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2009年8月31日 (月)

2つの写真

慢性の膿胸と言われ他院にて経口抗菌薬でフォローされていたようです。臭みはさほどありません。

膿胸の状態が改善しないからと言って、排膿のため入院加療となりました。背側からpunctureしてみるとドロドロの膿胸が検出されています。患者さんはDMを基礎疾患に持っているようです。

良く見ると、細い桿菌がちらほら。2つ見せますが、上の写真の方は菌がどこか判らない人は多いでしょう。下の写真は白血球内に何らか居るので判る方もいらっしゃるかと思います。ただ、白血球内の菌を見つけたからといって完結してしまっては、次から生かせれません。上の写真を見てどれが菌だったのか復習するのもグラム染色の醍醐味と考えています。

見直しは大事と学生自分に良く怒られた記憶が蘇ります。

ところで何菌でしょうか?

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2009年8月29日 (土)

新型インフルエンザのRe-productive Number

8月25日に新型インフルエンザに関する感染症法の省令変更がありました。

大きな点は、クラスターサーベイランスと届出の廃止。だんだんと業務が減ってきたようです。本日、職場の机を少し整理していましたら回覧板やら何やらが掘り起こされてきました。それが漸く机の表面も見えてくるようになり、一人で感動していました。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/08/dl/info0825-03.pdf

しかし、1ヶ月ごとに法律が改正になるとは把握するのも大変です。これは医療機関のみならず保健所も体制作りに追われて大変だと思います。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/08/dl/info0825-01.pdf

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/08/dl/info0825-02.pdf

ワクチンに関しても、色々な資料も出ていましたが、資料の中に今回の新型インフルエンザのRe-productive Number(R0)を発見しました。

日本の場合は2.0-2.4だそうです。でも、少し古いので今はどうかわかりません。

欧米やタイのデータも出ていましたが、凡そ2付近です。季節性が1.3になりますので、やはり少し高い数値になっていました。

本日、厚労省も国民の約20%が罹患して4万人が入院するという予測も立てました。感染者は76万人にまで上るようで、EXILEの増え方など非ではありません。本院も医療体制を整えていますが、救急領域ではもはやムンテラする時間も無いほど患者が増えてきています。周囲の定点数値は3.0と神戸市全体に比べ2-3倍程度。近隣に小児の救急医療機関が少ないのがかなり負担になっています。沖縄のようになれば本当に救急もパンクしてしまう勢いです。時間帯を分けるなどはもはや難局を示しているようです。一体どうなるのでしょうか?夜間の診療体制強化するとも言われていますが、当然補充も無くどうなることでしょう。また、机の表面が見えるのはもう少し後になるのでしょうか?不安です。

色々データ見ていましたが、最初の神戸の事例を乗り切った感は少しありますが、今はその例数を遥かに超える患者数になっていました。あの乗り切った感の流行の山は可愛くなってしまい、少し残念に思います。でも、一時期封じ込めに尽力した甲斐もあったのか、山の立ち上がりは低くなっています。

今後の展開も楽しみ?です。少し愚痴っぽくなりすいません。

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2009年8月27日 (木)

第16回日本臨床微生物学会教育セミナー

今週の29日と30日に第16回日本臨床微生物学会教育セミナーが開催されます。

今回は、京都大学で開催があります。申し込みは早期に満員になったようで80名ほどの参加者で賑わいそうです。

医師と臨床検査技師の連携について、色々と講義とグループディスカッションなどが入ります。

私も実務で参加させて貰いますが、皆さんの熱気に負けないように頑張りたい(何を?)と考えています。

やはり、臨床検査技師ですので、受け取った検体を正確に質の高い結果として報告するのか大事なところです。検体を受け取る前の採取から臨床検査技師(認定やICMT)が問われるところです。

写真は吸引痰です。こういう検体が提出された場合の結果をどうアレンジするのかは、皆さん次第です。

扁平上皮が多いからと言って質が悪いというと、せっかく吸引して上手に採取してくれた看護師さんの意識向上が望めない場合もあります。

これは、吸引痰でしっかりと吸引してきている痰です。院内肺炎を疑わる所見で誤嚥も絡んでいます。膿性が強いと思わせる炎症細胞の集積と周囲に散在する扁平上皮ですので、経気道的な感染が無いか強拡大で見てほしい一面ですね。

