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2010年1月28日 (木)

喀痰を見る時の考え

土日は第21回日本臨床微生物学会総会です。

今年のテーマは『求められる・応えられる・信頼される医師と技師』です。

医師と臨床検査技師が共同して、共通意識を持ち、感染症の診断と治療を考えることは本当に重要です。

平成22年度の診療報酬改定について”医療関係職種の役割分担と連携の評価”が一部分加わっています。http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/s0127-7.html

NSTやRMT(呼吸ケアチーム)には、週1回の保険点数が加算されます。http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/dl/s0127-7g.pdf

じゃ、ICTは?です。

1月15日の資料には、感染対策の充実について記載があり、感染管理の認定者が管理者となるチーム医療を実施すると加算することが新設されると記載されていましたが、記載がありません。どうなっているのでしょうか?DPCが実施されている施設も多いので、DPCの加算がポイントになります。DPC施行病院に関しては既に平成18年度に係数が表示されいるようです。

感染に関しては『感染対策部門等の複数の異なる職種が関与するチーム医療の評価について、加算点数の見直し』が検討されています。実がなれば追い風になるでしょう。

なので、このようなグラム染色が活動の中心となる例も今後活躍する場面が増えるでしょう。

先日、老人施設で誤嚥性肺炎の悪化で来られた患者がいました。研修医に塗抹検査について説明をさせてもらい、抗菌薬の選択について参考にしてもらいました。

下記がそのスメアです。感じることあるでしょうか?

臨床微生物学会のワークショップでは類似症例の簡単な解釈について話そうと思います。

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2010年1月25日 (月)

尿路感染症診断のためのグラム染色④

尿の貪食像ってあまり見ないですよね。

尿中では浸透圧の関係で貪食能が落ちることが報告されています。

INFECTION AND IMMUNITY, Jan. 1993, p. 8-12

上行尿路感染で、侵襲性のある病気の場合は貪食像が見られることが多いようです。菌が器質に直接障害を起こしたり粘膜下組織の感染を起こしやすい環境だからでしょうか。良く分からないので自分で貪食像のデータも調べました。

尿検体全体の貪食率22%でした。

Primaryな外来で単純性尿路感染症の場合は 44%
バルン留置者で新たな感染をうたがった場合   77%
腎盂腎炎疑い腎盂カテーテル尿を採取した場合 88%
急性腎盂腎炎など上部尿路感染を強く疑う場合には貪食率は上がりました。自分でも勉強になりました。
こんな像は深刻な病状なのかも知れませんね。
今週の臨床微生物学会ではこんな話もしようと考えています。
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2010年1月22日 (金)

尿路感染症診断のためのグラム染色③

尿路感染症診断のためのグラム染色②と同じ患者で血液培養が陽性になりました。

出てきたのが下記のスメアです。尿の検出菌=血液培養陽性菌とならないこともあります。やはり病原性の高い腸内細菌は強敵です。

有熱性尿路感染症のうち血液培養はどれくらい陽性になるでしょうか?

医療施設の特性に左右されることと思いますが、大体半数程度でしょう。

当院の成績も少し調べてみました。

当院は救急患者を診る場合、システム的に38℃以上の発熱があると血液培養を自動的に採取するようにしています。尿路感染症を疑う場合は採尿するので、同時採取する患者を割り出し調べました。皆さんも時間があれば調べてください。

同時に陽性となったのは31%。やや低く感じます。熱のカットオフ値が高いのでしょう。(むしろカットオフはナンセンスかも知れませんが・・・)。大腸菌が最も多く29%となりました。また、市中ではキノロン耐性菌が増えたと言いますが、院内のそれよりは低く第一選択はキノロンであることが多いようです。

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2010年1月20日 (水)

尿路感染症診断のためのグラム染色②

続きです。

やはり何と言っても患者背景は大切です。

単純性膀胱炎のため外来で採尿された方なのか?急性腎盂腎炎なのか?

