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2009年2月27日 (金)

環境感染学会に来ています

27日、28日の連日開催される、24回日本環境感染学会総会に来ています。

毎年太くなっていく抄録集ですが、今年はなんと600ページ近く(一般演題がなんと800題近く)の非常に大きなものです。新幹線を新神戸から乗り読み終わったのは熱海の辺。聞きたい、見たい演題などチェックしました。

グラム染色が取り上げられている演題は2題(電子カルテに記載して臨床で採択されるかどうかの考察、カメラ付き携帯電話を用いての教育)でした。やはり臨床微生物学会などではないので少ないのか?と思いました。

自分自身も一般演題とシンポジウムに登録しています。シンポジウムではグラム染色によるICT介入のポイントと今後の方向性について少し話します。

明日発表ですが、スライドはこんなんです。先日遭遇したVAP例の気管内吸引痰のスメアです。どう感じますか?見えている菌、見えていない菌の感度などを臨床にどう紹介しアピールしましょうか?また、使用抗菌薬の治療成績は?

治療以外にも、現場では呼吸機器の管理やステロイド投与のタイミング、気道からの去痰などの指導など、わずかこれ一枚ですが介入出来ることが沢山です。

異議もあろうことと思いますが皆さんお手柔らかに・・・。それでは明日。

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先日の膿胸 続いて見るグラム染色

先日(25日分)掲載した膿胸ですが、治療効果判定としてグラム染色を1回見ることにし、2日目に胸水を採取することになりました。

外観は殆ど変わりませんでしたが、スメアはこんなんです。

どう考えましょうか?

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2009年2月25日 (水)

たまに見ます 膿胸

1年に何回かはドロドロの胸水を見ます。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-4358.html

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-58cb.html

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_8d8c.html

心臓疾患、歯科衛生の悪いこと、肺疾患、糖尿病、アルコール依存症の患者などが要因になるようですね。

N Engl J Med, Vol. 346, No. 25 June 20, 2002、1971-

Clinical Infectious Diseases 2005; 40:915–22

まずは臭いを嗅ぐことから始めます。臭いがあれば嫌気性菌の可能性が高いから、グラム染色を見る場合に役に立つからです。反対に臭いの無い場合はどうでしょう?見てみないと分かりませんが、グラム陰性桿菌であれば肺炎桿菌が多くなり、グラム陽性球菌であればミレリグループの菌が多いとの報告があります。よっぽどの耐性菌で無い限り、ペニシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤配合やCTRXは使用されることでしょう。

菌を見て菌種の鑑別はどのレベル必要でしょうか?やはり、陽性球菌であればCluster やChainなど、陰性桿菌であれば非発酵菌かどうか?また肺炎桿菌かどうかを見るのが必要でしょう。喀痰で見えるような典型的な像は見えませんが、背景の白血球は新旧雑多に混じり炎症が酷い状態が確認できます。

これは先日出た菌です。α連鎖球菌を強く疑うと報告しましたが、翌日血液寒天にweek+でチョコレート寒天に+++でした。珍しいのかもしれませんが、一応IEの除外は必要かと思い連絡しました。もう一つびっくりしたのが、ペニシリンアレルギーとのこと。

経日的にスメアを見ていきくことにしました。

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2009年2月23日 (月)

材料が悪いけどどうしましょう

喀痰のグラム染色をする前に、Miller&Johnsの分類で痰の概観を確認します。

M2(膿成分が少なく唾液成分のみ)の材料をどうしましょう?

・採り直してもらう。

・仕方なしにする。

肺炎を疑うが外来治療される場合ですが、痰を提出して帰るが、採り直しをお願いしても患者さんはもう居ないなどということもあるでしょう。

そういった場合は止む無く培養を行いますが、信憑性に欠ける結果になる可能性は高いと思います。

しかし、グラム染色は逃しません。色々と見ていると、膿の部分が見えこのように肺炎球菌を疑う貪食像が確認されます。αレンサ球菌との鑑別も大切で、肺炎球菌を疑うが、どうかな?と思いますよね。でも良く見れば肺炎球菌なので、コメントに加えることも検討が必要では無いでしょうか?

