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2009年8月10日 (月)

老人ホームから転送された肺炎患者

救急で入院する患者のうち、肺炎患者が2割くらい占めるのでしょうか?

入院歴の無い患者の場合、市中肺炎として扱うことも多いでしょう。ただし、最近の入院歴や手術歴が無いか聞くことが大切です。老人福祉施設はどうなるの?と思いきや、入院と同じ状況もあります。うちの研修医には、入院だけに捉われず肺炎の菌を特定するようにして下さいと言っています。

高齢者のため誤嚥も要素のうちで、口腔内常在菌を標的としてABPC/SBTを投与するのも一つでしょうが、緑膿菌はカバー出来ません。やはりこういう時はPIPC/TAZが適応になるのでしょう。でも、この処方の違いはグラム染色をして始めて判断出来るもので、グラム染色は大事だなと思います。

先日、脳外科の先生から肺炎の相談ですが・・とありました。1年前に脳外科の手術をし、老人ホームに居たそうです。肺炎症状が悪化して入院するんですが、菌検索してくれませんか?と吸引痰を持って来ました。

吸引がきれいい出来ているドロドロの膿性痰で、弱拡大では扁平上皮が多数。誤嚥の所見です。周囲には活動性の高いきれいな核の見える白血球が多数見えます。

良く見るとグラム陰性桿菌の貪食像が確認され、太く染色性が良いので腸内細菌を疑います。扁平上皮も多いので誤嚥性肺炎で問題無いのでは?と返答。確かに下肺野にそれらしい陰影が写っています。バルジ化も見えますし、何か処方あるんですよね。

抗菌薬はABPC/SBTを予定していましたが、PIPC/TAZに加えてCLDMで初期治療開始。まさに、グラム染色で変わる市中肺炎より院内肺炎の考え方です。グラム染色の応用幅は使い方で拡がります。培養では肺炎桿菌と大腸菌が発育しました。

100 ×100

1000_2 ×1000

Photo_3 ×1000(バルジ化)

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グラム陰性菌」カテゴリの記事

コメント

今回のケースでPIPC/TAZとCLDMを併用されたのはなぜでしょうか。嫌気性菌カバーであればPIPC/TAZもチエナムも同じように嫌気性菌に抗菌活性があるので、前でのチエダラと同じようになっていないでしょうか。以前同じように使用していたらICTの先生が不適切なのでPIPC/TAZで十分ですよとおっしゃっていました。チエナムとダラシン(チエダラ)の併用は抗嫌気性菌と言う意味ではナンセンスと聞いたことがあります。

投稿: 2年目研修医 | 2009年8月10日 (月) 08時52分

2年目研修医様

確かに鋭い観点というより、良い教育施設で学んでおられることと思います。
さてCLDMの処方ですが、日本呼吸器病学会の院内肺炎のガイドラインではCAZやCFPM使用時はグラム陽性球菌の活性が悪いのでCLDM投与を考慮すると書いていますよね。しかしPIPC/TAZについては記載がありません。PIPCは本来カルボキシルキの化学修飾により緑膿菌を初めとするグラム陰性桿菌の活性を上げています。その分、ぶ菌や連鎖球菌の一部の菌に対してはABPCより抗菌力が劣る結果になっています。なので、うちの教育では誤嚥に対してはABPC>PIPCになっていますので、ABPC≒PIPC+CLDMの位置づけにしています。勿論CAZやCFPM、CPFXなどは言うまでもありません。またBacteroidesに関してはPIPC/TAZは効果悪いのは分かっていますし、培養や症状を見てCLDMの是非を考えています。なので、ガイドラインと少し違うのですが、うちではPIPC/TAZ±CLDMの考えです。
カルバペネムですが、これは最強の抗菌薬で嫌気性菌もフルカバーします。なので、これで改善が無い場合(オブストラクションが無いと分かっている場合)はMRSAや真菌が気になるところです。なのでIPM/CS+CLDMはCLDMの効力がIPM/CSで打ち消されていますので、併用したら少しは効果が出る(モチリン効果など)と想定されますが、特に抗菌力に関しては問題無いと考え高価な処方と考え、CLDM不要と考えれると思います。
ただ、誤嚥=ABPCと考えると緑膿菌が外れてしまいますので、初期のグラム染色所見は少しだけ重要視しています。

投稿: 師範手前 | 2009年8月10日 (月) 22時14分

誤嚥が疑われる場合の感受性試験は、どこまでやるべきでしょうか。

投稿: 4人のママ技師 | 2009年8月13日 (木) 21時58分

4人のママ技師さま
お久しぶりです。誤嚥性肺炎を疑う時の感受性を何処までするか?というのは簡単で難しい問題です。

というのは細菌検査室の使命は菌を検出させてなんぼになります。検出菌は一応治療対象の是非を問わず感受性が必要です。口腔内には1つの好気性菌に対して3つの嫌気性菌が居ると言われています。なので誤嚥に関してはどれくらいするかは保険診療の絡みもあります。同様のケースに腹腔内膿瘍にもどれだけ感受性をするのか?ということになります。保険請求出来る菌の数は3つまでで、それ以降は同様の金額になります。今の保険診療の範囲で、一般医療機関では3菌種以上すれば赤字になることが予測されます。
嫌気性菌は必要なのか?口腔内常在菌は必要なのか?疑問は膨らむばかりです。

じゃ、どこまでするのか?という問題ですが、診療科と詰めておく必要があります。嫌気性菌の検査も含めてですが、提出医が必要というのであれば嫌気性菌も検出必要と思います。
私的に思うことですが、殆どが常在菌の感染になるので全て必要では無いと思います。使用する抗菌薬はABPC/SBTや、CTRX、CLDMが中心になりますので、その抗菌薬に耐性だと推測される菌に加えて、予め病原性が強いという菌に対しては必要になると思います。当然MRSAなどはその最たるものでしょう。
詳細は提出医と相談することが必要でしょうが、膿胸など合併している場合は、排膿で検出された菌と同様の菌を喀痰より検出して感受性することが最初は必要ではないかと思います。
当院ではVAP疑いの場合は採れるものは全て検出し感受性をしています。挿管の患者は何で肺炎起こしているか難しいので広域を行きますが、適正使用の観点より狭めることの資料にするため感受性をしています。また市中の誤嚥に関しては使用する抗菌薬を考慮してカバー可能な菌がグラム染色で確認されている場合は感受性をしない場合もあります。一応個別に相談することが多いですが。
グラム染色で誤嚥像を見た場合は誤嚥像ありと返答しますが。

投稿: 師範手前 | 2009年8月13日 (木) 22時19分

PIPC/TAZは結構高価!カルバと同等ですよね。誤嚥でもパターンがあると思うので、それに応じて使い分けするべきではないかと・・・緑が疑われるのであればPIPC/TAZでもいいですよね。なんたって用量が増えたのは緑に効かすためなんですから!4.5×3回は最低必要かも!MIC8くらいならいけますね。腎機能悪かったらもう少し少なくてもいいかも。緑ならCZOPもいいと思いますよ。私ならCZOP+CLDMですかね!

投稿: おじゃま虫 | 2009年8月14日 (金) 21時01分

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