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2009年11月30日 (月)

チーム医療実践セミナー 感染管理(ICT)部門

第49回近畿医学検査学会に行ってきました。紅葉が見頃の京都だけに観光客がかなり訪れている中、みやこメッセで開催されました。

いつも近畿学会とジョイントするのがチーム医療実践セミナーです。ICT部門は京都府立医大のK先生が企画してくれます。毎年30名程度の参加者でセミナーが開催されます。

細菌検査室がある病院、無い病院から検査センターまで。臨床検査技師で感染管理の担当者すべてが対象です。

今回は、報告書の見方・考え方で、

検出菌の上位菌種の見方から耐性菌の3題をグループディスカッションし、最後にまとめをF社のK先生にして貰いました。今回も活気があり、自施設以外の内容についてディスカッション出来たため良かったという声が多かったです。

次回は奈良県開催ですが、その前に日本医学検査学会(5月に神戸で)の前日に企画中であります。ご興味のある方が参加ください(また案内があると思います)。ICTは自動化学会には無いので良い企画と思います。

私も参加予定ですので、ブログでも案内します。

最近、色々な学会などに行くと「師範」と呼ばれますが、あくまでも師範に慣れないその手前もしくは手前味噌の「師範手前」です。グラム染色しかしない施設の方にも見た事あります・・・と言ってもらって少し嬉しい反面恥ずかしい思いです。作者と知ってびっくりされる方もチラホラ・・・。

また応援下さい。

これは実践セミナーのコメント報告会の景色です。設問をまとめて報告し、会場より質問を受けるようにしてます。

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2009年11月27日 (金)

じゃあ、これは悩むでしょうか?

悩むシリーズを勝手に作りましたがすいません。

下記にグラム染色と検体を掲載しましたが、喀痰の外観はP3(膿部分が2/3以上)です。市中肺炎でこのような痰を認めるからには、かなりグラム染色の能力が上がるでしょう。

顕微鏡を覗く前に、皆さん見えるだろうと思われる菌のイメージは持てているでしょうか?

肺炎球菌?インフルエンザ菌?ブランハメラ?市中肺炎の多くはこの3つの菌で占められてます。

しかし今回はこのようなスメアを確認。何をコメントとして残し、主治医が聞いてきた場合は逆に聞くことありますでしょうか?自院のことも含め想像してみましょう。

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2009年11月25日 (水)

これは悩まないかも

先日の神戸大学の講義の中のひとコマですが、グラム染色で確認をしたら反射的に起炎菌かどうか判断することがあると言いました。

肺炎を疑ってグラム陽性の双球菌を確認すると肺炎球菌と思う思考回路が働きますよね。

逆に肺炎を疑ってグラム染色をするとこのような菌が見られた場合は、皆さんどうしますか?

 ①この場合は原因菌で無い可能性が高いということで他を探す。他を探して何もない場合は菌不明にする。

 ②多菌種を認めるので、一応原因菌の一つとして考える。

 ③この菌を原因菌とする上で、追加検査を行う。

 ④難しすぎて分からない。再度採取を試みる。

①の場合は、カンジダが肺炎の起炎菌にならない可能性が高いというのを知っているばかりに思考回路の邪魔をする場合があります。実は少ないながらもカンジダの肺炎はあるわけですが、患者が外来で昨日まで元気であった人からこのようなスメアが見られた場合は除外しますよね。ただ、免疫不全で重症肺炎を起こし、原因菌不明の場合はどうでしょうか?

日和見感染菌の判断は意外に奥が深いのが分かります。患者背景をしっかり観察することはこういう場合も大切です。

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2009年11月23日 (月)

悩むところ

感染症の相談もらう中でたまに悩む症例があります。悩むポイントはいつも同じなのですが、稀な症例だけは菌が検出しているのにも関わらず自分の勉強不足もあり、遣る瀬無い気分になります。

この例もその一つです。ちなみに成人例です。

尿膜管炎です。詳しくは聞かないのですがコメントに(尿膜管からの採取と)記載があります。グラム染色を見ると必ずpolymcrobial patternを示しています。基本的に重症で無ければ経験的治療が不要なのでしょうが、腹痛を主訴として来ている中、抗菌薬を全く服用ささずに帰らせるのは難しいでしょう。

