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2008年9月30日 (火)

呉越同舟の解説

先日、質問形式にさせて頂いていました「呉越同舟?」の分ですが・・・http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_b097.html

皆さん分別に苦慮されたでしょうか?こういった鑑別には、いつも見ているグラム染色像の眼合わせふがどれだけ出来ているか?まとめられているか?など、日ごろの苦労が成果として現れます。

解説として掲載します。

黒→はブドウ球菌(やや染色性が良く、一部集塊状になっている)

赤→は溶連菌(良く見りゃ菌の周囲が紅いのが分かる)

良く見て下さい。通常出ない部位からの鑑別もいつか出来るようになると思います。

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2008年9月29日 (月)

夜中の呼び出し

最近、ココログブログの編集があったんでしょうか?画像が少し小さくなってしまいました。少し大きく見たい方は、写真を一度ダウンロードして、パワーポイントやエクセルなどに貼り付けて拡大して見て下さい。少し見やすくなります。

先日、夜中に呼び出しされました。

2歳の男児です。発熱、嘔吐があり、一応・・・と髄液を採取したら白濁しているくらいです。当直者より『一応染色して見ます』という報告を貰いましたが、『直ぐ出向くので、そのままにして下さい。主治医には少し時間下さい』と言いました。15分で到着し、グラム染色をしましたが、このような像です。主治医には菌名を言い、抗菌薬の選択をして貰いました。

最も大切なことは、抗菌薬投与前に髄液を採取することです。ちなみに、抗菌薬投与後のグラム染色の感度は20%未満です。

あとで、細菌室以外の方にこのスメアを持ってアンケートしましたが、はっきりと菌名まで言える方が居なく、また染色像もまともに言えない状況でした。やはり、本当に緊急の場合は、慣れている人の力が必要なのだと考えさせられた日でした。

どうみます?グラム陽性?陰性? 球菌?桿菌?

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2008年9月26日 (金)

これは保菌と判定しました

抗菌薬の適正使用をする場合は、グラム染色はかなりのポテンシャルを占めていますよね。

先日、こんなケースがありました。

脳外科の手術後に痰が気になったので採取して出したそうです。(後で聞きましたが)

喀痰のスメアの結果に、ブドウ球菌のコメントがありABKを投与したが、投与量が合っているのかどうかの確認をICTでして欲しいとのことです。TDMのお話をしながら、患者の状態を確認しようと、カルテ診ながら質問しました。

肺炎の症状は無く、レントゲン所見もキレイ。発熱もなく、ただ、痰の増量が気になり出したようです。横に居た看護師さんにも、痰の増量について聞きましたが、どうやら入院時から多かったようです。嚥下障害もあるため、誤嚥性肺炎の疑いの方が強いですね?コメントし、前日まで投与していた、CEZで良かったんじゃないか?と進めていきました。

結局、ABKをどうするのか主治医とディスカッションになり、グラム染色では菌は見えてますが、貪食などもなく、上皮に付着しているものも多く見え、保菌と判断出来ます。と。コメントを追加して、ABKは中止してもらいました。CEZを再開してもらい、O2の状態が悪くなればABKを投与しましょうと最終的に決めました。ただ、絶食で少し様子を見てくださいね。と付記しました。

次の日も結局、何の変化もなく適正に使用出来たケースであったと思われます。

ポイントは

①グラム染色の結果を深く読めたこと

②主治医の情報に合わせて、看護師さんの情報が役に立ったこと

③嚥下障害に対しては絶食で様子を見たこと

などです。アルブミンのチェックもなく、翌日ラウンド予定のNSTへと情報を引き継ぎ介入を開始して貰いました。ICT⇔NSTのネゴシエーションは大切ですね。

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2008年9月24日 (水)

