« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

2008年7月31日 (木)

明日から、日臨技の研修会

明日から、日臨技の感染制御部門研修会があります。

今年のテーマは 『結核』。

罹患率の高い、わが国では依然として、問題の多い感染症です。特に、大阪、兵庫と罹患率の高い地方が多い関西圏での意識は高いものになっています。本当に地域差がありますよね。

上記に関係ありませんが、血液培養では珍しい菌が検出されました。

高熱が続き、肺炎もないが、呼吸器症状はある患者です。経口抗菌薬で解熱がないということです。喉頭や咽頭の症状も聞きましたが、咽頭に膿瘍があるようです。切開し、グラム染色をし、抗菌薬を投与してもらおうとしましたが、気になるので血液培養を採取してもらいました。必要ないのかな?と思いならが、次の日、陽性。

珍しいので殿堂入り決定です。菌はStreoptococcus sanguisでした。

いやー珍しい。もちろんIEは否定していますので。没問題。

600_2 ×1000

| | コメント (0)

2008年7月29日 (火)

続き、誤嚥性肺炎を見抜く

VAPにしても、誤嚥性肺炎にしても、多分思うことは『玄人技!』では無いでしょうか?呼吸器感染で最低見つけたいものは、市中肺炎でしょう。 通常見えるのは、肺炎球菌かインフルエンザ菌です。どちらも特徴があるので、良く分かりますが、いざ、臨床とマッチアップしてみても多いのが、嚥下障害による肺炎、そう、誤嚥性肺炎ではないでしょうか?

先日、こんな症例がありました。

『呼吸苦でこられた患者で、汚い痰が出ました。胸写では右上肺野にベターとした肺炎像。胸写では、大葉性肺炎の疑いもありましたが、尿中抗原は陰性だったようです。塗抹で分かることが有れば見て欲しいのですが・・・』

追加で、92歳、入院歴は特にありませんが、他院に呼吸器疾患で通院しているようです。

こんな質問貰えば、腕の見せ処です。

出て来そうな像とイメージしましょう。最初のイメージは大切です。

 ①肺炎球菌⇒フィブリンが多く、莢膜有する陽性の双球菌

 ②インフルエンザ菌⇒陰性の小桿菌で散在しているもの

 ③誤嚥像⇒常在菌多く、一部扁平上皮も多い。polymcrobialパターンを観察。

イメージを頭に描き、下記のスメアを確認下さい。

さあ、どうでしょうか?

ちなみに、肺炎球菌性肺炎は誤嚥に合併することもあります。これは除外出来る?

100_2 ×100

600 ×1000

| | コメント (2)

2008年7月26日 (土)

良くある誤嚥肺炎

Cummitecの下気道感染のガイドラインに誤嚥を疑う所見について記載(

A.Robinson,et.al,American Society Microbiology,C-468,p209.

)があります。

扁平上皮≧10個(100倍)、好中球≧25個(100倍)、常在菌≧50個(1000倍)

の時に誤嚥を疑う場合の、グラム染色で当たる確率は79%だそうです。

いつも、主観的に見ているグラム染色の所見をこのように客観的な数値の置き換えて表現されると、うろこが取れる思いですよね。

誤嚥の塗抹は、こんな感じです。比較すると はは~ん と思いますよね。

気をつけることは、Nursing homeに長期滞在しているか?経管栄養しているのか?などでしょうね。やはり耐性菌をどの時点で疑うか?当院のICTでも目を光らせています。

100_4 ×100

400 ×400

| | コメント (4)

2008年7月24日 (木)

では、もう一席

人工呼吸器関連肺炎で問題になるのが、MRSAと緑膿菌ではないでしょうか?

突然の呼吸困難からARDSへ。起炎菌も判らず、抗菌薬の投与±ステロイドという具合になる患者は、忘れたころにやってきます。経過が一時良好に向かうかな?と思うころに呼吸状態が悪くなり、スメアを見ることが多いと思います。塗抹観ずして細菌検査は成り立たないと思います。

こんなスメアが見えた時は、どういう報告をします?意外に珍しいスメアになるので悩みますかね?