はたまた、腎結石に伴う尿路感染なのか?バルン長期留置なのか?尿路変更をしているのか?

医療技術の高度化に伴い、出てくる菌も複雑化していきます。

先日も話したように、市中で1次的な感染であれば腸内細菌が優位で、大腸菌、肺炎桿菌が多く検出されるでしょう。

入院期間が長い場合は緑膿菌に暴露される可能性が上がり、感染の機会が増えて検出される可能性が上がるし、エンテロバクターやシトロバクターのようなセファロスポリナーゼ産生菌、腸球菌の検出される可能性も上がる。

バルン挿入例も考えよう。

バルン短期挿入者の場合ほとんどが、腸内細菌(言わば大腸菌)であり、長期になれば複数菌検出されることが多い。感染症に関心のある医師でない限り、そういった考察を持たないで初期治療の抗菌薬選択を行う傾向が強い。しかし、関心のある医師はグラム染色の結果を参考にする機会が多い。それは抗菌薬適正使用へとつながる行為である。

関心が無いのは、検査結果を有効に使えていないのか?期待されていないのか?施設によって違いはあるが、関心を引いてもらうようにグラム染色の結果を表現することが大切では無いでしょうか?

この場合は複数菌居ると報告していますでしょうか?腸内細菌に加え腸球菌の2つの菌が考えられますと報告すると良いのでしょう。

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2010年1月18日 (月)

尿路感染症診断のためのグラム染色①

尿路感染症を疑うため、尿が提出されます。

一先ず、グラム染色をしますが、どういった点に注意して見ていくのが良いのでしょうか?という疑問を持っている方は多いと思います。

細菌検査室で毎日培養結果を見ている人は本当に良く分かっていながら大事な点を見逃している方も居ると思います。また、臨床の第1線で染色をしている方は培養を目の当たりにしない点もあり、文献的もしくは経験に合わせた見方になっていると思います。

尿のグラム染色を見る場合ですが、やはり最も気をつけるのは大腸菌に代表される腸内細菌群でしょう。腸内細菌は染色態度が良く中~大型のグラム陰性桿菌に見えるものが多く、慣れてくると、他グラム陰性桿菌である緑膿菌やインフルエンザ菌との違いが分かります。

緑膿菌はやや細めの菌体で、染色性がやや悪く、両端が細く見えます。また、単体で見えるより塊形成をしたりします。

あと、尿からインフルエンザ菌が出てくる頻度は非常に少なく、もし鏡検で確認されたとしてもインフルエンザ菌だろうという予測は付きにくいと思います。

言わば、グラム染色はその臓器特異性を加味した検査前確率の高い起炎菌の推定を肉眼的に行い、検証をする手段の一つであることです。

下記は尿から出た大腸菌と緑膿菌のワンカットです。見比べると少し違いに気づくはずです。患者背景も大切ですが次に話します。

600 ×1000 大腸菌

6002 ×1000 緑膿菌

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2010年1月15日 (金)

一所懸命見るところ?

グラム染色を始めると起こる現象。

 ①グラム陽性菌ばかり目立ってグラム陰性菌を見落とす。

 ②連鎖状球菌や双球菌がすべて肺炎球菌に見える。

 ③慣れで染色が雑になり、しっかり染まらない。

などなど。皆さん反省材料は出来たでしょうか?

さて、下記のような像が喀痰で確認された場合どうしますか?

問題は口腔内常在菌の推定です。常在菌の多くは集塊を作ります。また上皮に多く付着したりします。こういうのは眺める程度で、原因菌かどうかの判断は2の次で良いと思います。いくら菌の推定をしても原因菌の可能性は低いと判断出来ます。

ここに時間を割くのであれば、他のアクションをすることが必要でしょう。

Photo ×600(塊)

Photo_3 ×600(上皮に付着)

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2010年1月13日 (水)

食物残渣

グラム染色を行う前に観察する項目として検体の肉眼的所見があります。喀痰の場合はM&Jの分類です。吸引痰の場合は使いませんが、肉眼的所見を確認することは必ずします。

良く見ると食物?と思われる誤飲物を確認することがあります。

グラム染色ではどう映るのでしょうか?

