稀な感染症
先日、こんな症例の相談頂きました。
2日前に野良猫に噛まれた患者がショック状態に。
相談を受け、患者の状態を聞き、血液培養を実施したら、この菌が出ました。培養しても発育が非常に悪く・・・。
ふと、思ったのがそうです。Capnocytophaga canimorsus。
同定しらた、まさにそうでした。
猫に噛まれた場合は、80%は自然軽快しますが、約20%ほどは抗菌薬の内科的な投与が必要になるそうです。
また、1%程度で非常に重篤な感染症が起きるようで、中には死亡例もあるとIDSAのsoft-tissue,skin感染症のガイドラインに記載されていました。
その1%の中にC. canimorsusが多いと書かれています。狂犬病などとは違い、発症に少し時間がかかります。猫に関する疾患なので、猫ひっかき病もありますが、2週間くらいしてから微熱が起こってくるようですので、鑑別は容易ですよね。Bartonella hensellaは培養に1か月くらいかかります。通常の血液培養でも検出可能ですが、Bartonellaを疑う場合は検査室に、そう言ってください。通常の細菌を対象にしますので、5-7日で培養が終了します。
忘れていました。Pasteurella multocidaも多いですが、重症化はあまりありません。
抗菌薬はペニシリナーゼを産生するものが一部あります。マクロライドやCLDM耐性のものがありますので、β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンかセフェムになるようです。
どちらにしてもグラム染色で特徴あるので、鑑別は可能でしょう。
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コメント
久しぶりに書き込ませていただきます。つい先日、青木眞先生の講演を拝聴する機会がありました。一地方都市で拝聴できるなんて、この上ない幸せで、診療を終えて高速を飛ばして馳せ参じて拝聴しました。青木先生の本を持参してサインをいただきました。妻に、ミーハーだね、と笑われました。
以前、子猫にかまれたり引っかかれた方が、微熱が続くことで来院されて、猫引っかき病にしてはリンパ節腫脹も認めず、何かわからないまま(不勉強のまま)創部からの浸出液をグラム染色しました。そのとき、グラム陽性の桿菌に見える気がするものを認め、それが何かさっぱりわからないので、解らないまま、猫に引っかかれたりかまれたりした創部からの浸出液として培養に提出すると、パスツレラ菌とのことでした。
改めて標本を確認も、やはり同じように陽性に見える。これは染色のしすぎか関係ない何かをみているのか、解らないまま、それは別として、パスツレラ菌のことを勉強しました。
創部の浸出液をグラム染色するとき、表皮のブドウ球菌などの混入を減らすために、生食洗浄や膿をきれいにのけて、その上で浸出液をとったほうがいいのでしょうか?そのようなことはせず、傷を搾り出してスライドグラスに塗抹して乾燥・染色したらいいのでしょうか?ご教示いただけましたら幸に存じます。
投稿: 三省 | 2008年8月 4日 (月) 17時29分
三省さま
ミーハーですが、気持ちは良く分かります。私は上京したときは買い物しに、いつも銀座に寄るようにしています。行き着けのshopの近くには福家書店があり、著名人のサイン会をしています。遠巻きに除きますが、実はサインをして欲しいと思っています。みんな有名人には弱いんです。青木先生は、僕は直接面識ありませんので、一派ではありません。悪しからず。
ところで、皆さんパスツレラはグラム陰性桿菌になりますので注意下さい。腸内細菌以外のグラム陰性桿菌で、非発酵菌でもありません。マッコンキーというグラム陰性桿菌の選択培地に発育しない細菌なので、検査室では意外に直ぐ分かります。ちなみにオキシダーゼ陽性です。
さて、創部の浸出液についてですが、確かに表皮のぶどう球菌がコンタミで検出されるので判断は難しいと思います。
膿瘍やのう胞の場合は穿刺するのが前提ではないでしょうか?洗浄で常在菌の個数を減らすのは良い策です。消毒液でビタビタにした場合は、穿刺時に混入するので良くないと思います。
綿棒はもっての他です⇒検出感度が落ちる+雑菌混入しやすい。ビブリオ・バルニフィカスの時は水泡を注射器で穿刺して、スメア見ると良いと言われています。
なので、傷を搾り出して膿瘍が出るくらいであれば、注射器で吸い出した方が良くないですかね?
投稿: 師範手前 | 2008年8月 4日 (月) 19時40分