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2009年1月31日 (土)

閑話休題①

先日、旅行を兼ねてフランスへ行って参りました。観光がメインでしたが、予てから行きたかった細菌学の聖地であるパスツール研究所へ行ってきました。

パリ市内の6番地区にあり、近くにはモンパルナス墓地(モーツアルトの墓があるとか)もあります。パリ市内でも比較的治安の良い場所に立っているようです。

地下鉄6号線Pasteur駅を降り、5分程度と好条件で、駅前には何とピエール・エルメもあるお洒落な町。

暫く行くと通りの両側にパスツール研究所が。大興奮のまま手続きをして博物館へ参りました。今は亡き、パスツールの研究業績や研究施設、自宅やお墓まで見せて頂き感慨深いものがありました。

低温殺菌法(パストリゼーション)も業績のひとつであるのは有名ですよね。

Pasteulle

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2009年1月30日 (金)

誤嚥性肺炎のあと その1

誤嚥性肺炎の悪化のため2日前に入院してきた患者がいました。肺がんの既往もあり、CFPM+AMKで開始となりました。下記に治療開始後2日目の喀痰を掲載します。右下にカンジダが見られます。βグルカンを測定していますが、2.2pg/mlでした。どう考えましょう?

関係ありませんが、明日から臨床微生物学会(記念すべき20回目)です。http://www.congre.co.jp/jscm20/

今回はOralプレゼンになりました。緊張します。

Vap2100 ×100

Vap2600 ×1000

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2009年1月28日 (水)

自己排尿と腎盂尿

ESBL保菌者が腎盂腎炎で入院してきました。外来でのアクティブサーベイランスもそろそろ考えものになります。

自己排尿と腎盂尿のスメアが大きく違った例なので勉強がてら掲載します。

腎盂尿ではキレイな貪食像です。上行尿路の感染症はこんな像になります。

ちなみに、耐性菌かどうかはこれではわかりません。

次の日に血液培養陽性に。同一菌です。

Esbl600 ×1000(自己排尿)

Esbl600_2 ×1000(腎盂尿)

Esbl600_3 ×1000(血液)

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2009年1月26日 (月)

この時期

インフルエンザを初めとして、ウイルス性疾患が流行している時期です。2月に入るとインフルエンザの流行も一層拡がります。

施設でも、ノロウイルスを初め、インフルエンザの流行するケースも多く、予防接種をして罹患しても軽快出来るように準備していると思います。

この時期から4月初めまで多いのが肺炎球菌の肺炎です。

施設から肺炎疑いで緊急入院してくる例もあると思います。施設から来た場合、市中肺炎と少し考え方を変えなければなりません。nursing home–acquired pneumoniaと言うようです。Clinical Infectious Diseases 2005; 40:7–8

口腔衛生が悪くなり、口腔内の常在菌による肺炎、耐性菌による肺炎など想定してグラム染色を見ることも大切です。肺炎球菌などの市中肺炎の起炎菌についても当然想定範囲になります。情報も少なく、すべての網でひっかけるように丁寧に見なければなりません。

弱拡大では古い白血球、繊毛上皮などありますが、しっかりと肺炎像を掴めません。材料不適とも思われる像で、強拡大では白血球も少なく連鎖球菌が・・・。誤嚥?とも思われますが、典型的な誤嚥像も無く、この連鎖球菌を肺炎球菌かどうか判定するのは難しいです。尿中抗原などもしっかりチェックしなければなりませんね。

この例は、尿中抗原が陽性になりました。ワクチンは接種していません。

M100 ×100

M6002 ×1000

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2009年1月23日 (金)

歯科材料のグラム染色

歯科材料検査もたまに出ます。膿瘍が出来て、グラム染色を教えてと言われますが、口腔内の膿瘍だけに肺化膿症と同じような像が見えます。

こんな像になりました。掲載します。polymicrobial patternです。

200 ×400

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2009年1月21日 (水)

グラム染色で嫌気性菌の鑑別を

肺化膿症の場合、嫌気性菌が関与している場合が多く、グラム染色でもそのまま見えます。

私は、グラム陽性球菌や紡錘形のグラム陰性桿菌(Fusobacterium spp.)を目指し鏡検しますが、皆さんも同じですか?

