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2010年7月29日 (木)

芽が出て膨らんで

芽が出て膨らんで見える菌があります。

分類学的には有芽胞菌という菌種になり、グラム陽性桿菌の中にあります。

代表的なものですが、好気性菌ではBacillus属、嫌気性菌ではClostridiumがメジャーです。

グラム染色で良く見かけるのは、Clostridiumだと思います。

Clostridiumは芽胞がある位置、形である程度菌種が鑑別出来ます。それは培養した集落から染色した場合も同様です。芽胞の位置は先端か、それに近いところや複数かなど。芽胞の形は卵形なのか球形なのかが鑑別性状として確認したい事項です。

最も臨床で分離されるClostridium perfringensは芽胞を形成することになっていますが、普段芽胞はあまり見えないことが多く、教科書的に観察すると少し混乱するかもしれません。

芽胞のそもそもの役目は、自分が生育する時に外部環境が悪くなる(有酸素下など)と形成しやすくなります。芽胞形成をすると卵のように一時期休眠状態になり、環境が良くなると菌体形成へ戻すことが知られています。一般に芽胞の有無は抗菌薬選択に影響することは少ないですが、Clostridium difficileの場合に使用するVCMは休眠期の菌に対しては効果が弱いという報告もあります。抗菌薬を使用が長期間になると環境が悪くなり、休眠状態になり、細胞壁合成も緩慢になるためだと言われています。しかし、芽胞で、CLDMに一部耐性化が報告されている菌種、毒素産生のため抗毒素療法が必要な菌種など推定出来ることもあります。

院内感染対策では消毒薬の選択と大きく関係があり、一般の消毒薬が無効なことがありますので、良く考えないと撒き散らすということになりかねません。

最後に、注意する菌としては破傷風菌やボツリヌス菌などあります。形状は覚えておいて損はしないと思います。

写真はClostridium sporgensの培養菌のグラム染色です。芽胞がキレイです。

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2010年7月26日 (月)

研修会終わり

23日から3日間開催した感染制御部門研修会終了しました。

薬剤耐性菌の実習は14種類。MICより耐性機序を推測してスクリーニング・確認検査を実施するという、少し違うタイプの実習でした。少し?悩む内容だったと思いますが、これが実際の検査室だったらどうでしょうか?同じ緊張感で実習は開催できたかと思います。

講義は6つ。普段臨床医がどのような考えで感染症診療を行っているのか?知って頂く機会を作り、調度良いタイミングで結果報告する、重症の場合は細かい情報を迅速に伝えるなど学んで頂けたかと思います。起炎菌は何なのか?、薬剤耐性菌かどうかを迅速に報告するのも重要なメッセージの一つです。また、本や雑誌のコピーをそのまま横流しでコメントしていませんか?その文献は信用出来る内容ですか?

時には未知(自分の知らないも入る)の微生物によって感染症が発生する場合もあります。感染症に興味の無い方は病院内にも多く居ます。どういう考えで報告書を共有し、リスクマネージメントを含めたコミュニケーション力を発展させるかなど非常に重要なことです。自分はこう思ってコメントしても、受け取り側は違う場合もありますよね。

最後に、実際にICT活動などで、医師や薬剤師より臨床現場でコメントを求められたら、緊張して伝えるべき内容を忘れていませんか?現場は細菌検査室とは比較出来ないくらいの緊張感で仕事をしています。適切なコメントとそのコメントを作り出すための思考プロセスを整理出来ていれば、力は発揮できると思います。そういった意味でもケース・スタディーは良かったと思います。現場会話の専門用語を覚えないといけませんがね。

やはり、臨床検査技師として成功・失敗を繰り返しながら成長していくと思います。自分が困る以上に臨床医はもっと困り、患者も困ります。患者が困らないように良い結果を早く伝えて行きましょう。

ご協力頂きました方々ありがとうございました。受講生の方、お疲れ様でした。

下記は写真です。実習と症例カンファレンス。

Dsc01497 実習Dsc01498 症例カンファレンス

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2010年7月21日 (水)

検査室は知っている?

細菌検査室では、検体が提出されてから最終報告されるまで、グラム染色⇒同定⇒感受性というプロセスで進みます。

多くの検査室ではグラム染色の結果で培養する方法を練り、培養結果から同定菌を推定し、同定が決まればそれに見合った感受性検査を実施するからです。

最終同定を待つ前に推定してきた結果が違ったなんてこともたまにあります。

間違いに気付く機会は

①グラム染色で見えた菌と違う菌が発育した⇒グラム染色の感度が悪い、培養条件が悪い

②推定菌と同定結果が違った⇒類縁菌が多く、大まかな生化学性状では分類出来なかった

③最終同定で違う菌になった⇒感受性結果と菌種の耐性が合わないため気付いた

などです。

グラム染色もどうですが、細菌検査は主観的な考えが横行し、経験則がものを言うケースが多いです。学生実習で学ぶことは実践向きではなく、いかに現物を見るかどうかです。

下記はFusobacterium nucleatumです。グラム染色も一緒に掲載します。培養でこのようにキレイに発育するとホッとする瞬間です。

2日程度培養すると、周囲がギザギザでアイボリー色の小さな集落です。

下記のスライドは、好気培養しか依頼が無かったが、グラム染色で嫌気性菌を疑い追加で検査を実施したものです。Fusobacteriumは臭いもありません。

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2010年7月18日 (日)