下記は食物残渣が染色されたものです。尿沈渣の糞便混入物として確認されるものと類似しています。野菜でしょうか?メッチャでかいですね。

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2010年1月10日 (日)

新型インフルエンザの報告

新型インフルエンザも10月初旬から続いた第1波のピークも去り、漸く落ち着きを取り戻していると思います。一息せずに出来ていない感染対策を今改善しなければ、第2波を乗り越えることが出来ないかも知れません。

既に前駆波と呼ばれ出している神戸の情報について漸く公開されました。読み返すと発生時に受けた電話内容や発熱外来をしていた頃を思い出します。

全体編と学校編に分割されています。潜伏期間、感染力などの詳細な情報がまとめられています。

興味のある方はご覧下さい。今のところ問題は休日夜間の診療体制でしょう。特に小児科診療は医師数も不足しているため非常に大きな問題となるでしょう。当院の医師もかなり頑張っています。後方支援を続けたいと思います。

追加ですが、家族は大切にしましょうね

神戸市・兵庫県新型インフルエンザ集団発生疫学調査報告(全体編)http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/pdf09/KobeHyogo1.pdf

神戸市・兵庫県新型インフルエンザ集団発生疫学調査報告書(高校編)http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/pdf09/KobeHyogo2.pdf

写真はインフルエンザ繋がりですが、インフルエンザ菌です。

緑膿菌と混合しています、違いが分かるでしょうか?臨床微生物学会でも同時に見える症例の解説を担当してます。時間の都合が付けば足を運んでください。

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2010年1月 8日 (金)

CLSI M100-S20 Document

1月になり、CLSIの抗菌薬感受性ガイドラインは新たなものが出版されます。以前に掲載した腸内細菌のBPはやはり変更されたようです。ただし、EUCASTのような厳しさは無く、近づいたが米国独自の基準となっているようです。

聞いた話ですが、変更されたのが第3世代セフェムのBPで予定通りCAZは8⇒2、CTXは8⇒1のようです。気になることに第4世代セフェムは?ということです。CFPMは8のままで、EUCASTが提唱している1μg/mlとは異なるようです。PIPC/TAZも同様です。

CLSIのドキュメントを無償閲覧出来るのですが、腸内細菌に関してはKPCのことも含め考慮されているようで、ESBLのスクリーニング検査は撤廃されてしまったようです。早く薬剤耐性かどうか感受性レベルで検出することが重要だそうです。

また、カルバペネムの新規薬も続々と出て来ているみたいですね。聞くところによるとカルバペネムのBPも以降下がる予定だとか・・・。感受性検査も様変わりしそうですね。

興味のある方は立ち読み下さい。

CLSI M100-S20のサマリー(203KB) http://www.clsi.org/source/orders/free/m100-s20.pdf

EUCASTの感受性判定基準(2.18MB) http://www.eucast.org/fileadmin/src/media/PDFs/EUCAST_files/Disk_test_documents/EUCAST_breakpoints_v1.0_20091221.pdf

これは、急性胆管炎の患者の胆汁です。大腸菌ESBL産生株とEnterococcus faecimの混合感染です。腸球菌は自然耐性なので菌の推定=抗菌薬の選択に結びつきますが、大腸菌は耐性かどうか全く分かりませんね。

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2010年1月 7日 (木)

Aeromonas hydrophilaって

先日は溶連菌感染を見せましたが、劇症型の感染症のうちグラム陰性菌ではVibrio vulnificusを覚えておかないといけませんね。でも、この菌は海に関係するため問診をしっかりしたりすることで見つけやすくなります。冬場は海水の温度も低く発生しにくいといいます。

