検査室は知っている?
細菌検査室では、検体が提出されてから最終報告されるまで、グラム染色⇒同定⇒感受性というプロセスで進みます。
多くの検査室ではグラム染色の結果で培養する方法を練り、培養結果から同定菌を推定し、同定が決まればそれに見合った感受性検査を実施するからです。
最終同定を待つ前に推定してきた結果が違ったなんてこともたまにあります。
間違いに気付く機会は
①グラム染色で見えた菌と違う菌が発育した⇒グラム染色の感度が悪い、培養条件が悪い
②推定菌と同定結果が違った⇒類縁菌が多く、大まかな生化学性状では分類出来なかった
③最終同定で違う菌になった⇒感受性結果と菌種の耐性が合わないため気付いた
などです。
グラム染色もどうですが、細菌検査は主観的な考えが横行し、経験則がものを言うケースが多いです。学生実習で学ぶことは実践向きではなく、いかに現物を見るかどうかです。
下記はFusobacterium nucleatumです。グラム染色も一緒に掲載します。培養でこのようにキレイに発育するとホッとする瞬間です。
2日程度培養すると、周囲がギザギザでアイボリー色の小さな集落です。
下記のスライドは、好気培養しか依頼が無かったが、グラム染色で嫌気性菌を疑い追加で検査を実施したものです。Fusobacteriumは臭いもありません。
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コメント
想定した細菌が培地上に生えた時には、ビンゴッと言いたくなる気持ちでしょうね。その結果を、臨床医の先生が、「えっ、そうだったのか!それなら早速・・・ありがとう。」と治療上に迅速に対応してくれたら、共に患者さんの病気に力を合わせて立ち向かい、協業で治療していく、そんな場面を感じられると、仕事に自身と誇りとやりがいに繋がりますね。
僕のような診療所医師にとって、提出先の外部委託先の検査技師さんは顔も見えない相手です。検査結果について、たまに問い合わせる時に、電話口の向うで「この医者は何を聞いてくるのだろう」みたいな、ちょっと緊張感にこわばった声が伝わってきます。電話で顔の見えない相手だからこちらも余計に気を使って話します。
委託先と委託された側、みたいなビジネスライクな冷めた関係よりも、「先日の培養結果、有難う。あの後患者さんは、結果をみてこういう治療に変えて、こんなに良くなったよ。助かった。」と言うようなやり取りが合ったほうがいいのだろうな、と思いながら読みました。
ちなみに、細菌の同定には何種類もの培地を使うことになるのですね。出す側は委託検査料は一律決まっているけれど、そこに費やされる培地の数によっては、ひょっとして検査センター側が赤字になるなんて事はあるのでしょうか?赤字覚悟までは当然ビジネスだからしない?そのあたり、検査技師さんの職人としての追求度合いで変ってくるものなのでしょうか?
結局ぜんぜん判らないので、百聞は一見にしかず、で、一度細菌検査室を覗きに行ってみるべきですね。
投稿: 三省 | 2010年7月25日 (日) 00時16分