がんばれ日本 微生物検査室の話ですが・・・
本日、P社が微生物検査に従事している臨床検査技師を対象にしたWebシンポに行って来た。演者は東京医大の松本先生でした。MRSAの診断・治療のために臨床検査技師が出来ること、求められていることについてコンパクトにまとめて教えて頂いた。CA-MRSAのことも一部お話があった。先日も当院でSCCmecⅣ型でPVL陰性の株の手掌蜂窩織炎がありました。今回は米国で問題となっているPVL陽性株ではありませんでしたが、日本ではこのような株が多いようです(中で話しがありました)。
少し驚いたことがありました。
それは講演が終わり質疑応答の時間です。耳を少し疑うような質問が寄せられていました。
・喀痰でMRSAが少数しか出ていないので常在菌と判断し報告しないで良いか?
・入院患者で継続して菌が検出が出ているが少なくなってきたので報告しなくて良いのか?
・膿瘍が貯留していて、外科的処置が出来ない患者で治療効果判定に他の材料から出ている菌数をモニタリングして良いのか?
など
聞いていて、少し腹立たしいのと、情けないのと、申し訳ないのと複雑な心境でしたが、これが日本の現状なんだと改めて反省しました。
それにしてももう少し勉強して欲しいし、考えて欲しいし、ICTやICCの役目をはっきりと認識して欲しいと思います。
恐らく、報告しなくて良いのか?という意見が出てくる背景には
検出したとの報告が返って迷惑になる、だとか院内感染サーベイランス事業への報告をすると他施設の統計と比べ高い報告数になるので良くないだとかでしょうか。
それにしても、少し稚拙な質問ばかりで、しかも講演内容とはレベルが違い過ぎると思いました。もう少し質問内容は事前にセレクトしないとと思いましたが、どうなんですかね。
がんばれ日本と思わず、ツイートしてしまいました。
最後にグラム染色クイズというのがありました。5問です。最近は公にグラム染色をクイズ形式にしている印刷物も出てきました。このブログを始めた時は賛否両論だったのですが、最近は平然と行われてきました。時代でしょうか?
もしかして、このブログは時代の扉を開くきっかけになっていると前向きに考えましたが。どうなんでしょうかね。
写真は化膿性関節炎から出たブドウ球菌。MRSAかどうかは分かりませんが、インプラント挿入であればMRSAの可能性が高くなると報告に添えることが可能でしょう。
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コメント
師範手前さま
P社のWebシンポジウム、参加していました。
師範手前さまがおっしゃるように、えっ、と感じました。
座長、演者の先生も一瞬困った顔をされたと感じたのは自分だけではなかったのですね・・・
ところで、講演の中で%MRSAの話がありましたが、わが国では60~70%ということですが、師範手前さまのところではいかがでしょうか。
当院では、10年前は60数%ありましたが、現在は、入院で30%、外来で10数%とかなり低率となっております。
接触感染予防策は行ってきたつもりですが、ここまで下がっていることには驚いています。抗菌薬の適正使用についてはいまいちだと思っていますが、接触感染予防策の徹底でここまで下がるものでしょうか? ちなみに同地域ではやはり60~70%となっております。
なにかいい情報がありましたら教えていただけないでしょうか。
よろしくお願い致します。
投稿: 指導員手前 | 2010年6月23日 (水) 08時13分
指導員手前さま
当院では入院で50%、外来で30%検出されています。10年前は入院で70%、外来で10%だったので勢力図は変わってきています。SCCmecⅣも出ていますんで注意が必要ですよね。
MRSAの量は患者の移動にも影響しますしね。周辺に医療関連施設が多い場合は仕方なく増えると思います。
投稿: 師範手前 | 2010年6月25日 (金) 18時29分
師範手前さま
ありがとうございます。
入院の減少はやはり、接触感染対策の成果と考えていいのでしょうか? また、外来の増加はCA-MRSAの増加と見るのでしょうか?
師範手前さまのところでは、患者背景や薬剤感受性の結果などからCA-MRSAを疑った場合、すべてSCCmecやPVLの検査をしているのでしょうか。当院では、せいぜい感受性結果からCA-MRSAの疑いありですと報告する程度です・・・。きっちり検査したほうがいいのでしょうか。
投稿: 指導員手前 | 2010年6月28日 (月) 11時44分
指導員手前さま
入院患者の減少は確かに施設内の感染対策が良くなったからとは言えます。
外来の増加は市中でのMRSAが増えたのが一つ理由です。市中感染型と言われるSCCmecⅣ型やⅤ型ではなくⅡ型もたまに検出されるのでMRSA自体増えているのでしょう。
PVLやSCCmecについては後で実施するか考えます。治療が先なので。皮膚軟部組織疾患や肺炎の重症例で市中感染を疑う易場合は実施しています。すべてではありません。先日はnecrotizing pneumoniaがありⅡ型でした。
投稿: 師範手前 | 2010年6月29日 (火) 23時10分
師範手前さま
ありがとうございます。
当院でも薬剤感受性パターンなどから、CA-MRSAを疑う症例はありますので、今後ケースによってはPVLやSCCmecもできればと思います。
投稿: 指導員手前 | 2010年6月30日 (水) 08時20分
日本とアメリカじゃ使う薬なんか違うので感受性結果はたまに違いますよ。気をつけて
投稿: 師範手前 | 2010年6月30日 (水) 12時29分