« 2010年12月 | トップページ | 2011年2月 »

2011年1月24日 (月)

第20回静岡県感染症セミナー

土曜日は第20回静岡県感染症セミナーにお伺いしました。

http://blog.livedoor.jp/lukenorioom/archives/51779730.html

静岡県は非常に微生物検査、感染症診療に熱心な方が多く、2007年に感染症診療支援について迷っていた私は当時、大変お世話になりました。

さて、

当日の内容は微生物検査はラボ内でどのように解釈され、結果が出ているか?

特に皆さん興味があるのは薬剤感受性検査結果だと思います。MICやBPの規則や菌による判定基準の違いなどを半分ほど話をしました。

最近話題のMICクリープ現象については、どう対応しているのかも話しました。本当にMICクリープ現象はややこしいものです。

臨床の医師とお話することは非常に自分自身としてためになります。

今回お世話して頂いた先生、懇親会で楽しい会話をさせて頂いた先生、本当にありがとうございました。

1 当日のスライド1枚

| | コメント (0)

2011年1月17日 (月)

第22回日本臨床微生物学会総会にて

1月8日、9日と2日間、臨床微生物学会総会が岡山県で行われました。

関東圏、関西圏以外の年で、しかも松の内に行われた学会でしたが延べ1700名を超える大盛況で閉会しました。参加された方お疲れ様でした。

会場が岡山駅に隣接していましたが、少し会場が狭かった?ように思えますが、皆さんの熱気に耐えれなかったのかも知れません。メインの会場は700名も入るそうです。

さて、当日参加されなかった方のために記事を書きます。

当日は午後からメイン会場で『第2回医師、臨床検査技師、薬剤師のための感染症セミナー』が開催されました。第1回は血流感染、今回は呼吸器疾患をテーマで、内容は術後肺炎、肺結核、肺真菌症の3つでケーススタディーを開催しました。

私は術後肺炎をメインテーマに進行をしていきましたが、術後肺炎の特徴は術後の無気肺に継続して起こすことが多く、主に術後1-3日に起こすことが多い肺炎です。市中肺炎とは違い、誤嚥が肺炎のキーになり、術後の経過、入院日数、人工物の有無などが背景になってきます。最も大切なのは患者の重症度。更に呼吸管理もそうですが、薬剤耐性菌をどの時点で考えるかです。薬剤耐性菌は予後に関与してくるので本当に深刻な問題です。そりゃ、初期治療からカルバペネム+バンコマイシンという処方であればある程度乗り切れるでしょう。しかし、カルバペネムを乱用するとMDRPの発生を助長しているようなものです。患者の病態を考え、保菌か感染か考えて、治療の必要性、適切な治療計画を立てていかなければなりません。

簡単に言いますと、緑膿菌(に代表される非発酵グラム陰性桿菌)とMRSAを意識した対策を必要とすることです。

今回は、術後経過中に誤嚥⇒無気肺⇒肺炎(MRSA含む)⇒ウイニング⇒また誤嚥⇒肺炎(今回はアシネトバクター)⇒ウイニング⇒最終的にPTEJという経過を辿った事例で考えていきました。

下記はその中の1枚のスライドです。肺炎の治療期間の設計です。患者の状態にもよりますが院内肺炎は7-14日の治療期間を考えて経過を追う必要がありますよね。

本当に当日は非常に優秀な回答者ばかりで関心しました。

感想を何人かに伺いましたが、また何かあればコメントも下さい。

このセミナーは年4回開催予定です。詳しくは臨床微生物学会HPで紹介されますのでコマ目にチェックして下さい。(4/3、7/23、11/12予定です)

http://www.jscm.org/index.html

Photo 当日のスライド

でも入院中の患者が肺炎になり下記のようなスメアが見たらどう考えるんでしょうかね?

18日の出稽古編(最終です)で少し解説します。

600 ×1000

| | コメント (0)

2011年1月 7日 (金)

今週は第22回臨床微生物学会総会

年始め最初の学会はいつも臨床微生物学会です。今回は岡山県で開催されます。

http://www2.convention.co.jp/22jscm/

今回で第22回を迎えます。今年のテーマは「検査から診断,そして感染制御へ」で、臨床的に重要性が増してきた薬剤耐性菌を包括し、臨床微生物学について考えていく内容になっています。

毎年のことながら沢山のセッションがあり、分厚い学会誌肩手に走りまわなければなりません。私は個人的にポスターセッションをいつも楽しみにしております。内容は勿論のことですが、ポスターの色調、配置なども見て、訴えているポイントを見ながらプレゼンテーションスキルを高めようと思っているからです。

皆さんは何を楽しみにされていますでしょうか?

今回、私の担当は寄生虫のWSと第2回感染症学セミナーであります。

・寄生虫WS:コンベンションセンターの407会議室 8日(土)9009日(日)1300

・感染症学セミナー:コンベンションセンターのコンベンションホール 8日(土)15001730

寄生虫WSではアメーバ肺膿瘍の症例提示をさせて頂きます。アメーバ肝膿瘍はあっても肺膿瘍は本当に稀な感染症になってしまったようです。今はCTMRIのような画像診断が進み、発見が早く、そこまで浸潤するようになる赤痢アメーバ症は少ないとお聞きしました。何かディスカッションが出来ればと思っています。

感染症学セミナーは今回呼吸器感染症をメインに取り上げます。私の担当は「・・・・・(内緒です)」。当日のお楽しみです。今回はキーパット方式で解答をしていきますが、インタラクティブセッションでもあるので会場の参加者に直接意見を聴くことがあろうかと思います。その時はご協力お願いします。ただ、私の症例は本当にコモンな症例であり、普段実施している内容や意見について答えて頂くだけになっています。変な内容は思いっきり突っ込んで下さい。私を入れて3つのセッションを設けています。楽しみですね。

それでは、当日学会場でお会いしましょう。

写真は全然関係ありません。たまたま休日出勤している時に陽性になった血液培養です。

染めてみると「おやおや?」。腸内細菌では無いことが分かりましたが血液培養は好気、嫌気共に陽性です。どちらかと言えば、好気の方が菌数が多いような。皮膚科でステロイドを入れて長期入院している患者で、下痢が多いとの情報。「緑膿菌でしょうね。もしかして嫌気性菌も今は否定しきれないのです。」と正直にコメントをし、CAZCLDMAMKで開始となりました。結局、緑膿菌でした。しかもカルバペネムのみ耐性で・・・。カルバペネムは万能ではありませんという教訓が伝えられて良かったと思います。

6001 好気ボトル 6001_3 嫌気ボトル

| | コメント (0)

2011年1月 2日 (日)

姉妹ブログのお知らせ

最近、マンネリ化(他の人も同じような内容を話し始めたので)してきたこともあり?別の趣向で姉妹ブログを立ち上げました。

本道場と共にご愛顧のほど宜しくお願いします。

大体、集に1回程度の更新(月曜日予定)を目指します。

http://gram-english.cocolog-nifty.com/blog/

| | コメント (5)

2011年1月 1日 (土)

目的は一緒だと思う 【本稿は長いのでゆっくり読んで下さい】

あけましておめでとうございます。

本年も本ブログを宜しくお願いします。

今年で4年経ちました(http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_cd05.html)長いようで早い月日です。

さて、年始最初の話題です。

先日、岐阜大学の大楠先生の講演を聞きに行きました。

大楠先生と言えば、菌種同定にもう欠かすことが出来ない方です。同定と言えば、細菌検査室で全てしなければならないことでありますが、どうしても菌種同定が難しい細菌に遭遇することが多いです。

日常的に検出が稀な細菌は臨床微生物学的には情報も少ないため、今後同様な事例と遭遇した場合に非常に大きな情報となり、対象患者に向けられるでしょう。

なので、患者さんの重症度にもよりますが日常検出が稀な細菌の同定は非常に臨床的意義が高いのです。

大楠先生のところは、培地に発育して菌名同定が困難で困った症例のみならず、検査材料(特に無菌材料)からの直接菌の同定を実施してくれます。

下記は先日、当院からも菌種同定の依頼をさせて頂いた検査材料です。

材料は【心嚢液】

患者さんは心タンポナーゼで緊急入院されてきました。黄色の膿性の心嚢液が出て来たためグラム染色を急ぐことになりました。基礎疾患はCNPAと心不全がありました。外科手術はありません。

通常、こういう場合は何を探すのでしょうか?ぶどう球菌を探すのが普通の考えでしょうか?そうです、黄色ブドウ球菌は体中のあちこちから検出されることが多く、特に市中感染症の場合は由来が不明なものが多いからです。

ブドウ球菌を探そうとしていると『何か違うやん?』と思うスメアに出会います。

Fusobacterium600 ×1000(GNR)6002jpg ×1000(GPC)

そうです。ブドウ球菌のような染色性の良い中型の球菌が無く、どちらかと言うと非常に小さな(染色性の悪い?)球菌に加えて、グラム陰性桿菌。

グラム陰性桿菌は、両端が細く、染色性が悪い菌でした。この場合はFusobacterium nucleatumを疑いますよね。頭の片隅に考えておかないといけない細菌ではCapnocytophagaでしょう。

グラム陽性球菌は何でしょうか?染色性の悪い小さい球菌と言えば嫌気性菌で、Fingordia magnaやMicromomonas microsやStreptococcus milleri groupを押さえておかないといけないでしょう。S. milleri groupの場合は好気培養(炭酸ガス)でも1日で何らか確認が出来るでしょうが、前述の2つの細菌は難しいでしょう。しかも嫌気性菌の中でも発育が遅い細菌。

このように、推定菌種や菌種同定までかかる時間が臨床医へ伝えておくべき内容でしょう。

グラム染色報告時に、嫌気性のグラム陽性球菌と陰性桿菌の検出が疑われ、グラム陽性球菌はF. magnaまたはM. micros、グラム陰性桿菌はF. nucleatumが推定されること。過去のアンチバイオグラムからペニシリンの感受性は良いが、一部βラクタマーゼ産生菌が存在することを伝え、ABPC/SBTの選択になりました。

同時に患者情報を追加で聞いたところ、既に1日経口抗菌薬を数日投与されたとのこと。全て発育出来るかどうか不安です。

いつもそうですが、胸部レントゲンとCTは見るようにしております。今回は心拡大を認めているが胸水は認めていませんでしたが、誤嚥性肺炎像と義歯が映っていました。そのことについて検討をして、喀痰を染色すると下記のようになりました。

6001 原因と思われる喀痰のグラム染色

誤嚥性肺炎を疑うpolymicrobial patternに貪食。誤嚥性肺炎が起因になっているかわかりませんが、義歯がハイリスクとして考えれる呼吸器に何か原因があるのでは無いかということに。呼吸器の場合もF. magnaまたはM. micros、F. nucleatumが主たる病原菌になることが多く、推定菌としては繋がってきます。

結局、F. nucleatumは菌が直ぐ検出でき同定も出来ましたが、陽性球菌は検出出来ませんでした。そこで、遺伝子検査をお願いしました。結果は下記のようでした。

S720_mmicros_fnucleatumpcr やって頂いた遺伝子検査

そうです。グラム染色の読みとほぼドンピシャでした。少しうれしい。そういえば、大楠先生も遺伝子検査をする前にある程度菌種情報を頂くのが嬉しいとおっしゃってました

先日の講演に戻りますが、大楠先生は患者背景を聞いて大体どんな細菌が発育してくるのか想像が付くようです。以前は市中病院で働いていたものがベースとなっているのでしょうか。

私はグラム染色で起炎菌の推定をして、大楠先生は遺伝子検査で菌の確定をしています。目的は何より起炎菌を早くして、早く適切な治療開始し、患者予後を良好に持っていけるか、また微生物検査室の質を上げることじゃないかなと聞いていました。目的は一緒だなと改めて感じました。

ただ、なんでもかでも遺伝子検査をすると判ることも多いでしょうが、大体の推定菌が判っていくような簡単な生化学的性状検査は実施してから相談することをお勧めします。病院では微生物検査でしか判らない情報も多いでしょうし、付加価値を高めておくことが大事です。本当に最近は詳しい菌種情報を教えてくれる先人が少なくなっています。教科書や参考書片手に1つ1つ確実に同定手順など覚えておくことが必要ではないでしょうか。

| | コメント (2)

« 2010年12月 | トップページ | 2011年2月 »