100 ×100

Photo_2 ×1000 その1

Photo_3 ×1000 その2

| | コメント (2)

2008年7月23日 (水)

またまた、カテ感染

カテーテル感染は、先日のブドウ球菌が多いことが知られていますが、忘れてはならないのがカンジダです。

またまた、不明熱の患者です。血液培養は、殆ど積極的に採取してくれるようになってきました。良いことです。

血液培養が陽性になり、見ていると、このような酵母様真菌が見えました。

さて、この瞬間何を考えるかですが、やはり菌種の同定が出来れば良いと思いますよね。直ぐに感受性と結びつくようになることが重要です。アゾール感受性菌かどうかの判定をここで出来るでしょうか?カテ感染ならCandida parapsilosisが多く検出される報告が多いですが(J Antimicrob Chemother. 2004 Feb; 53 (2): 283-)、それとの整合性をグラム染色で出来るでしょうか?

今回は、このスメアで皆さんガチンコ勝負しませんか?集団で相談すると白熱するかも・・・!?

ブドウ球菌とは少し対応が異なる(意外に同じと思っている若い先生は多い・・・)ので、ICTでは、今後の対応、合併症の予測、抗真菌薬の投与方法などについて、主治医にアセスメントする必要もあるでしょうね。

Cvc400 ×400

| | コメント (6)

2008年7月21日 (月)

カテーテル先端のスメア

血液培養を培養前に塗抹で見れるの?と思っている方はいらっしゃいますか?細菌検査は何でも出したら、塗抹⇒培養⇒同定・感受性という風には行きません。

血液などは非常に検出数が少なく、そのまま見ても見える場合は非常にシビアなレアケースになります。

カテーテルもそうですが、一部フィブリンなどが付着している場合など見える場合が多いです。

これは、ICTのラウンド中に看護師さんから問題定義のあった症例を介入したというケースです。『抗生剤を投与していますが、改善がなく主治医も少し心配している・・・』という報告です。医師からICTへ直接コンサルトある場合は良いですが、ない場合には、患者のケアに当たっている看護師さんからの情報は、非常に頼りになります。

カテ感染を疑い、血液培養採取とカテ抜去をしてもらい、カテ先端を少しの生食でフラッシュして、沈渣をそのままスメアにしましたところ、このような像が。抜いて良かったと思う瞬間です。次の日血液培養も陽性になりました。スメアから菌の同定出来れば、その日のうちに以後の対応を考えれます。今回はカテも抜去したため良かった行動ですが、血液培養のスメアを見て、絶対抜くかどうかの判断も出来るかもしれません。

菌の同定がスメアで出来るのは素晴らしいですが、このように患者さんの背景を知ることが重要になることが多いです。

さて、菌名判りますか?

Cv カテーテル先端 ×400

Photo 血液培養×400

| | コメント (9)

2008年7月18日 (金)

何種類見えますか?

前回の記事で、菌の分別はしっかりと出来ましたでしょうか?

じゃあ、こんなスライドはどうでしょうか?

在宅でバルン留置中の患者です。閉塞が起こりバルンの入れ替えに。発熱もあり、水腎になっているようです。入院して、治療することになりました。スメアを急ぐ場合は、これからどうアプローチしましょうか?どんな菌が見えますか?菌名言えますか?

600 ×1000

| | コメント (2)

2008年7月16日 (水)

色の濃い薄い

先日の新潟の講演会でもそうですが、腸内細菌とブドウ糖非発酵菌との違いを、染色性と形で判定出来ると言っていますが、そろそろ皆さん出来てますか?

