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2009年7月31日 (金)

骨盤内膿瘍です

産婦人科領域で相談の多い疾患には、産褥熱に加え、骨盤内膿瘍です。

子宮や卵巣から波及するものも多く、若年者ではSTDも考える必要があります。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/pid_9ad3.html

高齢者ではどうでしょう。ホルモンバランスも代わり腸内細菌の進入も含め、感染する機会は増えると思います。

今回は骨盤内膿瘍で、polymicrobial patternです。ダグラス窩穿刺しました。

米国式に行くならMNZも視野に入れないといけないのですが、無い場合はCLDMに頼らないといけませんかね。でも±になるのでしょう。今回はCTRXにCLDMを加えました。耐性菌が多いですが婦人科疾患なのでBacteroidesは外せないでしょう。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_11ce.html

これだけ見えていれば出てくる菌を想定しながらスメアを見ることに加え、膿瘍の治癒過程を追っていくのも良いと思います。

治癒過程は次週報告します。

しかし改めて思いましたが色んなスメアがこのサイトにはありますね。自分ながら関心しました。(自己満足?)

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2009年7月29日 (水)

肺炎桿菌で抜けた莢膜見つけました

先日

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-72d9.html

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-7ae4.html

で肺炎桿菌を見せました。

これは抜けた莢膜を確認出来た例です。肺炎球菌と違い結構レアものです。

患者は他院でRAとDMで入院していたが、イレウスがあり転院してきました。入院してみれば痰が多く、肺炎も合併しているようです。胸部レントゲンではブラの周囲に区域性のあるenhanceな像。院内肺炎である。スメアを急いで見るとこういったスメアです。

くっきり抜けて見える肺炎桿菌像。きれいです。でもよく見りゃ、周囲にはボロボロとなった肺炎桿菌が散在するではないですか。前医で何やら経口抗菌薬が入っているようです。培養で満足の良く菌が検出されるでしょうか、心配です。

主治医曰く、情報が少なくて難しいですね。内科にフォローをお願いする前にICTへ相談しましたと。頼られていますがプレッシャーも感じます。でもグラム染色という武器で当日は戦うしかありません。緑膿菌が否定されるまでは抗緑膿菌作用の抗菌薬もフォローで開始。

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Photo_2 ×1000(壊れかけ)

Photo_3 ×1000(バルジ化も見えます)

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2009年7月27日 (月)

年中問題です

本当に肺炎球菌は年中問題です。

下記は肺炎球菌性肺炎の患者喀痰スメアです。菌は少量ですが、見える=10の5乗個/mlとなります。菌は多いです。でも、良く見てください。市中肺炎で入院してきて顕微鏡学的な品質評価は最上級のものと言って良いかもしれません。

炎症性細胞が多寡で、間には赤いフィブリン(赤味が強いのでこれはフィブリン)。気道の常在菌も無く、強拡大では連鎖球菌。肺炎球菌かな?と迷うところですが、数視野みてみても同じ像が確認されれば肺炎球菌の可能性は高くなります。培養で発育しないことも考えられるので、このスメアは重要です。

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2009年7月24日 (金)

化膿性(悪性)外耳炎

耳鼻科材料で菌検査をしていて多いのが、黄色ぶどう球菌だったり、肺炎球菌だったりします。この時期であれば海水に由来した仕事に従事している場合は稀にVibrio alginolyticusなんか出てきます。

緑膿菌も散見される耳鼻科材料の起炎菌ですが、まれに悪性外耳炎もあります。治療が不完全であると頭蓋骨への感染拡大するなど結構怖い場合もあります。サンフォードガイドにもありますが、基本は、抗緑膿菌作用のβ-ラクタムや経口ならキノロンのようです。膿瘍形成もしたり、耐性化、バイオフィルムを形成したりややこしくなるケースもあると思います。

下記は耳漏から出た緑膿菌です。初めは薬剤耐性も少ないですが、彼らは薬剤耐性域ギリギリのMICを保有していることが多く、直ぐに耐性となってしまします。

軟膏、点耳薬、消毒などを繰り返しして早期に治すことが先決でしょう。

緑膿菌かどうか、これじゃ判らないよ。という方も居ると思いますが。私も報告したら実はインフルエンザ菌だったなんかも稀にあります。防ぐのは患者情報です。これは結構大切。

菌のスメアの見方としては、染色性が悪く、やや湾曲もあり。長くない桿菌であることより緑膿菌かどうかの予測は立ちます。さあ、どうでしょう。

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2009年7月22日 (水)

研修医への講義

毎年、感染対策の一環で研修医向けに感染症のアプローチ方法と検査値の判断の仕方、抗菌薬のチョイスについて話をしています。今年は3日に分けてしましたがまだまだ時間が足りません。

