« 2010年11月 | トップページ | 2011年1月 »

2010年12月20日 (月)

肺炎球菌の由来

細菌検査室に相談がある内容としては、不明熱が多く血液培養の結果も含めて何らかの起炎菌の検索についてが多くあります。発熱疾患の多くが感染症であり、中に細菌も混じってきます。また感染症以外の疾患(例えば、悪性腫瘍とか自己免疫疾患など)も不明熱の原因になります。
とりあえずしなくてはならないのは、血液培養では無いでしょうか?ただし、血液培養は全てをカバーするものではありませんし、発熱してなくても血液培養を採取しなければならない状況は多々あります。
先日、こんな症例に遭遇しました。不明熱で転送されてきた30代の男性です。既往に目立つものは特にありませんが、良く聞くと頭痛があります。3日ほど前から喉が痛かったとの主訴がありました。貴重な情報です。
どうも頭痛の状態が酷いようで、髄膜刺激症状の確認をすると項部硬直がありそうです。ルンバールをして有核細胞数を見ると30個(PMN40%)、髄液糖は75mg。細胞は上がっているがウイルス性も否定出来ないとのことでしたが、グラム染色をすると下記のような菌が出ました。
6002 ×1000(髄液)
少し形が歪ですが、二双性の球菌=肺炎球菌のようです。尿中抗原を使ってみると陽性に。一応ラテックスもしたが同様の結果であった。どうやら、肺炎球菌性髄膜炎のようです。そのまま主治医へ報告すると少し驚いた風に返答が返り、最後に「ありがとう」と。ナイスです。
抗菌薬はPAPM/BPに決まりスタート。デキサメサゾンも3日間投与することになりました。
担当は研修医になり、病棟に上がりディスカッションです。内容はフォーカス探し。
肺はCTまで撮影していますが、特に何も見つかりません。ここで肺炎は除外と・・・。
次は耳鼻科疾患です。副鼻腔炎の単純CTでチェックをすると篩骨洞にどうやら怪しげな液貯留が。副鼻腔炎はありそうだ。中耳炎のチェックもしましたが、これは除外でした。CTを良く見ると海綿静脈洞炎もありそうだ。でも、篩骨洞炎の場合は海綿静脈洞炎は起こりにくいはず・・・。篩骨洞炎の合併では視力障害や眼窩蜂窩識炎も起こすので、そのチェックも怠らず行うも特に異常所見はありませんでした。
翌日造影CTをすると篩骨洞と蝶形骨洞にも怪しげな液貯留が確認されました。同じ副鼻腔炎でも蝶形骨洞炎の場合は海綿静脈洞炎は良く起こします。これで繋がりました。非常にレアな症例と思いつつ、コモンな菌の良くある感染症ということが分かりました。副鼻腔炎って外来治療では?と思い調べていると、悪性の場合は手術適用になり、入院も良くあるとのこと。今回は骨破壊も無く順当に治療が進みそうで何よりです。
で、PAPM/BP治療4日後に副鼻腔炎の排膿をしたところ、未だ菌が居ました。下記を参照。
このスメアでは陰性菌として見えてしまうことがポイントです。すでに抗菌薬の作用を多く受けていますのでちゃんと染まらない可能性があります。しかし、既にフォーカスや起炎菌ははっきりしている訳で肺炎球菌かな?という推測が付きます。今更成人でモラクセラやインフルエンザ菌が新たに出てくる可能性はもっと低い訳で。培養で発育しないかもしれないくらいの勢いで考えないといけませんね。
肺炎球菌はしつこい菌です。どこから感染したか分かりませんが、家族歴を聞くとどうやら子供が急性中耳炎の治療中だそうです。怪しい。血清型を調べると19Fだった。19Fは成人に少なく小児に多い莢膜血清型。どうやら子供から感染した疑いが強まったが、患者本人が保菌していた可能性も少し残ることになり、後は患者さんの免疫状態のチェックを細かく行い調査終了です。
この時期は肺炎球菌感染症が増えますよね。即座の情報収集が大事だなあと毎年感じるこの頃です。
6001_2 ×1000(副鼻腔:紅くて判りにくい)
6002_2 ×1000(副鼻腔:これならなんとか)

| | コメント (0)