参考文献もいくつか見ますが、小児の例が多く尿膜管遺残によるのう胞と感染が目立ち、成人に関するものは少ないです。

起炎菌は大腸菌や肺炎桿菌、腸球菌が多く見られるようですが、これは嫌気培養をしているのか定かではありません。スメアを見る分には嫌気性菌が多数検出される感じですが、結局培養すると大腸菌、肺炎桿菌などの尿路感染症の一次菌とCNS、腸球菌なのです。

うまく分離出来ていないのでしょうか?悩みますよね・・。

グラム染色を掲載します。知っている方教えて下さい。

ちなみにグラム染色はこの場合、『ブドウ球菌や腸球菌に加え、腸内細菌と思われるグラム陰性桿菌の貪食があります。』とコメントいたします。グラム陽性球菌は丸いのとやや楕円のものが確認出来ますでしょうか?楕円のものは尿膜管なので腸球菌ではないか?と推測しますがね。

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2009年11月19日 (木)

神戸大学医学部附属病院 研修医レクチャー

本日は、神戸大学医学部附属病院の研修医レクチャーに呼ばれて行ってきました。

母校の講義に呼ばれ、後輩の指導に当たることは非常に光栄に思い即OKしました。

研修医、医学生、検査部、感染制御部含め多数参加して頂きましてありがとうございました。

中々短時間では納まりきれず、今回は肺炎のさわりの部分のみです。院内肺炎から始まり、市中肺炎との違いも含めレクチャーをしました。実はレクチャー内容は、髄膜炎などの重症感染症から菌血症(血液培養陽性例)、膿瘍など多臓器に渡りあるのですが、何が大事と思い、誰でも行っている肺炎例を出しました。

物足りなかった方も多数おられると思いますが、また何かの機会で話出来ればと思います。

質問を受けた内容としていくつか貰いましたので3つほど紹介します。

①どこまで菌を推定出来れば良いのか?どうすれば覚えることが出来るのか?

⇒出来れば全て。でも出来ないだろうと思うので、市中肺炎であれば肺炎球菌とインフルエンザ菌は絶対。院内肺炎の場合はぶどう球菌(特にMRSA)と緑膿菌は出来れば。覚えるのはN数を増やすだけか、検査部に行き直接指導してもらう(茶菓子を持っていくと効果的)。

②検査部に出す時に情報として必要なものは?

⇒電子カルテベースでない病院も多い(当院もそうですが)ので、急ぐかそうでないか?性別、年齢などの基本情報に加え、目的菌、推定疾患、抗菌薬投与の有無、他(ステロイドなど)の使用歴の有無、既往など。また、患者の重症度をしっかりと伝えて、提出材料のトリアージをしてもらう。ただし、個人的な都合によるものは避ける。本当に急ぐ場合は、急ぐ理由を検査部に申し出て貰うと邪険にする人は居ないと思いますよ。

③髄膜炎の場合はどう見るの?

⇒抗菌薬投与していないのであれば、肺炎球菌やインフルエンザ菌は90%程度見れる。検体は剥がれないようにちゃんと固定する。他の検査(ラテックス法などの直接抗原検査)もあるので、それも参考にする。ただし、リステリアはピットホール(グラム染色の感度が低い&ラテックス抗原検査で対象になっていない)になる。

色々とありましたが、恥ずかしくて聞けない先生も居たのではないでしょうか?

当院へ研修医に来れば漏れなくついていますのでという宣伝もしてしまいました。次年度に来られる先生からもご挨拶貰いました。

今回、お世話して頂いた企画委員のK先生と感染制御部のY先生、ポスターを作成して頂いた?先生、本当にありがとうございました。

下記は本日話したスライドの一部です。市中肺炎の起炎菌はどれ?です。

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2009年11月17日 (火)

ひとやすみ・・・ICN実習 寄生虫編

ICNの微生物実習では、我々臨床検査技師でもあまりお目にかかれないような内容もあります。神戸研修センターならではの実習だと思います。

寄生虫の実習です。虫卵を顕微鏡で見たり、原虫を見たりするのは良くある話ですが、寄生虫を触る実習はここしかないと思います。

写真は回虫の成虫です。左が雄で右が雌。雌にはクビレがあり、雄が巻きつけ易くなっています。受精の時に必要だとか。

本当にうどんのようですが、意外に固い(ホルマリン固定しているためか)。初めはキャーと言ってますが、平気で皆さん触り、記念撮影が毎年絶えません。やはり看護師さんは偉大です。