私は逆手に取って、αレンサ球菌(上皮に付着しているもの)と肺炎球菌(古い白血球?に貪食されて確認されてるもの)を比べこの時ばかりに違いを頭にインプットします。

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2009年2月21日 (土)

パスツール研究所の博物館

先日から掲載していますパスツール研究所の記事ですが、博物館内にはパスツールの研究成果が展示されています。恐らく誰でも見学可能と思われます。

博物館で顕微鏡を見つけました。光学式の単眼のもので日光を取り込むタイプです。研究されていたのが19世紀になりますので、電気式のものは無かったのでしょう。

パスツールは液体培養を中心に研究を進めてきました。博物館内には、彼が培養した黄色ブドウ球菌が今でも培養液に入って展示されています。隣には溶連菌もありました。

まだ生きているそうですが感慨深いものです。

Photo 顕微鏡

Photo_2 黄色ぶどう球菌

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2009年2月20日 (金)

CAPD感染で多いのは

PD腹膜炎で問題になるのは、腸内細菌とブドウ球菌でしょう。

グラム染色は廃液を見る時に大切ですが、菌も見えない場合もあります。ただ、白血球は多く見えるので、その場合は、白血球多数などのコメントは必須でしょう。

こういう場合は、どう報告しますか?主治医から相談あれば何と答えますか?

皆さんも考えてください。

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2009年2月18日 (水)

フィブリンか?

喀痰のグラム染色を見る場合、よく見えるのがたんぱく質?と思われる赤色の集塊。

呼吸器病学の教科書を見ると、炎症とともにフィブリン塊が形成されて・・・と記載あります。本当にフィブリンかどうか?と悩んでいましたが、先日病理の先生と話をしました。

フィブリンというよりは、粘液成分の方が多いようです。異物混入により排出しようと粘液細胞が刺激され、多く分泌が起こり喀痰として排泄されるようです。黄色いのは殆ど白血球のようで、なるほど・・・・と思いました。

でもフィブリンも出てくるようです。粘膜障害があり、毛細血管周囲へ炎症が広がるような肺胞性肺炎の場合はフィブリンも混入するようです。特に肺炎球菌のような病原性の強い細菌では良く見られることなのでしょうかね。

なので、赤く見えているのは粘液かフィブリンか判断は難しいのですが、私は個人的に

・フィブリンは赤が鮮明なのはフィブリンで、大きな集塊を形成している

・薄いものは粘液で、小さな集塊が多く、線状になる

医学的には証明出来ていませんが、肺炎像との一致不一致はデータを取っています。感染症学会で話せるように頑張ります。

これは肺炎球菌性肺炎ですが、菌を見なくても何となく疑いを持って見れるようになりました。良く見りゃ肺炎球菌見えますね。肺炎球菌と確信させるにはいい情報と思っています。

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2009年2月16日 (月)

緑膿菌を緑膿菌と言える匠の技

臨床微生物学会では私の稚拙なプレゼンのため、グラム染色による菌の同定は正しくないのか?という議論になりました。

確かに質問が出るのは止むを得ないことと思います。過去にそのような検討が日本でなされてなかったためです。海外文献ではたまに見ていました。面白いな?と思いながらこの道場を通じて情報公開していましたが、自分ではどれくらいかな?と思い今回の発表に踏み込みました。

あの発表で伝えきれなかったことは

 ①全て私が見た結果であり、複数人によるバラつきはまずありません。

 ②材料は全て適切に取れていることが前提

 ③入院と外来は今回無視して見たこと(重要なファクターですが、バイアスかかるかもしれないので敢て入れていません)

 ④スメア見る前には年齢や性別は見た

さて、緑膿菌を緑膿菌と鑑別するにはどうしましょうか?

・患者の背景(免疫状態、手術歴、入院歴、抗菌薬投与歴)

・緑膿菌の既往(特に喀痰は大事)

・菌の染色像(グラム陰性にやや薄く染色され、中型、湾曲や集塊を形成したり、ムコイド)

を同時に見抜く必要があります。

それは匠の技では無く、いつも皆さんがどういった動機付けでグラム染色を見ているか?にかかってきます。

緑膿菌を緑膿菌と言うのは博打かもしれませんが、ガイドラインも一つの確率論の上に成り立っているように思います。博打の確率を上げる、外れる危険を回避するためにも緑膿菌を緑膿菌と言えるスキルが、いずれは必要視されるのでしょう。

これは、リウマチ性膿胸悪化で紹介のあった患者の胸水です。このときは緑膿菌と言いました。培養は緑膿菌でした。

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2009年2月14日 (土)

成人で臍の材料がたまに出てきます。グラム染色では何が見えるのでしょうか?

