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2008年9月24日 (水)

髄膜炎で

救急に髄膜炎の患者が来ました。項部硬直も強く、発熱、吐き気もあります。

患者のサマリーも良く分からないくらい、主治医は急いでいるのか

年齢は?性別は?当院へはどのように運ばれてきましたか?など、落ち着いて話して下さいと接しました。

聞くと、67歳の男性で、不明熱で他院に一時入院していたようです。そのためABPC/SBTを3g1回処方されていました。頭部CTでも異常所見は無かった状況です。

抗菌薬で前投与されているため、培養で菌が分離出来ないことが多いです。ラテックスをして、尿中抗原もして菌の検索に努めましたが、裏切るようにすべて陰性で。

グラム染色をしました。『予想通り菌は見えませんが、好中球が多数確認出来、細菌性髄膜炎が強く予測されます。』とコメント返しました。

年齢から予測して、MEPM 2g8時間毎で様子を見ることにしました。経過は良好でそのまま治癒されましたが、PCRで起炎菌の検索しましたが、なんとGBSでした。尿の出が悪くなっていたかな?と、後で申されていました。意外や意外でした。

ところで、この方の最初の髄液糖は65mgでした。正常値ですよね?ちゃんと血糖値も見ないと間違えますよ。血糖は180mgで、その比は0.36で髄膜炎を疑う所見です。必ず血糖値見ましょうね。

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コメント

初めまして。
とても基本的なことなのですが、髄液標本作製の手技はどのようにしてますでしょうか?
遠心条件、塗沫方法等を教えて下さい。

投稿: こたん | 2008年9月25日 (木) 02時01分

こたん様

3000rpmで10-15分になります。冷却遠心をすると菌が死滅しますので、常温でになります。温度コントロール出来ない遠心機の場合は、庫内が40℃近くなりますので、回収率も下がりますのでご注意を。

塗抹は沈渣を塗ります。この場合、デカンテーション(上清は捨てる操作)しますが、上清はラテックスや尿中抗原による肺炎球菌の抗原検査に用いることが出来るので捨てないようにすることがポイントです。髄液は不要なものはありません。
細菌検査用と特に分けていない場合もあると思いますが、一般検査(細胞数とか)と細菌検査は検査手順が若干異なりますので、別に採取してもらうことや最初に出てきた髄液は皮膚常在菌の汚染も多く、2番目のものを用いるのが良いかと思います。
以上、当院で行っていることについて記載しました。回答になっているでしょうか?

投稿: 師範手前 | 2008年9月25日 (木) 08時32分

師範手前 様

ご回答ありがとうございます。
とても参考になりました。

私の施設では個々人で認識に相違があり、「髄液検査法 2002」の中にもグラム染色を念頭においた検体処理法の記載がないこともあり、一体なにが標準的なのか悩んでおりました。

皮膚常在菌の汚染も重要なのですね。全く考えておりませんでした。検体採取順も考慮した運用を考えてみたいと思います。

投稿: こたん | 2008年9月26日 (金) 06時50分

こたんさま ありがとうございます。『髄液検査法2002』は一般検査のことしか書いていないですよね。細菌も一緒に来るので、違うように処理するようにマニュアル化しないといけませんよね。

余談ですが、アフリカ人と話していましたが、髄液の輸送培地なるものが向こうにはあるようです。全ての施設で培養出来るものではないので、集約して培養はするようです。グラム染色やラテックスは皆さんされているようですが。地域変われば変わるもんですね。

投稿: 師範手前 | 2008年9月26日 (金) 20時59分

はじめまして、いつも勉強させてもらってます。
髄液の墨汁染色の方法でお聞きしたいんですが、髄液の沈査物と墨汁を1白金耳ずつ混ぜてカバーガラスをかけて鏡検する。というのが基本と思っていたのですが、ある文献(何の文献だったのか思い出せないのですが)で「沈査物と墨汁を混和させた物を血液像の様に引いて作成する。」と書かれてあったのですが、どちらがより良いのでしょうか?
ご指導お願いします。

投稿: こたろう | 2008年10月 5日 (日) 23時47分

こたろう様
墨汁染色ですが、墨汁は日本特有の方法で、米国はINDIA ink法になります。基本的には見え方は同じですが

①臨床検査法提要(第32版:2005)
スピロヘータや莢膜細菌や真菌の検出に用いる方法で、スライドガラスの上で検体と墨汁を混ぜ、血液薄層塗抹を作る要領でストリッヒを引き乾燥後に確認する。
②臨床微生物検査ハンドブック
検体と墨汁を混ぜてカバーガラスを被せ確認する。

と2つの方法があります。提要の方法は実際したことが無いのでわかりません。いつもカバーガラスを被せていますが、必ずしもカバーガラスがある訳ではないのでそういった書き方なのかもしれません。

遠心集菌すればそれほど感度が変わらないと思いますが、問題は遠心の方法でしょう。Manual of clinical microbiologyでは 

細菌検査を目的とする場合には, 検体量は少なくても0.5 ml以上必要で(量は多い方がよい)。1.0 ml以上ある場合には最小限1,500×g 15分間遠心して濃縮する。遠心沈渣0.5 mlを残し, 完全に混和して染色, 培養を実施する。上澄みは他の化学的検査に用いる。

との記載があります。髄膜炎の場合は通常見えるようですが。莢膜が消失している(莢膜が薄い)ものも見つかる場合もあるので少し注意して見られたらと思います。

投稿: 師範手前 | 2008年10月 6日 (月) 21時02分

師範手前様ありがとうございました。
気になっていた事だったので、すっきりしました。遠心に気をつけなければいけないんですね。
遠心時間が短いとやはり、菌が落ちない可能性があると云う事なんですね。
ご指導ありがとうございました。

