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2010年3月26日 (金)

話題になっていますが・・・

久々の更新です。滞っててすいません。

ニュースでも、ブログでも一部話題として取り上げられていますが、多剤耐性のAcinetobacter baumaniiです。この菌は緑膿菌と同じブドウ糖非発酵に属する菌ですが、緑膿菌と大きく違うのは、鞭毛を持たないため運動性を欠いていることです。臨床検査技師なら学生時代に習う事項ですが、国家試験終了と共に忘れてしまい価値の内容です。培地上の集落性状はSerratia marcescensと良く似ているので、同定しないと判らないことが多いでしょう。ただ、S. marcescensと少し違うのが集落の臭いです。少し酸い臭いがします。本当に五感を駆使しないと判り難い菌です。

院内感染の起炎菌と知られ、人工物を始め、日和見感染を起こした患者の気道分泌物、人工呼吸器のウォータートラップ、ベッドテーブルなどから検出されるようです。きっかけは大規模アウトブレイクの発端のあるものも多く、昨年からも何回かニュースに登場することになっているようです(Lancet Infect Dis 2008;8: 75162、Clinical Infectious Diseases 2006; 42:6929)。

でも意外に市中感染事例があることは知られていません。更に耐性傾向の強い菌も出現していて初期治療に多く使われる第3世代セフェムも無効なことがあるようです。頼みの綱はカルバペネムですが、一部で耐性のことがあります。日本はメタロベータラクタマーゼによるものが多いと思いますが、それ以外ではKPC型と違う耐性機序によるOXA型という耐性機序であり、ルチン検査で実施しているスクリーニング検査では検出されにくいものもあるようです(Chest 2001;120;1072-1077、ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY, Oct. 2007, p. 34713484、CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, July 2008, p. 538582)

しかし、この菌はβ-ラクタマーゼ阻害剤が抗菌作用を示すことが知られてますので、ABPC/SBT、CPZ/SBTなどが標的治療に用いられていることがあります。抗緑膿菌作用を持つ抗菌薬に加え、ABPC/SBT、ポリミキシンBのような知っていないと、感受性を実施し忘れるようなものもあります。本当に重症時の場合は切羽詰ります。カルバペネムとABPC/SBTを併用して治癒出来たなんて症例も見られます。

グラム染色では、ブドウ糖非発酵菌のためグラム陰性桿菌に染まりますが、一部グラム陽性球菌と見間違えることがあるようです。血液培養からの報告例があり、背筋が凍りそうです(Am J Clin Pathol 2006;126:686-690、Am J Clin Pathol 2009;132:18-25 後者は順天堂の上原先生のものです)。

聞いた際に『うそ〜!?』と思いましたが・・・、こういう話をしている時は出るものです。

先日、他院より転送された患者の中で、尿路感染を疑って尿培養が出てきました。バルンは長期挿入中のようです。見たところ腸内細菌かな?と思いながらやや多形成。緑膿菌かも・・・と思い見ていると腸球菌かな?と思う菌も散在していました。

翌日培養を見るとAcinetobacter様。同定結果はAcinetobacter baumanii。しかもカルバペネム、ポリミキシンB意外は耐性で、しかも追加で実施したABPC/SBTまで耐性化していました。併用かな?と思いながら、病棟には接触感染対策を1段階アップ、特に転棟の際の申し送りをしっかりと。主治医には症状観察を重点的にして貰えるように話をしました。院内感染を起こしようなら大変ですから。

『え!?』と思ったグラム染色を掲載します。こんなのがヒントになるのでしょうか?悩みますね。

4 ×1000(陰性のみ見える)

1 ×1000(混じっているのもそうです)

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コメント

毎回内容を楽しみに見ています
私はB&M法で染色してますが、アシネトバクターは他のグラム陰性菌よりも脱色されにくいような印象があります

投稿: 侍 | 2010年3月31日 (水) 23時25分

侍さま

貴重な情報ありがとうございます。
粘性の強い体液でアシネトバクターが出たときは陽性傾向に染まるように思います。髄液で見た時はインフルエンザ様でしたが。材料と患者背景を良く見ないと鑑別が難しい菌の一つですよね。

投稿: 師範手前 | 2010年4月 1日 (木) 00時49分

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