普通の膿瘍ですが、腸内細菌が多く見られます。

臍ピアスの周囲が悪化した、臍をいじり過ぎたなど良く聞きます。

皆さんはどうしていますか?

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2009年2月13日 (金)

足の壊疽

たまに相談があるのが、DMやHD患者で足が壊疽した例です。

踵が黒く壊死している部分も見かけます。抗菌薬の選択困りますか?

何菌か分かるか?という相談もありますが、中々難しいです。どれ見て良いか分りませんよね。

Clinical Infectious Diseases 2004; 39:885–910を参考にすれば(グラム染色って2か所に記載あります)

グラム染色確認時に見る点は

 ①何菌種見えるか?

 ②緑膿菌はどうなのか?

 ③溶連菌は見える?

 ④嫌気性菌は確認出来るか?

 ⑤黄色ブドウ球菌は見えるか?

①は最低限報告したい点です。菌種の鑑別は良く分かっても②と③、④。⑤は属レベルまでしか分りませんよね。皮膚には黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌は沢山いますし培養してみないと判りません。

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2009年2月11日 (水)

血液培養のチャコール

先日のサルモネラ膿瘍ですが、初期に血液培養が採取されていました。翌日陽性になりグラム染色をしました。

グラム陰性桿菌が見え、短桿菌。膿瘍で出たサルモネラとほぼ一致出来る染色像と思います。

周りにちらほらアーチファクトが見えます。抗菌薬吸着目的のチャコールです。普段は用いないのですが、この時は抗菌薬が前投与(他院で)されていたこともあり使用しました。

見にくいですね。でも気にするから見にくいので、気にならなかったら何でもありません。

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2009年2月10日 (火)

サルモネラの膿瘍

サルモネラというのは腸管感染症の代表的な起炎菌なのは皆さんご存知でしょう。

サルモネラは同定時にチフス、パラチフス、非チフス性サルモネラに分ける必要があります。良く見るのは非チフス性サルモネラのEnteritidis、Chorelasuisです。

Zoonosisでもあり、また全身感染症を起こすこともあります。腹腔内膿瘍のみならず関節炎や肺膿瘍なども報告も散見されます。

さて、膿瘍からのグラム染色でサルモネラと判るでしょうか?慣れていれば分かるかも知れませんが、これは非常に匠の技になります。

過去ログにサルモネラの肺炎も掲載しています。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_5e96.html

サルモネラかどうか分りませが、染色性の良さから腸内細菌と見ることは可能でしょう。でも、緑膿菌で無いのは分りますよね。分かる方は小さい桿菌で腸内細菌の中でも肺炎桿菌や大腸菌とは違うことも分かるでしょう。また、嫌気性菌も考慮すべきでしょうね。

非常にアクティブな好中球が大部分を占め、弱拡大でも見えますが単球もチラホラ。膿瘍は活性状態であることが確認出来ます。

さて、サルモネラを膿瘍で見つけた場合は以後どうしますか?下痢などの消化器症状が無いか、無かったかなど聞き取り、便培養、胆石がないか?血流感染はないか?など色々と原因検索のための培養を出して貰うことも必要でしょう。おそらく、提出医も膿瘍からサルモネラ?とびっくりしてしまうので、検査室でフォロー出来れば良いでしょうね。

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2009年2月 8日 (日)

放射状のグラム陽性菌・・・ノカルジア

先日、バルン尿を見ていたところこんなグラム染色を見かけました。

そうです。放射状のグラム陽性桿菌であるノカルジアです。

結核菌のよりも太く、長く、まだらに染まる桿菌で大きく、分岐があるものです。1回でも見つければ以後何回も見つかりますが、1度も見たことがない人は難しく感じますよね。

類似菌のActinomycesはhttp://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_47cf.htmlに掲載しています。違いを見てください。

バルン尿から出てくるのは変と思い、午後から回ったICTラウンド時に担当看護師さんから伺うと陰茎に発疹のようなものがあるようですと。丁度泌尿器科の診察も入っているようで、連絡しました。ノカルジア?名前は聞いたことあるようですが、免疫不全患者で良く出て、皮膚には結節など形成します。と補足しました。診察の結果、尿道内に膿瘍があったようです。

