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2009年6月29日 (月)

肺炎桿菌の莢膜

肺炎桿菌の莢膜って、肺炎時の喀痰以外はあまり見られませんよね。

莢膜産生菌ということで、色々と 莢膜=抜けて見える像 を探そうとするのですが、肺炎桿菌の莢膜はどちらかと言うと、菌周囲の赤みを帯びた莢膜が多く観察されます。肺炎球菌の3型のような感じです。

喀痰では見られることが多いのですが、尿ではあまり見られませんよね。なので、莢膜が見れないため肺炎桿菌との鑑別はグラム染色上では判り難いです。KPCが蔓延した場合はどうでしょう?恐ろしい時代が来なければ良いですが。

さて、下記はその莢膜が少し確認された急性腎盂腎炎の尿です。周囲の赤みが判るでしょうか?ちなみに血液培養も陽性になっており、同様か確認しましたが血液培養の中では莢膜の産生能が低い(菌は不要なのか?)ため、見えません。同一かどうかの確認は菌の形を良く見ることが必要ですよね。

1600 ×1000(尿)

1600_2 ×1000(血液)

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2009年6月24日 (水)

グラム染色機器

Dsc01346 先日、グラム染色の自動機器(カラーグラム)を見てきました。http://www.sysmex-biomerieux.jp/servlet/srt/bio/japan/dynPage?doc=JPN_CLN_PRD_G_PRD_CLN_31

当院にも自動染色機器が入っていますが、染色漕を使うものでなく、カローセルを回転させながら染色液を吹き付ける方法です。コンタミネーションの危険性も少ないでしょう。

染色はBM法であり、後染色法は色々拘って代えれるようですよ。詳しくはメーカーさんに聞いて下さい。

さて、染色性はどうなのか?一番気になるところです。既存品と比べてみました。

菌の染まり具合、莢膜やムコイドのような菌の分別上の特徴、材料評価、染色背景などを少し見てみましたが、既存のBM法とは差がありませんでした。

Photo Photo_2 Photo_3

今回の染色機器はチャコール(血液培養の抗菌薬吸着物質)と菌がやや区別しやすくなるようです。確かにチャコールの数は少なくなっています。染色液に工夫をしているそうですが。

Photo_4

まだまだ、製品を見る機会は学会などしかありませんが、百聞は一見にしかずです。時間があれば一度ご覧ください。

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2009年6月22日 (月)

カテーテル感染のガイドライン2009年

IDSAのカテーテル感染に関するガイドラインが改訂されました。

何か詳しくなっていますし、カテーテル感染の指標にはMakiの方法(ロール・プレート法)が標準的な方法として記載されています。(ただし、ロール・プレート法の検出感度は60%との報告があり。)

血液培養も2セットが推奨されており、ラインから採血からの採血も書かれいます。ただし、ラインから菌が陽性になった場合は、起炎菌かどうか判断しにくいという結論なのか、良いのか良いか解からないとお茶を濁しているようです。

標準的には、抗菌薬を採取する前が原則で、抜去ことが出来ない場合も静脈とラインからの採血で判断する方法、カテーテルの挿入期間も短いもの、長いものに関して区別しています。たしかにそうでしょう。

また、介入方法も対象菌が増え、ますます菌同定もそうですが、グラム染色の価値が上がるのでは無いでしょうか?

カテーテル感染を疑い、下記のスメアが見えた場合も違いを求められることは今まで以上に多いと思います。菌の分別は早いに越したことはありません。ただし、自分のレベルに合わせて報告が必要でしょう。

600 ×1000(E. faecuim)

Photo_5 ×1000(S. epidermidis)

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2009年6月21日 (日)

一旦落ち着いてきました

昨月突如として騒動を起こした新型インフルエンザですが、発熱外来への来院者はここ数日ありません。国内初の発生事例を出したこの地において、今は国内発生例が止まっています。海外渡航歴のある方での発生例は県内でもありますが、以外なことに発生例が少ない国からの帰国者がたまに報告あります。海外でのサーベイランスの仕組み、発生数の届出などにも温度差があるようにも捉えることが出来ます。

さて、19日に厚労省より『医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針(改定版)』が出ました。http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/2009/06/0619-01.html

もはや、フェーズ6になった以上海外からの流入は食い止められないとの見解です。今回の改定では、原則として患者(患者と疑われる者を含む。)については、医師の指示等に従い、入院措置ではなく、新たな感染者をできるだけ増やさないよう、外出を自粛し、自宅において療養する。となっています。今後、発熱外来を有する施設というよりは一般医療機関で季節性インフルエンザと同じように診ていくということにあたるのでしょう。