お知らせ &エンテロバクターの話

20日は兵庫県臨床検査技師会微生物研修会で出稽古をします。暑いですが時間のある方は参加して下さい。出稽古はいつも研修会のはじめに開催しています。遅れないように。

今週は、ブログ内で結果が上手く反映出来ていない院内肺炎の話をします。

http://www.hamt.or.jp/gyouzi/link/EV2010/ev1007-P4P5.pdf

また、今週は日本臨床衛生検査技師会感染制御部門研修会が開催されます。実習は耐性菌(特にβ-ラクタマーゼ)をします。参加される方は頭をフル回転下さい。最後の感染症ケース・スタディーではインタラクティブな内容で企画しています。活発な討論お願いします。

http://www.jamt.or.jp/japan/h22/20100723-kansen.pdf

先週の医療薬学フォーラムで話した内容です。

恐らく薬剤師の皆さんは施設のAUD(患者1000人当たり1日に使用される抗菌薬の量)を算出されていると思います。AUDは施設間の抗菌薬の使用量を比較する上で非常に有効な指標です。しかし、同一施設内ではどうでしょうか?特に大きな患者層に変更がない限りバイアル数の変動=AUDの変動にはなるんでは無いでしょうか?

また、検査部より報告するのはアンチバイオグラムであり、ある一定期間(例えば3ヶ月、6ヶ月)に検出された主要な菌種の数やアンチバイオグラムは施設内のローカルデータとして初期抗菌薬の選択に重要です。

つまり、抗菌薬適正使用の原則論を話す上で薬剤師と臨床検査技師の協力は不可欠なもので、双方のメリットを活かしで、適正化を進めることで医療費削減の一助に繋げることが施設内にもたらすアウトカムになります。。PKPDで有名なWA.Craigは既に1978年の段階で効果について報告しております(Ann Inter Med 1978,793-795)。これってびっくりですよね。薬剤師さんは細菌検査室で作られる検査データの製作プロセスは是非知っておかれた方が良いものです

アンチバイオグラムは良く、緑膿菌のカルバペネム耐性率を監視する役目があることが知られていますが、エンテロバクター、シトロバクターなどの第3世代セフェム耐性菌群の感受性率の推移を見てセフェムの適正使用に用いることが出来ます。特にエンテロバクターは院内感染の要素が強く、ベビーからICUに入室する重症者まで幅広く検出される菌です。当院の3世代セフェム耐性率を見ましたが2006年と2009年を比較すると3世代セフェムの感受性率が30%も改善していました。適正化を進めている賜物であろうと先日の委員会にも報告をしました。CLSIでもエンテロバクターは3日おきに感受性を実施が推奨されています。β-ラクタマーゼは通常ampCを産生しますが、感受性のあるセフェム使用をした場合には大量産生株へ進行することがあるからです。(CMR,Apr. 1997, p. 220–241、CMR,Jan. 2009, p. 161–182)

写真は膿瘍から検出されたEnterobacter cloacaeです。小さめな桿菌ですが、培養で見ないと何とも言えない。緑膿菌とは明らかに違うので、そのコメントは有効かも知れませんが。グラム陰性桿菌の細かい菌を知らなければ太刀打ち難しいかも知れません。

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2010年7月14日 (水)

教育啓蒙・啓発の成果?

日曜日に医療薬学フォーラムで最初に話した、つかみ症例です。

先日、いつものことながら血液培養が陽性になりました(写真)。

ご覧のとおり、グラム陽性球菌+cluster形成=ぶどう球菌となります。

このように、血液培養からぶどう状の球菌が出てきた場合、多くの細菌検査室では『ぶどう球菌』という情報を得ています。しかし、その情報をちゃんと施設内で活用出来ているでしょうか?

