こんなのどうする?
こんなグラム染色を見ることがあると思います。
外来で尿路感染疑いで提出された検体の中で、外観上も混濁尿の場合です。
外来患者なので、腸内細菌群を優先的に考えると思います。すると下記のグラム染色が見えた場合はどう感じますか?異常?何だカンジダか・・・・。
何だカンジダという思考の裏には3つの考えがあると思います。
①大腸菌が見えると思ったが違った
②尿からカンジダが出ても、カテーテルなど挿入されているだろうからコロナイズかも
③採取した条件が悪いのかも
この3点については詳細を確認するまで分かりません。
外来患者由来ですので、通常は①という考えがある(培養でいつも確認している状況からシンクロされている)。でも①という事象に対して異常値、云わばパニックデータ(正確にはクリティカルデータというらしい)なので、臨床へ迅速に報告する必要性も出てきます。何故か?それは、通常一般細菌(特に大腸菌)を主体とした抗菌薬が初期投与され、経過観察されることが多いからです。つまりカンジダに対しては無効であることが想定されているからです。
②についても考えることは重要です。情報が足りない場合は①を理由に聞くことも考えないといけません。②の場合は良くあることですので、治療が必要かどうかは臨床症状ありきです。
2009年のIDSAガイドラインでも『無症候性の場合は特に治療は必要としない。必要なのはカテーテルの抜去。』Clinical Infectious Diseases 2009; 48:503–35
これはどのテキストでも記載されていることです。
ただ、グラム染色上で白血球が多数あり、このようにカンジダが出た場合は結果を急ぐかどうか?と時間と人間関係に余裕がある場合(笑)は聞いておくことをお勧めします。
でないと、『そんな大事な情報、早よ教えてくれへんと・・・』という状況出てくるからです。
通常はアゾールの投与になりますが、アゾール耐性菌も多く仮性菌糸を伸ばしているかどうかの情報は培養を確認する際に重要な特徴です。出来れば、グラム染色報告時に仮性菌糸を伸ばしているのでC. albicansの可能性があるという情報も加えると良いでしょう。
出来れば追加で、熱がなくても血液培養、β-グルカンの測定も必要でしょうね。
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コメント
どうしたらいいのでしょう? 「おしっこが近くって・・・」という主訴で来院されて、別にバルーンカテも入っていなくて、このような所見が見えたとき。困ります。
おしっこが普段よりも近い、という主訴を捉えると、膀胱炎のようにも思いますが、通常はcolonizationの混入と考えるのが本当でしょうか。もしかして、『カンジダ性膣炎』のオリモノが、尿に混入して採取された、と言う可能性もありえるところでしょうか。膣炎は膀胱炎とそっくりな、頻尿症状が出るとも聞きます。
元気な方でこのような所見であれば、オリモノなどの症状を聴取して、水分をかなりしっかり取っていただいて2~3日後に再診して再検査、その時には確実に中間尿で採って頂く(さすがにカテ尿までは外来で採取しにくい・・・は言い訳でしょうか。)⇒それでも同様の所見が見えたら、膀胱瘤などがないか、排尿直後の残尿がないか、エコーで確認する。
熱があり、背部叩打痛などもあり、これは尿路感染症としてこの真菌が関連していそうならば、僕は外来診療の医者なので、真菌性腎盂腎炎を疑って、入院加療で抗真菌薬を含めて精査・加療をお願いする、ということになるでしょうか。
投稿: 三省 | 2010年2月 8日 (月) 16時56分
三省さま
難しい問題ですね。
女性の尿路感染症の相談を貰い、チェックする症状で一般定性の潜血、CVA叩打痛、頻尿、排尿痛、発熱などの情報に加え、帯下の増量、(出来れば最近の性交渉)などを聞くようにしています。勿論グラム染色所見と併せてのことですが。
なので、グラム染色は確定的にもなりますが、バルンなどの人工物挿入時には非常に判断に困ることがあります。
カンジダに関しても直ぐに治療が必要かどうかも判断し難いこともあり、疑わしくば治療という風に行くのか、適正使用の観点からもずれて来るとは思います。結果的に上手くいけば良いという考えもありますが、1次診療で実施している先生は難しいと当院でも言っています。
投稿: 師範手前 | 2010年2月11日 (木) 14時59分
今日はキャンディン研究会に行ってきました。初めて参加しましたが、色んな方面の話が聞けて勉強になりました。
勉強に成ったことは、接合糸菌とアスペルじゃ菌塊辺縁の所見が違う(アスペルは外に伸びる形状が旺盛)、βグルカンは値に差がある(代謝の問題?)、血液培養でカンジダ見えたらファンギン使い、菌が培養で決まったらアゾールをスイッチを検討。臨床医は培養結果が遅いのは知っているが、投与が遅くなると1日ずつ死亡率が上がることです。
少し疑問に感じたのは、アスペルのテレウスのアンホテリシン耐性の話。ビトロで確認されてもビボでそんなに変わるのか?そこはまだまだ検討が居ると感じた。がっつり真菌だけですが、やはり元々宿主が弱いだけに治療は難渋しそう。
投稿: 師範手前 | 2010年2月27日 (土) 21時44分