抗菌薬は何使うの?と予想通りの質問ですが、過去15人以上の症例を知っているという強みもありST、MINO、EMなど感受性分布を説明しました。CTRXも脳膿瘍などに使う例がありますよね。

簡易同定はKM、IPM、TOBを使いますがそれと、治療選択は少し異なるようです。

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2009年2月 7日 (土)

第3回GSSG研究会のご案内

第3回GSSG研究会の申込中です。ご興味のある方の参加宜しくお願いします。

日時:3/20(金祝) 9:00~16:30

場所:大阪市大医学部微生物実習室(午前)、4階中会議室(午後)

内容:日常よく遭遇する感染症 part2

午前は実習。午後は症例検討と解説。

定員:午前60名、午後(120名)

申込は下記からエクセルシートダウンロードして記入して下さい。詳細は下記のワードファイルを参照のこと。エクセルは2003形式にしてください。

「gssg_3rd_infomation.doc」をダウンロード

「gssg_3rd_entry_form.xls」をダウンロード

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2009年2月 6日 (金)

閑話休題②

パスツール研究所のことでもう少し。

パスツール研究所の間の公道に、研究所の業績集なる掲示物が何枚か張られています。

最近では、HIVの発見などは大きな業績の一つと考えれます。

さて、通りの掲示物を幾つか紹介します。

BCGワクチンは、1921年に報告があり、Albert CalmetteとCamille Guérinが、ウシ型菌の強毒株の一つであるNocard株を継代培養してBCGの元になる菌株を作製しました。

もともと、狂犬病ワクチンを始め数々のワクチン開発に業をなして来たパスツールの業績が生きた結果ではないでしょうか?今もまだ、結核予防のために大きな役割を果たしています。

写真は結核菌です。コード形成しているのが良くわかります。

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2009年2月 4日 (水)

誤嚥性肺炎のあと その2 その前に

先日の誤嚥性肺炎の例ですが、菌は何も見えません。primaryのカンジダ肺炎は少なく、βグルカンも低いので保菌と判断できます。炎症反応も強く無く、抗菌薬投与で治療経過は良いと考えれます。

各日にやってくるグラム染色も振り返ることは大切です。しばらくは、置いておきましょう。

これは治療開始日(2日前)のスメアです。2日前と比べるとどうでしょうか?今回のスメア結果と併せてコメントすると良いでしょう。

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2009年2月 2日 (月)

臨床微生物学会終了

早いものでもう一年。昨年は、顕微鏡(め)でみる感染症を企画運営させて頂きましたhttp://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_eb7f.html

今年も懲りずにグラム染色の話題で勝負です。積極的な診断検査ということで、グラム染色で報告した菌名と培養で発育した菌名の照合をしました。

スバリ菌名を報告して培養の完全一致率は

喀痰:42.2%、血液:19.1%、尿:11.4%、膿:29%という結果に。属や科レベルの報告では、全て90%を超える正解率でした。

演題に対し、色々とご指摘された事項もありますが、実際日常検査をしていて、推測出来ているだろう菌種はどれくらいの確率なんだろう?という疑問をもっておりました。今回の演題発表では、その評価がどんなものか世間一般的な内容としてどうなのか?ご意見を頂きたく思っていたので嬉しい限りです。

緑膿菌の問題になりましたが、緑膿菌が検出される患者背景には特徴があることを理解して、緑膿菌もしくは緑膿菌と思われるとの報告をすることは問題無いと思っています。

Gecklerの報告にもありますが、喀痰の場合で推定菌の報告は、肺炎球菌やインフルエンザ菌のような市中肺炎の起炎菌推測が可能だという土台の基にルチンが走っているような状態です。院内肺炎の場合には、喀痰グラム染色の有用性が少し劣ること留意し鏡検することが不慣れな方には良いのかもしれません。その辺も含めたデータ解析を今後も続けて行きたいと思います。

心配して声を掛けて頂いた先生ありがとうございました。新しいことをしていますので、何か今までの既成概念を逸脱し殻をも破る思いで進めてます。これからも応援お願いします。

サービスでスライド1枚添付します。グラム陽性菌の鑑別点を掲載しています。まだまだありますが、また学会等で聞いて下さい。

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