色は均一に染める必要があります。でも形は染色性に関係なく分かりますよね。

腸内細菌は縁が角ばっている、非発酵菌は縁が丸い。

この違いを少し整理して塗抹を見てきましよう。

では、この塗抹はどっちでしょうか?検査材料は敢えて伏せましょう。

400

| | コメント (8)

2008年7月14日 (月)

新潟で話した内容を少し

新潟の皆さんありがとうございました。非常に温かい&熱い方が沢山居て楽しい思いをさせてもらいました。これから?という時に時間切れを起こして申し訳なかったなと思いますが、前半の基礎データに関しては日本のデータが殆どありません。みんなで頑張ってデータを作りましょうね。

最近良く、スメアの背景について聞かれることが増えてきました。

確かに、グラム染色は菌を見つけることが必要ですが、炎症のステージを確認するために、背景の観察をすると役に立つことが多いです。それは病理検査とて同じことだと思います。

さて、新潟で話した内容で、『このスメアから感じること?』と最初に言いました。

菌が見えない訳で、条件反射的に菌を探す癖も付いているのですが、菌が見えなければ次は背景の観察になります。

患者は切迫早産をギリギリ耐えている、出産を控えた妊婦。先日発熱を来たし血液培養を採取すると肺炎桿菌が出てきた症例です。開産をし、抗菌薬もオフにしたとたんに発熱。開産の影響にしては早いとのことですが、産褥熱なので、抗菌薬を再度開始しました。肺炎桿菌のフォーカスに関しては、エコーなど出来る限りのことはしましたが、不明で、それ以上はなにも出来ません。

膣の菌検査をしましょうということになり、スメア見ましたが、菌は居ませんが、非常に強い炎症像。抗菌薬の必要性が良く判った症例です。

どうですか?菌が不明でも良く判りますよね。

Untitled_2 ×400

Untitled2_2 ×1000

| | コメント (0)

2008年7月10日 (木)

違いが分かる男の・・・

先日、人工物の全くない患者の血液培養が陽性になり、主治医と症例の検討をしていました。2セット採取して、1本から養成になり、再度採取しようかということになりました。再度採取すると、3セット中1本が陽性になり、このスメアでした。起炎菌の確率から考えて50%くらいでしょうか?(Clinical Infectious Diseases 2004; 39:333–41)という話になり、スメアで見たまま話しました。CNSが2菌種でしょうということになり、臨床症状と考慮して抗菌薬の投与はしないことになりました。結局、そのまま熱も下がり、やはりコンタミで良かったという症例です。CNSはやや大型なので分かりますよね。しかも2菌種見えますか?

Cns6001 ×1000

| | コメント (6)

2008年7月 8日 (火)

貪食の見分け方 その2

先日も掲載しましたかと思いますが、貪食かどうかの判定はどうするの?という疑問が多いと思います。先日の件が、顕微鏡の絞りを微妙に動かし、貪食かどうかの判定をする。先日少し分かりやすいものを見つけましたので掲載します。

長期入院にて、バルーン挿入者のスメアです。独歩出来ない患者などは、患者の要求もあり、どうしても挿入している場合があると思います。いろいろな菌で感染を起こすと思いますが、これはどうでしょう?

ブドウ球菌は貪食していますが、カンジダは貪食ありません。違いは、ピントを合わすと、ブドウ球菌は核と焦点が合うのに対して、カンジダは合いません。

カンジダの腎盂腎炎なんてあんまりない(2%位?)ので、そう考えて見ないと思いますが、見る前から全否定するのも問題です。グラム染色は、可能性の低い感染症例もピックアップ出来る能力もありますので、見てから考えましょう。貪食あれば恐らく腎盂腎炎の疑いでしょう。

600 6002

| | コメント (0)

2008年7月 6日 (日)

新潟初上陸です

私は色々と行きましたが、新潟は行ったことの無い地区になります。昔から『どこでも ドラえもん』のトキに魅せられていましたが、とうとう現実化することに。嬉しいです。新潟の皆様宜しくお願いします。といっても、赤倉高原はスキーに行くので、厳密には初めてではないのかも・・・?

どんな話になるのか、近日の新鮮なネタによります。期待に沿えるものになるのでしょうか?

新潟に関係ありませんが、

先日気管支鏡検査で採取されたBALです。すごい好中球に加え・・・菌?見えるでしょうか?私はコメント欄に『・・・・・・菌』と返しました。次の日、当たりが判明しました。やはり、拙者、只者ではないかも?