中で、CV感染について話しています。基本は抜去。これは当たり前ですがどうしても病気の状態うんぬんで抜けない状況はあります。血液培養の考え方について話た内容では、IDSAの2009年のガイドラインの話も少し加えました。早速実践で取り組んでいる先生も居るようです。

さて、IVHによる栄養補給をしてる患者で、発熱⇒翌日血液培養陽性⇒下記のスメア

報告時にはぶどう状と、このブログ愛好家は言っていただいてると思います。CNSか黄色ぶ菌か?なんて拘ることもあろうかと思います。やや菌が小さいので黄色ぶ菌かな?とも思います。ローカルファクターや患者のMRSA保菌にも影響されますが、最低ぶどう球菌と言いたいところですね。

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2009年7月20日 (月)

脳膿瘍

まれに見るのが脳膿瘍。手術もそうそうにしないケースもあります。脳腫瘍?と思い手術したら膿瘍だったというケースもあると思います。治療はデブリと抗菌薬になります。

検査は膿瘍の菌検査以外に絶対しないといけないのは血液培養。

先日、そのような例から以下のようなスメアが確認出来ました。

紡錘形でやや弱弱しいグラム陰性桿菌で嫌気性菌を示唆できます。しかし、Capnocytophagaも否定出来ないスメアです。

スメア報告時に、培養確率や同定手順を検索するために聞くことは何でしょう?

膿瘍の部位を確認出来ればすることは大切です。前頭部の膿瘍だったらどうでしょうか?

良く参考にしているのがClinical Infectious Diseases 1997;25:763–81ですが、そこにはS. milleri group,Bacteroides spp.(not fragilis),Fusobacterium spp.,Haemophilus spp.,嫌気性Streptococcusとの記載があります。上気道菌を中心になるようです。

さて、聞きたい情報としては・・・

 ①気道に感染症が無いか?特に副鼻腔、扁桃周囲膿瘍、肺膿瘍などあるか。

 ②歯科衛生が悪いか。入れ歯なども。

 ③動物の飼育歴(これはCapnoの確率を高めるため)。

結構聞いてないよ。ということも多いです。

さて、皆さんはどう聞き取りしていますか?

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ちなみにCapnocytophagaはこれです。

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2009年7月16日 (木)

変な話

下記に肺炎球菌性肺炎患者の喀痰スメアを記載します。上下は同じスメアになりますが、上段のは特に細工していない肺炎球菌の像、下段は白黒編集したもの。

カラーとコントラストがはっきりした像では肺炎球菌と判りやすいですが、白黒のはどうでしょう?もし赤く見えたら肺炎球菌と言えますか?見た感じ少し躊躇してしまう自分が居ます。

変な話ですが、大切なことです。

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2009年7月15日 (水)

番外編

新型インフルエンザは今は1日に100人くらい発生しています。7月12日では山形だけ0になっています。最初に発生した兵庫県は知らないうちに大阪に抜かれています。愛知県も多くなっていますので人口に比例して多くなっているのでしょう。

ただ、問題なのはPCRプロトコールが不明なこと。季節性インフルエンザのPCRも100%ではない(BMJ. 2000 September 23; 321)ので、また、検証されてレビューが出てくるのを待ちたいです。

ちなみに神戸市のレビューは2つ出ています。

http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3535.html

http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3542.html

当院も色々データを取っていますが、また話す機会は多くありますので、詳細はご報告します。まとめている中で面白いデータが分かりました。新型インフルエンザ発生時に発熱外来に来たがPCR陰性だった方の年齢分布です。確かにPCRでも引っかからないくらいのウイルス量であったかもしれませんが、ほとんどは不安例と思われます。5歳未満の方は普段通りですが、21歳から40歳という年齢層が多いようになりました。

高校生や中学生などの学生が多いのは理解出来ますが、社会人を中心に多いのは職場などで教育が足りなかったせいでは無いでしょうか?通勤で罹患したなどの不安例が多く押し寄せた感があります。皆さんはどうでしたか?

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2009年7月13日 (月)

肺炎桿菌もうひとつ

肺炎桿菌は、尿路感染症の主要な起炎菌の一つです。バルンの長期留置患者にもバルン感染を起こし発熱します。

下記はそのスメアです。多く敷き詰められた肺炎桿菌らしきグラム陰性桿菌。緑膿菌かどうかの判断はこのクラスターからは難しいですが、気にかかるのは間に塊のあるグラム陽性球菌。MRSAの履歴がある場合は、当然MRSAを疑うべきで、長期留置患者の中でも血液培養陽性者は10%ほどいるようです。

培養で見てみると、肺炎桿菌の集落が多く、通常の血液寒天(分画の赤い方)ではぶどう球菌が確認出来ません。マッコンキー寒天培地(分画のピンクの方)では胆汁酸の影響もあり、発育出来ません。