髄膜炎で

救急に髄膜炎の患者が来ました。項部硬直も強く、発熱、吐き気もあります。

患者のサマリーも良く分からないくらい、主治医は急いでいるのか

年齢は?性別は?当院へはどのように運ばれてきましたか?など、落ち着いて話して下さいと接しました。

聞くと、67歳の男性で、不明熱で他院に一時入院していたようです。そのためABPC/SBTを3g1回処方されていました。頭部CTでも異常所見は無かった状況です。

抗菌薬で前投与されているため、培養で菌が分離出来ないことが多いです。ラテックスをして、尿中抗原もして菌の検索に努めましたが、裏切るようにすべて陰性で。

グラム染色をしました。『予想通り菌は見えませんが、好中球が多数確認出来、細菌性髄膜炎が強く予測されます。』とコメント返しました。

年齢から予測して、MEPM 2g8時間毎で様子を見ることにしました。経過は良好でそのまま治癒されましたが、PCRで起炎菌の検索しましたが、なんとGBSでした。尿の出が悪くなっていたかな?と、後で申されていました。意外や意外でした。

ところで、この方の最初の髄液糖は65mgでした。正常値ですよね?ちゃんと血糖値も見ないと間違えますよ。血糖は180mgで、その比は0.36で髄膜炎を疑う所見です。必ず血糖値見ましょうね。

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2008年9月22日 (月)

肝膿瘍です

大きな肝膿瘍の検体が採取されたので、グラム染色で何か情報をくれないか?と言われました。

肝膿瘍と言えば、起炎菌はある程度絞れます。検体は臭みもなく、アイボリー調の膿瘍でした。

ミレリ菌が出てくるかな?と思いましたが、出てきたのはグラム陰性桿菌です。腸内細菌と返しましたが、嫌気性菌ではないと何か確信をもった自分の意見もありました。炎症性も強く、一部崩れた白血球も見え”膿瘍”って感じです。

翌日発育してきたのが、ムコイド調のグラム陰性桿菌=肺炎桿菌です。

はっきりと分かる場合なら良いですが、白血球が多いのに菌は本当に目を凝らさないと駄目なくらい見えませんで・・・。しかも菌の予測も必要で。グラム染色は難しいと思った瞬間でもありました。

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2008年9月21日 (日)

MRSAの肺炎 その2日後

主治医から情報を貰いました。

翌日から肺の状態が悪化して来ました。レントゲン像も変化なく、むしろ悪化している状況のようです。グラム染色を使用して一度評価しましょうと言って採痰してもらいました。

~スメアを見てのコメント内容~

初日の喀痰スメアより明らかに菌の減少が認められていますが、炎症の状況は改善されていません。抗菌薬は効果があると判断出来ますので、あとは炎症反応を抑えるように治療を継続することが必要なのでしょう。

MRSA肺炎にまさか、LZDが効果無いと疑問に思ってしまいますが、スメアはその疑問にお応え出来ます。菌が見えなくても今の患者さんの状態をはっきりと映し出します。

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2008年9月19日 (金)

明日は石川県にお邪魔します

20日は石川県にお邪魔します。グラム染色には殆ど関係ない領域で、真菌症の検査についてです。一部、グラム染色もお見せしようと思いますが、真菌で検出された菌についての情報を検査室でまとめる場合は良く困惑します。

少しでも疑問に解決出来るような内容になっていますが、皆さんのご希望にお応えできるが心配です。

宜しくお願いします。

この写真ですが、どう解釈していますか?

87歳女性。大腿骨頭骨折で骨頭部の置換術で入院。バルン留置中。感受性必要ですか?

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2008年9月18日 (木)

MRSAの肺炎

MRSAですが、今は病院のみならず、市中でも保菌されている方が多く、入院時にすでにキャリアと判定される方が散見されます。もはや、病院でうつる病原菌ではなく、市中に蔓延している菌と判断出来ます。

先日読んでいた文献(LANCET  INFECTIOUS DISEASE)には、医療従事者が保菌している方が多く、MRSA感染症になる場合があると書かれていました。実際、ムピロシンの除菌も試みますが、一部除菌に失敗する例もあるようです。

先日、職業が医師という方が肺炎で入院されてきました。スメアを見て、ディスカッションしましたが、予想通りのエアーブロンコグラムが確認されてました。

白血球も多数あり、中にはグラム陽性球菌の貪食です。ぶどう球菌性の肺炎だと予測しましたが、O2の状態も悪く、医療従事者ということもあり、MRSAを想定し、LZDで開始しました。担当の病棟にも、MRSAに準じて予防策をお願いしますと言い、翌日MRSAスクリーニング培地が陽性になっていました。