2010年12月17日 (金)

グラム染色は難しいか

本当にブログ更新が進んでいませんですいません。

さて、この土日は近畿医学検査学会に参加してきました。

私は一般のシンポジウムで尿路感染症の細菌検査について話させて貰いました。尿路感染症にとって細菌検査は最も重要な検査になります。それは起炎菌の種類、薬剤感受性を確認することが必要だからです。尿一般検査でも定性検査や沈渣を使えば尿路感染症としてのスクリーニングは可能です。しかし、一般の性状では偽陰性になる菌種、偽陽性になる項目まで複雑に絡み合っています。

一方、細菌検査はどうでしょうか?

培養検査は時間がかかりますが、それを補う?形でグラム染色は役立ちます。

グラム染色は簡単そうですが、奥が深く判断に迷うことが多い検査です。シンポジウムの質問でもありましたが、鏡検で見る標本の数、出会う症例の数によりその上達度は変わってきます。恐らく、尿沈渣や細胞診、血液像もなども同じことが言えるのでは無いでしょうか?我々は患者さんから育ててもらうという性質は変わらない訳で。

最近、良くグラム染色の基本的な内容について相談貰います。染色操作を教育するのはどうするの?とか、染色報告が間違ったらどうするの?とか様々です。

染色は機械でしないので、多くにヒューマンエラーが存在します。良く遭遇するのには以下のようなものがあります。

 ①標本が厚いため染色が出来ない

 ②脱色操作の不備で陽性が陰性に染まる

 ③染色液が悪いため染色がちゃんと出来ない

 ④そもそも鏡検が出来ない などです。

 ⑤適当に考えていたのでちゃんと出来なかった

ヒューマンエラーを回避するには、教育もそうですが、リスクマネージメントも一緒に考えないといけません。

グラム染色所見を間違う場合は、何か原因があります。前述した①から⑤について検証する必要があります。

夜間など馴れない方がグラム染色する時は、典型的な標本を置いておくのも良いでしょうが、染色は劣化するので、写真を置いておくとか教科書を置いておくとかでフォローするしかありません。一番大変なのは顕微鏡を日常使わない人がピントずれを起こした場合。これはどうにかするしかあませんが、ピントを合わせるコツなど記載したり、顕微鏡に目盛りを書いたりするのが良いのでは無いでしょうか?

染色のエラーは、2つの標本を確認するとか、陽性菌(例えばブドウ球菌)と陰性菌(例えば大腸菌)を両側に塗布し、中心に標本を置きちゃんと染色されているかどうか確認させるのも良いでしょう。

染色像の読みは、可能であれば推定菌種を連絡すれば良いですが、普段見ない人の場合は陽性菌か陰性菌かを伝えるだけでも良いでしょう。

それでも改善が出来ない場合は、もう細菌検査の方のオンコール対応するか院内で方法を練らないといけません。解決策は多くありますし、医療機関によって対応も変わります。落としどころも作らないといけないため、日ごろからのコミュニケーションが大切になります。

下記は脱色不十分の緑膿菌です。材料は血液培養です。

染色見ておかしい(どうして血液培養よりコリネ?)と思い再度染色したら緑膿菌でした。誰でも間違いはありますが、未然に防ぐ感性も必要です。

Photo 脱色不良

Photo_2 しっかり染めたもの

| | コメント (0)

2010年12月 9日 (木)

Staphylococcus aureusは由来が判らない?

