膿胸① 胸水
年に数回見かけるのが、このような胸水です。そう膿胸になります。
抗菌薬を何が適切なのか?というのがこれを見て思います。典型的なpolymicrobial patternです。
膿胸の文献を読み漁ると、β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンの使用が多く書かれています。一方、サンフォードガイドはCTRXです。違いは?というと肺炎桿菌の存在です。少し処方例が違う文献などが多いです。確かに、肺炎桿菌の膿胸は多く経験します。糖尿病が基礎疾患、アルコール多飲者の場合など背景因子に左右されるところもあり、しっかりとしや情報共有がポイントになります。検体の臭いも情報の一つですよね。MicromonasやFingordiaは臭いですからね。
すべての菌に対して、コメントは不要で、当院では『当院は多菌種の検出と貪食あり』と横文字で判らない方用のコメント返しています。
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コメント
ご無沙汰しております.最近すこし忙しくようやくのぞくことができました.
膿胸も,誤嚥性肺炎もSBT/ABPCもしくはCTRXと推奨されていることが多いですね.
CTRXの方が,嫌気性菌のカバーが弱いと思うのですが,Bacteroides fragilisならともかく,呼吸器で問題になる嫌気性菌であるPeptostreptococcus, Prevotella, Fusobacteriumなどなら,SBT/ABPCでも,CTRXでも十分にカバーできている,ということなのでしょうか.
せいぜい1.5g×4回しか使えないSBT/ABPCよりも,2gX1や2gX2使えるCTRXの方がよい,という考えもできるかもしれません.
肺炎桿菌のカバーは似たようなものなのでしょうか?
投稿: ID conference管理人 | 2008年11月11日 (火) 23時04分
ID conference管理人さま
遅くなりましたが、お帰りなさいませ。久しくお会いしてませんが、お元気そうですね。
CTRXは確かに嫌気性菌の効果が弱いように感じます。その場合はCLDMを追加するでしょうが、実際必要なのか?と思っています。CTRXを膿胸に投与するのは肺炎桿菌による膿胸が多いからでしょうか?ね。上記のスメアのように肺炎桿菌が否定出来そうであれば、ABPC/SBTの投与を開始出来るかと思います。当院でもスメア見ながら抗菌薬の初期投与を検討して貰いますが、肺炎桿菌が認めればCTRX、無ければABPC/SBT。ABPC/SBTで初期投与が不安な方には、CTRX+CLDMを選択して貰っています。皆さん膿胸の管理は結構苦手な方が多いので、フォローを定期的に入れています。おそらく統計処理していませんが、有意差は無いと思いますよ。
せいぜい1.5g×4回しか使えないSBT/ABPCよりも,2gX1や2gX2使えるCTRXの方がよい,という考えもできるかもしれません。これも同意します。中々膿瘍に関してはサジ加減が難しく思いますが、先生はどう思いますか?
投稿: 師範手前 | 2008年11月12日 (水) 01時08分
肺炎桿菌は,アンピシリンには自然耐性ですが,スルバクタム・アンピシリンでも,耐性(傾向)なんですか?データがあったら教えてください.
膿瘍については,あまり意識していません.ユナシン・ダラシンとかチエナム・ダラシンとか使っている人に「嫌気のカバーが,かぶってますよ」と言ったら,「ダラシンは膿瘍移行がいいので」と言われたことがあります.
どっちみち,膿瘍に効かせるのはどんな抗菌薬でも難しいので,私は個人的にいままではユナシンを使ったことが多いですね:ただし,1.5gを8時間毎とかですが.幸い,今まではそれで何とかなってます.ほんとは3gを6時間毎って思ってるんですが.
投稿: ID conference管理人 | 2008年11月12日 (水) 13時46分
ID conference管理人さま 師範手前さま
>肺炎桿菌は,アンピシリンには自然耐性ですが,スルバクタム・アンピシリンでも,耐性(傾向)なんですか?データがあったら教えてください.
当院入院・外来患者での肺炎桿菌感受性率(20060401~)です.
入院(230分離数)SBT/ABPC=91% CTRX=86%
外来(299分離数)SBT/ABPC=97 % CTRX=94%でした.
ご参考まで
投稿: 倉敷太郎 | 2008年11月12日 (水) 15時27分
倉敷太郎さま、ありがとうございます。
少し補足させて貰いますが、肺炎桿菌の感受性でCTRXはESBLの値が入ってるので対象にしない方が良いかもしれません。かなりローカルファクターに左右されるので。いつも思いますが、βラクタマーゼ阻害剤って実際ビトロでどうなんですかね?
投稿: 師範手前 | 2008年11月12日 (水) 21時34分