120%の力を
今週は血液培養陽性例が多くて、介入が沢山ありました。
既にフォーカスが判っていて合併症予測と抗菌薬の投与期間決定のために採取されたもの、不明熱で採取してフォーカス検索がスムーズにいったものまで様々です。
中には、肺炎球菌が出て、髄膜炎が分かった、肺炎が分かったなんて症例もありました。
うちでは血液培養陽性例のグラム染色の結果は全て推定起炎菌を付けて電話連絡で報告してます。主治医が手術中だろうと外来中、休日だろうとお構いなしに電話しています。だって、クリティカルなデーター報告なんだから。
報告する時には、グラム陽性球菌ならブドウ球菌かレンサ球菌かの区別は当たり前でしていて、グラム陰性桿菌なら腸内細菌か非発酵菌、嫌気性菌かも報告してます。危惧するのは推定報告が外れるか?と言う事ですが、統計的にうちの感度は95%で、血液培養陽性の報告時には初期治療も開始されてますし、当然患者背景を良く考慮しているために、報告が抗菌薬選択に大きな影響を及ぼす事は少ないです。
単純に『グラム陽性球菌』と報告しても、『何菌かな?』と向こうから聞かれる事も多いです。(どうやら医師から朝の9時は血液培養タイムと呼ばれて、細菌検査室からの報告はビビられているらしい)
翌日培養を見たら更に詳しい情報が分かりますが、早くに適切な抗菌薬を投与してもらおうと思い始めています。
まさに、検査結果の120%報告を目指してます。付加価値は大事ですよねぇ。
でも、肺炎球菌は鑑別が難しく、『肺炎球菌を肺炎球菌と報告するのはかなりパワー使うんですよ。』と呟いたりしますがね。
下記は血液培養で見えた肺炎球菌です。
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コメント
師範手前様の件数ではありませんが血液培養陽性例はあります。肺炎球菌は喀痰でもハズレたことがありー本当難しいです。夾膜があるのばかりではないんですよねーGBSも同じくらいの大きさですよねー先日はGPCのレンサがかなり長いものでした。ドクターにはレンサ球菌と伝え大変感謝されました、先日胸水で危うく見落とすところでした。St.sanguisでした、GAM半だと見落とす可能性ありますねー
投稿: 小町 | 2010年6月25日 (金) 20時46分
師範手前様
ちょうど2日前1歳の子の血液培養が陽性となりグラム染色をしたらグラム陽性桿菌 バチルスより小型ですが、リステリアほど小さくなくとりあえずこれは何かな?と思いながらもう一度見直してもグラム陽性桿菌にしか見えず。この子のほかの検体はないか探すと咽頭があり肺炎球菌が出ていました。でも血培はどうみても四角い! とりあえす医師にはグラム陽性桿菌と連絡して 翌日 みごとにはずれました肺炎球菌でした。
いつも肺炎球菌には泣かされます、難しいですね、何かいい鑑別(グラム染色で桿菌に見えたのでは・・・・・・・・)法はないでしようか?
投稿: 門前の小僧 | 2010年6月25日 (金) 21時11分
肺炎球菌は奥が深いのですね。頭のイメージでは、「莢膜があって、ランセット状で二つ並びが中心で」と言う感じですが、先日のような赤い莢膜だったり、正円形に近い形だったり、連鎖が長かったり・・・
初歩の頃はパッとみて一番判断を下しやすい細菌だ、と思っていましたが、数をあたればあたるほど、その形ではなく、なんだろうと思いながら培養に出したら肺炎球菌だった、とか、これは肺炎球菌と思って培養に出しても生えなかったりとか。
師範手前様や小町様のようなプロの方が、「肺炎球菌を肺炎球菌と報告するのにかなりパワーが要る」という本音は、本当にプロだからこそ出てくる言葉ですね。
ところで小町様、GAM半って何ですか?
投稿: 三省 | 2010年6月26日 (土) 11時30分
三省様
わたくしごとき師範手前様と一緒に名前が並ぶようなものではございません。ありがとうございます。GAM半とはGAM半流動培地と正式名称でいいますがー液体材料やCVカテ先に最適な液体培地のことです。便利なんですが連鎖球菌のように血液を必要とする細菌には不適かと、胸水腹水は血液培養ボトルがいいと思いますがー悩んでます。
投稿: 小町 | 2010年6月26日 (土) 16時06分
知らない間に盛り上がってますね。びっくりしました。ついtwitterに夢中だったので申し訳ありません。
肺炎球菌は色々な形になり、条件が悪いと発育しないし、菌体は自分で勝手に融けるし、加えて病原性は高いし皆さんの興味は集まるんですかね。教科書的にランセット型の菌で莢膜が見えるは多分喀痰で観察される像を表現したものと思います。血液培養のボトルから染めた場合は形状が少し変わる事があるので『肺炎球菌を肺炎球菌と言うのに力を使うんですよ』とツイートする事が多いと思います。しかもコリネバクテリアやリステリアのような桿菌と見間違う事もあるかもしれません。本当に類似に観察される菌も多いのでね。分類で球桿菌と表現してもおかしくないとも思います。なんでうちの部屋では2人で確認する事が多いですよ。
不安な場合、うちは補助的に尿中抗原のキットも使いますが、培養液自体偽陽性になる事もあり、たまに陽性液を胆汁酸に作用させて消失するか確認もします。これはかなりの裏技ですが。尿中抗原を使った場合は真の陽性ならテストラインを超えると同時に太い陽性ライン(抗原量と比例するかは不明ですが)が出るので偽陽性かどうかの違いは付きます。元はと言えばイムノクロマトなんでね。あとウンチクですが、GAM寒天のGAMは確かGifu Medium Agerの頭文字で日本が誇る岐阜大学の開発嫌気性菌用の寒天だったと思います。
投稿: 師範手前 | 2010年6月26日 (土) 19時04分
師範手前さま
肺炎球菌は難しい。本当にそう思います。
血液ボトルから検出されるものは、特に迷います。
当院でもどうしても迷った時は、尿中抗原キットを利用しています。できれば使わないで肺炎球菌と言えるようにしたいと思っているのですが・・・。
陽性液を使っての胆汁溶解試験はやったことありませんでした。
今度やってみようと思います。
みなさん肺炎球菌にはかなり興味があるんですね。
私ももっと修業を積みたいと思います。
投稿: 指導員手前 | 2010年6月26日 (土) 19時18分