Staphylococcus aureus が関与する感染症は奥が深いですね。

 先日、外来から濁った胸水が出てきました。恐々臭うと臭いがない!もう、ここでPeptostreptococcusやFingordia、Micromonas のようなメジャーな嫌気性グラム陽性球菌は除外できそうです。もし、陽性球菌が見えたら、菌の染色態度、大きさを見て、嫌気性菌なのか推測しましょう。

 単一菌の場合、臭いがない検体の中に、嫌気性陰グラム性桿菌があります。もし、陰性桿菌なら、紡垂状(F. nucleatum)や中央が膨れた菌(F. necrophorum)を探しましょう。F. necrophormの場合ならルミエール症候群も忘れずチェックですね。

 人工物が挿入されていたり、穿刺や術後の場合ならブドウ球菌は外せない代表菌でしょう。陰性桿菌なら緑膿菌は外せないので一部集塊が見える中型の染色性の悪いものを探しましょう。

 ブドウ球菌が見えたら、病原性の高い黄色ブドウ球菌かどうかの鑑別って大事ですが、やがり、培養を待たないと何とも言えない局面は多々あると思います。市中感染の場合で黄色ブドウ球菌が血液から検出されればどうでしょう。今回はコンタミの可能性がないと考えます。

 Arch intern med,2002,162,25-32.によると、市中感染では侵入門戸が不明な事が多く、皮膚病変を多くに認めたしうです。気付いたら血液培養陽性ですってこともあり、心内膜炎や骨髄炎なんて事例も多いようです。文面にはありませんが腸腰筋膿瘍なんて結果も招くかもしれません。一方、病院内感染の場合、CVラインが45%、術後創部感染が16%と意外にフォーカス探しは簡単かもしれません。

 死亡例を見てみると、感染源特定が出来ない、ショック、60歳以上の高齢者で多く、適切な抗菌薬にて14日以下の治療群で多く認めたようです。適切な感染源特定と抗菌薬治療にはしっかりとした診断が必要で、適切な検査でしっかりと菌検出することが重要です。

下記は、黄色ブドウ球菌の市中感染の膿胸でした。思わず連絡しました。

勘に頼る面もありますが、MRSAと思ったからです。同時に喀痰も見ました。同一のものと判りました。気道由来のものと照合してMRSAと思いますと報告しました。

培養するとMRSAでした。良かったのかな?

Mrsa_6001 胸水 Mrsa_6001_2 喀痰

| | コメント (0)

2010年12月 2日 (木)

久しぶりに新型インフルエンザのネタ

11月29日に新型インフルエンザ対策会議があったようです。主な内容はワクチンと行動計画の改定です。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000xih0.html

内容が濃すぎて、隈無く見た訳ではありませんが、発熱外来は無くなるようです。仮名ですが、接触者外来という名称変更ですが、医療関係者はわかるでしょうが、一般市民は接触者と言って素直に理解出来るもんでしょうか?接触者って、あたかも汚いものに触るような表現ですが、病原性が確定していない状態で感染者に対する配慮に欠けているように感じます。でも適切な表現は難しいそうな課題かも知れません。

後は、水際対策って名前も無くなります。検疫も縮小するのか?入国者の感染状況も保健所に業務内容を譲渡するようです。保健所がそれだけのマンパワーが期待出来る訳でも無く、検疫業務を保健所にさせようとするのは、ちょっと違うように思います。

行動計画で変わったのは地域の発生状況を考慮して、地域で行動計画を変更出来る点です。措置入院も迅速検査陰性で軽症なら自宅待機のようです。一般医療機関でも入院可能で、感染症指定医療機関以外にも、日赤、済生会系列病院も協力するようにとのことらしい。コンセンサス取れてるんでしょうか?決定基準が不明確ですね。

重症度に応じた行動計画は解りますが、病原性の高低について分からない間の措置入院は必要と思います。神戸市では昨年度の教訓を基に新たな行動計画を策定しました 。概ねこの改定に沿っているので良かったと感じています

Photo

| | コメント (0)

« 2010年11月 | トップページ | 2011年1月 »