重症肺炎球菌感染症のグラム染色
重症肺炎球菌感染症は1年中を通してやってきます。しかも、たまに重症化します。そのため、グラム染色では確実に捕らえたいスメアの1つです。グラム染色をする場合、抗菌薬が投与されていない条件下において、良質な喀痰が採取されると60-80%は見つかるが、質の悪い喀痰の場合はそれが20%以下になります。質の悪い喀痰だと口腔内の常在菌が検出の邪魔をするからでしょう。 そして、肺炎球菌を捕まえるためにはその特徴的な形態を認識しておく必要があります。何の説明も無く街中を歩いている人にブドウ球菌と肺炎球菌のグラム染色像を見せても解らない でしょう。
でも、グラム染色に長い間携わっていてもその特徴的な形態には惑わされることが多くまさに魅惑の細菌では無いでしょうか?
下記は先日見えた肺炎球菌の喀痰グラム染色でこの1枚は集約されたスメアです。莢膜が抜けて見えるもの、莢膜が紅く染まるもの、莢膜がハッキリと確認出来ないもの、菌が自己融解して染色性が落ちたもの、貪食され染色性が落ちたものと多彩な形態を取っています。莢膜が紅く染まっているものはムコイド型肺炎球菌の典型的な形態です。
加えて言うなら、赤褐色の喀痰は肺炎球菌性肺炎時に出る特徴的な性状です。そこで肺炎球菌がこのように一面に見えた場合は正にEmergency!。直ぐに電話して伝えましょう。 伝える時には、血液ガスデータ、白血球数、CRP 値などのラボデータを確認し、主治医に肺レントゲン所見、状態など聞いてグラム染色との擦り合わせをすると良いでしょう。また、肺炎球菌性肺炎に成りやすい要素(摘脾、脾臓機能低下、脳血管障害の既往症など)、肺炎球菌ワクチン接種歴、感冒などの前駆症状、髄膜刺激症状などが無いか聞くと良いでしょう。意外にアセスメントするときにチェックが忘れられいる可能性があります。その辺の聞き込みをスムーズにするのであれば、日常的に主治医とのコミュニケーションを図っておくのが良いでしょう。
肺炎球菌のグラム染色像を読むことはクリスチャン・グラムがグラム染色を考案そた由来になる位で昔から問題視されてきたものです、確実に捕らえるよいに必ず取得したいスキルの1つですね。
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