嫌気性グラム陽性球菌
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グラム染色に馴れてくると、菌の形状や染色性の違いに気付き、鑑別が出来ないかという疑問に当たります。
検査室で翌日培養を確認すると覚えるスピードは早いですが、普段培養を確認しない(出来ない?)方々は少し技術の取得が遅れるかもしれません。
グラム陽性球菌を例に取ると、まず連鎖状とかぶどう状とか気にしながら見て、1つの菌に対する細かい形を観察します。連鎖状の菌でも、E. faecalis やS. pneumonia は楕円形に見える事が多いので、患者背景や感染部位を考慮すると、より起炎菌の推測に大いに役立ちます。
嫌気性菌はどうでしょうか?膿瘍を染色すると見えることがありますが、嫌気性グラム陽性球菌は染色性が劣って見える事が多いです(下記の写真参照 Peptostreptococcus sp.)。但し、標本を厚く作製してしまった場合は染色事態が悪く見誤る可能性があるので、白血球が重ならないほどの厚さか、新聞紙の文字が見えるほどの厚さに標本を作製することがポイントです?
あと、面白いのが感染症の臓器別に起炎菌の傾向が若干変わること。ためになります。CMR,Jan. 1998, p. 81–120
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コメント
いつも勉強させていただいています。
亜急性期病院に勤める一般内科医です。
グラム染色を見ながらいつも、なんとか鑑別できないかと考えております。S.pneumoniaeやE.coliならばわかるようになりましたが、その他は勉強不足のため鑑別は難しいと感じています。
先日も入所中の80歳男性、COPDの方が肺炎になりました。
喀痰(Geckler5、M&J P1)のグラム染色を見てみると、白血球の核が鮮明で新鮮な炎症像と判断しました。グラム陰性の双球菌、少量グラム陰性短桿菌も見えました。前者については貪食像もいくつかありました。
おそらくMoraxella catarrhalisだろう。他の鑑別としてはH.influenzae、Acinetobacterも可能性はあるかな、菌の形態からP.aeruginosaはおそらくないだろうと考えました。
しかし、喀痰培養ではP.aeruginosaが有意に培養されました。
グラム染色の所見と培養の所見が一致せず、なんとも納得がいかない結果でした。
私のグラム染色の読みが悪かったのか、それともMoraxella catarrhalisは培養で生えにくくて、P.aeruginosaは生えやすいのか。なかなか自分の予想通りには行かない日々です。
投稿: のりすけ | 2010年9月 3日 (金) 09時31分
そうですねえ。この患者背景では緑膿菌は外せませんね。すでにグラム染色で陰性桿菌が確認出来ていますので菌量が多いことになります。モラクセラは単一に発育しないと釣菌しにくい事や非病原性ナイセリアとの区別が難しくなるのが多いので、目的菌にコメント入れる方が分かりやすいです。成績を一度取りましたが塗抹陰性でも緑膿菌が培養陽性だったのは20%もありショックでしためげずに頑張りたいと思います
投稿: 師範手前 | 2010年9月 3日 (金) 13時05分
師範手前様
お返事ありがとうございます。
師範手前様でも、グラム染色で陰性と判断しても培養で生えてくることがあるのですね。未熟な私にはまだまだそんな判断できそうにないと改めて思いました。
患者さんですが、グラム染色上は緑膿菌ではないと判断しましたが、ご指摘の通り背景を考えると緑膿菌ははずせないのと、誤嚥の可能性も否定できなかったので、PIPC/TAZで加療しました。
投与開始後2日目に解熱し、本人も元気になってきました。
もし緑膿菌による肺炎だとすると解熱するのにもうちょっと時間が
かからないのだろうかと疑問に感じましたが。
グラム染色で見えなくても培養で生えてくることもあり、
培養で生えても起炎菌ではないこともある。
何を信じていいのかわからなくなってしまいます。
もっと経験を積んで勉強していこうと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: のりすけ | 2010年9月 3日 (金) 14時45分
のりすけ様 熱意のあるコメントに感動しています。
グラム染色ですが、ある一定の菌量が必要になります。ご存知と思いますが、グラム染色で確認するにはだいたい10の4乗以上は菌量が必要です。そのためHAPやHCAPの場合は免疫力と抗菌薬がパラメータに入ってきており、文献どおりの可能性は期待出来ないことが多くあります。そのため、患者背景の認識が非常に重要になります。特に緑膿菌感染症の場合は特徴的です。過去に緑膿菌検出歴があるのか?CFやIP、COPDなどの呼吸器疾患がベースにあるのか無いのかというのは喀痰グラム染色を見る上で非常に重要なパラメーターになります。
なので、pureな市中肺炎で無い限り、培養検査の結果により治療方針が変更になったりすることが多いと思います。この場合、グラム染色では炎症細胞の有無を含めた適切な材料採取が出来ているかどうかが大きな判断基準になります。VAPなどは白血球の有無が大きなものになると思います。
投稿: 師範手前 | 2010年9月 3日 (金) 21時56分
師範手前様
なるほど、グラム染色で見えなくても10の4乗未満の菌は存在する可能性があり、その程度の菌量であっても起炎菌かもしれない。市中感染症であれば問題になることはない(?)が、患者背景(免疫力が低下している、慢性呼吸器疾患など)によっては、グラム染色で見えない菌についても起炎菌である可能性を考え、治療していくということですね。勉強になります。(間違っていたらすみません)
グラム染色や培養について教えてくれる師匠が身近にいないので、この道場で勉強させていただいております。このブログで見つけて前から気になっていたDIRECT SMEAR ATLASも読んでみようと思います。
長文失礼しました。
投稿: のりすけ | 2010年9月 4日 (土) 15時25分