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2010年6月28日 (月)

経験は力なり?

経験することって大切に思うことは多いですよね。

こんな例もあります。

悪性腫瘍の外来化学療法中に発熱があったために入院しました。入院時に血液培養が採取され、翌日陽性になりました。好気用、嫌気用の2つとも陽性です。

下のようなグラム染色像が得られました。

直ぐにピンときまして報告を。

経験って大事ですよね。

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2010年6月25日 (金)

120%の力を

今週は血液培養陽性例が多くて、介入が沢山ありました。
既にフォーカスが判っていて合併症予測と抗菌薬の投与期間決定のために採取されたもの、不明熱で採取してフォーカス検索がスムーズにいったものまで様々です。
中には、肺炎球菌が出て、髄膜炎が分かった、肺炎が分かったなんて症例もありました。
うちでは血液培養陽性例のグラム染色の結果は全て推定起炎菌を付けて電話連絡で報告してます主治医が手術中だろうと外来中、休日だろうとお構いなしに電話しています。だって、クリティカルなデーター報告なんだから。
報告する時には、
グラム陽性球菌ならブドウ球菌かレンサ球菌かの区別は当たり前でしていて、グラム陰性桿菌なら腸内細菌か非発酵菌、嫌気性菌かも報告してます。危惧するのは推定報告が外れるか?と言う事ですが、統計的にうちの感度は95%で、血液培養陽性の報告時には初期治療も開始されてますし、当然患者背景を良く考慮しているために、報告が抗菌薬選択に大きな影響を及ぼす事は少ないです。
単純に
『グラム陽性球菌』と報告しても、『何菌かな?』と向こうから聞かれる事も多いです。(どうやら医師から朝の9時は血液培養タイムと呼ばれて、細菌検査室からの報告はビビられているらしい)
翌日培養を見たら更に詳しい情報が分かりますが、早くに適切な抗菌薬を投与してもらおうと思い始めています。
まさに、検査結果の
120%報告を目指してます。付加価値は大事ですよねぇ。
でも、肺炎球菌は鑑別が難しく
、『肺炎球菌を肺炎球菌と報告するのはかなりパワー使うんですよ。』と呟いたりしますがね。
下記は血液培養で見えた肺炎球菌です。

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2010年6月21日 (月)

がんばれ日本 微生物検査室の話ですが・・・

本日、P社が微生物検査に従事している臨床検査技師を対象にしたWebシンポに行って来た。演者は東京医大の松本先生でした。MRSAの診断・治療のために臨床検査技師が出来ること、求められていることについてコンパクトにまとめて教えて頂いた。CA-MRSAのことも一部お話があった。先日も当院でSCCmecⅣ型PVL陰性の株の手掌蜂窩織炎がありました。今回は米国で問題となっているPVL陽性株ではありませんでしたが、日本ではこのような株が多いようです(中で話しがありました)。

少し驚いたことがありました。

それは講演が終わり質疑応答の時間です。耳を少し疑うような質問が寄せられていました。

・喀痰でMRSAが少数しか出ていないので常在菌と判断し報告しないで良いか?

・入院患者で継続して菌が検出が出ているが少なくなってきたので報告しなくて良いのか?

・膿瘍が貯留していて、外科的処置が出来ない患者で治療効果判定に他の材料から出ている菌数をモニタリングして良いのか?

など

聞いていて、少し腹立たしいのと、情けないのと、申し訳ないのと複雑な心境でしたが、これが日本の現状なんだと改めて反省しました。

それにしてももう少し勉強して欲しいし、考えて欲しいし、ICTやICCの役目をはっきりと認識して欲しいと思います。

恐らく、報告しなくて良いのか?という意見が出てくる背景には

検出したとの報告が返って迷惑になる、だとか院内感染サーベイランス事業への報告をすると他施設の統計と比べ高い報告数になるので良くないだとかでしょうか。

それにしても、少し稚拙な質問ばかりで、しかも講演内容とはレベルが違い過ぎると思いました。もう少し質問内容は事前にセレクトしないとと思いましたが、どうなんですかね。

がんばれ日本と思わず、ツイートしてしまいました。

最後にグラム染色クイズというのがありました。5問です。最近は公にグラム染色をクイズ形式にしている印刷物も出てきました。このブログを始めた時は賛否両論だったのですが、最近は平然と行われてきました。時代でしょうか?

もしかして、このブログは時代の扉を開くきっかけになっていると前向きに考えましたが。どうなんでしょうかね。

写真は化膿性関節炎から出たブドウ球菌。MRSAかどうかは分かりませんが、インプラント挿入であればMRSAの可能性が高くなると報告に添えることが可能でしょう。

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2010年6月20日 (日)

騙されないで

先日、ICUから痰が来ました。見ると下のような像。患者は2日前に入院してきました。

騙されないように報告しましょう。

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2010年6月18日 (金)

6月の出稽古

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-cbed.html

先日の出稽古では、大腸穿孔(例えば虫垂炎など)時に得られるグラム染色像を題材にして、急ぐ報告について話をしました。

2つともさほど差が無く、polymicrobial patternが見られます。それぞれ、どのタイミングで出てきた検体かはグラム染色の像を見ただけでは判断出来ません。あるあるネタですが、腹水でこのような像を得られ、無菌材料だからと言って直ぐに報告した場合、『ああ、ありがとう』とありきたりの答えで返答されると、少しモチベーション下がりますよね。患者背景を調べた場合に大腸穿孔で入院し、直ぐに手術した時に採取した腹水と分かります。穿孔で採取した腹水なので、腸内容物のような像が見えるのは当たり前になります。培養すると多菌種発育する訳ですが、グラム染色で見えたままの結果が得られるとは限りません。

