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2009年5月29日 (金)

発熱外来をしていると

発熱外来でトリアージしていると『発熱』というだけで色んな紹介があります。一般医療機関で新型インフルエンザを診たこと無い方が大半なので、発熱があればびっくりもんです。

こういった時は、日ごろから行っている感染症の鑑別診断が非常に重要です。

良く聞けば、発熱に合わせて、背部痛と排尿痛。グラム染色でこんなの。

あわてず、診察することが重要なポイントです。

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2009年5月27日 (水)

腹水穿刺

腹水が溜まってきたとの報告。punctureしてグラム染色しましたが、白血球がそこそこ。同時に血液培養ボトルに接種した腹水が陽性になりこのような像。

コンタミ?とも思わせる像と認識しがちですが、背景を聞くと腹壁に膿瘍みたいのがある・・・と発覚。本当にコンタミ?と考えますが、培養を待たないと解釈が難しいことが多いですよね。このときは、見えている菌も大切ですが、腸内細菌のような病原性の強いものを忘れずに考えていくかです。グラム染色は優れていますが、目を奪われて方向性を見失うこともあります。ご注意下さい。

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2009年5月24日 (日)

症例定義がまたまた変更しました

よく変わる症例定義。

今回は国内外を問わず流行地に行った者が入ります。はっきりと神戸・大阪と言ったら良いのではないかと思いますが、色々あるんでしょうね。でも、東京で集団発生した場合も、このような定義が適用されるのでしょうか?神戸・大阪とも地方都市との考えより、こうなっている感じがします。随時更新されますので、まめに見ないと『え?知らんの?』と言われますよ。

また、学校などの復学の基準もどんどん定められいます。問題はビジネスマンです。PCRの結果が無いと仕事に出れないとのことも聞きますが。症状の無い人に検査しても資源の無駄のような気がしますが。実際どうなんでしょうか?

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/090522-03b.pdf

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/090522-03a.pdf

うちの子供の学校も再開しますが、手洗い場にあるアルボースや固形石鹸で手洗いを・・・と書いていますが、固形?大丈夫かな?と思いますが、全く洗わないよりましかと思います。

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ブログ再開です

この1週間は新型インフルエンザの対応で目まぐるしい生活をしていました。

土曜の夜中に呼ばれ、毎日電話の応戦。今週気づいた点を少し書きます。

今の段階での結論⇒現場で混乱しないように、職員の統制を取り頑張るのみ。

①行動計画書

・2月17日に改訂された行動計画書ですが、高病原性を考えて対策を立てたもので臨床の現場との相違が多い。

・突然のことで、行政は頑張っているが対応に追われ、具体的な指示は現場任せ(=病院間で勝手な事ばかり言っている)

・2次医療圏毎に対策を・・・(寝耳に水のような自治体ばかりで、対応に追われ未だに発熱外来が建っていないところもある)

・初期の感染防御の話ばかりで、回復期の話は未だ指示が出ない。(これも現場任せ)

・この行動計画に即したマニュアル作成は問題無く使えるが、細かい指示は現場で職員が混乱しないように1日中指示を出せる体制にすべき。

②状況把握

・行政がコントロール不能な状況では、病院間の横のつながりが大事。でも、横のつながりで患者の移動をすると必ず歪が生じ、患者の移動は保健所と詰める。

・病院内では必ず役割早期に明確化しておく。特に感染管理者の教育は重要。(じゃないと、家に帰れません)

・リアルな報告はまず入らない。(行政は吸い上げするだけで、詳細な発生状況は与えてくれないので、不信感が募る)

③最新情報の入手

行政通じて、毎日のように症例定義や報告書が変わるし、追加される。なので、細かい指示はその都度紙ベースでの申し送りをすることが重要。でも、一番の悩みは肝心なところが○○など・・・とぼかされていて、現場の判断力に求められる。

まだ、書きたいことがありますが、今回の新型インフルエンザは感染力は強いが、病原性が弱いような報告が多いことです。実際そのように感じます。

でも、大事なのは重症化しない学生層を中心に流行していること、5歳以下と基礎疾患のある成人、妊婦は今後重症化する患者が発生するので、そのための対応をどうするのか考えないといけない。あと2週間以内に決めないと大変なことになると想定しています。

写真は防疫車です。患者運搬時のもので、SARSの時に1台購入したそうです。フルプロテクトPPEで乗ってこられます。

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2009年5月17日 (日)

褥創感染の重症化

褥創の培養はルチンでは薦められませんよね。何が?と考えますが、褥創自身膿瘍で皮膚常在菌が多く検出され、スメアではブドウ球菌を中心に見えます。培養でも同じことで、何を培養していたか?と振り返って考えれば混乱を招く恐れがあります。