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2009年8月25日 (火)

毛羽立ち

番外編です。

グラム染色で菌の推定が出来る場合がありますが、もっと適切に判るのが培養結果です。同定まで行けば尚更ですが、そこまで待てない症例は多いです。

これは先日骨盤内膿瘍から検出された菌です。

赤いのは血液寒天培地と言って、どこの施設でも培養する際に使うものです。非選択性であり、グラム陽性菌から陰性菌まで幅広く検出可能です。

良く見てみると白く、集落の一つ一つが毛羽立ったように見えます。星の砂のようですね。

これはカンジダです。特に仮性菌糸を出していますので、このように集落のあちこちから角のようなものを出しています。慣れている人はこれでカンジダと判りますが、判らない場合は染色しましょう。

玄人好みになりますが、1日目でこのように血液寒天で発育し、毛羽立ったように見えた場合はCandida albicansが予想されます。つまり臨床が知りたいのはアゾール耐性かどうかであり、予想菌種として報告出来る場合もあります。

急ぐ場合はジャームチューブ試験をすると2時間で仮性菌糸の確認可能です。

特に通常の抗菌薬も無効例になるので、何だと思わず報告を直ぐすると喜ばれるケースもあります。

もしかして、培養道場も要りますか?

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2009年8月21日 (金)

臭いのはこれ

腹腔内膿瘍の多くは臭いです。

先日、PIDを疑う患者のダグラス窩膿瘍が提出されました。年齢は高齢であったため淋菌は果てしなく遠いことをお断りしておきます。

グラム染色ではこのようにpolymicrobial pattern。検体は臭みがありました。

グラム染色の至急対応があり、このような場合当院では、報告時に多菌種の検出を認めますので、1次性の病気以外にも2次性の病気も疑ってくださいと報告しています。

それぞれどの菌かどうかは難しいですが、全体に散らばっている小さいグラム陰性桿菌はおそらく腸内細菌です。中央上にあるやや大きめのグラム陰性桿菌はバクテロイデスかプレボテラを疑います。あとの陽性球菌などは特徴が無く嫌気性菌の可能性も高いことしか理解出来ません。

また白血球もありますが、周囲には古びた炎症も残ります。長期膿瘍形成時の大きな特徴ですね。

排膿が中心になりますが、バクテロイデスが考えられますので重症であればカルバペネムが必要になる場合もありますよね。理由はCMZやCLDMの感受性は6割程度しかありませんので。院内のデータを調べて下さい。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_11ce.html

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2009年8月19日 (水)

臭くない

嫌気性菌を疑うが場合は臭いが大きな情報になります。臭い=嫌気性菌という発想ですが、必ずしも臭いがするとは限りません。臭いを放つ検体には、体液などを栄養源として取り込み、悪臭の物質を産生する菌による感染が無い限り臭いはしません。

膿胸と言われた時、臭いと思い価値です。変態行為ではありませんが、検査室では臭いを嗅いでいます。それは菌の推定をして以後の培養検査に必要な情報を収集したいからです。

下記のスメアは膿胸を疑う患者からドレナージした検体です。アイボリー色で提出された検体には臭いがありません。臭いが無いというのはpolymicrobialでは無いことが多い、既に治療が長期間行われており菌が居ないなどの思考回路へと向かいます。

見えるのは染色性の悪いレンサ状球菌。

 染色性が悪い=嫌気性菌の可能性あり

 レンサ状球菌=口腔内の常在菌を疑う

という発想に向かい、膿瘍形成が加わればミレリ菌と推測して培養を進めます。翌日小コロニーを形成し、嫌気の方が発育が良く、やや酸っぱい臭いがする場合はまさにミレリ菌の可能性は大幅アップになります。

この積み重ねで、グラム染色でミレリ菌疑いや嫌気性グラム陽性球菌疑う所見として報告可能になります。

なので、下記のグラム染色では大方、ミレリ菌を疑い、誤嚥性肺炎から膿胸になったという推測が付きます。喀痰グラム染色でも同様の菌を確認出来ると思いますよ。

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2009年8月17日 (月)

細菌性結膜炎時のグラム染色

結膜炎を考えた場合どうでしょう?

