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2010年11月26日 (金)

果たして

先日重症肺炎球菌肺炎の話を掲載しましたhttp://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-b2fd.htmlが、肺炎時には必ず血液培養を同時採取してくると思います。

血液培養で肺炎球菌が発育すると、素直に分離させてくれれば良いのですが栄養価が高いために直ぐに自己融解してしまい分離が非常に難しい場合が存在します。グラム染色では何も見えない状態になりますが、慣れてくると肺炎球菌のゴーストかな?という像は確認出来ます。また、くまなく観察していると残存している肺炎球菌らしきグラム陽性球菌も見えることがあるが、それがスメア上で肺炎球菌であると言い切れる自身は無くなる状況です。

菌が見えなくても抗原は培養液には残っている訳で、遠心分離した上清を尿中抗原のキットにかけると陽性になることもあります。ただし、培養液自身に色々な添加物が入っているために偽陽性になることもあります。本当に陽性の場合は陽性バンドが非常に強く出てくるので区別出来るかな?の段階まで進みます。

肺炎球菌感染症の迅速検査キットでもう直ぐ新しいのが出てきます。今回のは尿中抗原では無く、気道分泌物からの検出が可能なのに加え、莢膜抗原では無くC-ポリサッカライドを検出するものです。感度・特異度ともに既存のものよりは良さそうなデータになっているのですが、臨床例も少なくこれからのデータ蓄積が大切です。

調度、肺炎球菌で自己融解したものがあり培養液の上清を測定してみましたがキレイに出ました。培養液自身は見事陰性で、本来の目的からズレますが使えそうな雰囲気です。データを少し取り始めましたので、またどこかで報告します。

やはり検査室はこういったキットの評価もしていく場でありますので、しっかりと評価したいですね。

6001 自己融解している肺炎球菌

Dsc01541 培養陽性液の抗原検出(左が莢膜抗原、右がCポリサッカライド)

写真反対ですいません。

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2010年11月22日 (月)

臨床検査技師の皆さま、次回は是非参加を!!

21日、22日の両日は環境感染学会の医療疫学セミナーを実務委員で参加していました。

私事ですが、ここ数年英語論文ばかり読むようになってしまいました?。理由は日本語の論文、参考書を読むと必ずといっても良いほど英語論文が引用されているからです。要するに、日本語で記述されている内容を自分の知識として吸収するに正しいことか否か評価したりするからです。理由は背景として研究データの解析がpoorだったり、デザイン自体にバイアスがあったり、主観が入っているものが多いからです。

つまり、英語論文を読むメリット情報を速く、正確なものも多く自分自身のスキルアップに必要性が生じて来たからです。

『英語なんて…とほほ』って思ってる人、ご安心を。私、師範出前学生時分は英語が大の苦手教科。今や辞書無く読める程になります。コツはありません。ただ読む量を増やすだけです。

英文を読むと必ずと言って良いほど疫学情報が付随してきます。主なものに、検査前確率、χ2乗検定、オッズ比、95%信頼限界、p値などなど。自分が興味深いと思った検査法や治療法なんかも読まないといけない。英語で書いているから信頼できるって思い込んでませんか?

今回のセミナーはそんな悩みも払拭してくれます。丁寧に疫学の読み方、デザインの作り方、検定、評価方法まで教えてくれます。臨床検査技師として職場で働いていると疫学と接する機会が少なく苗がしろになってしまいます(生化学してるとちょっと違うけどね)。微生物検査室で働く場合は医療関連感染との関わりが深く、epicurveを引いたり、暴露調査もする機会もあると思います。現場で働くICNやICDの仕事だと勝手に決めつけてはいけません。微生物検査は医療関連性感染を証明、否定する立派なエビデンスの基。委員会でこの結果よりこんな結果が導かれましたって言ってやりましょう。

残念ながら、今回の参加者でお会いした臨床検査技師はたったの3人。看護師、医師、後は薬剤師の順に参加者は多かった。特に看護師の熱意は会場にムンムンとした熱気が漂ってました。実務委員をしていて、あの熱気を臨床検査技師も持って頂きたいとヒシヒシ感じていました。残念です。