ただ、重症化の場合ですが、当然、発赤の拡大や周囲の蜂巣炎を疑う場合、しっかりとしたサンプリングや血液培養も必要です。重症化すれば敗血症も起こしかねません。

血液培養陽性例ではこんな像も確認されます。1菌種のみと思い見ると思いますが、陽性・陰性菌の確認はしっかりしましょう。

レンサが長い球菌?は赤みが強く小型なので溶連菌、陰性桿菌は少し塊になり、細く染色性が悪いので緑膿菌の可能性が高いと考えます。溶連菌もそうですが、緑膿菌は外せませんね。

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2009年5月15日 (金)

外来患者の喀痰 どう見(診)よう?①

入院での長期加療の末、軽快退院することが出来た患者は山のように居ると思います。

そういった患者が、自宅で状態が悪くなり救急にかかった場合にどう考えます?入院時の主治医に確認採れれば分かりますし、入院中のサマリーを熟読すると経過も追えると思います。

単に情報を考えず、誤嚥が絡んだ市中肺炎だと思い、ABPC/SBTで開始した場合はどうでしょう?前回歴に緑膿菌やMRSAがあればカバー出来ない可能性もあります。当然、市中肺炎も当然リスクとして残りますので鑑別は重要です。

つまり、肺炎を疑う場合は双方検出されることを予想しグラム染色を見なくてはいけません。

写真のような像を見た場合は、有用性が高いですよね。

グラム陰性桿菌は細く緑膿菌を疑い、ブドウ状の菌はMRSAではないか?と推測出来ます。

2400 ×1000(緑膿菌)

600_4 ×1000(ブドウ球菌)

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2009年5月12日 (火)

亀頭の発疹

年に数例見ます。亀頭に発赤、発疹があるから培養出すで・・・。というコメントも頂きます。

亀頭包皮炎という疾患に対して、グラム染色をどのように見ていけば良いのでしょうか?

当然、皮膚の常在菌もそうですが、STDの菌も可能性としてありますよね。培養を実施することになりますが、出てきた菌をどう解釈するか?難しいことです。果たして培養は必要なのか?思うこともあると思います。それは、膿瘍も含め複数菌全てが培養で検出出来るのか?ということも想定しないといけません。

年齢や性交渉の有無を聞くのは重要でしょう。小児が性交渉は殆ど無いと考えるため、起炎菌は溶連菌や黄色ブドウ球菌が中心になると思われます。

成人も含め対象となる菌は、溶連菌や黄色ブドウ球菌が多く、+カンジダと嫌気性菌です。嫌気性菌に関しては、溶連菌や黄色ブドウ球菌と抗菌スペクトルはあまり変わりないためグラム染色でのフォローは必要でしょうし、カンジダも菌種鑑別が可能です。

(参考文献:2001 National Guideline on the Management of Balanitis)

大きな問題は釣菌が可能か?という問題です。カンジダは問題無く培養で検出可能でしょうが。

写真は4歳の小児患者の亀頭部の発疹から出てきた浸出物です。赤く腫れていたようです。

連鎖球菌は細くて連鎖が長いため、溶連菌か嫌気性レンサ球菌を疑い、双球菌はブドウ球菌(黄色ブドウ球菌かどうかは不明)を疑えます。溶連菌を疑い臨床所見について即聞き取りです。

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2009年5月10日 (日)

信州ICセミナーを終えて

昨日、第4回信州ICセミナーへ伺いました。約120名の参加者で熱気ムンムンでありました。世話人代表の笠井先生、司会をして頂いた金井先生、声を掛けて頂いた久保田先生、また関係者の皆様ありがとうございました。

笠井先生からは事前の反響があるとのハードルアップがあり、緊張が高まることもありましたが、どうにか無事終了しました。

持論になりますが(賛否両論とは思いますが)、検査室で働く分には臨床の第一線で受けるプレッシャーはあまり感じず、対象が検体と紙(電子媒体)での医療介入をしてきました。ICTラウンドをして、いろいろな局面で受ける後戻り出来ない事例の対応をしてきて、『これでは駄目だ。臨床現場で必要な情報をまとめて返し、患者のアウトカムの改善に努めないと・・・』と、最善のコメント(検査結果)を返そうと心がけやっています。自己で結果を完結しないようにするのも大事です。

当然、現場を知らずして語れずの世界で、病棟へ出向き情報収集をすることの大切さを知りました。誰だって最初は抵抗もあるし、部内も含め変顔されることもありますが、今からは現場を良く知り、文献をよく読み、自分自身の結果解釈の妥当性と現場認識との整合性などを解析し、臨床が大きく付いた臨床検査技師へと感染症の診療支援に向け、大きく貢献したいと考えています。今からしようと思いを抱いている方、怯まず一歩前に出てみて下さい。

ただ、KYと言われないように、最初は居場所を確保しておいてくださいね。

PS:やはりアフター5も大切です。夜も皆さんがんばりましょう。

当日の講演内容の1枚を掲載します。菌の推定は自身の頭に焼きつく固定概念とのマッチングになり、ずれると???となります。経験を積んでください。

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2009年5月 8日 (金)