Dsc01412 すごいですね~・・・(所さん風にどうぞ)

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2009年11月15日 (日)

これは難しい?簡単? 役に立つ? 解答

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-0e4a.html

解説したら以下のようになりました。

抗菌薬投与していても菌が減らない場合は耐性菌の存在か膿瘍や閉塞により抗菌薬が感染部位に到達出来ないことが示唆されます。

こう考えるのも一つです。

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2009年11月13日 (金)

膿瘍の検査の模範解答と手解き

先日掲載分の模範解答と手解き。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-a9dd.html

創部感染を設定しています。創部感染の代表的なものは術後の創部感染。医原的行為で発生した感染です。

薬剤耐性菌かどうかグラム染色で確認出来るのか?という問いには「いいえ」です。

抗菌薬に感受性であれば菌は消失するため、投与の前後で菌の減少が確認出来れば、使用した抗菌薬に対しては感受性と推測出来ます。

ただし、今回は何もない状態。ヒントは医原的な行為が加わっていること。どう解釈するか?

貪食+ぶどう球菌となれば黄色ブドウ球菌の可能性もあります。ただし膿瘍のおかれた状態にもよりますが、以下のことがあれば耐性菌(例:MRSA)の確率は高いと言えます。

①抗菌薬が投与されている場合

②すでにMRSA保菌者の場合

③MRSAが頻回に出てくる病棟など(特に入院環境などの高度に抗菌薬が作用している場所)

スメアを見るのと同時に、このような思考回路を働かせ、どうしてMRSAと考えるのか?筋道を立てて解釈していくことは大切です。

洞察力と言いましょうか?ダラダラと見ていると良く習得出来ませんね。

この内容は12日の院内感染対策講習会(厚労省:奈良)で解説しました。下記がそのスライドです。A病院とB病院で働く人はそれぞれ感じることが違いますよね。

それがローカルファクターの考え方です。

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2009年11月11日 (水)

ICN研修生神戸6期生

先々週からICN研修生の微生物学の講義と実習がありました。実習風景を撮影したので掲載します。

研修生からのコメントとして多いのが、微生物は苦手だ、嫌い、意味が良く分からないと色々です。毎年このように実習をする機会があり、講義では補えない内容を説明していきます。最初の顕微鏡の実習は実際にグラム染色をして頂きます。

学生時からしていないこともあるのでしょうが、皆さん楽しそうに眺めています。また、普段、そういったプロセスで菌の同定がなされていくのか?今回知る良い機会にもなったのでは無いか?と思います。

今回の研修生の中には、臨床検査技師になりたいとの声も出ていたくらいの熱中度。そう言って頂ける私は非常に幸せな気分になりました。

しかし、研修生にとってはまだ1歩目。今から授業に、臨地実習、試験に、ICN受験と行事が目白押し。実際ICNになっても、まだまだヒヨコで、右往左往の毎日と思います。

最後に言いましたが、実際ICNとしての活動は患者QOLに役立ち、みんなの努力分だけ患者は良くなる。しかし、焦りや無理は却って自分や患者にマイナスの要素をもたらすリスクは抱えており、はじめはスロースターターで良いと思います。無理せず頑張る姿勢で臨んで欲しいと感じてます。

みんな、ガンバレ!!

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コアグラーゼ試験(黄色ぶどう球菌の同定)をしているところ。

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2009年11月 9日 (月)

ちょとだけ捻り技

11月になり、少し肌寒くなりました。この時期より流行風邪が増えてきます。インフルエンザの鑑別をどうしようか?と悩みも増えます。

ただ、問題なのは細菌性肺炎も増える時期です。我々のような健常人でも肺炎を起こすリスクは十分にあります。ただ、基礎疾患を有する者とは若干違い出てくる菌はおおかた一定の傾向があります。当然、胸部レントゲン像やその他の臨床検査値を含めての検討も必要ですが。

