« 2010年1月 | トップページ | 2010年3月 »

2010年2月26日 (金)

福岡の講演 その①

先日の福岡での質問②にあわせてですが、VAPの時のグラム染色所見の考え方です。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-6a2d.html

VAPを疑う場合、検体をどう採るかです。

同一患者でも気管内吸引と吸引チューブによる採取では見えてくる菌が変わるようです。

肺炎を疑い、真の起炎菌かどうか判断するため気管内吸引を行って調べるというstudyは多く見かけます。ただ、日常レベルですべて出来るのかどうか?教育啓蒙がどこまで出来ているのか?という疑問に行き届きます。仕方なく吸引チューブで痰が引けたので検体が出るケースが多いと思います。

そうした場合は、porymicrobial patternが多く確認される一方、グラム陰性桿菌の検出率は下がります。またカンジダが見えることが多いという状況になります。また、VAP時のグラム染色を確認する際にはグラム陽性球菌の感度が高いという報告も多いです。

総合して考えると、VAP時のグラム染色では起炎菌となるグラム陰性桿菌が確認されない場合が多いため、培養検査を最終的に待って判断しないといけない。グラム陽性球菌に目を奪われて見落とししないようにしっかりと確認する(しかも、グラム陰性桿菌ばかり見るとグラム陽性球菌を見落とすので注意)。起炎菌は緑膿菌などの非発酵菌や連鎖球菌を想定して見ることが必要となります。

また、抗菌薬が既に投与されているケースも多く、見えても発育しない場合があったり、薬剤耐性菌が検出されることも多く存在します。

複雑な思考回路が駆け巡り、市中肺炎を見るような簡単な所見は得られないのがVAPのグラム染色です。

Photo グラム染色

Photo_2 スライド

| | コメント (0)

2010年2月24日 (水)

福岡での質問 その② 誤嚥性肺炎時の抗菌薬

緑膿菌やMRSAのような薬剤耐性菌の既往も無い市中の唾液誤嚥による肺炎例では初期治療の抗菌薬としてβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンの使用が多く見られると思います。理由としては口腔内にはβ-ラクタマーゼ産生菌が多く存在したり、インフルエンザ菌など一部β-ラクタマーゼを産生する菌が起炎菌になる可能性があるからと言います。

良く使用されているのがABPC/SBTと思いますが、キット製剤やバイアル製剤が混在します。現在、製剤として1.5gと3gの2種類があり、1日最大投与量は6gとなっています。米国などは12gまで使用している例は多く存在します。

誤嚥性肺炎を疑い、特別耐性菌は無いが、ABPC/SBTを使用するが効果改善が明確で無いという相談が多く持ちかけられると思います。抗菌薬が検出菌のスペクトルを満たしているが効果が無いと判断される場合は、器質的な構造異常(膿の貯留など)や感染症意外の要素が多く含まれますが、PKPDの理論より投与量が十分にカバー出来ているかどうかも考えることが必要になります。

PKPDは抗菌薬の移行性が血管と平衡に保たれる臓器が原則(つまり局所投与のような高濃度に移行する場合は除く)になります。また対象の菌により変わります。

ABPCと肺炎球菌の関係を見てみます。この場合、菌側の要素に肺炎球菌はβーラクタマーゼを産生しないこと、ABPCはβ-ラクタム薬なので、抗菌薬の効果はtime above MIC(TAM)と相関するということがポイントになります。

MICが2.0μg/mlの肺炎球菌でABPCを6g/日投与する場合のTAMを見た場合下記のようになります。

①3gを1日2回投与する場合⇒38.8%

②1.5gを1日4回投与する場合⇒62.5%

(化学療法の領域より)

ABPCを用いた薬効を考えた場合、最低でも40%以上のTAMが必要であり、①の場合はギリギリ(少し足りない?)投与計画になりますが、②の場合は十分となります。また、治療効果には免疫状態が十分に関与してくるため、既に医原的行為や加齢による免疫不全がある場合は、①では効果が十分で無い可能性があります。

更に、CLSI基準は米国の投与量に応じたものですので、食い違いも出てきます。

このように、抗菌薬の効果判定をする場合は、色んな要素を考慮してグラム染色でいつもの像を確認していく心がけも必要となります

Photo 当日のスライドより

| | コメント (0)

2010年2月22日 (月)

福岡での質問 その① 複数菌感染?