グラム陽性球菌のうち、嫌気性菌はやや小さく、たまに染色が不鮮明になります。

主治医と相談して、嫌気培養を追加。嫌気性グラム陽性球菌検出しました。

600_3 ×1000

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2009年1月19日 (月)

同定終わらないと安心出来ない細菌の一つ

グラム染色で悩むのは、グラム陰性桿菌の同定鑑別。同定機器が汎用化され、菌をそのまま機器にかけると同定してくれます。簡単になりました。

グラム染色で鑑別が難しいのは、グラム陰性短桿菌。非発酵菌なのか?インフルエンザ菌なのか?それとも腸内細菌なのか?結果を急ぐ場合もあり焦ることも・・・。

これはどうでしょうか?NTM(MAC)治療中に肺炎が悪化。グラム染色しました。

Ntm100 ×100

Ntm6002 ×1000

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2009年1月16日 (金)

たまに見ます

胸水が提出されグラム染色。こんなスメアも見ます。

本日は短めに。

参考:http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_4fa1.html

Photo ×400

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2009年1月15日 (木)

MRSAの肺炎はどうやって起きるのでしょうか?

肺炎に関する色んな文献を見ていますが、黄色ぶどう球菌肺炎については『血行性に病巣とつくり、気管支周囲に結節状の陰影を示す』と書いているものを目にします。

理論、フムフムと考えますが、本当にそうだろうか?と思うこともあります。

誤嚥性肺炎に合併するものもたまに見ます。院内肺炎の起炎菌でもあり、普通に考えるのであれば良くありそうですがね。誤嚥をしてそのまま肺炎・肺膿瘍になることも当然ありそうですが、しっかりと根拠が取れていません。誰かしっていますか?

培養検査をしていると、喀痰からMRSAなんかは毎日のように出てきますが、肺炎(疑いも)を起こしていそうなのは月に1人あれば多い方でしょう。菌は検出しますが、起炎菌で無くコロナイズとしての報告。びっくりするのは看護師さんです。(個室?予防策は?などシビアです)。良く聞くのは、起炎菌でしょうか?とという疑問難問が主治医から。誤嚥性肺炎も疑うような場合は貪食像が生命線になることも多いです。

さらに、貪食像=起炎菌として良いものでしょうか?生体反応からすれば病原菌にあたるのでしょう。

下記の場合は、起炎菌と判定してVCM投与にて軽快した例です。誤嚥性肺炎でもVCMで治療出来るでしょうが、セフェムによる肺炎治療をしていて改善無く、VCM投与後に改善すれば起炎菌に当たることも多いです。結局レトロに考えてしまうこともありますが、スメアにて貪食あれば起炎菌として考えても良いのでしょうね。

下記のスメアの返し方は、炎症反応も強く、扁平上皮が混じり誤嚥の可能性を示します。また、抗菌薬投与中ですが症状の改善無いとのこと。強拡大にて、ブドウ球菌の貪食もあることからMRSAの肺炎を疑います。VCMはどうでしょうか?検討下さい。(実際にカルテに記載します)

Mrsa100 ×100

Mrsa600 ×1000

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2009年1月13日 (火)

照合  はずれ

こんな症例もあります。

消化器癌のフォローで入退院を繰り返している80才台の女性。前回は膵炎を起こし数日入院後退院。

2週間後に発熱あって、外来に来ました。尿の混濁もありますが、CVA叩打痛は、もともと軽度の背部痛があったために確実な情報となりませんでした。一般検査で尿細菌もあり、尿と血液培養を採取。尿のグラム染色は下記のようでした。腸内細菌と報告し、翌日に血液培養陽性。血液培養のグラム染色を下記に示します。

初期治療はCTRXで開始となっています。

主治医と膵炎由来か尿路感染由来か話しました。短絡的には尿路感染由来ですが、培養の結果は・・・・

血液培養⇒肺炎桿菌

尿培養⇒大腸菌

うーん。結局膵炎由来ということになり、CTを撮ることにしました。

グラム染色の限界になるのでしょうか?微生物検査は奥が深いです。

600 ×1000(尿)

600_2 ×1000(血液)

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2009年1月10日 (土)

