2008年6月30日 (月)
2008年6月29日 (日)
グラム染色カンファレンス in 兵庫
先日、予てから要望のありました、グラム染色の研究会 in 兵庫 の初開催がありました。色々と論議は出るかと思いますが、無事終了しました。
医師がグラム染色を読むのと、技師がCRXを読むのとは同じ難易度なのだということが分かり、次回からは少し基本的なレクチャーも含め解説していくようにしようということになりました。皆さん、飽きずに参加お願いします。
このスメアは当日見せました、難易度の高いグラム染色の像です。
肺炎球菌の血液培養所見ですが、急激な増殖時に、肺炎球菌は自己融解が進み、このように、スメアではっきり確認出来ないことがあります。そういう場合は当然、培養で分離を試みても出来ないことが多く、最終的に遺伝子検査に助けてもらうはめになります。
なぜ、肺炎球菌か?と思ったのか、確かに、患者背景もありきですが、スメアの背景には、崩壊したような蛋白の集積に加え、菌?と思える、グラム陰性の菌体。よく見ると、双球菌にも見える。自己融解中の肺炎球菌と見えるものです。この像を覚えていて損はしませんよ。
2008年6月27日 (金)
これは大きく間違えました?
グラム染色の報告時に、最近は菌名が分かればその菌名を入力して報告するようになりました。喀痰、尿、血液、膿などが主ですが。分かる範囲は少々外れても報告してみようという試みです。意外に当たるもので(菌名までは厳しい時は、属レベルまでですが)、集計したところ90%以上の感度を持っています。
これは、腎盂腎炎の患者です。60歳台の女性でしたが、方程式を考えましょう。
尿検体+連鎖(短い)+やや楕円+直列で曲がっていない=S/O 腸球菌
と自身を持っての報告です。
でも、次の日見たのは・・・、溶血がやや弱く、グラム陽性菌⇒S. agalactiae(GBS)でした。
スメア見て、セフェムをペニシリンに変えるように検討してもらい、変更していたため、結果的に良かった結果になりましたが、尿で連鎖球菌⇒ペニシリンの使用は、マニュアル通りで、グラム染色の奥深さを改めて知った一面でありました。
カルバペネムは使わない・・・当たり前でしょう。
2008年6月25日 (水)
意外に気がつかないこと
血液培養がいつも我々が予想していない感染症の真実を語ってくれます。当院では不明熱の時に採取するようにキャンペーンまでも行きませんが、採取してもらういように教育しています。所見が無いが発熱している・・・。こんな事例は千万とあるのでしょう。
このスメアは血液培養陽性者のものですが、血液培養は単一菌で陽性になることが多く判定しやすいことが多いです。前回の掲載の記事のものもそうですが、背景などの状況確認も不要で、菌の特定(特に菌体の形、大きさなど)に時間をかけることが出来ます。検査室で勤務していない方は、陽性の報告も貰ってからと、次の日の培養集落の確認をさせて貰えば覚えるのが早くなるかも知れません。視覚的に見て脳裏焼付けて下さい。
で、何が『意外に気づかないこと?』ですが・・・
このようなスメアを確認し場合に、何菌を疑いますか?
短い連鎖+菌が丸い+菌の周りにやや赤みかかったもの=S/O 溶連菌
こういった方程式が成り立つのではないでしょうか?
そう、報告時に『溶連菌が疑わしいのですが、何か裏付けになる情報はありませんか?』と聞きます。
夜間に緊急入院して、重症でない、専門外の診療科の疾患が原因であった、など気づかないことが多い場合が臨床には潜んでいます。
意外に忘れられがちなのが、皮膚病変でしょう。
このスメアが見えたときには、皮膚病変、心内膜炎、皮下膿瘍、水虫や擦過傷などを聞き込みましたが、そのときやっと、顔面紅潮と結びついたようです。顔の蜂窩織炎でしたが、皮膚科、耳鼻科に早期に相談+循環器内科にエコーとICTで相談を受けながら除外診断へと進みました。
溶連菌と分かれば感受性検査は急ぎません。そう、薬剤耐性化がそんなに問題にならない菌であるからです。⇒β-ラクタム±CLDMで修正です。
2008年6月23日 (月)
グラム陽性菌でもバルジ?
グラム染色をしていて、抗菌薬の使用後と思われるスメアの特徴に『バルジ化』という現象が見られます。これは、β-ラクタム薬が菌に作用して、菌の一部が膨張したように見える現象です。グラム陰性桿菌に良く見られます。PBPの作用が現象として確認出来ているものでしょう。
『グラム陽性菌でも見れないのか?』なんて思っていましたが、これはその『バルジ化』なのでしょうか?
患者は抗癌化学療法中の好中球減少患者で確認されたものですが、菌が歪な形になっています。菌は何?なんて、もう野暮な事は聞けませんよね。好中球減少時なので、CFPMの投与中でありました。
じゃあ、こんなんが見えたら後はどう考えますか?