今週は、福岡で頂いた質問内容について記載していきます。

市中肺炎のグラム染色についての質問です。

一般的にグラム染色で確認出来る、市中肺炎の起炎菌で最も重要なのは肺炎球菌ですね。

でも、染色を確認している中で、インフルエンザ菌であったり、ブランハメラであったり見えて、報告する場合もあります。

成人市中肺炎のガイドラインでも、分離菌の頻度は肺炎球菌が最も多く、後述した菌が続いて行きます。

では、下記のようなスメアを見た場合は、どう報告した方が良いでしょうか?

多く目立つのはブランハメラでありますが、周囲に散在した肺炎球菌らしき莢膜形成の双球菌が気になります。ここの視野だけでは判断しにくい場合は、複数視野を確認して、信頼性を高めますけど、やはり複数菌の確認と思った場合は、想定出来る起炎菌情報は返した方が良いと考えます。特に肺炎球菌やインフルエンザ菌の場合は、発育要求が元々悪いので、見えても発育しない場合もあるからです。

ただし、嚥下性肺炎と思われる複数菌の貪食がある像が多く確認される場合は難しくなります。

嚥下性肺炎が無い、成人市中肺炎像であれば市中肺炎の可能性がある菌が想定されればコメントとして残すか、急ぐ場合はそのまま報告した方が良いでしょうね。追加で、細菌検査室としては翌日の培養結果を確認する上で必要になりますしね。

Photo_2 ×1000

| | コメント (0)

2010年2月19日 (金)

更新が遅れております

最近、更新が出来ていませんでご迷惑お掛けしています。

年度末に差し掛かり、診療報酬改正や年度のまとめなど、非常に忙しい日々が背中を押しています。出来る限り更新して行きますので引き続きご愛顧お願いします。

さて、先日『連鎖球菌は怖いなあ・・・』という思う症例に遭遇しました。

30歳代の女性ですが、下腹部痛で来院し子宮に膿が貯留しているとのこと、一部は骨盤内まで浸潤しているようです。主治医より情報貰いグラム染色を。

まずは何を探しましょう?

若年者のPIDで気にしないと行けないのは淋菌です。淋菌はグラム陰性なので、どちらかというと陽性菌より発見し難いため注意して見ないといけません

気にしながら見ると無く、替わりにグラム陽性球菌?しかも連鎖状。これは・・・と思い連絡しました。婦人科疾患なのでGBSも気にして見ないといけません。しかし、PIDのような急性疾患まで進行するのでしょうか?A群またはG群のような毒素産生菌、はたして腸球菌も当然想定内です。

やはりこういう場合は一応臨床へ連絡を。CTRXを初期に投与していた関係で、VCM足さなきゃということになります。

良く見ると周囲が紅くなっていますが、貪食細胞内で良く判りません。翌日培養で出てきたのはA群溶連菌でした。淋菌は陰性です。血液培養も陰性です。

結局VCMは終了して、経過良好のため退院となりました。

オーバーなアクションでしょうか?とも取れますが万が一に備えてのグラム染色でしょうね。

Pid

| | コメント (0)

2010年2月13日 (土)

速報!! 平成22年度診療報酬改正(微生物)

平成22年度の診療報酬改正(案)が決まりました。

各学会からも要望事項としてあった、微生物検査の保険点数ですが、平成18年度に続いて軒並みアップになっています。微生物検査は患者の予後管理に非常に重要であり、また院内感染の抑制のために院内実施が必要な項目でもあります。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0212-4c.pdf

例えば

①グラム染色:25点⇒40点へ増加。もっと臨床へ貢献して下さいという期待料でしょうか。

②抗酸菌の塗抹染色:遠心集菌法をした場合は、集菌法加算32点が加算されます。もともとの保険点数も32点(蛍光法)から42点へアップしますので、32点⇒74点とかなりアップに繋がります。

③培養検査:約10%の増収。(例:呼吸器130点⇒140点)

④感受性1菌種:130点⇒140点

⑤抗酸菌培養(小川)が150点⇒200点

⑥クウォンティフェロンはなんと! 420点⇒600点

今まで肩身の狭い思いで実施していた検査ではありません。

また、ICTが関与する院内感染管理加算は100点(入院時)になりました。当院は1年間の新規入院患者がありますので、約1000万円の増収になります。

感染症に対する期待が良く良く現れている状況です。新型インフルエンザも一つの要因では無いでしょうか?