血液培養のグラム染色結果と培養結果の一致率を研究したものは何件かあります。でも、ぶどう球菌が培養で発育してきた例では、100%ぶどう球菌と報告しても間違いでは無かったということです。私自身も100例の症例を見たところ、同じ結果になりました。

メチシリン耐性菌なのか、黄色ぶどう球菌なのかは分からないと思いますが、ぶどう球菌と分かるだけで、グラム陰性桿菌感染症を予測してβ-ラクタムを投与している場合は、効果が期待出来ない場合も想定される訳で、入院症例であればその可能性も上がります。最終的には、その検出菌で感染症を起こしているかどうか判断することが必要ですが。

で、先日の症例は、毒ヘビの咬傷で来院してきた患者です。ここで、毒ヘビの咬傷とぶどう球菌に何が関係するのか?という疑問が生じます。文献によれば、毒ヘビによる咬傷の場合は、咬まれた部分が壊死したりして皮膚常在菌による感染症が起こるそうです。つまり、今回のようにぶどう球菌が出てきても普通のことになります。毒ヘビの咬傷症例に関しては、抗毒素療法が先決で抗菌薬投与は後回しになる場合が多いようです。

事例の検討をしていると、担当した医師と指導医が調度他の症例の検討をしていました。指導医は『何で血液培養採ったんや?』と担当医に聞いたところ、『抗菌薬投与するのでその前に血液培養は採取しないといけないと思い・・・』と返答していました。一見バカらしい会話のように見えますが、抗菌薬投与前に培養を採取しないとという高尚な考えが認知されています。教育啓蒙・啓発活動として行っている成果として受け入れて貰えていることに感銘を受けました。結局表皮ぶどう球菌だったんですが。

結局、皮膚常在菌が皮膚消毒不足で混入したようです。うちはコンタミ率が非常に低いためそんなに問題はありません。今回は、皮膚が非常に荒れている患者さんだったとのこと。次は消毒についてもう少し啓蒙をしていきたいと思いました。コンタミは重罪です。

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2010年7月 8日 (木)

β-D-グルカン高値!!

免疫不全の場合に気をつける感染症と言えば、深在性真菌症、CMV感染症など一般抗菌薬不能の感染症が多いと思います。

β-D-グルカンはそんな問題も解消してくれる場合があります。

元々免疫不全といえば抗体産生能力も落ちている訳で、抗体検査がはっきり出ない場合も想定されます。そのため、真菌症の場合は抗原検査が有用になる場合もあります。

β-D-グルカンは真菌症以外にも上がる疾患があります。

そうです、Pneumocystis Pneumonia(PCP)です。

先日、変なスリガラス陰影が気管支走行に発見された症例がありました。結核、クリプトコッカスに特有な結節陰影も無く、ベターとした陰影。一応CMV antigenemiaもしましたが0でした。KL-6、CYFRA共に優位な値では無く、同日、β-D-グルカンを実施していましたが100超えです。

病理に行き、グロコット染色を見たところキレイなPneumocystis jiroveciが確認されました。

久しぶりなので思わず画像を撮りました。公開します。

β-D-グルカンですが採取条件で色々と偽陽性になるので、慎重に判断しないと大きなしっぺ返しを食らいかねませんよね。

ファンギフローラYやディフクイックでも染まりますが、グロコットは栄養型は染まらないので探さないようにね。

P_jiroveci3400 ×400

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2010年7月 5日 (月)

8日は神戸グラム染色カンファレンス

今週は『神戸グラム染色カンファレンス』があります。もう第7回目になります。

クラウンプラザホテル新神戸で19:00から。詳しくは大日本住友さんに。

いつもながらの

 ・画像所見の見方(今回も肺以外の臓器)

 ・グラム染色のピットフォール

 ・症例2題(うちの病院と神戸大学)

活発なディスカッションがあり、いつも楽しみにしています。

Direct Smearだけでこんなに広がるなんて、あまりにも面白い勉強会です。(今回から会費が500円)

そう言えば、23日から25日まである、感染制御部門研修会http://www.jamt.or.jp/japan/h22/20100723-kansen.pdfは100名の参加者を迎えて開催します。3日に実習の予行演習をしましたが、かなりハイレベル!!皆さん頑張って習得下さい。

研修会の期間中にオフ会をしたいなあ・・・と最近思っていますが、集まらなかったらみっともないので迷い中です。

下記は先日、膝を強打して腫れたと言って来院した患者の関節液でした。臨床医から『グラム染色で何かわかること教えて』と。『先生、結晶見えるよ』とは言ったがCRPが29もあった。『本当にそれだけかよ』とかなり不安になる。追加情報で聞くことって何なんでしょうかね

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2010年7月 2日 (金)

結局・・・こんなん(困難?)出ましたけど

、『こんなんでましたけど!!』っていうギャグ流行りましたよね。

今回は全く関係ありませんが、先日の”経験は力なり?”を・・・http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-fa43.html

の培養で下記のものが発育しました。

Dsc01484_2 

そうです。肺炎球菌のムコイド型でした。患者さんには悪いのですが、非常にキレイですよね。莢膜旺盛なので病原性も強いと判断出来るでしょうね。

また、肺炎球菌感染症を考える上で、脾機能を聞くことは必要ですよね。意外に見落としの多い項目と思っています。でも、どうして考え付かないチェック項目なのでしょう。いつも不思議に思います。

肺炎球菌は本当に難しく、分離出来ない場合もあります。自己融解や発育要求の問題も多いです。

下記は自己融解途中のグラム染色です。紅いのって、グラム陰性桿菌に見間違えますよね。良く観察して経験と積みましょうね。

Photo ×1000

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