落ち着いて見れば・・・

落ち着いて見ればわかる事ってありますよね。色々考えすぎて、行き着く宛は裏目に出ることです。

こんな例もそうでした。血液培養が陽性になり、グラム染色をしたところこんなスメアになりました。膀胱がんのケモ中発熱を起こし来院されました。

カンジダは誰もが鑑別出来るかと思いますが、仮性菌糸と形成しているのでCandida albicansCandida tropicalisでしょう。コンタミ?とも考いにくいし、カテーテルも入っていません。情報はただ基礎疾患のみ。

菌糸を伸ばしているので、FLCZが第一選択になろうかと思いますので様子を見ることにしました。一応眼内炎症状がないかチェックするようにと看護師さんにポイント説明をしました。

カンジダの腎盂腎炎による敗血症って非常にレアですよね。なので確定も迷う一瞬です。

色々考えた結果・・・Candida tropicalisでした。よく見れば酵母が長細いので鑑別出来ました。迷う場合は一旦戻りましょう。(いつも自分で言っているのに・・・)

400 ×400

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2009年1月 8日 (木)

VAPを考える場合 後編

翌日、お願いしていた吸引痰提出してもらいをグラム染色してみました。

前日の検体も、疑いですが、αレンサ球菌、コリネバクテリア、エンテロバクター/クレブシエラ、緑膿菌の4つが検出されています。正式な同定は未だですが、一次性状も確認しているので凡そ正解でしょう。

問題は、緑膿菌とエンテロバクターです。治療で選択されたCFPMが耐性だとどうしましょう?という問題です。それはグラム染色が解決してくれます。

グラム陰性桿菌が残っています。耐性菌でしょうか?と考えれます。

この病棟からはメタロやESBLの検出はありません。感受性率を再度見直してAMK追加か、カルバペネムへの変更か考えます。あとは患者の容態ひとつです。これも、実際に患者の側に行かないと判りません。状態が安定しているので、順序立ててAMK追加を検討することにしました。

翌日出た感受性を含めた結果

Enterobacter cloacaeはampC過剰産生株(CAZ耐性、CFPM・AMK感受性)+緑膿菌(耐性なし)でした。

反省点・検討事項:院内肺炎の場合は、市中肺炎のようには行きにくいと思いましたが、グラム染色は経過観察に用いることは院内も市中も変わらないことが判りました。

Vapcfpm1000 ×1000

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2009年1月 6日 (火)

VAPを考える場合 前編

冬の時期には、心疾患や呼吸不全を伴った重症患者の相談を受ける機会が増えます。重症の場合は、入院時には意識清明ですが、急速に悪化し、数時間後には挿管なんてことも多くなります。人工呼吸器装着してから気になるのがVAPです。挿管時にはカフでトラップされていても、抜管時に痰が落ち込み、無気肺に合併した肺炎も起こることがあります。

ただ、検査室で仕事をしている範囲では、人工呼吸器を挿管しているかどうかの判断は難しく、単に吸引痰とだけの情報になります。実際にICTラウンドなどで確かめる以外ありませんが、積極的に患者背景を知ることが重要なキーポイントになります。患者がどういう状態なのか?治療方針はどうするのか?など、臨床のニーズに合った省力化した報告が求められる瞬間です。

でも、どういった菌を標的に?と申される方もいらっしゃいますが、習慣的に見ている菌を標的にすることが一番です。習慣的?といっても、緑膿菌やMRSAが代表的です。また、アシネトバクターやマルトフィリアも考えないといけないこともあります。今はESBLも検出される頻度も増加してきましたし、耐性菌を含め、グラム陰性桿菌の同定を急ぐ機会も増えます。

いつも参考にしている文献です

・JAMA,Nov19,2003,p2588-

・Chest 2006;129;1210-1218

・Am J Respir Crit Care Med Vol 171. pp 388–416, 2005

これは、先日AMIで入院後に挿管した患者です。1週間経ち、発熱や炎症マーカー増加になりました。レントゲンを見ると肺炎を疑う所見。抗菌薬の相談がありましたが、培養採っていません。直ぐに採取して、グラム染色。

口腔内の常在菌に混じり、非発酵菌と思われる菌の増多を認めます。

グラム染色の結果に加え、抗菌薬の選択肢として、CFPM、CAZ+CLDM、IPM/CS、CPFX+CLDMを上げそれぞれの効果や副作用、抗菌活性、スペクトル、該当病棟での検出率と感受性率を含めて説明しました。もうグラム染色は立派な武器です。

結局、CFPMで開始することになりました。不安ですが、効果を翌日の採痰で確認することにしました。

Vapcfpm400 ×1000

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2009年1月 5日 (月)

休みですが、いろいろな患者が来ます

正月返上で出勤しています。患者には盆も正月も関係ありません。

2歳の男の子です。右耳漏と発熱を主訴として来院です。右の中耳炎でしょうか?