しかし、同様の像が得られる術後に発生した二次性腹膜炎(縫合不全や遺残膿瘍などが原因)の場合は、逆に非常に喜ばれることがあります。理由は術後の経過が悪いという現象が現場にあるからです。

結局、見分けは消化器外科で手術してどういう経過になっているか理解することです。

術後感染予防のためセフェムが使用される事例が多いと思いますが、腸球菌は自然耐性菌であることが知られています。術後に腸球菌による二次性腹膜炎を起こした場合の重症度は高く、死亡率こ上がるという報告は散見されます。

なので、二次性の場合は腸球菌を探し、短いレンサ球菌が見えた場合は報告を直ぐにする必要が出てきます。同様にセフェムに耐性のMRSAを思わせるブドウ球菌やカンジダなども同様です。腸内細菌が病原性が高く、それ自体問題にもなりますが、VCMの投入を考える陽性球菌や抗真菌薬の投与を検討するカンジダの存在は普段見ている像ですが重要になります。

Journal of Antimicrobial Chemotherapy (2002) 50, 569–576

Archive of Surgery 1985;120:57-63 

6 スライド①

Photo スライド②

Photo_2 スライド③

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2010年6月14日 (月)

答えと予告

5月27日の記事の答えを掲載します。遅くなりすいません。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-cbed.html

こちらが、入院当日の腹膜炎の腹水

Photo

こちらが、術後4日目の腹膜炎時の腹水

Photo_2

結果をすごく急ぐのは  術後4日>入院当日です。

答えの内容は明日の出稽古編(兵庫県技師会内)で話します

http://www.hamt.or.jp/gyouzi/link/EV2010/ev1006-P4P5.pdf

あと、予告です。

第7回神戸グラム染色カンファレンスが7月8日(木)に予定しています。

時間のある方、興味のある方ご参加下さい。

19:00過ぎより、クラウンプラザホテル新神戸で。

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2010年6月11日 (金)

アンテナ感度良好

先日、仕事が忙しいのでグラム染色を手伝って視ていました。とある小児科の皮膚検体と言うのがあり、視てみると下記のスメアでした。
膿や皮膚の感染症なんて殆どグラム陽性ぶどう状球菌と思いながら見ている。菌の検出状況を調べても同じ傾向にある。なので逆に違う菌が見えればクリティカルデーターかどうか検討する。

で、思ったのが一部ぶどう球菌ではないという気付き。こういう時は少し時間をかけてスメアを見る。やはり、連鎖球菌と思い、医師に連絡すると水痘の湿疹部分が化膿したとのこと。溶連菌でしょうと伝えて、確信を得るためキットに掛けた。やはりA群でした。特に重症化は無かったものの、クリティカルデーターの取り扱いは大切ですね

私のアンテナは錆び付いていなかったようです。

でも2菌種居ますよね。分かるかな。

皆さん、アンテナ張ってますか?

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2010年6月 7日 (月)

無理して起炎菌を決定しない局面

  5/19の記事の補足から。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-65a1.html

喀痰でグラム陰性球菌が見えたからMoraxella catarrhalisという初心者にありがちな考えがあります。別に完全否定する訳ではありませんが、白血球の浸潤やフィブリン様の炎症背景が広がっている場合でなければグラム陰性球菌=M. catarrhalisと結びつけるのは難しい局面が多いです。

なぜなら、口腔内には非病原性ナイセリアが多く存在するからです。特徴は菌が集族していることが多かったり、扁平上皮に付着して見えるなどから見分けが付くことが多く、M. catarrhalisのような白血球内に貪食された形で見えない場合には、直ぐに知っている知識(肺炎の起炎菌としてM. catarrhalisを知っていること)と結び付けないことが大切です。材料評価が既に悪いのですから、口腔内の非病原性ナイセリアが出てくる可能性が高いので。

ただ、その場合は、材料評価が悪いので信頼出来る推定菌は見つかる要素が少ないという理由が背景にあります。そうなれば培養結果の信頼性も下がることが予測され、材料悪いよね・・・と何気に見るグラム染色も活かせることの出来る結果を導けます。タダでは下がらないことです。

下記の写真はその写真です。上記のアドレスの記事を参照に比べて下さい。

非病原性ナイセリアの近くには口腔内の常在菌がありこちに見られるのもコツの一つでしょうね。

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2010年6月 2日 (水)

結核菌の塗抹染色

4月から蛍光染色に集菌法を実施すると集菌加算が採れるようになりましたね。

今まで単価が安いが設備と労力のかかる検査内容でした。

とはいえ、蛍光法で結核菌を検出している施設は、まだまだ少ないと思います。蛍光顕微鏡は高いからです。普通の顕微鏡でも『高い!』と言われる状況なのに、蛍光顕微鏡なんて理解不能なところは多いと思います。ここからは細菌検査室のパフォーマンスをどうするか?という題目にあたります。がんばりましょう。

ところで、蛍光法で結核菌を見たことが無い人は沢山いるだろうと思ったので掲載することにしました。菌量は200倍で見れば良いので非常に効率的です。倍率が低いから確認出来るの?という疑問なんて見れば払拭されます。

蛍光染色は偽陽性の問題もあります(普通のチール・ネルゼンもありますが)が、見易さと菌量はチール・ネルゼン法より良いと考えます。蛍光法で見た後に同一箇所をチール・ネルゼンで見たら染まらないなんてのもあります。結果的に培養検査の結果を合わせて見ればやはり結核菌だったなんてこともあります。

下記に掲載しますので比べてください。同時にグラム染色も掲載します。グラム染色で抗酸菌を見抜く力も養うようにね。

Photo 蛍光500倍500 チール・ネルゼン500倍Photo_2 グラム染色600倍

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