これしか見えない

明日は信州ICセミナー(in松本)にお邪魔します。どうぞ宜しくお願いします。

内容は、感染管理業務としてアクティブに使えるような講演にしようと思います。

さて、問題にします。

80歳代男性、主訴:全身倦怠感のみ。3日前から感冒様症状あり。

既往:HCC、DM。

昨晩より熱があり、朝に39℃を超える熱。昼に救急車に乗り来院。独歩にて入室。

血圧の低下、ややせん妄をきたし、問診、胸部レントゲンなど実施の途中にショック状態になり、意識レベル低下。PaO2の低下もあり、集中治療室へ入室し挿管。

胸部レントゲン像はN.P.。胸部~腹部CTでも肝硬変のみ指摘。

入院4時間後より、下肢から体幹にかけ出血斑が出現してきました。

血液培養施行し、8時間後に陽性。

グラム染色しました。見えたのはたったこれだけ・・・・。さあ、どうする?

答えの紐解きは後日します。

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2009年5月 6日 (水)

インフルエンザH1N1

ブログ書いている余裕は無い、読んでいる時間は無い と皆さん思われているとは思います。疑い例の発生を落ち着かず聞き入っている毎日です。

昨日は東南アジアから帰国して発熱しているという患者さんが『診察して欲しい』と言われ、一時騒然となったようです。診察拒否についての話題も多いかと思いますが、メキシコ、米国、カナダへの渡航が無いと確認出来れば普通の風邪症候群として扱っても問題無いと考え、一応季節性インフルエンザとして対応になりました。

東南アジアの一部では、avian influenzaがまだ流行している地域もありますし、元々熱帯病の多い場所でもあります。また、seasonal influenzaの流行も今から6月くらいに掛けて増えますので、インフルエンザH1N1のみを対象にした発熱を慎重に捉えるような診療に心がけるようにと申し送りしました。記載が無いため一部現場は混乱をきたすようです。

ところで、今回のインフルエンザH1N1の検査についてどうすれば良いのか?位置づけについてどうするのか?という話題が良く持ち上がります。

問題点を簡単に整理しますが

・発症初期はインフルエンザ検査で捕まらないため、今回も捕まらない可能性があること。

・今回のインフルエンザウイルスに対してどの程度の感度特異度を持つか未確定。

・A型であっても季節性の疑いも残り、新型かどうかは鑑別出来ない。over diagnosticの可能性がある。

・米国もそうですが、未だ季節性のインフルエンザが流行している。

日本での事例は未発生である状況では、少し慎重に扱う事項も多いかと思います。

興味のある方は、CDCのHPも参照ください。

新型インフルエンザ情報(検査技師さん向け):http://www.cdc.gov/h1n1flu/lab/

米国の季節性インフルエンザ情報:http://www.cdc.gov/flu/weekly/fluactivity.htm

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2009年5月 4日 (月)

感染症学会のおさらい⑤

やっぱり見ないと分からないと思います。

結局、グラム染色は適切な治療を開始するために必要な感染症診断検査であります。

感染症の初期診断には不確定要素が多くありますが、過去の経験、統計学的な数値、治療成功率などを考え抗菌薬の選択を必要とします。まさに適正使用などが教育として入り込みだした日本の中ではグラム染色は欠かせない検査と思います。

下記のスライドのように、primaryの市中肺炎例のCRXでは病原微生物は予測出来ても、最終的に断定は出来ないものも多く、グラム染色をし確認することで、その診断確率は上がるものだと思っています。

私の講演の最後に司会をして頂いた菅野先生が『今までのグラム染色は、抗菌薬が汎用される以前の考えであり、抗菌薬が登場してからのグラム染色についての考えが、まだ科学として成り立っておらず、これから解析などしていなかいといけない。』とおっしゃっていました。本当に良いお言葉だと思います。

私自身、グラム染色のペーパーを色々見ても1970~1980年代までの文献が多く存在しているのですが、それ以降のものは少なく、医学的根拠を構築し、医学の発展の一助になればと科学しております。

最後に会が終了しても、各方面の先生や学生さんに質問を受けましたが、グラム染色はこれほど色々な方に愛されているのは本当に凄みのある検査だなと思いました。

また今まで以上にスキルアップを図り、面白いネタを披露出来ればと思っています。

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2009年5月 1日 (金)

感染症学会のおさらい④

連鎖球菌の鑑別をグラム染色でどう行うのか?ということですが、問題となるのは感染症のフォーカスを特定するために必要な場合で、血液培養で急ぐ場合が多いと思います。喀痰で?ってのは殆どないので、臨床の一線で活用されている方には疎くなる内容だと思います。

でも、下記のように形態鑑別します。

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