滲出物が多いと培養に出すでしょう。術後の場合は当然皮膚常在菌が多く検出されますし、アクネ菌のような血液培養で出たら即コンタミの菌まで起炎菌になります。

菌は見えるとき見えない時が多く、何を見れば良いのでしょうか?

菌の探し方は一次性の場合は黄色ぶどう球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、稀に淋菌などを見る目で見ていきます。術後の場合はぶどう球菌やコリネ型グラム陽性桿菌。加えて好中球が多く検出されます。

鑑別では

・ウイルス性:濾胞が多く、滲出物はリンパ球優位。

・アレルギー:好酸球が多い。

好中球が多いものでは、培養出来ないクラミジアなどもあります。

上記の事項を考えてグラム染色を見ていきましょう。

下記は細菌性結膜炎のスメアです。好中球が多く何か出るとコメントしましたが、翌日溶連菌でした。Criticalデータとして即時報告です。

基本的に局所の抗菌薬投与で良いのですが、伝えて悪い情報ではなさそうです。

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2009年8月13日 (木)

同じと言えるのか?

前回掲載したE. tardaの件ですが、治療は奏功していました。翌週に発熱が再度起こり血液培養採取したところ陽性になり下記のスメアが見えました。

同じと言えるでしょうか?ちなみに1週間CMZ 1g 1日3回投与していました。

言えそうで言えません。言ったのが、何か膿瘍形成などの障害があるか?菌交代か?

障害が無いので菌交代の可能性が高いと言いましたが、患者は発熱のみで血圧低下を認めません。カルバペネムへ走りますか?

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2009年8月11日 (火)

Edwardsiella tarda(エドワードシエラ・タルダ)

検出菌でたまに見るのがEdwardsiella tarda。

エドワード氏の名前とtarda=怠惰なの名前を引っ付けたものです。

tardaって何が?病原性が遅いの?弱いの?

いえいえ、単なる生化学的性状で硫化水素の産生が遅く見られるため、そう名づけられました。ドクターの多くが見たことが無く「なんじゃこりゃ」と思うことでしょう。

腸内細菌の一種で培養をするとサルモネラと良く似た性状を示すので注意しています。サルモネラのような組織侵入性は無く、通常細胞表面に付着するようです。細菌性腸炎も起こしますので、腸炎の合併症でも検出されます。ちなみに薬剤耐性は基本ありません。

よくよく考えたら菌は見ますが、グラム染色を撮るの忘れていましたので掲載します。化膿性胆管炎の患者さんの血液培養からの検出です。

これは判りませんよね。腸内細菌であることは何となく理解出来ますが。症例増やさないと判りませんし、ていうか、症例少なすぎです。

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2009年8月10日 (月)

老人ホームから転送された肺炎患者

救急で入院する患者のうち、肺炎患者が2割くらい占めるのでしょうか?

入院歴の無い患者の場合、市中肺炎として扱うことも多いでしょう。ただし、最近の入院歴や手術歴が無いか聞くことが大切です。老人福祉施設はどうなるの?と思いきや、入院と同じ状況もあります。うちの研修医には、入院だけに捉われず肺炎の菌を特定するようにして下さいと言っています。

高齢者のため誤嚥も要素のうちで、口腔内常在菌を標的としてABPC/SBTを投与するのも一つでしょうが、緑膿菌はカバー出来ません。やはりこういう時はPIPC/TAZが適応になるのでしょう。でも、この処方の違いはグラム染色をして始めて判断出来るもので、グラム染色は大事だなと思います。

先日、脳外科の先生から肺炎の相談ですが・・とありました。1年前に脳外科の手術をし、老人ホームに居たそうです。肺炎症状が悪化して入院するんですが、菌検索してくれませんか?と吸引痰を持って来ました。

吸引がきれいい出来ているドロドロの膿性痰で、弱拡大では扁平上皮が多数。誤嚥の所見です。周囲には活動性の高いきれいな核の見える白血球が多数見えます。

良く見るとグラム陰性桿菌の貪食像が確認され、太く染色性が良いので腸内細菌を疑います。扁平上皮も多いので誤嚥性肺炎で問題無いのでは?と返答。確かに下肺野にそれらしい陰影が写っています。バルジ化も見えますし、何か処方あるんですよね。