Vibrioの類縁菌でAeromonasと言うのが通年検出されます。1つの菌種にA. hydrophilaというものがあります。集団食中毒を起こす菌としても知られていますが、この菌は淡水に多く存在します。河川と海水の合流部に多いとの報告もあります。hydrophilaだけに水が好きの名称が由来で水系感染の菌として覚えておく必要もあります。劇症の感染症も起こしますが、免疫低下者の血液培養より検出されることも多いです。

何故?と考えた場合、食事性が一つ要因となります。そうです経口摂取が原因です。野菜より検出されるという報告もあるようです。奥が深い。

サイトトキシンを産生して毒性を発揮し、一部メタロβ-ラクタマーゼを産生することが知られ(染色体性)、IPMのMICが高くなる場合もあります。就職して間もない時に数例見て調べた思い出があります。私がこの世界に踏み込んだ最初の事例かも知れません。

スメアを見た場合、腸内細菌のように濃い色調に観察されます。大腸菌や肺炎桿菌と異なる点は、やや湾曲(と教科書に記載あり)。緑膿菌の濃い染色と覚えるのでしょうか?

私とてこのスメア見ただけでは何とも言えません。閉塞性胆管炎から出た菌です。

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2010年1月 4日 (月)

日課としての道場

知人もそうですが、結構このブログを日課として見られる方が多いと聞きます。意外に多いのは始業時に見る方・・・。モチベーションが上がるそうです。

皆さんこよなくグラム染色を愛している方ばかりと思い感動してます。

日本武道の日課としては荒稽古?乱取り?のようなのでしょうか?今であれば乾布摩擦程度でしょうか?人それぞれですが、今後とも宜しくお願いします。

年末年始ですが、重症例は待ってくれません。対応すべく休日出勤を繰り返しておりました。

何故か知りませんが毎年年末年始の休暇中に見る疾患があります・・・溶連菌感染症。

先日、朝行くと血液培養陽性になっていました。血液培養は溶血しており不吉な予感・・・。すぐにスメアを作り染色したら、予感は的中です。

グラム陽性球菌+連鎖球菌+菌周囲が紅い=溶連菌(の法則)

こういうのは直感が働きます。ラテックスをするとしっかりとA群に。早速電話です。

「熱はそうでも無いが、腎機能が落ちてきて、少し血圧低下も・・・フォーカス不明なんやと・・・」、既にABPC/SBTは初期投与されていますが、トキシックになるのでCLDM追加です。

サマリーを見ると、アルコール多飲でDMあり。ハイリスクですが皮膚病変も咽頭炎も無く侵入門戸不明。文献検索してみると約10%はそうなんだと。やはり血液培養は大切です。

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2010年1月 2日 (土)

あけました、おめでとう

皆様、2010年明けました、おめでとうございます。

一家団欒の中、ミカンを食べながらグラム染色を見ていると気持ち悪がられませんか?

こういう医療従事者の思考は一般人に受け入れられませんよね。

さて、こんな症例もあります。

先日外来で、数年間カンジダ性膣炎が反復し掻痒感が続くという患者が紹介されて来ました。HIV?CSW(コマーシャルセックスワーカー)?と思うでしょうが、意外に若い女性であるようです。基本はケトコナゾール膣錠やフルコナゾールの経口投与のようですが、今回は色々試したがダメな症例です。

相談貰ったので、アゾール耐性?と思い、グラム染色してみましょうということで、帯下を染色。すると、このような菌が見えました。

ラクトバチルスが多数確認される中、カンジダを発見。菌糸伸ばしているので、アルビカンスの可能性が高いと報告。結局、反復には反復でアゾール投与で対応することにしました。文献もすんなり見つかりましたので、意外に多い疾患なのでしょうね。N Engl J Med 2004;351:876-83.

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