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2010年10月18日 (月)

形状変化

twitter上で少し話ししましたが・・・。

一般に抗菌薬が作用すると、菌は脆弱化もしくは死滅してグラム染色や培養で起炎菌の確定が難しくなります。しかし、抗菌薬が作用し始めて直ぐの時は、菌の形状変化のみ起こり培養でも発育してくることがあります。

私たちは日常、グラム染色で推測する起炎菌の形状や染色性をアトラスなどの既存の情報により知り、それにより鑑別していく癖がついています。そうした時に抗菌薬が作用している像などは日常的に観察している中で漸く覚えていくものになります。グラム陰性桿菌で見かけることが多いと思います。

良く見かけるのが菌の延伸化。β-ラクタム薬であるとPBPに作用し、バルジ化と呼ばれる菌の両側に延長した形です。良く見ると菌体の中央部が膨れているものも確認出来るでしょう。もう一つはキノロンです。キノロンは何故延伸するのでしょうか?作用機序から考えるとDNAが折りたとめないために延伸化するのでしょうか。

あと、膿瘍など移行が悪くMIC以下となっているかも?と推測する場合にも延伸が良く確認されます。

代表的な染色像を掲載しておきます。

こういった像を確認すると発育しないかも知れない、抗菌薬が既に投与されているかもしれないという情報共有することが大切です。

Photo 肺炎桿菌のABPC/STB投与後1時間後

Photo_3 大腸菌LVFX作用後(投与時間不明)

600エンテロバクター 肝膿瘍CPZ/SBT投与後2日目

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コメント

初めて投稿させていただきます。いつも勉強させていただいています。
素人的な質問で申し訳ありませんが教えてください。私も時々このような菌を観察することがあります。このあと、これらの菌はどうなっていくのでしょうか?このような形態変化が観察されれば、抗菌薬は効いた、と判断してよいのでしょうか?それとも、もう少し高濃度or長期間使用した方が良いのでしょうか?
よろしくお願いします。

投稿: Nao | 2010年10月18日 (月) 09時15分

菌の形状変化が起こってるのは抗菌薬が作用していると考えるのが普通でしょう。しかし、効いてると作用しているとはニュアンスが少し異なるので、治療が奏効する可能性があるとは考えれます。セフェムで有ればこのまま延伸して溶菌します。余談ですが、カルバペネムの一部は球状変化で溶菌するので違う場合ありますね

投稿: 師範手前 | 2010年10月18日 (月) 12時23分

尿路感染に数日間セフェムを使用して、形態変化が観察され、さらに同じ抗菌薬投与を1週間続けた後にもまだこのような変形した菌が観察されたことがあったもので、変形していても生きているのかとも思っていました。ありがとうございました。

投稿: Nao | 2010年10月18日 (月) 21時49分

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