このままでいくと、次年度もこの時期にセミナーが開催予定です。来年は未菜さん是非参加し、スキルアップをして、医療関連感染に貢献しましょう。

余談ですが、最近アメーバーピグにはまり、ブログ、Twitter活疎かになってすいません。アメーバーピグ面白いので機会があればしてみて下さい。

Dsc_0038 会場の風景(2日目)

Dsc_0037 会場(東京医科歯科)から見た風景(御茶ノ水駅は左下)

東京医科歯科大病院の検査室覗きたかったですが、機会が無くW残念...

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2010年11月21日 (日)

重症肺炎球菌感染症のグラム染色

重症肺炎球菌感染症は1年中を通してやってきます。しかも、たまに重症化します。そのため、グラム染色では確実に捕らえたいスメアの1つです。グラム染色をする場合、抗菌薬が投与されていない条件下において、良質な喀痰が採取されると60-80%は見つかるが、質の悪い喀痰の場合はそれが20%以下になります。質の悪い喀痰だと口腔内の常在菌が検出の邪魔をするからでしょう。 そして、肺炎球菌を捕まえるためにはその特徴的な形態を認識しておく必要があります。何の説明も無く街中を歩いている人にブドウ球菌と肺炎球菌のグラム染色像を見せても解らない でしょう。

でも、グラム染色に長い間携わっていてもその特徴的な形態には惑わされることが多くまさに魅惑の細菌では無いでしょうか?

下記は先日見えた肺炎球菌の喀痰グラム染色でこの1枚は集約されたスメアです。莢膜が抜けて見えるもの、莢膜が紅く染まるもの、莢膜がハッキリと確認出来ないもの、菌が自己融解して染色性が落ちたもの、貪食され染色性が落ちたものと多彩な形態を取っています。莢膜が紅く染まっているものはムコイド型肺炎球菌の典型的な形態です。

加えて言うなら、赤褐色の喀痰は肺炎球菌性肺炎時に出る特徴的な性状です。そこで肺炎球菌がこのように一面に見えた場合は正にEmergency!。直ぐに電話して伝えましょう。 伝える時には、血液ガスデータ、白血球数、CRP 値などのラボデータを確認し、主治医に肺レントゲン所見、状態など聞いてグラム染色との擦り合わせをすると良いでしょう。また、肺炎球菌性肺炎に成りやすい要素(摘脾、脾臓機能低下、脳血管障害の既往症など)、肺炎球菌ワクチン接種歴、感冒などの前駆症状、髄膜刺激症状などが無いか聞くと良いでしょう。意外にアセスメントするときにチェックが忘れられいる可能性があります。その辺の聞き込みをスムーズにするのであれば、日常的に主治医とのコミュニケーションを図っておくのが良いでしょう。

肺炎球菌のグラム染色像を読むことはクリスチャン・グラムがグラム染色を考案そた由来になる位で昔から問題視されてきたものです、確実に捕らえるよいに必ず取得したいスキルの1つですね。

2001 ×100

6002 ×1000

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2010年11月16日 (火)

微生物検査室のぼやき

研修生と話ししていると勉強になることが多いです。

自分の知識を教えることの難しさもそうですが、微生物検査室としてどのように臨床に貢献していっていいのか?と考えさせられることが多いです。

今回良く聞いたのが、微生物検査室の場所が分かりにくいというほぼ愚痴。確かにそうかもしれません。微生物検査室は大抵病院の隅に設営されています。勿論窓からの景色は非常に悪く、地下って病院もあるようです。そこまで、要無しかよ!って思われている検査担当者も多いんじゃないですか?閉鎖空間は人のイマジネーションを抑制します。本当にこんなので良いのでしょうか?ついぼやいてしまいますよね。ちなみに、うちは恵まれており上階の景色が良い場所ですけど。すいません。

院内に微生物検査を設置するメリットは感染症患者のマネージメントを早くするため。こんな隅じゃ、活躍出来ません。せめて病院の中心にとは言いませんがアクセスしやすいような状態にするべきと再度ボヤキます。