このスメアもそうです。レントゲン上では明らかな肺炎。一部区域性もあり大葉性?と思わせる像。ならばグラム染色と尿中抗原を。

尿中抗原はレジオネラと肺炎球菌共に陰性。グラム染色は下記のよう。

言い切れるかどうかの問題もそうですが、尿中抗原陰性の解釈は臨床研修医の教育には欠かせないものです。検査室の方、是非とも聞かれたら即答しましょう。

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2009年11月 6日 (金)

明日は和歌山

和歌山に昔からお世話になっているY先生が居ます。昨年の学会で、喀痰スメアのことで場外乱闘(!?)で長く話ししました。漸く解説出来る機会を頂きました。

なので、当日は下記のスライドを説明します。2つありますが、別の症例でそれぞれ喀痰です。ずばり、どう考えて臨床へ報告するのか?考えましょう。

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 その2

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2009年11月 4日 (水)

これは難しい?簡単? 役に立つ?

こういう例はどうでしょうか?

パンペリで熱が続くためにCMZ投与しました。一応血液培養も採取しましたが2日目で陰性です。どうやら腹水が溜まっているようです。手術しましたがリークしている可能性もあり再手術前に一応とのことで腹水採取をしたようです。大丈夫?と思いながらも、グラム染色をしました。

白血球こそ少ないですが、菌が複数見えました。

ここでどう考えるのが適当かですが。

 ①投与している抗菌薬は感受性なのか?

 ②感受性であれば菌が見えているのはおかしい。何か作用しにくい構造上の問題はあるのか?

 ③どういった菌を想定するのか?

少し考えて下さい。

考え方は次週でも公開しますが、忘れていたらコメント下さい。

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2009年11月 2日 (月)

膿瘍の菌検査

細菌検査室へは膿瘍の菌検査が良くやってきます。

膿瘍と言ってもかなり広範囲の解釈が必要です。

例)

 皮膚膿瘍

 軟部組織膿瘍

 骨盤内膿瘍

 扁桃周囲膿瘍

 肛門周囲膿瘍

本当に臓器特異性が高いため、どの部位から採取したもの、どういう患者のものなど臨床背景によって出てくる菌も様々です。本来、膿瘍が貯留することさえも異常項目として認識されるべきでありますが、しっかりと採取部位は確認すべき内容です。

写真は創部感染の膿瘍から採取したものをグラム染色にしてみました。

このあと、どう考えていくことが必要でしょうか?何を探しますか?

耐性菌?この1枚で分かるかな?

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2009年11月 1日 (日)

札幌終わり

昨日は札幌のシーメンスマイクロスキャンセミナーに行ってきました。

北海道は当日の天気予報が雪と少しびっくり。新千歳空港を降りれば神戸と別世界。気温が20℃も違います。同じ日本なのに奥が深い。しかし、グラム染色は温度差がありません。皆さん熱心にメモと取りながら講演を聞かれていたとのこと。札幌医大のT先生にも久々お会いしました。

先日のスライドで示したことですが、これはカンジダの血流感染を強く疑う所見です。

はたして、このスライドを見た瞬間

 ①グラム陽性球菌

 ②酵母様真菌

 ③カンジダ

 ④Non-albicans Candida

 ⑤ずばりCandida parapsilosis

どこまで報告しますか?という下りでスタートしました。

最終的に、カンジダが血液培養から出てきた時の解釈、カテーテル感染を疑う時の対応、培養の感度、治療薬の選択に必要な情報(感受性を中心に)、患者ケア上で必要な情報、看護ケア上の注意点、予後などについて説明しました。

北海道は初めての講義なので、症例を交えて基本的な見方を中心に進めて行きました。

司会のS先生は最後にあっという間に過ぎてしまいました・・・とコメント頂きました。

最近、時間通りに内容が運ばず規定の時間を瞬く間に消費してしまうようです。少し反省もありますが、皆さん勉強になりましたと意見も頂き、良かったと思います。また北海道に行く機会があればと思います。

意外にブログ読者が多いことも分かりました。朝と夕方見る方も要るようです。今後とも宜しくお願いします。また、作者と講師がリンクすることもびっくりされることも多いのが分かりました。

今週は神戸グラム染色研究会(5日)、和歌山県臨床衛生検査技師会(7日)です。宜しくお願いします。

再度グラム染色掲載します。

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