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2008年12月 8日 (月)

KPC型β-ラクタマーゼの検出

カルバペネム耐性菌のうち、日本で問題となっているのはIMP型やVIM型といったメタロβ-ラクタマーゼです。世界的には、最近KPC株というAmbler分類でClassAに属するカルバペネムを分解するのβ-ラクタマーゼが新たな問題点として取り上げられています。本邦での報告は今のところありません。

今回、院内感染対策の協力で渡航し、KPCの検出について検討してみました。

JCMを中心に参考文献でボロン酸を用いた酵素阻害が検討されているようです。従来、AmpCの酵素阻害として、セフォキシチンやセフェピムなどと合わせて検査すると検出出来る試薬になりり、KPCにも反応する傾向があるようです。でもメタロやESBLには反応しませんので、MEPM(本当はertapenemが良い)によるホッジテストなどを組み合わせると、表現型での鑑別が可能だそうです。

早速、行ってみて試しましたが、見事陽性でした。肺炎桿菌に多く認められる耐性菌ですが、カルバペネム耐性になる条件として、メタロやCYMなどもあり、KPCとの鑑別は大切です。日本もいつ検出されるのでしょうか?備えは必要です。ETPとはエルタペネムです。

Dsc01200 ホッジテスト

Dsc01203 ボロン酸阻害試験

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コメント

ご無沙汰しております.質問があります!
■質問1
ホッジテスト陽性,というのは,単に「イミペネムに耐性ですよ」ということを言っているだけなのでしょうか?それとも「イミペネムを分解する何かを出しますよ」ということなのでしょうか?だとすれば,それはメタロベータラクタマーゼでもKPCでもいいのでしょうか?
■質問2
ボロン酸で阻害されて,かつイミペネムに耐性,ということであれば,それだけで(ホッジテストがなくても)KPCだと言えるのでしょうか?
つまり,ボロン酸で阻害される,ということは普通AmpCを持っているということを意味して,それなのにイミペネムに耐性,ということは「何かおかしい=KPCだ」ということでしょうか?
■質問3
多くのKPCは,ESBLやAmpCを同時に持っているそうですが,そのような場合は,どうやって個々を見分けていけばよいのでしょうか?

投稿: ID conference管理人 | 2008年12月 9日 (火) 20時41分

ID Conference管理人さま
鋭いご指摘ありがとうございます。知らない方にも、追加情報ですが、ホッジテスト⇒正式名:3dimensions extract methodは中心にセフォキシチンを置くとのAmpCを見れますが、IPMにするとカルバペネマーゼを見れます。メタロも陽性になるので、2-MPAやEDTAでメタロの否定をしないといけません。メタロ陰性でカルバペネム耐性の場合、次はボロン酸での阻害を見ますが、それが陽性なら、恐らくKPCの可能性が高いとなります。おっしゃる通り、ボロン酸はAmpCでも陽性を示しますが、ホッジテストやメタロのスクリーニングで否定されるので除外されます。ボロン酸は、セフォキシチンやセフェピムなどと比較すると思いますAmpCを効率良く引っ掛けます。ESBLもダブルディスクシナジー法も多様化して除外が必要になります。最終的にはPCRが必要になります。
KPCは複合もあるようで、中国では、カルバペネム耐性でPCRでKPC陰性と言う株はゴロゴロしてました。多分メタロやCYMなんかが邪魔しているんだと思います。スキルは教えたので、あとは現地次第です。

投稿: 師範手前 | 2008年12月10日 (水) 00時38分

追加です。ボロンはカルバペネムでも種類により感度特異度が変わります。今のところエルタペネムが一番良いようです

投稿: 師範手前 | 2008年12月10日 (水) 01時03分

早速のお返事ありがとうございました.
そうすると,
(1)IPMを用いたホッジテスト陽性で,ボロン酸で阻害されればKPC
(2)IPMを用いたホッジテスト陽性で,2-MPAまたはEDTAで阻害されればメタロ
ということですね.
そうすると,KPC+AmpCやKPC+ESBL,あるいはメタロ+ESBLとかの複合ケースだと,「KPCを持ってるんだな」というのは分かりますが,AmpCやESBLは見のがされませんか?
例えば,メタロ+ESBLとかだと,EDTAをおいて,さらにクラブラン酸をおいて,とかやるんでしょうか?

投稿: ID conference管理人 | 2008年12月10日 (水) 05時51分

ID conference管理人さま

(1)IPMを用いたホッジテスト陽性で
    ①ボロン酸で阻害されればKPC
    ②2-MPAまたはEDTAで阻害されればメタロ

ということで問題ないと思います。ボロン酸の阻害で、メタロは掛かりませんので、鑑別は可能かと思います。

③KPC+AmpCの場合は、セフォキシチンでのホッジテストをすると分かるとは思います。発育具合にもよりますが。

④KPC+ESBLの場合は、DDSTをすることで分かるかもしれません。

どちらにしても、複合の場合は、単一酵素産生より感度は落ちると思いますよ。

もしかしたら、CVAのディスクにEDTAを添加すれば見れるかもしれません。

KPCに関してのスクリーニングはESBLやメタロに比べ確立されていないもので、来年の今日、どうなっているか分からないようです。

また、KPCは自動機器の差(MicroScanは良いが、PhenixやVITEKは感度が悪い)、Etestも感度が悪いようですよ。

参考:
・JCM,2007,2723-
・JAC,2008,9/4,Athanassios Tsakris1の報告
・JCM. 2008 46: 4083-4086(昔感染研に居た土井先生の文献)


投稿: 師範手前 | 2008年12月10日 (水) 18時48分

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