MRSAかどうか判断するにも、

①スメアから

②翌日の培養中間報告から

③感受性結果判明から

の3通りあります。

市中感染不適切な治療を施された患者で最も死亡例が多いのはMRSA感染症(chestより)だそうです。

どこで気づき治療を開始するか、患者背景とグラム染色を活用して考えるのは必要と考えます。

ブドウ球菌に特徴のある、100倍では気管支肺炎の像、1000倍ではブドウ球菌の貪食が確認出来ました。貪食も少し時間が経っているのか、細胞壁が少し壊れているものが確認されています。

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2008年9月16日 (火)

染めのムラ

染色をする時に、ドキドキする操作は脱色でしょう。

脱色は長すぎても、短すぎてもムラが出来易いものです。また、標本の厚さ、材料の種類なども気にしないといけませんね。

写真は脱色しすぎと思われる尿の検体です。一見、いつもの溶連菌?と思われるものですが、菌の形状などから腸球菌が疑われます。こういう場合は、再度染色をしなおすことが必要です。

また、背景には尿酸結晶も見られるので、pHが低いため染色不良になった可能性もあります。

実際、染色不良による鏡検を防ぐには、同一のスライドに既知の菌を予め塗って用意しておくことをお勧めします。用意出来ない職場で働いている方は細菌検査室などに相談下さい。コントロール用のスライドも市販されていた(少し高価)と思います。

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2008年9月13日 (土)

大葉性肺炎の代表菌

肺炎の類型を考えてグラム染色を見ようとする場合は、以前に、背景の炎症像と起炎菌合致させることが重要ですと言いました。

これは大葉性肺炎の代表的起炎菌の一つですが、肺炎球菌とは少し違う像のような気がします。でも、インフルエンザ菌よりは炎症性が強い。肺炎桿菌はこんな像に見えるんだなあと思いました。

へえ~と思いますか?

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2008年9月12日 (金)

呉越同舟?

リウマチ患者の潰瘍部が悪化して、膿瘍化してきました。紅斑になり熱感を持っています。グラム染色しました。ぶどう球菌かな?と思い見ましたが、複数菌です。ぶどう球菌と溶連菌を鑑別出来ますか?

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2008年9月11日 (木)

帰りがけ

良くありますが、1日の業務終了間際に『今から検体出して良いですか?スメアも直ぐに教えてくれればありがたいのですが・・・』。皆さんもありませんか?

当院は夜間の小児科の患者さんが多いので、検体が良く出ます。結構誰か残っているので、至急対応していますが、管理加算を採るなら当直でもしないといけない局面ですね。

検体は尿ですが、こんなスメアです。いつも、提出医は予想していますが、菌名も推定して返したり、上部か下部の尿路感染か推定して返してやると喜ばれます。

皆さんはどういったコメントしていますか?

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2008年9月 9日 (火)

眼の感染症 その2

この前の記事の続きです。

こんなスメアが見えたと、同じ検査室の人から見て欲しいと言われました。

何でしょう?眼尻から出てきた膿瘍だそうです。

見えた菌を推定して、直ぐに提出医に言うと、提出医が思い描いていた感染症でした。涙管炎だそうです。サンフォードガイドにもちゃんとグラム染色で診断が確定すると書かれていました。カラーでちゃんとマークしていたのに思い出せませんでした。残念。

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2008年9月 8日 (月)

眼の感染症 その1

昨日、大阪で行われたイグナッソ研究会に行ってきました。グラム染色は大切だという演者のコメントがシミジミと心をうたれました。グラム染色は本当に、詳しくすると命を繋ぐ架け橋になるのだと皆さんも思ったに違いありません。

眼の感染症についても少し教えて貰いました。私も少し勉強しながら感じていたことが繋がった気になりました。

写真は、眼内膿瘍でしょうか?病歴見ていませんが。グラム陰性桿菌です。

腸内細菌にしては少し短く、丸い。大腸菌にしては少し違うような・・・と思い次の日に分かりました。セラチア菌です。単一で検出されているので、この菌はこんなに見えるんだと思いながら同定感受性を進めました。

弱拡大では白血球が沢山あり、新鮮な炎症像が多くありますとだけコメントはしましたが、やはり緑膿菌は外せない菌なので、緑膿菌と思えば緑膿菌とコメント付記していたでしょう。

眼の材料は皆さんどんなコメント返していますか?

