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2009年6月21日 (日)

一旦落ち着いてきました

昨月突如として騒動を起こした新型インフルエンザですが、発熱外来への来院者はここ数日ありません。国内初の発生事例を出したこの地において、今は国内発生例が止まっています。海外渡航歴のある方での発生例は県内でもありますが、以外なことに発生例が少ない国からの帰国者がたまに報告あります。海外でのサーベイランスの仕組み、発生数の届出などにも温度差があるようにも捉えることが出来ます。

さて、19日に厚労省より『医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針(改定版)』が出ました。http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/2009/06/0619-01.html

もはや、フェーズ6になった以上海外からの流入は食い止められないとの見解です。今回の改定では、原則として患者(患者と疑われる者を含む。)については、医師の指示等に従い、入院措置ではなく、新たな感染者をできるだけ増やさないよう、外出を自粛し、自宅において療養する。となっています。今後、発熱外来を有する施設というよりは一般医療機関で季節性インフルエンザと同じように診ていくということにあたるのでしょう。

ようやく、普通の診療体制が戻りつつあります。

ところで、公共交通機関でどれくらい新型インフルエンザにかかる危険性があるのでしょう?公表されているデータを下に、少し自分なりに考察しました。

皆様もご存知の通り、今回は高校生の感染者が多く認められた事例でした。Eurosurveillance,Vol14,6/4号,2009でも、小児同士のRe-product number(R0)は2.82、子⇒親のR0も0.3程度、成人同士のR0は0.04とかなり限定されたものでした。高校生という年齢層の行動パターンもあり2.82というR0はうなずけるものです。http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19227
市中感染と院内感染のリスクですが、SHEAのposition paperは『Transmission of influenza in acute care hospitals is a risk many magnitudes lower than the risk of community transmission and strategies that place excessive focus on preventing influenza transmission within healthcare facilities are of limited utility in an outbreak and divert attention from important community control strategies.』と記載され、市中感染の方が危険と言っています。これは米国の外来機能設備基準にも反映されていることだと思いますが、Community levelのpersonal hygieneが重要視されている結果と思います。
先日、米国の院内感染事例についての報告(MMWR,Vol.58,23,641-645)でもありましたように、普段より標準予防が整っていない医療従事者で、外来患者からの感染例が多くありました。殆どが日常レベルでのサージカルマスク非装着、手袋の非装着などで、N95マスク着用者でも1名出ていました。N95マスク装着者の場合はFitting testを実施していない医療従事者で、普段からの院内感染教育が行き届いていない箇所での感染事例だったようです。http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5823a2.htm?s_cid=mm5823a2_e
つまり、communityでもこのような事例は多く見られるもので、フェーズ6となってしまった今では防ぎようの無いものです。WHOは今回のsecondary attack rateは22-33%と季節性の場合の2-6倍程度と報告しているので、電車のような過密で閉鎖的空間で感染者がマスク非着用の元、乗車された場合は当然感染リスクは非常に高いこととなります。ただし、R0を見ている以上は、空気感染をするようなものでも無く、飛沫を浴びる危険性のある空間での罹患はあっても、それが無い空間での感染力は少ないと考えることも出来ます。水痘の場合は、同一空間に20分以上居れば濃厚接触者として扱われる(日本産婦人科学会ガイドライン)ため、20分以上密室空間のまま、マスクもせずに同乗している場合を除き、感染リスクは非常に低いと考えることも出来ます。
いずれにしても、免疫の無い方ばかりであり通勤通学には公共交通機関を利用せざるを得ないうちは罹患の可能性があると考え、身体に異常があれば休養し近医するという教育をすることが医療機関には今後必要では無いかと考えます。
写真は新型インフルエンザ騒ぎの中行われた交流戦(阪神対オリックス)です。ジェット風船が自粛された試合でした。
Dsc01324 

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