下記は先日の実習風景です。

ICN研修生の実習では寄生虫の実習も行います。

メインは原虫、虫卵、成虫の確認です。

ちなみに昨年の写真はこんなのです

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/icn-1b8f.html

今年は虫卵を混ぜて確認出来るかどうかをしました。その一つです。右が鞭虫卵、左が肝吸虫卵です。鞭虫卵は両側に蓋(卵蓋)が、肝吸虫卵は片側(写真では下向き)に確認出来るでしょうか。あの蓋は卵が成熟するとパカッと開いて中身が出るようです。

Photo

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2010年11月 9日 (火)

ICN(だけの?)ぼやき

中々忙しくて、ブログ更新出来ていません。楽しみにしている人すいません。

先日はICN研修生の講義および実習でした。実習は講義で退屈?なにと売って変わり、手を動かしながら、生化学性状など色の変化を視覚的に確認するため楽しい日々です。

ICNの方と会話をしていて、話題に上がるのは検査室とのコミュニケーション。感染管理のために必要な資料提供をお願いしても、『忙しい』と一辺倒に断られることもあると言います。依頼時にも目的を明確にし、介入方法の相談に乗って貰うように持っていくとか工夫は必要ですね。

更に動きが悪いのは、外部委託の場合。普段、微生物を扱っていない検査室の職員相手なので、例えば、指定する検出菌の臨床的意義から、薬剤耐性菌の定義決めまで程遠い場合もあります。中間で解釈し、繋いでくれるような人材が重宝がられます。特に外部委託の場合は、委託条件の確認は必要で、検出菌の決定条件が委託契約内容に記載ないのかも知れません。例えば、痰からはMRSAが必須ですが、後は特に指定しないと、ESBLが出ていても、口腔内常在菌しか検出出来ていませんなど…。必ず委託契約内容の確認は重要な事項なので、確認下さいね。

また、院内検査室でも詳細は聞いて損は無いと思います。

下記は実習風景です。MRSAはこうして同定してるんですよって教えています。

Dsc_0027

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2010年11月 1日 (月)

第8回神戸グラム染色カンファレンス その2

先週の解説です。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/8-eb13.html

皆さんはグラム陽性桿菌というのは判ったと思います。

グラム陽性桿菌は臨床分離される機会が多い割りに、臨床的意義が低いため注目されにくい菌群です。

一昔前はグラム染色で多くの菌種を推測し報告するのはタブーという風潮がありましたが、今は少しずつ菌種の推定報告をする機会が増えて来ました。

グラム陽性球菌に関しては、グラム陽性球菌のグラム染色報告時に【ブドウ球菌なのかレンサ球菌】なのかが大事なように、グラム陽性桿菌も簡単な推定菌報告は必要だと思います。

グラム陽性桿菌の場合は、分類上大事なのは有芽胞なのかどうか。院内感染対策上消毒薬の選択も異なるからです。また、分岐状なのか、短いのか、長いのか細かい情報は臨床に、検査室の同定に使うこともあり、どういう形態の菌でどの菌を推測しているのかという報告も大事です。同時に、感受性試験の方法、薬剤の決定から、既存のデータによる感受性率の報告まで、あまり馴染みの無い菌種については情報を多く持ち提供する事が大切ですね。

結局、この菌は同定したら、Propionibacterium acnes。初めはCorynebacterium sp. かどうかの鑑別付かず報告。翌日好気培養で菌の発育が無かったのでP. acnesの可能性大と追加報告しました。抗菌薬はVCMを推奨し奏功しましたが、培養も開始されていない状況で信頼性のある抗菌薬はこれしかありません。それはグラム陽性桿菌はβ-ラクタムの感受性が悪いものが中にはあるからです。

やはり、こういった症例を対象にした場合、ブドウ球菌やグラム陰性桿菌の検出もあるかと思われるのですが、グラム陽性桿菌と報告するだけでも大きな収穫間違い無しです。

1 鑑別その1

2 鑑別その2

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