さて、14日は福岡に出向きます。内容は考えていますが、尿路感染症の見方と喀痰の見方にしようと思います。尿路感染症は今まで聞いたことが無いような内容ですので、九州の方、期待して下さい?

| | コメント (13)

2010年2月 6日 (土)

こんなのどうする?

こんなグラム染色を見ることがあると思います。

外来で尿路感染疑いで提出された検体の中で、外観上も混濁尿の場合です。

外来患者なので、腸内細菌群を優先的に考えると思います。すると下記のグラム染色が見えた場合はどう感じますか?異常?何だカンジダか・・・・。

何だカンジダという思考の裏には3つの考えがあると思います。

 ①大腸菌が見えると思ったが違った

 ②尿からカンジダが出ても、カテーテルなど挿入されているだろうからコロナイズかも

 ③採取した条件が悪いのかも

この3点については詳細を確認するまで分かりません。

外来患者由来ですので、通常は①という考えがある(培養でいつも確認している状況からシンクロされている)。でも①という事象に対して異常値、云わばパニックデータ(正確にはクリティカルデータというらしい)なので、臨床へ迅速に報告する必要性も出てきます。何故か?それは、通常一般細菌(特に大腸菌)を主体とした抗菌薬が初期投与され、経過観察されることが多いからです。つまりカンジダに対しては無効であることが想定されているからです。

②についても考えることは重要です。情報が足りない場合は①を理由に聞くことも考えないといけません。②の場合は良くあることですので、治療が必要かどうかは臨床症状ありきです。

2009年のIDSAガイドラインでも『無症候性の場合は特に治療は必要としない。必要なのはカテーテルの抜去。』Clinical Infectious Diseases 2009; 48:503–35

これはどのテキストでも記載されていることです。

ただ、グラム染色上で白血球が多数あり、このようにカンジダが出た場合は結果を急ぐかどうか?と時間と人間関係に余裕がある場合(笑)は聞いておくことをお勧めします。

でないと、『そんな大事な情報、早よ教えてくれへんと・・・』という状況出てくるからです。

通常はアゾールの投与になりますが、アゾール耐性菌も多く仮性菌糸を伸ばしているかどうかの情報は培養を確認する際に重要な特徴です。出来れば、グラム染色報告時に仮性菌糸を伸ばしているのでC. albicansの可能性があるという情報も加えると良いでしょう。

出来れば追加で、熱がなくても血液培養、β-グルカンの測定も必要でしょうね。

Photo_6

| | コメント (3)

2010年2月 1日 (月)

日本臨床微生物学会総会

土日と第21回日本臨床微生物学会総会へ行って来ました。二日間とも濃厚な内容も多く会場選びが大変だったと思います。

グラム染色を取り上げた内容が多く、また参加者も多くグラム染色への関心度が高かったように思います。私もグラム染色関係した企画に参加させて頂き、会の盛り上げに貢献出来たかと思います。

エキスパート講座では、会場に入りきれない程の参加者があり、熱気がムンムンしていました。内容を何にしようか考えた時に、まずは喀痰をしなければと思い、市中肺炎と少し見方を変えなければならない院内肺炎を最初に持ってきました。手術、経管栄養、免疫抑制剤、抗菌薬など色々な医原的要素に加えて、高齢社会になった日本の医療背景と併せて喀痰像を見ていかなければなりません。あくまでも、市中肺炎時のグラム染色像の応用例である院内肺炎時のグラム染色を少しでも臨床価値を高めるようにどう考えるのが妥当か紐解きしていきました。また、入院して間もない時期の入院患者から見える菌の解釈についても少し紹介しました。

皆さん、どうでしたでしょうか?

足りないと思われた方も多かったと思いますがご了承下さい。

事前に予告していた尿の見方・考え方までは時間が無くて申し訳ありませんでした。ケースカンファンスで少しお話させて頂きましたが、また機会があればどこかで話したいと思います。

でも、全国にファンが多くなっていると沢山聞きまして恐縮していました。また、夜も熱意のある先生たちに拉致られるなど多くの方が貪欲にグラム染色を学ぼうとしているのが解りました。これからもお役に立てるように頑張っていきます。

また、殆どお手伝い出来ませんでした、ワークショップの世話人の方々申し訳ありませんでした。

21 スライド

Dsc01434 会場は熱気ムンムン

| | コメント (2)

« 2010年1月 | トップページ | 2010年3月 »