸部レントゲン、胆管炎の場合は生化学+エコー、脊椎炎の場合はCT、MRI、感染性心内膜炎は聴診とエコーになるのでしょうか。不明熱?の多くは感染病巣の検索が不十分なことも多く、患者背景(生活歴、基礎疾患、症状の期間、渡航歴、ペット飼育歴など)を聞き漏れていることも多くあるようです。感染症科や総合診療内科へ研修に行ったり、感染症に興味を持ち検討を繰り返し行っていない場合は中々辿り着かないこともあるようです。

結局、何の検査にも引っかからずに不明熱+プレショック。

この時期に多いのが他人より貰う感染症。寒いので部屋は閉鎖的空間ですし、どうしても密着してしまう。インフルエンザが流行するのも何らか関係があるのでしょうか。

こういう場合は何を考えるのでしょうか?

最も怖い原因菌は莢膜産生菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌)と溶連菌は必ず抑えておかないといけないのでしょう。急速に症状が悪化する疾患でもありますし、髄膜炎菌や溶連菌の場合は今後院内感染対策が必要になる場合もあります。

やはり血液培養は必ず施行したい細菌検査の一つです。急性期の場合は大体半日で陽性になります。少し結果が遅れますが今後の診療体制を考えた上で重要でしょう。

下記は9時間後に陽性になった血液培養のスメアです。

どんぴしゃです。連鎖の長い菌で血液培養は溶血が激しい模様。⇒溶連菌を予測して抗原検査の結果A群(Streptococcus pyogenes)でした。菌も見つかれば治療指針も立ち、Natural courseも考えることが出来ます。血液培養は本当に重要な検査です。

6002×1000

こちらも宜しくね。

http://gram-english.cocolog-nifty.com/blog/

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2011年2月11日 (金)

神戸市感染症発生動向調査定点研修会

昨日は神戸市感染症発生動向調査定点報告会でした。神戸市では年に1回、年度末のこの時期に年間を通して行ってきた定点観測の状況と解説を含めて研修会が開催されます。当院は基幹定点のため毎年定点報告をさせて頂いていますが、研修会は平日の昼間開催のため参加が出来なくて困っていました。今回から夜開催に代わり非常に参加しやすくなりました。

定点の研修会では、その1年間の細菌とウイルス動向に加えて、社会的に問題になった感染症を取り上げてその解説をしてくれます。昨日は多剤耐性菌について解説のお手伝いをしました。下記のスライドはその一部です。β-ラクタマーゼ産生の耐性菌をひっかける手順(感受性)です。

定点観測の中には検査室定点というものがあり、細菌の分離状況を毎月提出しています。また、薬剤耐性菌は基幹定点からの報告があります。基幹定点は神戸市は3つ設置されうちもその一つです。基幹定点と言えば、今年から多剤耐性アシネトバクターが増えました。但し、症例定義がしっかりしていません。どうなんでしょうかね?

昨日はKPC、NDMのメタロβ-ラクタマーゼ、多剤耐性アシネトバクターについて話しました。最後にクローン分布についての脅威について話しました。もう既にNDM-1産生のSalmonellaも検出例があります。今後新薬の開発が進まなければ不安な世の中です。

昨日は会場から昨年のA型肝炎のdiffuse outobreakについて質問も出ていました。どの時点でアウトブレイクを察知して動くかは一般医療機関で判断しにくいもので、行政との連絡を密にしていかなければなりません。

皆さんの地区でも同じような研修会(報告会)はされていると思いますので参加されてみてはどうですか?こちらでは感染症指定医療機関の関係者が1人も参加されていなかったのが非常に残念なことでした。何事も意識付けが大切でしょう。

Photo 

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2011年2月 8日 (火)

セミナーのお知らせ

少しHPが汚いので書き直ししました。

セミナーのお知らせです。

臨床微生物学会が主催の感染症セミナーの3回目が開催されます。

このセミナーは昨年から新たに始まった企画で、医師・臨床検査技師・薬剤師・看護師のための感染症セミナーで感染症に焦点を絞り各職種分野の方々一同に考えていく内容です。