血液培養も陽性になりました。ただし、血液培養はすでに対数増殖期を過ぎているのか?崩壊している像も見えます。間には肺炎球菌?と思えるグラム陽性球菌が・・・。小児ですので、肺炎球菌がまず念頭に来るでしょう。

耳漏も来ていたので併せて見ました。同一菌でしょうか?形状が似ています。でも発育するかは分離してみないとわかりません。グラム染色をしっかり観察することは、培養結果のフォローにも繋がりますし、迅速に結果報告が出来ます。培養の一日がもどかしいと思うことも良くあります・・・。落ち着いて考えればそうではないのでしょうがね。

400 ×400(耳漏)

6002 ×1000(血液)

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2009年1月 3日 (土)

細菌性膣炎(症)

グラム染色をしていると、BVスコアというものが出てきます。これはNeugentスコアと言って、妊婦における膣の細菌感染の状態を示すものとして用いられています。http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/bv_4ae4.html

でも、こういった場合はどうでしょう?

妊婦でない活動期の女性で帯下が増えたという主訴で来られた場合、淋菌などを探すでしょうか?淋菌の場合は、女性に無症候性キャリアのまま検出されることも想定出来ます。

下記のグラム染色ではどうでしょうか?

やはり一番多いものをターゲットに探すべきで、大腸菌を探す必要があります。そもそも、膣内にはデーデルライン桿菌が多く常在しているので、大腸菌は増殖しないはずです。スメアを見て、デーデルライン桿菌が少ない時は、何らか感染が起きていると考えることが大切で、ガードネレラを初めとして、常在菌叢の崩れがあることをコメントに加えるのもひとつの情報です。ただし、手術歴があればまた見方が変わりますが。

珍しく今回は貪食像も見られましたので掲載します。パッと見で大腸菌(または腸内細菌群)と判れば上級者です。

Photo ×1000

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2009年1月 1日 (木)

明けましておめでとうございます

ブログ愛好家の皆様、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。何はともあれ、また年越しを迎えることが出来ました。これも、皆さまの支援のお陰と思います。ありがとうございます。

昨年は、あちこちで宣伝して頂いたお陰で検索数がアップしました。記事数はなんと、350件を超え、コメント数は1000件を超えました。訪問者も1日1000人を超えることもちらほら・・・。まさか、こんな状況になるとは思いもしませんでした。本当に感謝です。

さて、皆さん正月休暇を楽しんでいますか?それとも出勤ですか?病院に勤めていると盆休みもありませんし、正月休みはあってないようなものだと思います。微生物検査もその一つです。今年は出勤はもう既に2日もありました。緊急呼出しはありませんが、昨日は調度出勤日に結核疑いの患者が来院されていまして、治療方針や部屋の準備もあります(一般か陰圧かなど)し、急いで・・と言われ緊急で実施。一時陰圧個室での対応となりましたが、結果陰性で、市中肺炎の治療で一般病棟で対応となりました。

正月休みですが、重症の患者は何人も来院されます。正月休みの前には、IE疑いの患者が居るので・・と主治医から報告を受け、ICTでフォローアップもしています。(今年はIEは、菌が検出出来ただけでも7例にも及び過去最高でした。)

患者は血液疾患で入院中。化学療法実施目的で治療していました。微熱が続き、元々心臓に疾患があったために、エコーをしました。Vegitationが見つかり、血液培養実施。2セットとも陽性になりました。スメア掲載します。主治医には、同定に時間かかるかもしれませんね・・・と一言報告しました。同定に時間かかりますよね?そう思いませんか?NVS(Neutritions Varidant Streptococci)だと思ったスメアです。案の定、血液寒天には発育が非常に悪かったです。

Ieabiotrophia ×1000

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