ようやく、普通の診療体制が戻りつつあります。

ところで、公共交通機関でどれくらい新型インフルエンザにかかる危険性があるのでしょう?公表されているデータを下に、少し自分なりに考察しました。

皆様もご存知の通り、今回は高校生の感染者が多く認められた事例でした。Eurosurveillance,Vol14,6/4号,2009でも、小児同士のRe-product number(R0)は2.82、子⇒親のR0も0.3程度、成人同士のR0は0.04とかなり限定されたものでした。高校生という年齢層の行動パターンもあり2.82というR0はうなずけるものです。http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19227
市中感染と院内感染のリスクですが、SHEAのposition paperは『Transmission of influenza in acute care hospitals is a risk many magnitudes lower than the risk of community transmission and strategies that place excessive focus on preventing influenza transmission within healthcare facilities are of limited utility in an outbreak and divert attention from important community control strategies.』と記載され、市中感染の方が危険と言っています。これは米国の外来機能設備基準にも反映されていることだと思いますが、Community levelのpersonal hygieneが重要視されている結果と思います。
先日、米国の院内感染事例についての報告(MMWR,Vol.58,23,641-645)でもありましたように、普段より標準予防が整っていない医療従事者で、外来患者からの感染例が多くありました。殆どが日常レベルでのサージカルマスク非装着、手袋の非装着などで、N95マスク着用者でも1名出ていました。N95マスク装着者の場合はFitting testを実施していない医療従事者で、普段からの院内感染教育が行き届いていない箇所での感染事例だったようです。http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5823a2.htm?s_cid=mm5823a2_e
つまり、communityでもこのような事例は多く見られるもので、フェーズ6となってしまった今では防ぎようの無いものです。WHOは今回のsecondary attack rateは22-33%と季節性の場合の2-6倍程度と報告しているので、電車のような過密で閉鎖的空間で感染者がマスク非着用の元、乗車された場合は当然感染リスクは非常に高いこととなります。ただし、R0を見ている以上は、空気感染をするようなものでも無く、飛沫を浴びる危険性のある空間での罹患はあっても、それが無い空間での感染力は少ないと考えることも出来ます。水痘の場合は、同一空間に20分以上居れば濃厚接触者として扱われる(日本産婦人科学会ガイドライン)ため、20分以上密室空間のまま、マスクもせずに同乗している場合を除き、感染リスクは非常に低いと考えることも出来ます。
いずれにしても、免疫の無い方ばかりであり通勤通学には公共交通機関を利用せざるを得ないうちは罹患の可能性があると考え、身体に異常があれば休養し近医するという教育をすることが医療機関には今後必要では無いかと考えます。
写真は新型インフルエンザ騒ぎの中行われた交流戦(阪神対オリックス)です。ジェット風船が自粛された試合でした。
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2009年6月19日 (金)

緑膿菌のムコイド像

喀痰で周囲が赤い物質に包まれた陰性桿菌を見ると肺炎桿菌か?と短絡的に思うが、緑膿菌との見間違いは無いでしょうか?

肺炎桿菌は広く散在した像が見えることが多いですが、緑膿菌は固まって見えることが多いのが鑑別点では無いでしょうか。

これは緑膿菌です。加えて、菌の形態が少し丸みを帯び、湾曲しているので良く見てください。

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2009年6月17日 (水)

先日掲載した肺炎球菌性膿胸の喀痰

先日掲載した肺炎球菌性膿胸http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-4a33.htmlですが、言い忘れていたかもしれませんが、追加で行った尿からの肺炎球菌尿中抗原は陽性でした。喀痰のスメアを見たところこんなんでした。

肺炎球菌だろうと予測はつきますが、頑張っても肺炎球菌を断定するのは厳しい像です。

皆さん、そういう場合はどういう風に報告していますか?

検査室のワークシートは肺炎球菌を疑うため、釣菌注意。などと書くのでしょう。

臨床からスメアの報告を求められた場合はどうしましょう?正直に、肺炎球菌と思うんですが・・・自信ありません。培養待ちましょう。と答えることになりましょうか?

でも、1割くらいはスメアで見えても発育しない肺炎球菌。これほど臨床医に報告の難しい菌は居ないですよね。

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2009年6月15日 (月)

褥創の感染

褥創からの検査材料が稀に出てきます。というより、褥創からの材料が多量に出てくる施設は何らか問題があるのかも知れません。

問題点として

①ルチンで褥創の培養が出るように組まれている。(保菌ばかりを菌検査している可能性がある。)

②褥創自体が元々多い。(これは施設内の褥創対策が不十分?)

当然、褥創が出来るような患者なので、色んな菌のうち、MRSAやESBL産生菌、耐性緑膿菌も多く検出されます。一体何をどう考えて良いのか見当(検討?)もつきません。

しかし、全くしないからといってそうでは無く、創部の炎症が強い場合や蜂窩織炎が起こっている場合もあります。時には敗血症になることも想定はされるでしょう。

下記のスメアは、他院から緊急搬送された患者の血液培養が陽性になった例です。褥創周囲に広範囲の蜂窩織炎があるようです。既に検討済みでCAZ+CLDMで開始しています。抑えないといけないのはこの長い連鎖ですが、いつも見ている方はピンと来ると思いますが、溶連菌ですよね。問題は、グラム陰性桿菌です。集塊を作り染色性が悪い+患者背景より緑膿菌は抑えておきたいところです。難しいでしょうか?

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2009年6月12日 (金)

真菌の同定

先週の名古屋での講演の中で、真菌の種類がどれ程出来るのか?という質問を貰っていました。時間の都合もあり最後まで説明出来ませんでした。

こんなスメアではどうなのか?骨折手術後の長期バルン留置患者の尿から出ました。

真菌のスメアを見る場合にはどう考えるのか?ですが

 ①菌糸の延伸があるか?