次回は下記の要項で開催されます。機会の取れそうな方はご参加宜しくお願いします。

http://www.jscm.org/m-info/57.html

テーマ:『尿路感染症』

日時:平成23年4月3日 13:00-17:00(終了予定) 受付は12:30~

場所:東京大学鉄門記念講堂(http://www2.e.u-tokyo.ac.jp/~jmf/symposium/rinpatsu_map.pdf

東京大学の構内図はこちら(http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html

内容:ケースカンファ2例、検査技師から見た尿培養検査、薬剤師から見た抗菌薬適正使用

募集など:会員、非会員は問いません。臨床微生物学会HPに記載している項目について記載の上、学会事務局へ申し込み(FAXまたはメール)。

定員は280名で平成23年2月28日締め切り。

参加費は2000円(リーズナブル)。

です。詳細はhttp://www.jscm.org/m-info/57.html参照して下さい。

今年はあと2回のセミナー開催予定(7月と11月)です。詳細は後日臨床微生物学会HPに掲載される予定ですのでこまめにチェック下さい。

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2011年2月 1日 (火)

長野県病院薬剤師会 第9回薬剤師専門講座

日曜日は長野県病院薬剤師会にお邪魔しました。

長野県は医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師それぞれの職種で感染症対策が活発な地域です。単独の職種だけでなく、それぞれの職種間での交流も多くていつもながら参考になります。

さて、当日は病院薬剤師を対象にした研修会でした。色々とお世話して頂いた先生、前日の懇親会でお話して頂いた先生には本当に感謝です。

さて、薬剤師さんと抗菌薬、微生物検査はどういうつながりを持つのか?抗菌薬適正使用を目的に院内感染対策に取り組んでいる人、服薬指導の際に患者さんへ抗菌薬について説明する時に接する人、薬剤部で在庫管理、調剤の際に関係のある人まで本当に関係はどの職種よりも深いものだと感じています。

当日は、微生物検査について説明をしていきました。特に薬剤感受性の読み方から最近話題の耐性菌、症例を交えた検査結果の読み方と投薬の際に気をつけることまで、少し盛り沢山に説明していきました(盛り沢山過ぎたかも知れませんが)。

どの職種でも、抗菌薬を処方する際に気になることは、患者の重症度もそうですが耐性菌の検出に注目が集まると思います。耐性菌と言えばMRSAと緑膿菌が頭から離れない菌種で、最近ではMBLやESBLなど範囲が広くなり、より複雑化しています。

しかし、グラム陰性桿菌の中で、緑膿菌はなぜそんなに耐性菌として注目されるのだろう?大腸菌もESBLはあるが、耐性化は緑膿菌より何故少ないのだろうか?そんな疑問を持たれている方は多いと思います。下記(右)は当日のスライドです。

MICの分布状況より、大腸菌については殆どがBP(SのMIC)より低い分布を示しているが、緑膿菌はBP付近にMICの分布が広がっています。裏を返せば、大腸菌は外来の耐性遺伝子を獲得することでMICが上がる⇒つまり耐性化(菌)となるが、緑膿菌は元々、耐性化出来る機序を持ち合わせているために、最初感受性であっても直ぐに耐性(誘導耐性)となることが特徴です。同じくEnterobacter spp.でも、染色体性AmpCを持ち合わせるために緑膿菌と同じことが言えます。

簡単に言えば、その菌が基本的に持っている薬剤耐性機序に判定基準は大きく関与することです。

左の図は喀痰のグラム染色ですが、見えているグラム陰性桿菌がただのGNRで返すのと緑膿菌では無いか?と疑いで返すのと、抗菌薬を初期に選択する際に重要なファクターとなってきます。写真では中型で部分的にクラスター形成しているグラム陰性桿菌が多く見えます。喀痰中の緑膿菌の多くはこのような態度で染色されるため、当院では既に緑膿菌を疑いますとコメントを返すようにしています。例え、大腸菌であっても患者背景より推測することで大きな差が生じないのも安心して言える理由でもあります。これだけでも、選択する抗菌薬が理由付けされますよね。

うちの薬剤師さんとも話しします。服薬指導などではどうしてこの薬を選んだのか?スイッチもしくはde-escalationがどうして行われたのか、検出菌や患者の状態と絡み合わせながら説明をして、指導に役立てるように心掛けています。薬剤師さんの多くは学生時代に微生物の実習をしていますが、卒後少し離れているので忘れがちでしょう。院内に微生物検査室がある場合は必ず訪問して、お互いの業務内容を刷り合わせるようにすると良いアウトカムが望めると思います。

微生物検査室へGO!!です。

Lvfx5600mrsa1 ×1000122 グラム陰性桿菌のMIC分布とBP

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