投稿: こたろう | 2008年10月 7日 (火) 00時44分

師範手前 様
いつも、勉強させていただいています。

先日、日齢1の新生児の皮膚、血液、咽頭、臍、髄液からGBSを認めました。日齢1の髄液細胞数は68/3、血液のWBC 22900, CRP 8.5。日齢3の髄液細胞数は26/3. 血液のWBC 23200, CRP 5.0でした。

日齢1の髄液からGBSを認めた原因は、髄液穿刺時の皮膚のGBSのコンタミを疑っていますが、起因菌かコンタミか、髄液のグラム染色で鑑別可能でしょうか?
御指導お願いいたします。

投稿: ペガサス | 2010年2月 9日 (火) 11時34分

ペガサス様

基本的にコンタミがどうかの判断をグラム染色で・・・という願いは果たせそうにありません。
臓器由来の菌でレアのがあればそうかもしれないという説が成り立つかも知れませんが、臨床症状が特に変化ないので臨床的にコンタミという判断にしかなりません。血液培養も同じです。髄液の場合は白血球の多さなど参考にもしますが、新生児なので臨床症状のレスポンスが低い場合もあり、安易にコンタミが完全に除外出来ないのであれば抗菌薬投与は検討が必要とは思いますよ。

問題はGBSキャリアから出生したかどうか、認められたGBSの血清型は何か?(特にⅠbやⅢ型は注意)、ペニシリン低感受性なのか?(CTXのMICが上がっていないか?)などです。

投稿: 師範手前 | 2010年2月11日 (木) 07時22分

師範手前様
ありがとうございました。
母親はGBSキャリアではありませんでした(偽陰性はありえますが)。児はABPC+GMで治療開始し、GBSが判明後は、ABPC単剤で経過良好です。抗菌薬のMICはABPC 0.12, CTX <0.06でした。今後、血清型の検索を進める予定です。
 1回目の髄液検査の細胞数が正常であるのは、早期に髄液検査をすればあり得ると思いますが、2回目の髄液検査の細胞数も正常(グラム染色陰性、培養陰性)であるのは、どう解釈すればよろしいのでしょうか?

投稿: ペガサス | 2010年2月11日 (木) 11時17分

臨床的に炎症反応も減弱している、特に症状の悪化が認められない場合、GBSはコロナイズと考えることもあるでしょう。ただ、新生児の場合は臨床背景が掴み難いことも多く、可能性があるのであれば治療継続ということも多いです。
抗菌薬が入ると菌の検出率は下がることが知られています。どうしても心配の場合はラテックス試験や外にPCRを依頼して菌陰性の確認を取ります。ラテックスが出来ればしておくほうが良いと思いますが。

投稿: 師範手前 | 2010年2月11日 (木) 15時05分

師範手前 様

ご回答ありがとうございます。
とても参考になりました。
血清型の結果が出ましたら後日、御報告いたします。ご指導ありがとうございました。

投稿: ペガサス | 2010年2月12日 (金) 15時59分

師範手前様

先日の新生児髄膜炎・菌血症のGBSの血清型は髄液・血液はいずれもⅢ型でした。

一般的にGBSの血清型は
新生児の髄膜炎・菌血症 :Ⅲ>Ⅰa, Ⅰb>Ⅱ
(早発型・遅発型ともにⅢ型が最多)
妊婦の膣:Ⅵ>Ⅷ
の順に多いようです。(感染症誌 2008; 82(6):633-6)

御指導ありがとうございました。

投稿: ペガサス | 2010年2月28日 (日) 17時00分

ペガサス様
そうでしたか。
実は10年前に調べた時はNT6やJM9が良く出ました(J. Antimicrob. Chemother., Oct 2001; 48: 579 - 582.The Journal of Infectious Diseases 2002;186:855–8)が、今は欧米化でしょうか?またⅢ型の侵襲性が多いです。(International Journal of Infectious Diseases (2009) 13, 679—684)

投稿: 師範手前 | 2010年3月 1日 (月) 20時31分

はじめまして。とても説明がわかりやく、助かります。
質問させていただきます。
血培2セット施行した後で、3本からGBSが検出されました。コンタミの可能性はどのくらいあるのでしょうか?GBSはどのくらいコンタミで検出しやすい菌なのでしょうか?
ご教授お願い致します。

投稿: はる | 2013年2月25日 (月) 22時05分

はる様

GBSの場合はGASと違い採取条件によってコンタミネーションの可能性があるという事が知られています。通常皮膚には常在しませんが、採取部位が鼠けい部付近であれば糞尿が混入しコンタミネーションとなることがあるようです。消毒不十分というのが理由のようです。また新生児の場合は臍帯血でも消毒不十分によりコンタミネーションと扱われる場合があります。
GBS感染症は菌血症の他に尿路感染症、皮膚軟部組織疾患、骨感染症、髄膜炎などを起こす事が知られています。臨床所見と合わない場合はコンタミネーションの可能性が残りますが、今回は3セットです。採取部位を確認し鼠けい部や足以外であれば原因菌の可能性が残ります。
Cilinical infectious disease,1997,24,587- にも同じようなことが書かれコンタミネーションは20%ほどあったと報告があります。

答えになったでしょうか。

投稿: 師範手前 | 2013年2月27日 (水) 07時13分

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