抗菌薬はABPC/SBTを予定していましたが、PIPC/TAZに加えてCLDMで初期治療開始。まさに、グラム染色で変わる市中肺炎より院内肺炎の考え方です。グラム染色の応用幅は使い方で拡がります。培養では肺炎桿菌と大腸菌が発育しました。

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2009年8月 6日 (木)

肺炎桿菌の肝膿瘍

肝膿瘍時には血液培養を採取します。殆ど有熱性のため何も相談無くても皆さん採取してくれます。

肝膿瘍の起炎菌は圧倒的に腸内細菌が多いです。横隔膜下臓器のため、菌の病原性のため、接着性のため色々です。

肺炎桿菌はその代表的な菌です。先日、血液培養が陽性になり、スメアを見たところ下記のような菌でした。球菌とも見れるくらいの短い菌と塊がさほど無く、四角い感じ。肺炎桿菌の特徴です。大腸菌も環境によりこういったスメアが確認されるので注意が必要ですが、菌の形態からは緑膿菌ではなさそうです。

文献を見ていると、肺炎桿菌の肝膿瘍はアジア人に多く見られ、胆肝膵にフォーカスがある以外は、基礎疾患が判らない症例も多いようです。低アルブミン症や隠れ糖尿病なんてこともあるのでしょう。病原因子の関係ではmagA遺伝子あることが関連しているようです。勉強になります。

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2009年8月 4日 (火)

化膿性脊椎炎

背中が痛いと言って来てみたら尿路感染症だったなんてことは良くあることです。

背中が痛いという主訴で細菌感染症と言えば何でしょうか?

細菌性髄膜炎、化膿性脊椎炎などでしょうか。

化膿性脊椎炎の菌と言っても多様にあります。でも大きく違うのは起炎菌によってフォーカスがやや変わることです。

黄色ぶどうが球菌血行性に転移して化膿性病巣を作るのが一般的では無いでしょうか?

じゃ、腸内細菌の場合は?緑膿菌の場合は? 

患者背景を聞くうえで、必要なのは年齢、既往の他に手術歴などでしょう。

古い文献ですがNEJMには下記のような事項が記載されています。コンパクトにまとまっていて勉強会などにはもってこいのものです。

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Enterobacteriaceae species or Pseudomonas aeruginosa=Common in nosocomial infections

この場合、抗菌薬の選択はどういうのでしょうか?

1st.:Fluoroquinolone  2nd.:Third-generation cephalosporin

キノロンの注射用材の選択幅が少ない日本においては3世代セフェムで対応するしかないのでしょうか?キノロンの経口をプラスした方が良いのでは?という疑問に当たります。

こういう場合はキノロンなのでしょうが、キノロン耐性の腸内細菌も多く検出されているため3世代セフェムが多様化されるのでしょう。そういう意味での感受性試験は重要です。

仮に3世代セフェムを使用していた例で化膿性脊椎炎の治療が最後の最後で奏功しないなんて症例もあると思います。移行の問題もあるのでしょうが、膿瘍形成している場合などは抗菌薬も届かないのでしょう。

生検して下記のスメアが見えています。でも菌は居ません。(培養は陰性です。)

この場合はどういう解釈をしてあげると良いのでしょうか?皆さんも考えましょう。

答えは後日・・・。

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2009年8月 2日 (日)

染色液の劣化(媒染液の不良)

先日、血液培養が陽性になり、標本を作製し、並んであった染色液でグラム染色をしました。下記のスメアをご覧下さい。

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見たところレンサ球菌では無いか?とは理解出来ました。これは皆さんそうですよね。

でも色合いが悪い・・・。菌の染まりも悪く、菌の推定が難しいと感じました。

染色液を見ると少し古いものが並んでいました。新しいものと変更して染色をし直しました。

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今度はきれいに染まりました。やはり染色液の劣化です。クリスタル紫だけを染めて見ましたがきれいに染まります。さあ、考えたのが媒染をするためのヨウ素が劣化しているようでした。

おかしいなと思ったら染め直しです。改めて思います。

これになれば大体の菌名は推測可能です。

菌が丸く、ぶどう球菌と同じ位の大きさ+レンサ=B群溶連菌?

追加でラテックスしましたが、陽性になりました。追加で血清型を調べたらⅢ型。昔から問題のある血清型です。特に乳幼児や高齢者で免疫が下がるので菌血症が多いようです。DMも大きな要素ですよね。

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