①抗癌化学療法中で、粘膜障害など考えられる
②感染性心内膜炎
③虫歯
④その他
単に報告(鑑別)するだけでも構いませんが、以後のアクションをどうしようか迅速に考え追加検査を提出を促すこと+薬剤感受性の傾向を報告することが重要でしょう。
CFPM単独で良いでしょうか?この場合は感受性検査結果が出るまでGMが妥当でしょうかね・・・。
2008年6月20日 (金)
2008年6月18日 (水)
食べているかの確認
起炎菌の判定時に『貪食像』が必要な場合があります。では、貪食像はどのように判定するか、初心者の方には、非常に難易度の高い事項だと思います。
貪食と付着している菌をどのように判別するか?と迷うことが多いのですが、一番良いのは、顕微鏡のピントを微妙に調節して、核や細胞質と同じ位相に存在するかどうかの判定をすることが必要です。スメアでは白血球は2次元でしか確認出来ないように思いますが、実は立体的に確認出来るもので、丸っぽいので、核や細胞質と同じピントで確認出来るかと思います。一度確認してみてはどうでしょうか?また、貪食が進み、細胞質内の消化が進めば、青、赤のまだらに見えることもあります。これは大きなポイントかもしれません。
掲載の写真は、人工呼吸器挿管者の付着した菌です。でも、一部フィブリンなども出現していますので、何らかの炎症が起きていると判断出来ます。ただし、出た菌が起炎菌か?と言われると、貪食もないので違うかも知れません。あとは臨床とのディスカッションですが、肺炎像があると言われると当然治療対象になるのでしょう。分かる範囲ですが、MRSAや緑膿菌と思える像ですね。繊毛上皮もみえますね。
2008年6月16日 (月)
渡航のある腸炎
海外渡航をすると、腸炎になる機会も増えると思います。渡航後の腸炎と言われて思いつくものに、感染症法に関連する疾患には、赤痢やチフス、コレラ、赤痢アメーバーなどあると思います。アジア地域からの帰国者で多いのは、腸炎ビブリオ、毒素原性大腸菌、プレジオモナス菌が多いとの検疫所の統計もありますので、一度見て下さい。
で、治療が必要か?と言われると、元気であれば輸液などの調製が必要でしょうし、積極的な抗菌薬の投与は状況によると思います。
渡航があった、菌の検索をしたい場合どうしましょう?まずは便の細菌検査ですが、良く忘れがちなのは血液培養です。チフスでは血液培養のみでの菌の分離がありますので、疑う場合は必ず採取しましょう。
グラム染色で分かるものは、
①キャンピロバクター
②白血球
ではないでしょうか?
白血球の有無、新鮮さなどは、起炎菌を推定するのに使えることがあります。
Inflammatory Bacterial Diarrhea(JCM,1996,p928-932)によると、便中の炎症度によって違いが出てくると記載があります。これは、Acute Infectious Diarrhea(N Engl J Med 2004;350:38-47 )にも書かれている内容です。
掲載の写真ですが、患者の便の様子です。これを見て、菌が少なくても推測は可能だと思います。やり過ぎ?の考えもありますが、臨床像と比べて評価してみるのも面白いですよ。「白血球が多いので、下部消化管の起炎菌、例えば赤痢やサルモネラの疑いがありますよね?」って言えるスライドでしょう。
2008年6月11日 (水)
目的菌以外も答える能力 臨床も含め?
こんな症例もあります。『胃がんの手術をしたいが、レントゲンを撮ると怪しい陰影が、左上葉に・・・空洞?』、開口一番どうしましょう?
グラム染色は、こういった疑問難問にも役立ちます。すかさず答える、追加質問なども重要ですが、意外に医師は快く話ししてくれます。
抗酸菌の塗抹急ぎますよね。でも、専門科が見ると『エンハンスもないので、oldTBないのかな?』と聞くと『ずばり、はい』。でもとりあえす抗酸菌の塗抹だけは・・・。
吸引痰がきれいに引けたと連絡あり、検体が届き汚い痰。グラム染色もつけて来ましたが、結局抗酸菌塗抹は陰性で、専門科の先生へグラム染色の答えもつけてあげたいものです。
さて、この所見から『抗酸菌塗抹陰性+α』どう答えましょう?
愛知県の方は、先日のおさらいです。
2008年6月10日 (火)
他院でリネゾリド
先日は愛知県の皆様、お世話になりました。始めのツカミが長かったのかもしれませんが、内容が重く硬い内容であったので、肩凝ると良くないので、長めにしました。逆効果だったでしょうか?最後には笑いも出ていたような気がします。予想を遥かに超える120名程度だったようです。ありがたい話です。でも、皆さんオタクですよね。
ところで、こんな症例が来るようになりました。前医でLZDを投与継続中の転院受け入れです。先日のMEPMの件もそうですが、LZDもとうとう・・・と思い感染管理がより複雑になってきました。
腰椎術後の創部感染(と思われますが評価しにくい)でMRSAが出たという想定です。創部の管理をどうして良いのか解らず、抗菌薬の全身投与を思いつき、VCMを投与しましたが効果改善がないような、あるような?精査のうちに泌尿器の腫瘍も見つかり、さあ大変。CRP?下がらない⇒腫瘍でしょうか?
クリティカルな手術後に創部からMRSA+VCM効き目が悪い(+メーカーのPR)⇒LZD
腫瘍の手術目的で来ましたが、創部の完治がない。LZDが適正かVCMが適正か判断が難しいところ、継続してLZDで。
で、投与中に発熱があり、腫瘍性ではないことは判りました。創部もやや炎症所見が現れ、必ず行うべきことは菌検査。グラム染色を急いで見ると、スペクトルが外れていることが発覚?
抗菌薬はCFPM?CTRX?それともMEPM? どうしましょう?
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