 ②菌単体の形状はどうか?(丸いか楕円か、長細いか・・など)

 ③大きさと染色性(糸状菌の場合は難染色性のことが多い)

仮性菌糸みたいなものが見えるが少し違う。菌の単体は少し長めの菌。カンジダ?と考えるにはいつもと違うと行き着くところです。これは、トリコスポロンのスメアです。カンジダと少し違いますよね。

カンジダ・アルビカンス=http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_5d9f.html

カンジダ・パラプシローシス=http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_985d.html

クリプトコッカス=http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_4bd3.html

トリコスポロン=http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_e2bd.html

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2009年6月11日 (木)

会陰部に膿瘍が

皮膚科から膿瘍が来ました。下記のスメアが確認されました。

閉鎖膿と書かれている意外は何も情報がありません。さあ、どうしましょう?

少し変なので、即座に電話して聞いたところ、「会陰部の膿瘍やねん。宜しくお願いします」と簡単に済ませられました。

今後どう考えて検査を進めて(像の解釈も)行くのが良いでしょうか?

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2009年6月 8日 (月)

臨床的に膿胸でも・・・

またまた名古屋の研修会で・・・。質問の内容が間違っていたらすいません。

膿胸の時に菌が見えないのは?という質問を受けました。

確かに、胸部レントゲンでは肺炎像があり、プンクした胸水は濁りきっていて、まさに膿胸。でも見えない。どうしよう?どう解釈しよう?と悩むでしょうか?

下記のスメアは肺炎球菌性肺炎で見た胸水の所見です。菌は居ません。ためしに遠心の上澄みで尿中抗原のキットかけましたが陰性。胸水内には肺炎球菌は居ないようです。本当?

胸水の生化学的検査ではLDHは高いが、グルコースは低いし、pHも低い。臨床的に膿胸というのは良く見かけます。こういった他の所見も合わせて見ていくことは基本です。

肺炎球菌関連の文献を見ると菌が検出されるのは25%ほど・・・(感染症診療スタンダードマニュアル)。そうなんだと思うものも多いです。

過去に見ていますが、

①誤嚥性肺炎の悪化⇒肺化膿症⇒膿胸の経過では口腔内の菌が多く見られることが多い。

②肺炎桿菌の膿胸は菌が良く見える(菌の病原性の問題?)。

膿胸と言っても色々ですが、必ず初期に痰培養(スメア)との整合性を見ることが肝要では無いでしょうか?

この前も尿の例で話ましたが、菌居ませんというより、好中球が多数ですが菌が確認出来ませんと報告する方が親切と思います。

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2009年6月 7日 (日)

名古屋にて

本日は愛知県臨床検査技師会に招かれて講演会でした。お世話して頂いた先生には厚くお礼申し上げます。

本日は昨年の基本的な菌の分類・見方にを踏まえて、グラム染色に乗せた症例をどうアプローチするのか?考えさせる話を中心にまとめました。臨床をあまり知らない人には少し難しかったでしょうか?一応基本的な事項にも触れたつもりです。新型インフルエンザのデータも合わせて紹介しました。少し余計だったのかな?とも思いながら進めていましたが、時間無くなってしまいました。すいません。合わせて、事前に頂いてた質問に対しての答えを培養結果と摺り合わせして詳細にし過ぎたのも反省です。

事前の質問も全て答えずじまいですいません。またの機会にこうご期待で。追加質問を受けた先生らは満足して頂けましたでしょうか?いつも院内で受ける質問をフィックスして話ましたが…またブログ通しても質問して下さい。
懇親会お疲れ様でした。若い人に囲まれ堪能出来ました。ありがとうございます

下記の1枚は誤嚥性肺炎を疑わせるスメアの1枚です。欧米と違い、日本の院内肺炎は誤嚥性肺炎も多く含まれます。

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2009年6月 4日 (木)

もうこれは迷わない

4月からグラム染色に携わったあなた。色々と悪戦苦闘しているとは思いますが、菌の特徴を掴めてきたころだと思います。

さて、このスメアはどう解釈しますか?患者背景無くてもいけますよね。

一応、69歳、男性。胃潰瘍の手術暦(5年前)あり。基礎疾患は特にありあせん。喫煙は現在していません、機会飲酒です。3日前から咳がひどくなり、発熱で来院。黄色の痰が採れました。呼吸状態は安定しており、外来通院によるフォローとなりました。

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2009年6月 1日 (月)

この時こそ肝心な検査(グラム染色)

インフルエンザの罹患後に肺炎を起こすケースを散見します。問題になるのが市中MRSA。

サンフォードガイドにも掲載されています(2009年度日本語版は64ページ)

喀痰グラム染色は大切としっかり書かれています。おかしいな?と思えばグラム染色をしてこのような像を確認しましょう。ただし、これだけではMRSAがどうかわかりませんので、培養を見てde-escalationが必要です。

元文献はhttp://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol12no06/pdfs/05-1141.pdf

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