200_3 ×400

600_4 ×1000

| | コメント (1)

2008年7月 4日 (金)

明日は迅速診断研究会

明日は、第21回臨床微生物迅速診断研究会です。

テーマから分かりますが、迅速な診断検査がテーマになります。グラム染色は、古来からの迅速診断検査として使われていますが、今は、遺伝子検査、イムノクロマト法など簡単にしかもはっきりと分かる検査が、主流になりつつあります。

私も、参加しますが、グラム染色の良さはどんなものか?聞きに行こうと思います。

市中肺炎はグラム染色は、あたりますが、院内肺炎は外れることが多いです。しかも、術後肺炎や嚥下障害が悪いかたの肺炎などは、本当に無理難題に思える時があります。

これは、SAHの手術後経過中にあった肺炎です。まさに、誤嚥性肺炎像です。肺化膿症まではいきませんが、使う抗菌薬の選択が重要です。誤嚥=ABPC/SBTでも良いのでしょうか?

術後+入院期間が長いため、緑膿菌の評価もしないといけません。

グラム染色で、緑膿菌が分かれば最高です。(見える範囲しか評価できませんが)

吸引痰の塗抹では、好中球の集積と扁平上皮が多数。まさに院内の誤嚥性肺炎像の典型例でしょう。何菌見えますか?

こういった話は聞けるのでしょうか?期待したいものです。

Sah200 ×400

Sah400 ×1000

| | コメント (6)

2008年7月 2日 (水)

ご案内

12日にある研究会のご案内を頂きましたので、掲載します。当日は私も行きたかったんですが、生憎新潟県でグラム染色のレクチャーが…。
宜しければ参加下さい。熱帯病は侮れません。
このたび、IDATENでは外部との初の共同企画として、来週土曜日、7月12日に長崎大学熱研内科と合同で、
「熱帯病ケースカンファレンス」を行うことになりました。初の九州での開催や、他機関との合同開催となり、どのくらいの人数が集まるか想像も付きません。

日時は2008年7月12日土曜日。
長崎大学熱帯医学研究所の有吉教授とロンドン大学熱帯病院
University College London Hospital, Hospital for Tropical Disease の
Dr.Tom Doherty の特別公演に加え、症例報告を元にしたDiscussionを予定しております。
参加費は一般のIDATENと同じく1000円を予定しております。
場所は福岡ですので是非、九州、中国地方からの御参加をお待ちしております。

詳細はIDATEN websiteをご覧ください。
http://www.theidaten.jp/infobox/casec_nettai2008.htm

世話人
長崎大学熱帯学研究所 古本 朗嗣
亀田総合病院 総合診療・感染症科 大路 剛
旭中央病院 感染症内科 岩渕 千太郎
国立国際医療センター戸山病院 国際疾病センター/渡航者健康管理室 竹下望

| | コメント (0)

言い切れるか? その2

原因不明の肺炎で入院⇒ARDSになり⇒ICUにて人工呼吸管理下

なんて、症例はたまに見かけます。

原因の検索は、塗抹と培養、尿中抗原、抗体検査、炎症マーカーなどを駆使しますが、結果的によく分からないことが多いと思います。成人市中肺炎のガイドラインでも、約半数が不明になっています。

人工呼吸管理下で、救命中に肺炎の陰が変+O2低下になった場合に、塗抹検査は有用でないという報告がありますが、こういった場合は、たまに有用です。

使う抗菌薬は、LZD?VCM?ABK?すべて違う系統ですが、やはり多臓器不全にもなっている場合は、LZDでしょうか?でも、スメアをしなければ、なんとも言えないもので、適正な抗菌薬の使用?を考えると、スメアは妥当なのでしょうか?

どう見て、どう判断しましょうか?カルバペネムやキノロンは既に投与済みである場合も含めて考えましょう。

肺炎像はどう読みましょう。

Ardsmrsa100 ×100

Ardsmrsa600 ×1000

| | コメント (3)

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »