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2010年12月17日 (金)

グラム染色は難しいか

本当にブログ更新が進んでいませんですいません。

さて、この土日は近畿医学検査学会に参加してきました。

私は一般のシンポジウムで尿路感染症の細菌検査について話させて貰いました。尿路感染症にとって細菌検査は最も重要な検査になります。それは起炎菌の種類、薬剤感受性を確認することが必要だからです。尿一般検査でも定性検査や沈渣を使えば尿路感染症としてのスクリーニングは可能です。しかし、一般の性状では偽陰性になる菌種、偽陽性になる項目まで複雑に絡み合っています。

一方、細菌検査はどうでしょうか?

培養検査は時間がかかりますが、それを補う?形でグラム染色は役立ちます。

グラム染色は簡単そうですが、奥が深く判断に迷うことが多い検査です。シンポジウムの質問でもありましたが、鏡検で見る標本の数、出会う症例の数によりその上達度は変わってきます。恐らく、尿沈渣や細胞診、血液像もなども同じことが言えるのでは無いでしょうか?我々は患者さんから育ててもらうという性質は変わらない訳で。

最近、良くグラム染色の基本的な内容について相談貰います。染色操作を教育するのはどうするの?とか、染色報告が間違ったらどうするの?とか様々です。

染色は機械でしないので、多くにヒューマンエラーが存在します。良く遭遇するのには以下のようなものがあります。

 ①標本が厚いため染色が出来ない

 ②脱色操作の不備で陽性が陰性に染まる

 ③染色液が悪いため染色がちゃんと出来ない

 ④そもそも鏡検が出来ない などです。

 ⑤適当に考えていたのでちゃんと出来なかった

ヒューマンエラーを回避するには、教育もそうですが、リスクマネージメントも一緒に考えないといけません。

グラム染色所見を間違う場合は、何か原因があります。前述した①から⑤について検証する必要があります。

夜間など馴れない方がグラム染色する時は、典型的な標本を置いておくのも良いでしょうが、染色は劣化するので、写真を置いておくとか教科書を置いておくとかでフォローするしかありません。一番大変なのは顕微鏡を日常使わない人がピントずれを起こした場合。これはどうにかするしかあませんが、ピントを合わせるコツなど記載したり、顕微鏡に目盛りを書いたりするのが良いのでは無いでしょうか?

染色のエラーは、2つの標本を確認するとか、陽性菌(例えばブドウ球菌)と陰性菌(例えば大腸菌)を両側に塗布し、中心に標本を置きちゃんと染色されているかどうか確認させるのも良いでしょう。

染色像の読みは、可能であれば推定菌種を連絡すれば良いですが、普段見ない人の場合は陽性菌か陰性菌かを伝えるだけでも良いでしょう。

それでも改善が出来ない場合は、もう細菌検査の方のオンコール対応するか院内で方法を練らないといけません。解決策は多くありますし、医療機関によって対応も変わります。落としどころも作らないといけないため、日ごろからのコミュニケーションが大切になります。

下記は脱色不十分の緑膿菌です。材料は血液培養です。

染色見ておかしい(どうして血液培養よりコリネ?)と思い再度染色したら緑膿菌でした。誰でも間違いはありますが、未然に防ぐ感性も必要です。

Photo 脱色不良

Photo_2 しっかり染めたもの

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