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2008年9月 7日 (日)

今年もJICAアフリカ研修

今年も協力しています。

JICAフランス語圏アフリカ臨床検査技術研修です。今年は腸管感染症と髄膜炎・泌尿器生殖器の担当です。

キャンピロバクターを見たことが無いようで、皆さんグラム染色像を見て感動していました。

鶏肉を生で食べる習慣が無く、当然見たことないのでしょう。赤痢やコレラが多いようですが、国によって傾向が変わるようです。

今年は少しフランス語を覚えようと思います。写真は培地の接種方法について説明しているところです。

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2008年9月 5日 (金)

悩むところです

喀痰の材料評価が非常に悪い場合、皆さんはスルーします?頑張って菌を見つけようとします?

材料が悪いというのは、出てきた菌の信憑性が低いということです。でも、提出された場合には、真面目に起炎菌を検索しようとしますよね。

しっかりとした痰が出そうな場合は、リクエストしましょう。出てない場合は、ディスカッションしましょう?

私は材料が悪いとはっきりコメントしています。

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2008年9月 4日 (木)

頚部のリンパ節膿瘍、えっ!?カルバペネム?

耳鼻科から頚部リンパ節膿瘍がたまに出てきます。何故か当院は、結核性頚部リンパ節膿瘍が多いです。そういう話ではありませんが、頚部のリンパ節腫脹があり、高熱の患者が居るんですという相談があり、抗菌薬をとりあえずカルバペネムを入れたのですが、解熱がすっきりしない・・・。頚部リンパ節膿瘍にカルバペネム?別に良いけど・・・と思いましたが、問題はリンパ節膿瘍の検査をしていないこと。色々ディスカッションの末に菌検査をしてもらい、グラム染色をしました。像の説明をしてDe-escalation(ABPC/SBT)してもらいました。抗菌薬の適正使用ってこんなことなのだと思った局面です。

でも、何故カルバペネムを使用したのでしょうか?たぶん無関心層の検査医だったのでしょう。教育は大切ですね。

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2008年9月 2日 (火)

アーチファクト

掲載していませんでした。

アーチファクトです。グラム染色を始めて間もない頃に悩むことが多いでしょう。

クリスタル紫の結晶です。標本が分厚いところ、冬のように水温や室温が低い時に起こりやすいですよね。菌と違い大きいのが特徴ですが、真菌と鑑別もしないといけないところですね。これは未だ序の口でしょう。

アーチファクトは一部分に限局して出現するものですので、大きく違う部分で再度スメアを見直すのが大切です。急ぎますが、慎重に行きましょう。

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2008年9月 1日 (月)

古い肺炎像?

先日、ICTの先生と『肺炎の種類とステージ、誤嚥の判定がグラム染色で出来るんですよ、胸写との整合性をしたいので、胸写の見方を少し教えてくれますか?』と、相談しました。先生も『へえ~、そんなこと判るんですか?』と言いながら、グラム染色の話をしました。

食いつきがあったのは、古い炎症の話と肺炎の種類が分かること。何故かというと、抗菌薬を投与して紹介を受ける患者の糸ほどきをどうするのか?ということです。

そこで、話をしていましたが、『古い炎症と、材料が古いのはどう区別するんですか?』。なるほど・・・と思いました。調度古い喀痰だろう!?と思われるものがありましたので、説明しました。調度良いので掲載します。

どこが違うのか?というと、炎症像は強いのですが、多核好中球が殆どアポトーシスを起こしドロッと融解しているのが分かります。血管外に遊走してきた白血球は、数時間で細胞質が泡沫化し、いずれは融解してきます。冷蔵庫に入れていても、数時間放置していた場合はこのような像が見えます。肺炎球菌などの弱い菌も死んでしまいます。スメアが命であれば、とりあえずグラム染色を作って、培養検査に提出するのも一つの案でしょう。新鮮さが非常に大切なのは、食べ物だけではありませんね。

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