じゃあ、見えたのは?こういう場合はスクリーニングをしないと見つからないことが多いです。当時に足したクロモジェニック法を使ったMRSA培地(左の培地)にはピンク色のMRSAが。スメアは大事ですね。落ちやすい菌には腸球菌も居て、スメアをみてこういうスキルを応用し、検査技術を高める必要があるかもしれません。

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M 培地

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2009年7月10日 (金)

見えると凄い

先日、尿検体で肺炎桿菌が判った例を掲載しましたhttp://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-72d9.htmlが、今回は血液培養で判るものがありました。肝膿瘍の患者のものです。血液でも莢膜がきれいに見えることもあるのだと考えさせられました。

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2009年7月 8日 (水)

骨盤内のリンパ節膿瘍

グラム染色では判定が難しい症例は山のようにあります。

下記は骨盤内のリンパ節膿瘍が見つかった例ですが、泌尿器がんの術後1ヵ月後の検診時にCTで、骨盤内のリンパ節に低濃度の病変が見つかりました。入院となり、抗生剤の相談があり、泌尿器がんの術後、臓器が骨盤内ということでCMZを選択することとなり、血液培養を実施して開始となりました。翌日プンクの予定を入れたところ、プンク前に血液培養が陽性になり、下記のようなスメアが見れました。プンク後のスメアを至急で見たところ下記のようなスメアです。

判断が難しい・・・。

 ①連鎖球菌は解かるが腸球菌との鑑別がつかない

 ②肺炎球菌は否定出来る。

 ③横隔膜下臓器+泌尿器がん術後なので、やはり腸球菌は外せない。

 ④見えないが、腸内細菌や嫌気性菌も合併している可能性がある。

VCMを追加するか、ABPCを追加するか・・・迷っているました。

色々と患者サマリーを掘り返している中で、1週間前に抜歯したとの大きな情報。

そのまま、心エコー検査に回しましたが幸い陰性でした。

そうです、α連鎖球菌の膿瘍でした。腸内細菌も陰性になり、ABPC単独に切り替え成功です。

患者相談を受けるときは検出菌によって、聞くことを決めておくのも手ですね。

1_2 ×1000(リンパ節その1)

3 ×1000(リンパ節その2)

Photo ×1000(血液培養)

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2009年7月 6日 (月)

誘導耐性

先日、他院からの転送患者がありました。膝関節術後の感染疑いだそうです。スメアを見たら下記のような少数菌が見えました。すでにLVFXが投与されていたようです。

菌量が少ないため非常に見つかりにくいのですが、見えればある程度培養で発育してきそうです。炎症反応も強く、主治医は黄色ぶどう球菌を想定していましたが、LVFXの投与があったということもあり、外来診察の途中にpuctureしてスメアを見て欲しいと連絡受けました。血清クレアチニン値も2.1で腎機能も少し悪いようです。

グラム陽性球菌が少数。丸みを帯びた菌が確認出来たのでぶどう球菌の可能性が高いと連絡しましたが、CNSやMRSAかの判断はこの情報だけでは難しいことも併せて伝えることになりました。翌日、MRSA用のスクリーニング培地が陽性になり、MRSAの可能性が高いとの報告をしました。

感受性をしたところ、MRSAは確定し、追加した感受性検査ではEM:R、CLDM:Sという結果も加わりました。この結果では満足出来ません。CLDMの感受性結果は保留し、Dテストをしたらきっちり阻害がかかりCLDMはRへ変更することに・・・。

過去に少し調べていた結果と併せて報告になりました。MRSAでEM:R、CLDM:Sの結果のうち10%に誘導耐性が見つかりました。

CLDMをSと返していたら使用されていたかもしれません。結局VCMを上手く使い終了となりました。でもこういったケースはかなり必要でしょうね。

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D Dゾーンテスト

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2009年7月 3日 (金)

眼科材料

たまに見ますよね。肺炎球菌です。

グラム染色は検査される菌を想定しないと感度が鈍ります。

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2009年7月 1日 (水)

問い合わせすることの大切さ

先日、小児科から膿が提出されました。グラム染色を見て??です。

小児科から良く出る膿と言えば、扁桃周囲膿瘍や皮下膿瘍でしょう。

これを見た瞬間、膿瘍でも横隔膜下の膿瘍だと予測がつき、もしかして肛門周囲膿瘍?と感性がが働きました。聞いたほうが・・・と思い、聞くと肛門周囲膿瘍でした。

グラム陰性桿菌で中くらいで染色性が良い=腸内細菌 が見えたのがヒントになりました。

必ず聞くのが重要ですし、インスピレーションを働かせるのは必須です。研ぎ澄まされていますか?

でも、グラム染色って必要でしょうか?培養は必要でしょか?

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